Interview

ポルカドットスティングレイ、その活躍のカギを握る才女、ボーカルの雫にバンド運営術とヒット戦略を訊く

ポルカドットスティングレイ、その活躍のカギを握る才女、ボーカルの雫にバンド運営術とヒット戦略を訊く

いまバンド・シーンで最も注目を集めているニューカマーのひとつと言っていいだろう。とりわけ、すべての曲の作詞/作曲のみならず、ミュージック・ビデオ(MV)の監督やアートワークまで手がけるボーカル、雫の多才ぶりは注目の的だ。
ここでは、その雫に独自のバンド運営術や曲作りの進め方、そして彼女が考えるポルカドットスティングレイの魅力について聞いた。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 鈴木圭


(音楽を)やるんだったら仕事にできるくらい実のあるものにして、花を咲かせないと絶対に嫌だという気持ちになったんです

当初は仕事の合間のラフな気持ちでこのバンドを始めたということですが、その頃の音楽といまやっている音楽とでは、何か変化はありますか。

全然違うかもしれないですね。最初に、ライブ会場限定で「極彩」というシングルを出してるんですけど、そのときにはほとんど英語でしか歌ってないし、お客さんが聴きやすいかどうか、ポップかどうかというようなことは大して考えていなくて、「とりあえずこのメンバーでやりたいことを形にしてみました」というだけのものだったんで。でも、いまはお客さんのことしか考えていない曲作りをしてるから、全然違いますね。

「極彩」から、初めての全国流通盤としてリリースされた「骨抜きE.P.」までは1年半くらいしか経ってないんですが、どうしてそんなに考え方が変わったんですか。

メンバーのドラムが火をつけてくれて、私が本気になってきたということもあるんですけど、その後に「テレキャスターストライプ」のMVを公開したりして、お客さんの求めるものはこんな感じかな?と思って出してみたら、ちゃんと反応が返ってくるんで、“これがバンドか!”と自分のなかでピンと来たというのもあるし。それに、仕事でゲーム・ディレクターになって、マーケティングの勉強をたくさんして、お金の流れについても勉強して、“この考え方はバンド運営にも生かせるな”と思い始めたということもあります。

“これがバンドか!”という感覚は、ゲームを企画して売り出すのとは違う、バンドならではの広がり方、あるいは広げ方を感じたということですか。

いや、むしろ私のなかでは同じだったんです。自分の作ったもの、クリエイティブに対してお客さんが反応を返してくれて、その反応から“こういうふうにしたほうがもっと売れるんだな”ということを汲み取って、それを生かした次の作品を出して、その反応がまた数字の形で出てくるという流れがまったくいっしょだから。ゲームを作るか、音楽を作るか、という手段が違うだけで。だから、まったく同じ感覚でやってます。

作品を作るうえで、受け取り手のことをまったく考えないというスタンスもあると思いますが、雫さんのなかにはその選択肢はなかったですか。

最初の頃はそういう感じだったんですけど、でもやっていくなかで、音楽もゲームの仕事も体力的に死ぬほどつらくなってきて、“こんなにつらいんだったら、生産性のないことはやりたくない!”と思ったんですよ。だから、やるんだったら仕事にできるくらい実のあるものにして、花を咲かせないと絶対に嫌だという気持ちになったんです。

そこで、“こんなにつらいんだったら、人のことなんて考えないで、自分の好きなことを思いきりやるぜ!”という方向に向かう人もいると思うんですが、いかがですか。

いるかもしれないですね。わたしはそうならなかっただけで。なんでだろうな? 基本的に、私は人よりも仕事が好きですね。仕事が好きだからこそ、きつくてもいいから、好きなことを仕事にしたいという気持ちはあるかもしれないですね。ずっと仕事していたいから(笑)。そこは、人と違うところかもしれないです。

「仕事にできるくらい実のあるものに」と考えるようになって、そこで例えば“歌詞は日本語のほうがいいな”と考えたりしたわけですね。

すごく有名なポップ・グループにならないと気が済まないので、歌詞は日本語のほうが日本人にはわかりやすいのでそうしたし、曲ももっとわかりやすくしようということで展開やリフも受け入れやすいものにする努力をメンバーみんなでしたし。それに、私はゲームの仕事もやってて時間がなかったから、その少ない時間で抜きん出るには曲以外の部分もがんばらないといけないと思って、それでMVを自分で監督したり、「テレキャスターストライプ」のMVでバニーガールをやってみるみたいな工夫をしたり、アートワークを自分でやることにしたんです。

