男子禁制!? 乙女ゲームの世界  vol. 8

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オトメイトが挑み続ける乙女ゲームのカタチ②

オトメイトが挑み続ける乙女ゲームのカタチ②

オトメイトのクリエイター陣へのインタビュー2回目。前回は、オトメイトの作品作りに関して、興味深い内情を知ることができた。今回は、4名のクリエイターが乙女ゲームにどのような魅力を見出し、どのようなメッセージを女性たちに伝えたいのかを訊いた。彼女たちの話から、女性たちに支持される秘密や乙女ゲームの“いま”が見えてくる。

座談会出席
渡邉渡さん/代表作『ニル・アドミラリの天秤 帝都幻惑綺譚』ほか
寺嶋桃子さん/代表作『黒蝶のサイケデリカ』、『灰鷹のサイケデリカ』ほか
北野マコトさん/代表作『バクダン★ハンダン』、『ピリオドキューブ ~鳥籠のアマデウス~』ほか
谷口歌奈さん/代表作『ノルン+ノネット ラストイーラ』、『数乱digit』ほか

座談会前編の記事はこちら

取材・文 / 菅谷あゆむ


Chapter3 オトメイトのいま、そしてこれから

乙女ゲームをプレイする女性たちは、乙女ゲームに何を求めていると思いますか?

谷口 求めるというより魅力的な部分になりますが、少女漫画を疑似体験できるところでしょうか。少女漫画はあくまでひとつの物語を客観的に楽しむものだと思うのですが、乙女ゲームはキャラクターの声やBGM、効果音などが加わって、よりリアルに物語の中に入り込むことができますしね。「恋してる!」と感じていただきやすいのかなと。

北野 自分がその世界に介入できるというのは大きなポイントですよね。

寺嶋 私は、“ドキワク感”だと思います。その“ドキワク”が“非日常を楽しむため”という方もいれば、“キャラクターとの甘い掛け合い”という方もいるでしょうし、“泣きたい”という方もいるでしょう。皆さんそれぞれに求めているものが違うので、断定するのは難しいです……。

渡邉 私も“非日常”だと思います。ゲーム自体が手っ取り早く非日常に入り込める媒体ですからね。

そういったプレイヤーたちの欲求を満たすために、あえて取り入れている要素はありますか?

北野 イラストやシナリオなど大事な要素はたくさんありますが、私は攻略キャラクターのバックボーンとギャップを大事にしています。バックボーンは、そのキャラクターの性格や考えかたを形作るのに大事なもので、物語にも深く絡んでいきますから。そこをしっかり描くことで、ふとした瞬間に見せるギャップが活きてくるんです。

寺嶋 『サイケデリカ』シリーズに特化して言えば、驚きです。『サイケデリカ』は選択肢が少ないぶん、いざ選択肢を選んで物語に介入すると、キャラクターの本当の姿が見えて一気に激動の中へ……。そういった感情の高低差を、かなり意識して作っています。

▲『黒蝶のサイケデリカ』のフローチャート画面。共通ルートがメインになっており、本筋の物語をじっくり読ませる構成になっている

谷口 私は北野さんと一緒で、キャラクターがより魅力的になるような設定や、いい意味でのギャップを感じられる要素を盛り込むようにしています。ひとりひとりのキャラクターと向き合い、あれこれ思考する作業は、大変ではありますがやりがいを感じます。

渡邉 私が大事にしているのは、空気感や世界観です。『ニル・アドミラリの天秤 帝都幻惑綺譚』はifの大正時代でファンタジー要素もある舞台ですから、その世界の中で設定やキャラクターがどのようにすれば自然に溶け込めるかにとても気を使いました。ビジュアルに関してはキャラクターデザインが映えるように背景やインターフェースにいたるまでいろいろ検討しながら決めました。女の子が好む可愛いレトロ感という点も気をつけてデザインしています。

▲『ニル・アドミラリの天秤 帝都幻惑綺譚』の会話画面。ノスタルジックな色味とデザインは、恋愛の甘さを一層引き立てている

では、皆さんはオトメイトブランドの魅力はどういったところにあると思いますか?

