Interview

大原櫻子が主演舞台『Little Voice』でモンローやピアフの名曲を。役と向き合う稽古場での日々について

大原櫻子が主演舞台『Little Voice』でモンローやピアフの名曲を。役と向き合う稽古場での日々について

舞台『Little Voice リトル・ヴォイス』で初の主演を務める大原櫻子。彼女について、歌と芝居を切り離して語ることは難しい。2013年に映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の全国オーディションでヒロインに抜擢された彼女はスクリーンデビューと同時に、劇中バンド“MUSH&Co.”としてCDデビューも果たし、女優として日本映画批評家大賞新人賞を、シンガーとして日本レコード大賞新人賞をダブル受賞。翌年にはソロシンガーとしての活動を始め、15年末にはNHK『紅白歌合戦』への出場を果たし、昨年は初の日本武道館公演(追加公演含め2デイズ)も開催。
女優としては、10代最後の年である2015年に月9ドラマ『恋仲』に出演、昨年1月には地球ゴージャスプロデュースのミュージカル『The Love Bugs』で初の舞台にも挑戦。
楳図かずお原作ミュージカル『わたしは真悟』に続き、3作目となる本作で自身の歌声で自分の人生を切り拓いていく少女〈リトル・ヴォイス〉を演じる彼女は、自身の歌に、芝居にどう向き合っているのか。歌稽古を終えたばかりの彼女に話を聞いた。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 冨田望


マリリン・モンローが一番難しい。「すげえな、マリリン・モンロー!」って

稽古の調子はいかがですか?

いいスピードでやらせていただいていて、すごく順調です。(取材日時点で)本番までまだ1ヵ月近くあるのに、一幕はほとんど終わって、二幕目に入っていて。ここまで進んだ稽古は初めてですね。でも、今日のように、歌ったり踊ったりするのは(出演者の中で)私ひとりだけなので、ちょっと寂しいです(笑)。

(笑)そうですよね。歌うのはリトル・ヴォイスだけだから。舞台3作目にして、初の主演というのはいかがですか?

いや、大役をいただいたのに、全然みなさんに主演のようには振る舞えてなくて、ごめんなさいっていう感じですね。昨年の12月からひとりで先に歌稽古が始まったので、そういう意味では主演なんだなって感じることもありますけど、私がこれまでお世話になってきた主演の方のようにはできていないので、あんまり実感ないですね。

これまでの2作はご自身にとってどんな経験になってますか?

最初の『The Love Bugs』は歌あり、ダンスあり、芝居ありのミュージカルで、地球ゴージャスさんはエンターテインメント性の高いカンパニーでもあったので、ただただ楽しかったですね。『わたしは真悟』はミュージカルといえども芝居の要素が強くて、アートの世界でもあって。しかも、海外の演出家さんというのもあったので、ある意味、演出家さんに頼り切らずに自分たちで作り上げていくんだっていう責任感みたいなものが同世代のキャスト全員にあったんです。それぞれで勉強になったんですけど、今回はミュージカルではなく、ストレートプレイで。日澤(雄介)さんという演出家さんと、安蘭(けい)さんや高橋(和也)さんはじめ、ベテランの方に囲まれながら、これまでとは違う、いい意味でのプレッシャーもあるし、私にとっては新しい挑戦だなって感じています。

リトル・ヴォイスという役柄に関してはどう感じてますか? 自分の殻に閉じこもって部屋から出られない少女というのは、大原さんのイメージとは真逆に思えますが。

たしかにずっと喋らないでいると「あー!」って大声出したくなるときもありますけど(笑)、実は私、家だと結構、喋らないタイプなんですよ。だから、素に近くはないけど、かけ離れているというわけでもなくて。

家族と仲が良くて、友達も多くて、いつも笑顔で明るい印象があるから。

そうですね。彼女は父親がいないので環境も違うし、もしも私が同じ状況に陥ったら、部屋に引きこもらずに、グレてるだろうなと思います(笑)。そういう意味では、想像しても想像できない範囲ではあるんですけど、脚本を読んだときに、やっぱり同じ人間なんだなって思ったんですよね。

どんな部分で共通点を感じました?

すごく多面的なところですね。きっと人間誰しもが、自分は多重人格なんじゃないかって思う瞬間があると思うんですよ。私も、お仕事を始めたばかりの頃、会う人会う人に「おっとりしてそう」って言われたんですね。でも、実際は超ハキハキしているし、全然女の子っぽさもないし、決していつもおしとやかなわけではない(笑)。何を見てそれを思ったんだろうな?と不思議に感じたけど、その人たちにはそう見えたわけで、私の中にもきっとそういう部分があったんだと思うんですよね。うまく言えないですけど、私は性格的にアップダウンが激しいので、怒るときはすごい怒っちゃうんですけど、落ちてるときの私は、リトル・ヴォイスに似てるのかなとも思います。あと、無口っていうと、一見すると感情が乏しい子のように思うかもしれないですけど、彼女は表に出しにくい性格なだけで、本当は感情豊かな子だと私は思っているんです。そこは、とても人間らしいし、当たり前だけど、自分とも似てるなって感じますね。

古いレコードを聴いて、往年のシンガーたちの歌を完璧にマスターしていくところはどうですか?

そこも似てるのかなって思いました。私は普段の音楽活動ではひとつの曲に対して、自分の中でその曲の主人公に合う具体的な友達や家族の顔を思い浮かべながら歌っているんです。そうすることで、曲によって全然違う色を伝えていけたらいいなと思っていて。ある意味、色を変えているというか。その世界観の仮面を被るようにして歌っているので、ジュディ・ガーランドやマリリン・モンロー、ビリー・ホリディやエディット・ピアフの仮面を被って歌う彼女のスタンスは似てるなと思います。

様々な名シンガーになりきって歌うんですよね。歌い方や姿勢も変えながら。

そうですね。いろんな動画を見たりして研究はしているんですけど、すごく大変ですね。今まではどういう歌い方をしたら、喉を傷めずに長くライブができるかということを考えていたんですけど、今回はそうは言っていられないというか、そのまま歌うと大原櫻子になってしまうので。2月から3月は、もう、一日も喉が痛くない日がないというくらいで、結構、精神的にきましたね。音楽活動も並行していたので「どうしよう」ってめちゃくちゃ不安な日々でした。ただ、最初は、耳で聴いたときに似てるようにと、声帯的に似せるところから入ったんですけど、今は内面や表情を重視してやっているので、だいぶ、喉はラクになってきました。それでも、通してやるのは、現状では一日一回が限界ですね。