Interview

YOUR SONG IS GOODがたどり着いた新境地とは?さらにサイトウ“JxJx”ジュンのハイレゾ5選!

YOUR SONG IS GOODがたどり着いた新境地とは?さらにサイトウ“JxJx”ジュンのハイレゾ5選!

前作『OUT』でダンスミュージック主体のバンドサウンドにシフトチェンジを果たしたインストゥルメンタルバンド、YOUR SONG IS GOOD。3年半ぶりとなる通算6作目の新作『Extended』は、現行のダンスミュージックとレゲエやクンビア(コロンビアの伝統音楽)といったルーディーなルーツミュージックを溶かし込んだグルーヴが大きなうねりを生み出すアルバムだ。フロントマンのサイトウ“JxJx”ジュンが試行錯誤を重ねてたどり着いたバンドの新境地について語ってくれた。

取材・文 / 小野田雄 撮影 / 呉屋慎吾


お酒がおいしく飲めそうな雰囲気を活かした楽曲作りからスタート

YOUR SONG IS GOODは、お酒がおいしくなるような、ルーツミュージックの旨味を凝縮した作風から、2013年の前作『OUT』では生演奏のダンスミュージックへと大きくシフトチェンジしましたよね。

そうですね。前作『OUT』では、ダンスミュージックを土台に、直感的に思いついたアイデアをあれこれ試したので、そこにはいろんな要素が入っていて。それを踏まえて、今回のアルバム『Extended』は制作を始めるときに前作のどの部分を伸ばしていこうかっていうことを探りました。前作では具体的なメロディやフレーズを極力用いず、そのミニマルな断片を再構築して、それを生演奏するのが楽しかったんですけど、ミニマルな方向性を究極に推し進めたら、もはやYOUR SONG IS GOODである必要がなくなってしまうな、と。じゃあ、どうしようと考えたとき、ルーツミュージックのおいしいフレーズやいわゆるお酒がおいしく飲めそうな雰囲気を活かした『OUT』以前の音楽性をどうにか活かせないかという考えになったんです。

さまざまな音楽に触れることで改めて気づいたレゲエとダンスミュージックの相性のよさ

新作アルバムは、具体的にどこから着手したんですか?

2016年3月に旅行でハワイに行ったんです。現地のDJクルー、アロハ・ガット・ソウルのメンバーに会いに彼らのパーティに行ったら、ありがたいことにDJのロジャー君が前作アルバムに入ってる「The Cosmos」をかけてくれたんですけど、テンポや醸し出す空気といった部分で「あれ? もしかしてこの曲はハワイに合わないかも……」って思ったんですよ(笑)。そこでYOUR SONG IS GOODは東京の音楽をやっているんだなということに気づかされると同時に、次の作品でやるべきなのは、ハワイにも合いそうな、ゆるくほどけた要素なんじゃないかって。そこで、夏にアナログでリリースした「Waves」を形にするところから、アルバム制作に取りかかりました。

メロウなバンドアンサンブルが波のように寄せては返す「Waves」はレゲエのゆったりしたリズムが下敷きになっていますね。

ハウス、テクノ、ディスコを聴くようになってから、以前から好きだったレゲエとそうしたダンスミュージックの相性がいいことにあらためて体験として気づけたと言いますか、結果、新しい角度からレゲエが楽しめるようになったんですよね。しかも、リズムの強度と同時にゆるさも内包している音楽だし、生演奏にも合っているフォーマットなので、YOUR SONG IS GOODがもともともっているオーセンティックな要素と『OUT』以降の新しいアイデアを融合させるうえで、結果的にレゲエは大きな役割を果たしましたね。

いろんな要素をミックスすることでようやく居心地がよくなる人間の集まりだった

そして、コロンビアの伝統音楽であるクンビアの要素を盛り込んだ「Double Sider」、ロックステディの甘さが広がる「Palm Tree」、軽快なジャズファンク調の「On」にしても、多彩なダンスミュージックと融合することで、YOUR SONG IS GOODらしいオリジナリティが際立っています。

メンバーの間では、そろそろもっと素直にやりたいよねって話したりもしているんですけど、いざやってみると、なんか違うよねっていうことになる。やっぱり、特定のジャンルの音楽をそのままやるのは自分たちにとって、どうもしっくりこないみたいで。逆に言うと、いろんな要素をミックスすることでようやく居心地がよくなるという、いまだにYOUR SONG IS GOODはそういう面倒臭い感覚をもった人間の集まりだったんですよね(笑)。

