LIVE SHUTTLE  vol. 138

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The Wisely Brothersの豊かな表現力と個性的なソングライティング・センスに酔った夜

The Wisely Brothersの豊かな表現力と個性的なソングライティング・センスに酔った夜

The Wisely Brothers HEMMING UP! TOUR
2017年4月26日 TSUTAYA o-nest

今年3月に1st EP「HEMMING EP」をリリースした3ピース・ガールズバンド、The Wisely Brothersが4月26日(水)、東名阪リリースツアーの東京公演をTSUTAYA O-nestで開催した。「HEMMING EP」はプロデューサーに片寄明人(GREAT3)、エンジニアに得能直也(ceroなど)、マスタリングにはBjork、Sigur Rosなどを手がけたMandy Parnellを迎えて制作。ネオアコ、ギターポップ、オルタナなどをごく自然に内容した彼女たちの音楽センスをバランス良く描き出すことに成功している。そしてこの日のライブでも3人は、その瑞々しい音楽性と豊かな表現力をしっかりと示してみせた。

開演前のBGMはFrankie Cosmosの「Sappo」、Softiesの「It’s Love」、映画「Sing Street」より「A Beautiful Sea」など。もちろん、彼女たちの趣味が反映された選曲だ。会場が暗転すると、3人のライブ前の様子(パンツの裾を切ったり、Tシャツの袖をまくってみたり)がスクリーンの映し出される。そしてKaren O&The Kidsの「All Is Love」とともにメンバーがステージに登場。「こんばんは。The Wisely Brothersです!」(真舘晴子/Gt&V)と笑顔で挨拶して、1曲目の「八百屋」を演奏する。USインディーポップのテイストを感じさせるバンドサウンドのなかでフェミニンな雰囲気のボーカルが広がり、満員の観客がゆっくりと身体を揺らし始める。さらに「イチ、ニ、サン、シ!」という真舘のカウントとともに「トビラ」。軽やかなポップチューンとオルタナ的なロックンロールを融合させたアレンジが楽しい。そして「HEMMING EPというタイトルは、じつはこの曲から来ています。どこにあるかわかりますか?」(真舘)と「アニエス ベー」を披露。「久しぶりに履いたアニエスべー」と“あなた”との距離感を対比させたこの曲は、彼女たちの個性的なソングライティング・センスを端的に示していると思う。

3人の的確な演奏も印象的だった。“ギターポップ”“インディーポップ”と言われるバンドは演奏が上手くない場合も多いが(そして、その“へたうま”感がバンドの個性だったりもするが)、彼女たちのアンサンブルには安定感があり、楽曲の魅力がしっかりと感じられたのだ。楽曲に彩りを与える渡辺朱音(Dr)、和久利泉(Ba)のコーラスも素晴らしい。

「久しぶりのツアーで、各地のおいしいものを食べて食べて、また食べて。ツアー中はいつも太ってる気がする…」「短い時間なんですけど、ワンマンなので懐かしい曲もやりつつ。最後まで楽しんでいってください」(真舘)というMCを挟み、ライブは後半へ。

まずは昨年リリースされた2ndミニアルバム「シーサイド81」のリード曲「メイプルカナダ」。抒情性と鋭さを兼ね備えたギターフレーズ、メロディアスなベースライン、徐々に力強さを増していくドラムがひとつになったこの曲からは、バンド固有のグルーヴが既に生まれつつあることがはっきりと伝わってきた。また「もしも手が触れ合ったあなたはこっちきて」と歌う真舘のボーカルも強く心に残った。ビートルズ、スティーヴィー・ワンダー、ジャン=リュク・ゴダール、グザヴィエ・ドランなどをフェイバリットに挙げ、そのセンスの良さがクローズアップされている彼女だが、その中心にあるのは“音楽を通して、この気持ちを表現したい”という切実な欲求なのではないか。「メイプルカナダ」における感情豊かな歌声を聴いていて、そんなことを思った。

その後もThe Wisely Brothersの多彩な音楽性を体感できる場面が続く。The Velvet Undergroundの「Heroin」をポップに転換したような雰囲気の「hetapi」、シンプルかつストレンジなコード構成と憂いを帯びたメロディがひとつになった「Thursday」、「ふたりの息は消えそう/でも見つけたいの」というフレーズが印象的なギターロック「waltz」。そして、本編の最後は「『HEMMING EP』を作ったことで、いろんな人の気持ちを前よりもグッと近く感じられてる気がして。私たちは音楽を通じて、愛情を知っていくんだなって思っています」(真舘)という言葉に導かれた「サウザンド・ビネガー」(「HEMMING EP」リード曲)。洋楽テイストの華やかで切ないメロディライン、好きな男の子に対する純粋な思いを描いた歌詞が共存する曲は、このバンドの特徴——質の高いポップセンスを日常的なシチュエーションの歌として昇華させるーーをもっともわかりやすく体現していると思う。

この後、彼女たちは「hosioto’17」(5月27日/岡山県井原市)、「YATSUI FESTIVAL!2017」(6月17日、18日/渋谷)、「ONE Music Camp 2017」(8月26日/兵庫県)などのイベント/フェスに出演。ナチュラルでキュートな佇まい、海外のインディーポップ・シーンとも重なる音楽性、聴き手の日常を彩る歌を兼ね備えたThe Wisely Brothersのはここから、さらに幅広いリスナーを惹きつけることになるはずだ。

文 / 森朋之 撮影 / Hina Ishido

The Wisely Brothers HEMMING UP! TOUR
2017年4月26日 TSUTAYA o-nest

SET LIST
1.八百屋
2.トビラ
3.アニエスベー
4.鉄道
5.転がるレモン
6.peanuts
7.オリエンタルの丘
8.メイプルカナダ
9.hetapi
10.Thursday
11.waltz
12.サウザンド・ビネガー
en1.モンゴル
en2.アンニュイ

その他のThe Wisely Brothersの作品はこちらへ

ライブ情報

5月20日(土) make a sandwich (真舘晴子弾き語り出演)
5月27日(土) 「hoshioto’17」(ホシオトジュウナナ)
5月28日(日) いつまでも世界は…第六回
6月17日(土)、6月18日(日) 「YATSUI FESTIVAL! 2017」 
8月26日(土) ONE Music Camp 2017 
*詳細はオフィシャルサイトで
http://thewiselybrothers.tumblr.com/live

The Wisely Brothers

都内高校の軽音楽部にて結成。真舘晴子:(Gt.Vo)、和久利泉 (Ba.Cho)、渡辺朱音(Dr.Cho)からなるオルタナティブかつナチュラルなサウンドを基調としたスリーピースガールズバンド。2014年下北沢を中心に活動開始。2017年1月7inchアナログ「メイプルカナダ」リリース。2017年3月「HEMMING EP」リリース。2017年4月「HEMMING UP! TOUR」開催。

オフィシャルサイトhttp://thewiselybrothers.tumblr.com

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