LIVE SHUTTLE  vol. 135

Report

藤井フミヤの新しい表現領域。シンフォニックコンサートで「ここでしか聴けないフミヤ」に出会う

藤井フミヤの新しい表現領域。シンフォニックコンサートで「ここでしか聴けないフミヤ」に出会う

藤井フミヤ meets 西本智実 PREMIUM SYMPHONIC CONCERT
2017年4月22日 東京文化会館大ホール

オーケストラのメンバーが座るスペースを囲むように、ステージの周囲には反響板が置かれている。藤井フミヤの普段のライブでは見ない光景だが、オーケストラとのライブも回を重ねて、すっかりおなじみのものになった。今回の“藤井フミヤ meets 西本智実 Premium Symphonic Concert”は、上野公園内にある東京文化会館で初日を迎える。新緑の美しい公園を見渡せるロビーには、開演を待つ女性オーディエンスがあふれ、ひときわ華やいでみえた。

定刻に楽団員がステージに入ってくる。奥にはパーカッション、左手にはハープがセットされている。楽器を見ているだけで、これから始まるライブに対する期待が高まる。指揮者の西本智実がステージの中央に進み、指揮台に上がると、まずはフミヤの曲をモチーフにしたインストゥルメンタルが始まった。今回のツアーのために新たにアレンジされた作品だ。デリケートなサウンドに、会場に緊張が走る。

序曲が終わると、フミヤがシンプルだがゴージャスなタキシードに身を包んで登場。大きな拍手が起こる。ステージに立つフミヤが、いつになく緊張しているように見える。

西本は世界を舞台に活躍している指揮者で、“Premium Symphonic Concert”に今回初めての登場となる。“Premium Symphonic Concert”は、単にフル・オーケストラをバックに歌うという“企画モノ”ではなく、ボーカリスト・フミヤの新しい表現領域を切り拓いてきた。「ここでしか聴けないフミヤ」に出会うことのできる、人気のシリーズ・ライブになった。そこに世界的指揮者が参入してきたのだから、ファンは興味を掻きたてられたに違いない。しかし、その分、フミヤと西本が大きなプレッシャーを感じてもおかしくない。そして、2人ともプレッシャーを力に変える術を心得ている実力派だ。初日の緊張感が有効に作用して、この日のライブはとても感動的なものになった。

西本の指揮は繊細なサウンドを生み出す。たとえばこれまで指揮を取ってきた大友直人のサウンドはダイナミックで、リズムの立ったナンバーに関して素晴らしい効果を発揮していた。一方、西本は「夜明けのブレス」などでロマンティックな楽曲の解釈に優れていて、フミヤも細心の注意を払ってボーカルを組み立てていく。最初のうちはそれが少し窮屈に感じたが、実はそうではなく、オーケストラに精緻に寄り添うことで、今まで見えなかったメロディの美しさを表現することになる。ライブの第1部が終わる頃、フミヤはリラックスし始め、第2部では西本とのコラボレーションの成果が顕われ始めた。

今回のコラボでもうひとつの注目点は、フミヤと西本がクラシックの名曲を一緒にリメイクしていることだ。イタリアの作曲家ドナウディの歌曲「ああ愛する人の」を元にして、フミヤが作詞し、西本が作曲した「あなたからの手紙」が生まれた。

「今回、2人で曲を書きました」とフミヤが言うと、「フミヤさんは高音の声がいいので、ドナウディのメロディを少し高く変えました」と西本。「あれっ、そうなんですか? 高くて、歌うのが大変なんですけど」とフミヤが応えると場内から笑いが起こる。西本はフミヤの歌声をよく知っている。もしも古典様式の歌曲をフミヤが歌うのなら、どうすればより魅力的になるのか考えた上でメロディをアレンジしたのだろう。ギリギリの高音を要求されたフミヤが、頑張って実現したコラボは絶妙の出来。それが楽しめるのも、今回の特長だろう。