前作以降、YOUR SONG IS GOODはインストゥルメンタルを主軸に、歌やメロディではなく、絵や映像を喚起させるアレンジや曲の展開のストーリー性がアルバムを楽しむガイド役を務めていますよね。

僕が好きなインスタグラムのアカウントに、サーフィンのロングボードでゆるやかな波に乗っている数十秒の動画をアップしている人がいて。僕はサーフィンをやらないんですけど、その動画からサーフィンの要素というよりは、動きそのものに惹きつけられるものがあったんですよね。例えば、それはスピード感だったり、波しぶきの強さやうねりだったりするんですけど、動画から抽出したそういう抽象的な感覚とリンクするような作品にしたかったんです。それから前作は、自分のなかで夜を意識させる作品だったのに対して、今回は午前中の雰囲気も作品で表現してみたくて。そのためには孤独な心に響くような、エモーショナルな要素をあえて排除してみたり、コードだったり、フレーズで爽やかさを増してみたり。僕はパンクやハードコアがルーツにあって、出発点のテンションはだいぶ高めなところから始まっている人間なんですけど、ここに来て、ようやく力の抜き方がわかったというか(笑)。そして、力を抜くことで、そこに余白が生まれて、その余白が聴き手の想像力を刺激するという、そういう楽しみ方をこのアルバムで味わってもらえたらうれしいですね。

サイトウ“JxJx”ジュンが聴き込んだ“名盤”ハイレゾ音源レビュー

ルーツであるパンク、ハードコアからスカやレゲエ、カリプソといったカリブ海音楽、近年傾倒しているというディスコやハウス、テクノまで、リスナーとしても日々音楽を深く掘り下げているサイトウ“JxJx”ジュン。ハイレゾ初体験だという彼にアルバムをセレクトしてもらい、テスト・リスニングを敢行。長らく愛聴してきたという古今東西の名盤、その高音質のハイレゾ音源は彼の耳にどんな響きを届けてくれるのだろうか?


スティーヴィーがスタジオで歌っている臨場感がすごい!

ふだん、音楽はどんなメディアで聴かれることが多いですか?

アナログにテープ、CD、MD、データ……世代的にメディアの変化、進化はリアルタイムで体験しているんですけど、ここ何年も僕が追いかけている海外のダンスミュージックは音質にこだわった新譜のアナログが毎週お店に入荷しているので、アナログで聴くことが多いですね。

そして、今回、ハイレゾ初体験というJxJxさんには聴きたいアルバムを選んでいただきました。

今回のセレクションは、世間的にも名盤と評されていて、個人的に何度聴いたか分からないくらい聴いた作品たちです。

では、まずはスティーヴィー・ワンダーのアルバム『Innervisions』から。

スネアドラムの裏側に張ったスナッピーのゴーストノートがはっきり聴こえるし、スティーヴィーがスタジオで歌っている様子が想像できる臨場感があって……、これハイレゾ音源スゴいですね! そして、もともと素晴らしいと思っていた演奏ですが、情報が一切損なわれてないのか、さらにものすごいグルーヴに聴こえます。あと、名曲「Golden Lady」のイントロの飛び音フレーズも以前は「あ、鳴ってるな」くらいにしか思ってなかったんですけど、ハイレゾで聴くと、音の揺れがはっきりわかって感動しましたね。

Stevie Wonder
Innervisions


ギターのアレンジの凝り具合がよくわかる

次はニューヨークパンクの名作、テレヴィジョンの『Marquee Moon』。

プリミティヴな音楽であるパンクを高音質のハイレゾで聴くというのも倒錯的でおもしろいですね(笑)。でも、1曲目の「See No Evil」のドラムに繊細なリヴァーブのエフェクトが足されていることに初めて気づきました。あと、テレヴィジョンのこのアルバムはギターのアレンジがおもしろくて大好きなんですけど、その凝り具合がよくわかるし、ギターの音の立ち上がり方が生々しくて、スタジオでの演奏に立ち会ってるかのように聴こえるところが最高ですね。音の解像度の高さはもちろんなんですけど、音と音の間の残響が聴こえることによって、臨場感が増しているんだと思います。

Television
Marquee Moon


ハイレゾでは演者の意図まで見えてくる

ニューヨークパンクに対して、ロンドンパンクのクラッシュはいかがでしょう?