少ない時間で成果をあげようとする場合に、例えば必要な作業についてそれぞれエキスパートを集めて効率を上げるというやり方もありますよね。

そうですね。でも、そこはメンバーだけでやりたかったんです。せっかくメンバーが集まってくれて、私を本気にさせてくれたのだから、私がこのコたちを引っ張っていって4人で一緒に売れるしかないなと思ったんです。

七変化感みたいな感じが、ウチのバンドの特徴だと思います

アートワークやMVの監督も自分で担当したのは、そのほうが手っ取り早いと思ったんですか。

そうですね。意思疎通の時間がもったいないというか。ゲームの仕事をやってて、ディレクターとして仕様も書いてたんですけど、人に物事を伝えて、それをやってもらうという進め方、つまり自分以外の人が手を動かして再現するということの労力の大きさをめちゃくちゃ感じてたんで、自分ができるなら自分がやったほうがいいなと思って。その考えはいまもあまり変わってないんで、自分でできることはどんどん自分でやりますね。

そういうことの結果として、雫さんのプロデュース力がいま大いに注目されているわけですが、プロデュースする対象としてポルカドットスティングレイというバンドを見たとき、このバンドの武器や特徴はどういうところだと思っていますか。

変幻自在感ですかね。曲に関してもそうで、「骨抜きE.P.」も『大正義』もすごい振り幅があるんですよ。ウチって基本的にはダンス・ビートの曲のイメージが強いかもしれないですが、でも「骨抜きE.P.」の「ハルシオン」みたいにプログレっぽい変拍子の曲もやれば「人魚」みたいなジャズもやるし、『大正義』の「ベニクラゲ」みたいに面白いミックスのバラードもやってしまうっていう。「ミドリ」みたいに、歌詞の世界がちょっと入りづらいかもしれないアクの強い曲もやるし、「本日未明」はポップだし。つまり、「ウチはこういうバンドだから、こういう曲しか作らない」というのではなく、お客さんが求めるものをしっかり受け取って、それぞれに個性のある曲たちを広い振り幅のなかで作っていくということですね。それからMVについても、私の衣装がすごく変わるんですけど、それも「雫はこういう衣装で、こういうMVを作ってるよね」というふうにはならずに、「いまはこういうのが流行ってるから」とか「お客さんがこういうのが好きそうだから」というふうに、いろんなものが似合うように努力してます。そういう七変化感みたいな感じが、ウチのバンドの特徴だと思います。

フックのある言葉を散りばめつつ、あまり強いメッセージ性のあるような内容にはしないということは意識してます

曲作りに関して意識していることは?

メロディをわかりやすく良くするというのが私のいちばんのポリシーなので、そこはすべてに一貫していると思います。ただ、オケがJ-POPで多くあるような歌のためのオケという感じにはなっていないのは、ウチは一応ロック・バンドで、ロック・ファンのお客さんも繰り返し聴いて、いいところを発見してもらえるようにしたいと思っているからだし、私はメンバーの演奏のスキルや知識をすごく信頼しているから、ある程度はそれぞれにやりたいことをやればいいと思っているからでもあります。

もうひとつ楽曲の特徴として、歌詞の意味を伝えることよりもスピード感やバンドのエネルギーを感じてもらうことに比重を置いていて、歌詞の展開や言葉遣いもそういうものがより良く伝わることを意識して書かれているのかなと感じます。

確かに、メロディとオケの展開に比重を置いているので、歌詞が先行してしまうのは私のポリシーに反しているというか(笑)、聴きやすさを妨げるような気がするんです。歌詞については、聞かれたら「こういう意味です」と答えられるくらいのテーマは持ってますけど(笑)、あとはわざとふんわりした感じにしてます。フックのある言葉を散りばめつつ、あまり強いメッセージ性のあるような内容にはしないということは意識してますね。

ということは、例えば「ベニクラゲ」は失恋したときのことを歌った曲、みたいにひと言で説明できてしまわないほうがいいんですか。

あの曲は「失恋したときの歌でしょ」とお客さんに言われるだろうなと思って書いたので、それは全然かまわないというか、その人が失恋したときの歌だと思って、それで共感してくれるんだったらそれでいいんです。ただ、本当は、ベニクラゲという生き物は不老不死だと言われていて、“不老不死ってつらいよなあ”と思った、そのことを書いてるだけなんです(笑)。だから、海の生き物に詳しい人が「ベニクラゲって不老不死の生き物だから、そのことを書いたんですね。共感します」と言ったら、それがその人にとっていちばんいい共感の仕方だろうから、それはそれでうれしいっていう。つまり、ふんわりとした歌詞を書くことによって、お客さんそれぞれの共感ポイントに引っかかりやすくなるというか解釈の幅が広がると思うんですよね。