この日、僕が感動したのは「消えないキャンドル」だった。この曲は昨年リリースされたアルバム『大人ロック』に収録されているもので、フミヤの最新楽曲が早くもシンフォニック・バージョンで聴ける幸運に感謝したものだ。

アンコールではチェッカーズの懐かしい名曲も披露された。そしてすべてが終わった後、フミヤがオーケストラに合図して突然「ハッピーバースデイ」を歌い始める。オーディエンスもすぐに一緒に歌い始める。そう、この日は西本の誕生日だったのだ。シークレットだったらしく、驚いている西本にフミヤが赤い薔薇の大きな花束を手渡す。「プレゼントは後でアルコールをたんまりと!」とフミヤが笑う。花束を抱えた西本が、フミヤと客席に嬉しそうに一礼したのだった。

スタンディング・オベーションの客席からの拍手が鳴りやまない。僕の後ろの席の女性オーディエンスが、「素敵過ぎる!」とひとり言のように声をもらす。拍手はオーケストラの最後の一人が退場するまで続いた。本当に素敵なライブだった。

文 / 平山雄一

ライブ情報

billboard classics
藤井フミヤ meets 西本智実
PREMIUM SYMPHONIC CONCERT

5.07(日) 福岡県 福岡シンフォニーホール(アクロス福岡)※残席僅少5.16(火) 大阪府 フェスティバルホール 
5.17(水) 大阪府 フェスティバルホール ※完売
5.20(土) 東京都 東京文化会館大ホール ※完売
5.21(日) 東京都 東京文化会館大ホール ※完売

公演公式HPhttp://billboard-cc.com/classics/ff-meets-nishimoto/

西本智実

イルミナート芸術監督兼首席指揮者、ロイヤルチェンバーオーケストラ音楽監督兼首席指揮者、日本フィルミュージックパートナー。大阪音楽大学客員教授、松本歯科大学名誉博士。平戸名誉大使第1号、大阪国際文化大使第1号。 
名門ロシア国立響及び国立歌劇場で指揮者ポストを外国人で初めて歴任、世界約30ヶ国の名門オーケストラ、名門歌劇場、国際音楽祭等より指揮者として招聘。2013年よりヴァチカン国際音楽祭に毎年招聘され、2014年にはヴァチカンの音楽財団より【名誉賞】が最年少で授与。受賞多数。
2007年ダボス会議のヤンググローバルリーダーに選出。2015年エルマウ(ドイツ)・2016年伊勢志摩G7サミットに向け、日本政府が海外へ日本国を広報するテレビCM及び日本国政府公式英文広報誌に国際的に活躍している日本人として起用。ハーバード大学院に奨学金研修派遣され修了。   BSジャパン「ミステリアス・ジャパン」(毎週木曜日1729〜放送)のナビゲーター、音楽・指揮を務めている。また、NHKラジオ第一『NHKマイあさラジオ「サタデーエッセイ」』レギュラーゲスト。

オフィシャルサイトhttp://www.tomomi-n.com/

藤井フミヤ

1962年7月11日、福岡県生まれ。’83年 チェッカーズとしてデビュー。’93年に「TRUE LOVE」をリリースし、以降ソロアーティストとして活動。2016年、4年振りとなるオリジナルアルバム「大人ロック」をリリース。9月より2年振りの全国ツアー「Fumiya Fujii CONCERT TOUR 2016 大人ロック」を開催し、昨年、年末には福岡でのクリスマスライブ、日本武道館でのカウントダウンライブを行った。2017年は、4月から『藤井フミヤ meets 西本智実 PREMIUM SYMPHONIC CONCERT』がスタート。また、20TH ANNIVERSARYを迎える弟の藤井尚之とのユニット・F-BLOODの活動も。6月にアルバム発売、9月から全国ライブハウスツアーが決定している。

オフィシャルサイトhttp://www.fumiyafujii.net

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