モリコメンド 一本釣り  vol. 10

Column

yonige。同世代の心を揺さぶる日本語ロックはシャープで切実

yonige。同世代の心を揺さぶる日本語ロックはシャープで切実

yonige。字面で見るとオシャレだが、声に出して読むと切迫感が伝わってきてしまう名前を冠したガールズバンドが最初に注目を集めたのは、おそらく「アボカド」だろう。“私”と別れた“君”はモデル級にかわいい女の子と付き合い始め、どうやら楽しそうな日々を送っているらしい。“私”といえばダラダラとした日々を過ごし、(おそらく別れ話をしているときに)“君”に投げつけたアボカドのことを思い出している——シンプルな言葉で切実な物語を紡いだこの曲のMVはYoutubeの再生回数240万を突破。「ガールズバンドで初めてかっこいいと思ったバンド」「なんかクリープ的なKANA-BOON的な何かを感じる」「食い物粗末にするでねぇ」といったコメントが並び、このバンドの注目度も一気に上がったのだった。

2013年春に地元の大阪府寝屋川市で活動スタートさせたyonige。当初は女子3人の3ピースバンドだったのだが、初めての全国流通盤「Coming Spring」(2015年8月)のリリース・ツアー中にオリジナルメンバーのドラマーが脱退。現在は牛丸ありさ(V&G/1994年生まれ)、ごっきん(Ba&Cho/1995年生まれ)のふたり体制で活動している。“日本とオーストラリアのハーフのボーカルがかわいい”“女版クリープハイプ”“マイヘア感もある”など様々なイメージで語られているyonigeだが(ちなみに公式HPのプロフィールには“日本語ロック、大阪寝屋川yonige”とだけ書いてあります)、彼女たちの存在が拡散し続けているのは、ルックスの良さでも“○○に似てる”みたいなことでもなく、ひとえに楽曲の魅力である。

シャープな疾走感を備えたサウンドとともに“やっと今繋げたこの糸も/きっといつか切れるんだね”“愛していた/恋していた/無理していた”と歌う「さよならアイデンティティ」(Youtube再生回数160万回以上)、“もうどうでもいい”という殺伐とした気分と、それでも“もう1回でいい、会いたい”という思いが交差する「センチメンタルシスター」(Youtube再生回数60万回以上)、シャッフル系の軽快なリズム、ポップで軽やかなメロディのなかで“愛するとは何?”“世間的って何?”という解決不能なテーマが飛び交う「あのこのゆくえ」(Youtube再生回数60万回以上)。リアルな体験に裏打ちされた歌詞、ビートを強調したアレンジ、フックのあるメロディなどがバランスよく共存したyonigeの楽曲は、2010年代以降の国内バンドシーンの流れを確実に汲みつつ、10代、20代の女の子を中心に強く浸透していったのだ。

昨年7月に発表されたミニアルバム「かたつむりになりたい」が2016年「CDショップ大賞」関西ブロック賞を受賞、さらに注目度をアップさせた彼女たちは、この4月、新作「Neyagawa City Pop」をリリース。本作のもっとも大きな特徴は、“City Pop”というワードを冠したタイトルに示唆されているように、全体を通してポップミュージックとしての精度が大きく向上していること。そのことを最もストレートに象徴しているのが1曲目の「our time city」。エッジーかつメロディアスなギターリフ、ヒリヒリとした緊張感と心地よいポップ感を共存させたメロディライン、そして、“一体なにが起こるのかな/怖くはないよ ぼくら1994だから”というキラーフレーズとともにサビに突入するときに生まれる圧倒的なカタルシス。この曲によってyonigeは、“生々しい感情を描くギターロックバンド”というイメージを更新し、普遍的なポップネスを鳴らすバンドとして認知されることになる——そんなワクワクするような可能性がまっすぐに伝わってくるのだ。

アコースティックギター、鍵盤ハーモニカなどを取り入れたミディアムチューン「しがないふたり」も素晴らしい。“不安的な彼”との曖昧な関係を叙情的に描きながら、“お化粧が汗で溶けるその時/わたしは静かに別れを思う”という最後のフレーズが歌われた瞬間、すべてをぶち壊すようなノイジーなギターが鳴り響く。映像がリアルに浮かんでくるような言葉の選び方、歌のストーリーとバンドサウンドを重ねるセンスも抜群。ソングライティング、アレンジの能力を含め、牛丸ありさのクリエイティビティの高さにもぜひ注目してほしいと思う。

「Neyagawa City Pop」リリース後には、地元の寝屋川VINTAGEから全8公演の全国ツアーを開催。「VIVA LA ROCK 2017」「COMIN’KOBE 17」といった大型フェスにも出演するなど、ライブ、イベントで目にする機会もさらに増えるはず。ロックシーン、J−POPシーンの両方にアピールする魅力を持ったyonige、本格的なブレイクまでの時間も想像以上に早そうだ。

文 / 森朋之

ライブ情報

「Neyagawa City Pop Tour」
5月8日(月) 寝屋川VINTAGE
5月11日(木) 仙台enn 2nd
5月17日(水) 札幌BESSIE HALL
5月26日(金) 福岡Queblick
6月2日(金) 広島SECOND CRUTCH
6月19日(月) 渋谷CLUB QUATTRO
6月20日(火) 名古屋CLUB QUATTRO
6月22日(木) 梅田CLUB QUATTRO

オフィシャルサイトhttp://www.yonige.net

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