LIVE SHUTTLE  vol. 142

Report

Mr.Children 25周年を前にホールで行ったツアーを紐解く

Mr.Children 25周年を前にホールで行ったツアーを紐解く

Mr.Children Hall Tour 2017 ヒカリノアトリエ
2017.4.20 東京国際フォーラム ホール A

アンコールの「one two three」で、ドラムの鈴木英哉がアントニオ猪木で有名な言葉、“迷わず行けよ 行けば分かるさ”(もともとの詩の作者は別の方らしいが)を引用しつつ、客席と一緒に“ダァー!”と叫んだ時、ミスチルの25周年のその先と、客席のわれわれ一人一人の未来とに、一筋の光が差し込んだ気がした。気がした…、というのは、人間が生きていく上で大切な感覚だ。気が「した」なら「すれ」ばいい。誰かの体験談をSNSで調べ、シュミレーションして己の結末を想像し、躊躇したりなどせずに…。

昨年の春にスタートした「虹」のツアーは、あえて“Hall Tour”と明記した通り、全国各地の2000席くらいの会館を回るものだった。夏の野音を挟み、セットリストを一部変更した秋編。年を跨いで再び内容を変更し、タイトルも「ヒカリノアトリエ」とした今回へと続き、この日が最終日である(その後の振替え公演の日程は除く)。

音楽的には確固たるコンセプトがあるツアーだ。Mr.Childrenの4人に加え、最新シングル「ヒカリノアトリエ」のレコーディングに関わったSunny(Keyboards&Back Vocal)、山本拓夫(Saxophone&Flute)、icchie(Trumpet)、小春(Accordion)という、総勢8人の生音で総てをまかなったのだ。コンピューターのシークエンスなど、付加的な音源を一切排し、それゆえ、その日の調子が、如実に音に顕われる。そんな環境ゆえ、演奏者達の意志が、よりリアルに客席へと届けられるわけだ

でも実際にライヴに接すると、新曲のみならず、これまでの作品にこそ、8人でやる意義を感じた。例えば小春のアコーディオン。彼らの楽曲には、メロディに対して巧みな“裏メロ”を配したものなども多く、そんな時、彼女の奏でる音が、確かにそこを支えるのだ。こうして、作品本来の音楽性を損なうことなく、ホ−ル・ツアーに見合ったダウンサイジングを可能にしていたわけだ。

もちろん彼女だけではなく、Sunnyがキーボードのみならず、時に桜井とデュアルでボーカルを聴かせる場面や、山本拓夫が繰り出す気骨と趣きある響きに酔いしれる場面や、普段、よりエッジの効いた音楽をやってるicchieが、空気感をパリッと変える鮮やか音を届けてくれる場面など、参加ミュージシャンは実に有機的に機能したのだった。

まず礼儀としてゲストのことを書いてからお馴染みのMr.Childrenのメンバーのことを書くのなら、「PIANO MAN」の闊達に響くJENのドラムや、「Another Story」の精緻な中川敬輔のベース、曲全体の色彩を決定する「fantasy」の田原健一のギターなど、バンドとしての絆はもちろんのこと、それぞれの個性も適宜、そのなかに浮かび上がってくる。桜井は大会場だと持ち前のフィジカルを駆使し、上手下手花道と駆け回るところ、この規模のホールでは物理的にそれは不可能な反面、よりボーカルに専念できる、そんな佇まいに思えた。

ここからは印象的だった楽曲について。まずはオープニングの「お伽話」。会場の照明は暗め。“電気仕掛けの巨大な葡萄”のような固定照明がほの暗く見える程度である。いきなりコンサートの“祝祭的部分”を強調するのではなく、むしろ真逆。客席に居て、自分の心の内を覗き見るかのような気分になり、この楽曲のテーマである、“現実”と“お伽話”を合わせ鏡のように思ってしまう歌の主人公の心理にも隣接した気分となる。ホールだからこそ成立する演出。次の「いつでも微笑みを」で照明も音の色彩も増し、「メインストリートに行こう」ではさらにさらに、という、心拍数の自然な上昇を誘った最初の3曲は実に巧みだった。

「You make me happy」について。「虹」ツアーからずっとセットリストから外れなかった曲で、『REFLECTION』では曲数の多い{Naked}のみに収録されていた。怖いものなどなかった時代を回想しつつ、しかし今、目の前にある幸せこそを享受しようとする主人公の歌だが、セブンス系のお洒落な雰囲気の曲調は、彼らがデビューした25年前の音楽シーンを彷彿させないこともない。“リメイク”は“オリジナルを越えようがない”といった冒頭の歌詞は、自分達へ向けての新たな決意か戒めなのか…、という解釈も…。

桜井が弾き語りコーナーで「水上バス」を歌いつつ、作品を客観的に解説し、そもそも歌作りとは夢占いのようだ(ふと浮かぶメロディという“夢”に、それを占うように“歌詞”をつける作業)と話していたのも印象深かった。そして「蒼」から新曲「こころ」と、2曲続けて真心こめて歌う姿には感涙した(個人的にはこの夜、この2曲が一番良かったんじゃないかと思ったくらいである)。特に「蒼」は、アルバム『SENSE』収録の音源の歌に較べ、格段に素晴らしく思えた(帰宅してCDを聴いてみての感想だ)。桜井のボーカルが、とびきり容積が大きく艶やかで、それを前提に自在に抑揚つけたものとして響いていた。