谷口 私は、グラフィックだと思います。皆様から絵がきれいという反応をよくいただきますし、外部のイラストレーター様はもちろん、信頼のあるグラフィッカーが社内にたくさんいて、とても心強いです。

北野 そうですね。それに、物語性も支持を得ているポイントなのかな、と思います。恋愛要素だけでなく、展開の起伏がしっかりあって、絶妙なポイントでCGも入る。そういった、ゲームとしての一体感は意識しながら制作しています。

寺嶋 私は、作品のテイストがいっぱいあるところだと思いますね。学園もの、バーチャル、時代もの……。「こういう傾向じゃないといけない」というものがないんです。ですから、自分の好きなものを見つけやすいと思います。

渡邉 私も作品のバラエティの豊富さでしょうか。年間でたくさんのタイトルを出しているので、いろいろな方のニーズに合ったものを提供することができていると思います。ただ、同じブランド内で作品のテイストが似てしまうこともありますので、その際は自分のタイトルをどのように特徴づけていくのか悩みますね。それがオトメイトならではの悩みだと思います(笑)。

皆さんがオトメイトブランドで作品を作ることに自負を持っていらっしゃるんだと、改めて感じました。

谷口 何より、自分の企画を形にできるチャンスがありますから、やりがいはあります。ただ、うちはディレクターの守備範囲が広いので、大変ですけど(笑)。

寺嶋 責任も多いですよね(笑)。

渡邉 最後は燃え尽きる感じがありますね(笑)。

谷口 そうですね(笑)。でも、そこまでいろいろなことを任せていただいているからこそ、頑張れるのかもしれません。

寺嶋 自分の作品を年間に1本出せるという環境はほかにはないと思いますので、本当にやる気と実力があれば……。

北野 体力も!(笑)

渡邉 気力もです(笑)。

寺嶋 (笑)。「いま企画書を出して」というタイミングに企画書を出せる気力と体力と普段からの準備がある人が、チャンスを掴むのだと思います。

渡邉 だからこそ、ライバルが多いんです。チャンスがあれば、「私が!」、「私が!」という感じですから(笑)。

谷口 自分が担当したタイトルがひと段落したとき、すぐにつぎの企画書を作りますよね(笑)。

皆さん、本当に乙女ゲームを作りたいという思いが溢れていますね。

渡邉 好きでなければ、ここにいないと思います。やはりゲームを作るということは大変な作業なので。

寺嶋 そうですね。ゲームをプレイするのが好きというのと、作るのが好きというのは、ちょっと違いますから。

北野 純粋に、ゲームを作るのは楽しいです。

谷口 その気持ちで修羅場を乗り切っているようなものですしね。

皆さんからオトメイト愛が伝わりました(笑)。

寺嶋 私、じつはアイディアファクトリーに入るまで、アドベンチャー系の乙女ゲームは『薄桜鬼』(※1)くらいしか知らなかったんです。

入社される方は、皆さん乙女ゲーム好きだと思っていました。

寺嶋 もちろん乙女ゲーム好きの方もいますが、ゲーム自体を作りたいという人も多いんです。

渡邉 私は後者のタイプです。ゲームを作りたい気持ちはあっても、ゲーム会社に勤めたことがあるわけでも、専門学校に通ったこともなく……。未経験の自分に何が作れるんだろうと考えたときに、乙女ゲームに間口の広さを感じたんです。

谷口 たしかに。アドベンチャーゲームとしてのシステム部分は、すでに確立されていますからね。

渡邉 そうです。だから、物語や設定を考えれば、私にもゲームを作ることができるのではないかと思ったのが入社のきっかけです。

乙女ゲームを熟知されている皆さんが、乙女ゲームを知らない方にオススメするなら、どんな作品でしょうか。

渡邉 私は『ときめきメモリアル Girl’s Side』(※2)です。アクションやRPGしかプレイしていなかった当時の私にとっては、「ゲームで恋愛ができるのか」と衝撃を受けた作品です。

谷口 私がオススメするのは、物語が気になって寝る間を惜しんで3日でクリアーしてしまった『ソラユメ』(※3)です。すごく物語の世界に引き込まれて、当時は会社のお昼休みにずっとプレイをしていました(笑)。あるルートで『ソラユメ』というタイトルに込められた意味について語られるのですが、そこで号泣したのはいい思い出です。

北野 私はアイディアファクトリーに入社するまえ、いろいろな乙女ゲームをプレイしていた時期があるんです。当時は、「乙女ゲームってすごい」と思って、手当たり次第にプレイをしていました(笑)。なかでも、とくに魅力を感じたのが『華ヤカ哉、我ガ一族』(※4)。設定がすごくしっかりしているのはもちろんですが、最初は攻略対象にゴミだのクズだの罵倒されつつも(笑)、それを乗り越えて愛が芽生える展開がすごいんです。

渡邉 マイナスから始まる恋ですよね。

谷口 だからこそ攻略しがいがあります(笑)。

北野 そうなんです。物語にグイグイ引き込まれてしまいました(笑)。

寺嶋 私が乙女ゲームを知らない人にオススメするなら……『遙かなる時空の中で』(※5)です。最近では『6』をプレイさせていただきましたが、すごく丁寧に作られていて、隙がありません。この作品をいちばんにプレイすると、乙女ゲームの世界を理解していただけるかと思います。

黒蝶のサイケデリカ

ニル・アドミラリの天秤 帝都幻惑綺譚

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