それでも敢えて歌詞の意味やメッセージについても聞きたいんですが(笑)、ポルカドットスティングレイとして曲を作る上で、あるいは雫さんが音楽をやっていく上で“こういうことを歌おう”という、一貫したテーマのようなものはありますか。あるいは、それは曲ごとの話ですか。

チョー曲ごとだし、私が自分の考えを歌うことはないです。それに、あくまでメロディ優先ですから“私はこれを歌うぞ!”というようなものがあっちゃダメなんです。

「極彩」「骨抜きE.P.」、そして今回の『大正義』まで聴き通してみると、個人的には「夜明けのオレンジ」で歌っていること、もっと言えば最後の♪目に見えないものに縋って♪から♪どうだっていいのかもしれないね♪までのくだりがテーマめいたことなんじゃないかと思ってしまいますが。

あそこはわりとお気に入りポイントですね。というか、お客さんがいいと言ってくれるからお気に入りポイントになったんですけど、でも実際には作ってるときに「これ、いい曲にしたいから、Cメロを付けようぜ」という話になって、でも私がCメロを作るのが苦手だから「歌詞は無理、無理」と言ってたら、ウチのドラムが♪目に見えないものに♪と歌い出して、♪存在しない敵作って♪というところまで考えたんです。で、「その作っていることを批判する感じにすれば?」と言われたから、批判する感じが普通の感性なんだなと思って、逆のことを書いたっていう(笑)。

そこの歌詞に変幻自在なバンドの尻尾が見えていると思えたんですが、それはとんでもないわけですね(笑)。

(笑)、とんでもないです。ウチのドラムが「自分が考えたんですよ」と言えるのが面白いから取り入れてみた、という感じですから。

その「夜明けのオレンジ」の歌詞が言いたいことの真ん中にあることだろうと感じた僕としては、結局バンドという形で、すごくポップな切り口で、ポルカドットスティングレイ教をやりたいのかなと思ったんですが。

ある種、そうかもしれないですね(笑)。今回、『大正義』というタイトルにしたのも、みんなの“大正義”になりたいという気持ちがあるんですよ。“大正義”というのはネット・スラングで、「大正義ポルカドットスティングレイ」みたいに、“大正義”の後に自分の大好きなもの、妄信的に好きなものを付けるという使い方をするんです。だから、「大正義ポルカドットスティングレイ」になりたいので、今回のアルバムのタイトルは『大正義』になったし、そういう意味で正義という言葉をけっこう使ってますね。

ライブについても聞かせてください。現在の自分たちのライブは100点満点で何点くらいだと思いますか。

ワンマン・ライブと対バン・ライブでも、やりたいことが多少違ったりするんですけど、ワンマンについて言えば、いまは満点に近いライブをしてこれてるかなとは思います。我々のファンに楽しんでもらえるということに関してはすごくがんばれてると思うんですけど、対バン・ライブで新しいお客さんにどういう見せ方をするのかというところでは考えなきゃいけないことがたくさんあって、試行錯誤中です。

ライブについても変幻自在を目指すんですか。

そうですね。曲によって世界観も違いますから、それぞれの世界観を曲ごとに100%表現したいし、アルバムのツアーだったら、そのアルバムの世界観、今回だったらジャケットみたいなアメコミのポップな感じを100%表現したいなと思っています。

ツアーが楽しみです。ありがとうございました。

ポルカドットスティングレイ作品はこちらへ

ライブ情報

「ポルカドットスティングレイ 2017 TOUR 大正義」

6月2日(金) 大阪シャングリラ
6月9日(金) 福岡INSA
6月10日(土) 広島cave-be
6月16日(金) 名古屋JAMMIN
6月18日(日) 札幌SOUND CRUE
6月22日(木) 渋谷WWW-X

追加公演
7月13日(木) 東京キネマ倶楽部

ポルカドットスティングレイ

雫(Vo.& Gt.)、エジマハルシ(Gt.)、ウエムラユウキ(Ba.)、ミツヤスカズマ(Dr.)。
福岡を拠点に2015年活動開始。活動歴が他アーティストと比較しても短い中、それを感じさせないバンド・アンサンブル、既に教祖的存在感、早耳のリスナー、メディアの投稿から引火し、現在までバズりあげる。代表曲は、YouTubeの視聴回数400万回を超えた「テレキャスターストライプ」。Vo.&Gt.の雫が生み出すリスナー心理を考えたソングライティングとセルフプロデュースに対する認識と表現の仕方から、「何かを企む超常ハイカラギターロックバンド」と称される。

オフィシャルサイトhttps://polkadotstingray-official.jimdo.com

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