後半の盛り上がりどころに「跳べ」を持ってきたのも効いていた、というか、改めてこの楽曲の良さを知った。一般にMr.Childrenの代表曲とは言わないけど、好きな人が多い曲でもあるだろう(まぁそう書くと、そういう曲がやたら多いのがこのバンドなのだが…)。

気づけば知らずにぴょんぴょん跳ねてたティーンの頃とは違い、両肩に世間の様々な“重力”を感じ始めた人間が、それでも跳ぶための方法論を探る歌と受け取れるが、その際、安易に“ジャ〜ンプ!”なんて言葉に頼らず、“とぉーべぇー!”という、ちょっと油断するとすぐ高度が下がってきてしまう響きを敢えて用いるあたりにソングライター・桜井和寿の非凡さが伺える。さらに“ジャ〜ンプ!”だと置いてけぼりの人間が出そうだけど、こっちなら全員ケアしてくれている(言わば、護送船団方式の励ましソングである)とも評価出来る。

本編最後の「終りなき旅」も、最後の最後の“おわ〜りな〜きたぁ〜び”を客席が一緒に歌ったからこそ良かった。ここで両者が、未知なる旅を共有した、気がした、からである。冒頭の繰り返しとなるが、気がした、というのは、人間が生きていく上で大切な感覚なのだ。

最後に「足音 〜Be Strong」。バンド25周年の歴史を何章かに分けるとしたら、最新章の幕開けを告げたセルフ・プロデュース第一弾作品であり、試行錯誤のすえに生まれたのがこの作品なのだが、結果、ロックしつつもメロディを豊かに歌う(例えば間奏も、ナナナナァ〜、チャラララァ〜、と、全部、歌える!)、これぞ究極のMr.Childrenサウンドとなっている。人生にとって大切なのは最初の一歩だけど、実は歩幅であることを教えてくれる歌でもある。そもそも彼らが、25周年を前に、全国のホールを地道に回りたいと思ったのも、そのあたりに関係することだろう。充分にホールを回らずアリーナへ“飛び級”したのは『Mr.Children ’94 tour innocent world』から『Mr.Children ’95 Tour Atomic Heart』の時期だったのだろうが、あの時はちょっと無理して“大股”になってたと、今にして彼らは思ったのかもしれない。

最後になるが、あることに気づいた。昨年の春にスタートした「虹」、今回の「ヒカリノアトリエ」と、演奏されてきた延べの曲数は、既に別内容のライブを二度やれそうなくらいの分量に達しているのである。6月からの『Mr.Children DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25』は、さてどんな内容となるのだろうか。ここにある“パレット”の絵の具たちで、さらに描くのか、はたまた…。

文 / 小貫信昭 撮影 / 薮田修身(W)

Mr.Children Hall Tour 2017 ヒカリノアトリエ
2017.4.20 東京国際フォーラム ホール A

SET LIST

1.お伽話

2.いつでも微笑みを
3.メインストリートに行こう
4.You make me happy
5.PIANO MAN
6.Another Story
7.クラスメイト
8.(弾き語り)
9.口笛
10.掌
11.マシンガンをぶっ放せ
12.fantasy
13.蒼
14.こころ
15.ヒカリノアトリエ
16.Any
17.跳べ
18.擬態
19.終わりなき旅
EN1.one two three
EN2.花の匂い
EN3.足音 〜Be Strong

その他のMr.Childrenの作品はこちらへ

ライブ情報

『Mr.Children DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25』
6月10日(土) [愛知]ナゴヤドーム
6月11日(日) [愛知]ナゴヤドーム
6月17日(土) [北海道]札幌ドーム
6月29日(木) [東京]東京ドーム
6月30日(金) [東京]東京ドーム
7月4日(火) [大阪]京セラドーム大阪
7月5日(水) [大阪]京セラドーム大阪
7月15日(土) [福岡]福岡ヤフオク ! ドーム
7月16日(日) [福岡]福岡ヤフオク ! ドーム
8月5日(土) [神奈川]日産スタジアム
8月6日(日) [神奈川]日産スタジアム
8月12日(土) [大阪]ヤンマースタジアム 長居
8月13日(日) [大阪]ヤンマースタジアム 長居
8月26日(土) [広島]エディオンスタジアム広島
9月9日(土) [熊本]熊本県民総合運動公園陸上競技場(えがお健康スタジアム)

Mr.Children

1992年ミニアルバム「EVERYTHING」でデビュー。1994年シングル「innocent world」で第36回日本レコード大賞、2004年シングル「Sign」で第46回日本レコード大賞を受賞。「Tomorrow never knows」「名もなき詩」「終わりなき旅」「しるし」「足音 〜Be Strong」など数々の大ヒット・シングルを世に送り出す。これまでに35枚のシングル、18枚のオリジナルアルバム、4枚のベストアルバムをリリース。2017年1月11日にNew Single「ヒカリノアトリエ」をリリース。3月からの全国ツアー「Mr.Children Hall Tour 2017 ヒカリノアトリエ」に続き、6月からは「Mr.Children DOME & STADIUM TOUR 2017」の開催が決定している。

オフィシャルサイトhttp://www.mrchildren.jp

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