LIVE SHUTTLE  vol. 127

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堀込泰行ツアー最終日。シニカルなMCを交え魅せた“都市郊外的”ポップ感

堀込泰行ツアー最終日。シニカルなMCを交え魅せた“都市郊外的”ポップ感

HORIGOME YASUYUKI LIVE TOUR 2017
2017年4月16日 豊洲PIT

この日の会場PITがある豊洲というところは、最近ニュースなどでよく目にする地名だけれど、大きな市場が移転してくるかもしれないというようなところだから、つまりは近年急速に開発が進んでいる地域ということである。最寄りの地下鉄の駅から会場までの道も、広く真っ直ぐに伸びる車道の脇の、歩道は十分に広く、自転車のための通路も確保されている。小さな子供たちが追いかけっこをしながら駆けて行き、若い夫婦がそのようすに笑いながら付いていく。吹き抜ける風が確かに春を感じさせる、心地よい日曜日の午後だ。

これは、堀込泰行の1stソロ・アルバム『One』をフィチャーしたツアーの最終日としては、まさに格好のシチュエーションだろう。アルバム『One』がリリースされたのは昨年10月だったから、ツアーがこの時期になったのはファンからしてみれば、少なからずお待ちかね感があったはずだが、じつはこの季節になるのを待っていたのかもしれない。というのも、アルバム『One』はカラフルで明るい、いわゆるポップス感の強い内容だったからだ。加えて、この豊洲という場所がいかにもふさわしく思えたのは、そのポップス感が連れてくるのは“都市郊外的”とでも言うべき爽やかさだったからで、広くてゆったりとした公園やフットサル場が続くその向こうにいまどき流行りのタワーマンションが立ち並ぶ光景は、この日のライブのための、イメージとしてのステージ・セットみたいと思われた。

ライブは、すでにライブではお馴染みになっているオープンな2曲からスタート。会場の外のハッピーなホリデイ感が、そのままこの日のライブの最初のカラーになった。そして、2曲ともに堀込自身がギター・ソロも聴かせて、ギタリストとしての存在感も印象付けると、3曲目ではキリンジ時代の曲を披露。「この日はもちろんキリンジ時代の曲もやりますよ」ということを確認して、ここまででこの日のライブの概要が颯爽と示されたのだった。

「ツアーでいろいろまわってきましたが、今日が最終日ということで張り切ってやりますので、最後までゆっくり楽しんでいってください」

時にシニカルな物言いを交えながらも、基本的には折り目正しいMCが彼のスタイルだ。そして、ライブはいきなり展開パートへ。アルバム『One』のなかでもスティーリー・ダン・ライクなホーンが印象的だった「New Day」に続いて、口ロロとのコラボ曲「バースコーラス」、キリンジの代表曲「エイリアンズ」のDUBバージョン、そしてピコ太郎の「ペンパイナッポーアッポーペン」で使われてにわかに脚光を浴びている伝説の名器「ローランドTR-808」の音が効果的だった「PING&PONG」。後から振り返れば、起承転結の“承”と“転”が逆になったような構成だったことがわかるのだが、ここではアルバム『One』の馴染みやすいポップ感とは少し肌合いの違うサウンドも聴かせて、彼の音楽性の幅をあらためて感じさせた。が、同時にそれは、都市のスマートな爽やかさがはらんでいる危うさも連想させて、その意味ではこの日のステージの芯とも言うべき“都市郊外的”ポップ感に必要な奥行きを加えるべく用意されたパートでもあったのだろう。

もうひとつの展開パート、キリンジ曲の「Round and Round」から続いた4曲も印象的で、「ファイヤーバード」は未発表曲だが、そのあとの2曲、堀込の言い方で言えば「重い曲」2曲が表現したサイケに滲んでいく感傷はやはり彼ならではのものだと思わせた。

アルバムのレコーディングに参加した伊藤隆博(key)、沖山優司(b)、北山ゆう子(ds)に松江潤(g)と真城めぐみ(cho)が加わったバンドは、ちゃんとポップで、しかし派手過ぎない、よく行き届いた演奏を聴かせていたが、そのアンサンブルの重要な要素のひとつとしてコーラス・ワークが効果を上げていたのが印象的だった。そもそも真城を迎えている時点で、このバンドがコーラス・ハーモニーを重要視していることは明らかだろうが、それは堀込がいいメロディを人間の声で聴かせたいと思っていることの表れでもあるだろうし、ということは今後の彼の作品のなかでも、彼自身の声だけでなく、いろいろな人の声が音楽の大切な部分を担っていくことになるのかもしれない。

「ずっと禁酒してたんで、今日は最後だから1曲ずつじっくり味わって堪能するという計画だったんですが、じつに波乱万丈。でも、僕は楽しかったです。みなさんもそうだったらうれしいです」

ステージ上の人間として、いろいろうまくいかないこともあって「波乱万丈」という表現になったんだろうが、客席からの印象としてはしっかりと熱のこもったアンコールの拍手がこの日のステージの充実を伝えていた。そして、それに応えて登場したアンコールでの3曲、とりわけ最後の「銀砂子のピンボール」の長く熱いギター・ソロがこのツアーで堀込が得たエネルギーの大きさを感じさせた。

ファンから長く待たれていたソロ・ツアーの、確かな収穫を実感したステージだった。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 立脇卓

HORIGOME YASUYUKI LIVE TOUR 2017
2017年4月16日 豊洲PIT

セットリスト
1. Wah Wah Wah
2. Jubilee
3. 涙にあきたら
4. New Day
5. バースコーラス
6. エイリアンズ
7. PING&PONG
8. Shiny
9. カメレオンガール
10. Round and Round
11. ファイヤーバード
12. クモと蝶
13. サイレンの歌
14. さよならテディ・ベア
15. ポップコーン
16. クレイジー・サマー
17. 最後の週末
18. ブランニュー・ソング
19. 僕らのかたち
20. 季節の最後に
En1. Waltz
En2. ブルーバード
En3. 銀砂子のピンボール

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堀込泰行

97年キリンジのVo/Gtとしてデビュー。17年の活動を経て、2013年4月12日 「キリンジ」を脱退。
脱退後は他アーティスト作品への参加や楽曲提供、ライブ活動を経て、2016年、初の洋楽カバー・アルバム『Choice by 堀込泰行』(Billboard Records)を発売。そして、満を持してのソロ・デビュー・アルバム『One』(日本コロムビア)を2016年10月19日にリリース。そのアルバム『One』の発売を記念した全国ツアー”HORIGOME,YASUYUKI LIVE TOUR2017”も4月16日の豊洲PIT公演をもって盛況のうちに幕を閉じた。

オフィシャルサイトhttp://natural-llc.com/yasuyuki_horigome/

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