『London Calling』は何回聴いたかわからないくらい聴いたアルバムなんですけど、これはベーシスト、ポール・シムノンのプレイがこれまで以上に鮮明で、彼がピックで弾いているときの癖までよくわかりますね。このアルバムでは、ロカビリーとかダブとか、クラッシュのルーツミュージックを掘り下げているんですけど、彼のベースからはパンク感がより伝わってくるおもしろさがあります。そして、「The Guns of Brixton」の冒頭で聴こえるチリ・ノイズとか「Rudie Can’t Fail」で聴こえるシェイカーの鳴りもいままではまったく気にせず聴いていたんですけど、ハイレゾではそういうディテールを浮き彫りにして、それによって演者が何をやろうとしていたのか、その意図が見えてきますよね。いいのかな、こんなにレコーディングの秘密を暴いてしまって(笑)。

The Clash
London Calling


オルガンの鳴りの素晴らしさが染みる

では、JxJxさんと同じオルガン奏者、ラリー・ヤングの『Unity』を聴いた感想は?

オルガンって、ある意味空間系の楽器なんですけど、ほかの楽器のアタック感のある解像度の高い音とのコントラストが鮮明ですし、鍵盤のタッチに接点ノイズがあるんですけど、そこもかなり鮮明で。それこそがハモンドB-3オルガンの気持ちいい部分なんですけど、それが小さい音で弾いてるときにもしっかり聴こえてくる。名匠ルディ・ヴァン・ゲルダーが録ったこのアルバムは、個人的にオルガンジャズのアルバムのなかでも録音が素晴らしい作品だと思っていましたけど、ハイレゾで聴くと、さらに鳴りの素晴らしさが染みますね。

Larry Young
Unity


よく知っている曲から新たな聴きどころが生まれてくる

そして、最後のドクター・ジョン『Dr.John’s Gumbo』は、ニューオリンズR&Bの金字塔です。

今回、聴いた5枚ではいちばん印象が激変して、本当に驚きました。入ってる音全てが鮮明に聴こえるし、コーラスを含めた音の広がりがすごい。「Mess Around」が地味にオルガンを重ねていたのも初めて気づきましたし、ドクター・ジョンの声の歪みがただのダミ声ではなく、特別な鳴りが含まれていることもよくわかります。このアルバムはハイレゾで聴いてみるのをおすすめしたいですね。

JxJxさんが長らく愛聴してきた作品をハイレゾで聴いてみていかがでした?

ハイレゾは聴き親しんできたアルバムをより高解像度で改めて楽しむ機会として最高ですよね。そして、聴き親しんでいるアルバムであっても、よく知ってると思ったら、大間違いというか、以前は聴き取れなかった音がきっちり聴こえて、新たな聴きどころが生まれたり、まだまだ、知らないことがいっぱいあって、これは先が長いぞ、と(笑)。

Dr. John
Dr. John’s Gumbo

ライブ情報

“6th ALBUM “Extended”Release ONEMAN TOUR”

5月20日(土) 愛知 名古屋CLUB QUATTRO
5月28日(日) 宮城 仙台enn 2nd
6月03日(土) 大阪 梅田Shangri-La
6月11日(日) 福岡 Early Believers
7月01日(土) 東京 渋谷WWWX

YOUR SONG IS GOOD

1998年東京で結成。通称YSIG。はじまりはパンクロック、今はあえて言うならダンス音楽を演奏する7人編成のインストゥルメンタルバンド。フロントマンのサイトウ“JxJx”ジュン(Organ, Vo)はDJやMCとしても活躍している。
オフィシャルサイトhttp://yoursongisgood.com

YOUR SONG IS GOODが掲載されているハイレゾ本

mora PRESENTS Hi-Res Bible II
ソニー・ミュージックエンタテインメント(著)
1カ月(5/9~6/8)限定予定 ¥100(込)
以後 ¥278+税

コンセプトは、ハイレゾをもっと身近に。
高音質のハイレゾをいつでも楽しみたい人へ。
ハイレゾがあるライフスタイルを楽しむための本。
アーティストが語るハイレゾの魅力から、ハイレゾ対応モデルのプロダクツレビュー、マスターピースなアルバム100枚を紹介。

■土岐麻子[Cover Interview]
シティポップの女王が語るハイレゾの魅力
■YOUR SONG IS GOOD[Interview]
初めてのハイレゾ体験 名盤をハイレゾで聴いてみた!
■Hi-Res PRODUCTS REVIEW
ライフスタイルに溶け込むハイレゾ対応モデル

ほか

編集部のおすすめ