Interview

PELICAN FANCLUB 「妄想の世界にどっぷり浸かってほしい」という自信作とバンドの展望を訊く

PELICAN FANCLUB 「妄想の世界にどっぷり浸かってほしい」という自信作とバンドの展望を訊く

バンドは、キャリアを積み重ねていくなかで、飛躍的に音楽性を高める時期を何度か経験する。2012年に結成された4人組、PELICAN FANCLUBは、着実にキャリアを積み重ね、いま最初の飛躍のときを迎えたようだ。
充実の1st フルアルバム『Home Electronics』を完成させたメンバー全員に、ここに至るまでの道のりといま感じている手応えの大きさを聞いた。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 鈴木圭


最初に音を出したときに、何も言葉を交わしていないのにビビッと電流が走った感じがあったんで。“これでPELICAN FANCLUBだ”と確信しました

そもそもは、どんなイメージでバンドを組んだんですか。

エンドウ 中学生の頃から僕とカミ(カミヤマリョウタツ)はずっと一緒で、学校が終わって彼の家の前でずっと話したりしてたんですけど、「こうこうこうで、こういうふうにデビューして、こういうふうになってる!」みたいなビジョンをずっと話してました。

でも、そのときはまだバンドを組んでいないんですよね(笑)。

エンドウ 組んでないです(笑)。でも、見えてたんです。“僕はこれだけ音楽好きだし…”という音楽に対する熱量でビジョンが出来上がってくという感じがあって、それで20歳前くらいにこのバンドを組んだんですけど、そのときにはそれこそ中学の頃から思い描いていたことを実現させたいという気持ちもありました。このバンドを組めたことに対する感謝の気持ちもありましたけど、でも僕のなかでは“そうだよな”っていう感じで。“自分にはこれだけ熱い思いがあったから、むしろこれくらい来なきゃダメでしょ”っていう。

エンドウアンリ(Gt&Vo)

つまり、このバンドを組むときのエンドウさんの気持ちは、「僕の熱量に賛同する人、この指とまれ」みたいな感じですか。

エンドウ そうです! ただ、元々はドラムの人がいまとは違っていて、それこそ熱量の差があったりして解散危機に陥った時期があったんですけど、そのタイミングでシミくん(シミズヒロフミ)が入って体制が整って、メンバーの熱量が同じになって、そこから今回のアルバムに向かってだんだん上がってきた感じですね。

「この指」にとまったほうは、どういう意識だったんでしょう?

カミヤマ 最初は、友達と遊びでやってるというような感覚だったんです。エンドウと、あともう2人と4人でコミック・バンドみたいなことをやってたんですけど、結局僕とエンドウだけが残って、そこでエンドウが言った「熱量」を持ち合わせた二人なんだなと気づいたっていう。その時期にクルちゃんと出会って、始めた時点でもうバンドの熱量は相当ありましたね。“やるぞ!”という感じでした。

カミヤマリョウタツ(Ba)

クルマダ 大学に入ってライブハウスに出入りするようになって、プロというか、そういう大きな舞台を夢見るようになったんですけど、その頃にエンドウとカミちゃんがこの前に組んでいたバンドに出会って、ファースト・インパクトでかっこいいなと思ったんですよ。一緒にやれたら楽しいだろうなと思ったし、“この人となら、もっと広いものが見られるんじゃないか”って。そしたら、お互いのバンドが解散になった時期にたまたま出会って、「じつは一緒にバンドを組みたいと思ってた」という話をしたら、エンドウも「そう思ってた」と言ってくれたんです。

シミズ 僕とクルちゃん(クルマダヤスフミ)は大学が同じで、PELICAN FANCLUBというバンドを始めると聞いて、見に行ったらすごい衝撃だったんですよ。とにかくかっこよかった。下手くそだけどかっこいい(笑)。すごく魅力的だなあと思いました。

どういうところに魅力を感じたんですか。

シミズ 歌のメロディですね。すごく特徴的で。エンドウの独特な感じが出てて、聴いたことがない音楽性だと思いました。それで、当時のデモ音源をずっと聴いてたんですけど、あるとき「ドラムが抜けるんで、サポートでもいいから、ちょっと叩いてみない?」という連絡が来て、それで一緒にスタジオに入ったんです。音源をずっと聴いてたから、練習しなくても叩けたんですけど、それ以上にいきなり“これだ!”という感じがありましたね。

クルマダ 前のドラムが抜けることになって、何人かのドラマーとスタジオに入ったんですけど、どの人もなんかしっくりこないなという感じだったなかで、シミくんは一発目の音を出した瞬間から“ばっちり合ってる!”という感覚がすごくて。

エンドウ 他のドラマーの人とスタジオに入ってたときには、僕のなかで“バンドを続けなきゃいけない”という意識のもとで新しいメンバーを探していた気がするんですね。でも、シミくんと入ったときに“バンドを続けよう”と思ったんです。そこで僕は確信したんですよ。さっきクルちゃんが僕に対して言ってくれたような感覚を、僕はシミズくんに対して感じて、その結果として、メンバーに対してもあらためて“僕は彼らについていきたい”と思えるようになったんです。

初めて集まって演奏したときやバンド名を決めたときとは別に、精神的な意味で“バンドになる”瞬間というのがバンドそれぞれにあると思いますが、この4人のPELICAN FANCLUBにとってのその瞬間というのは、その最初に音を合わせた瞬間だったんでしょうか。

エンドウ 確実に、そのときだったと思います。最初に音を出したときに、まだ何も言葉を交わしていないのに、“これだね”という感じで、僕とカミはビビッと電流が走った感じがあったんで。そのときに“これでPELICAN FANCLUBだ”と確信しましたね。

今回、歌詞の書き方を変えたんです。“君と僕”をテーマにして、聴き手が主人公になれるような書き方を意識しました

このバンドの、曲が出来上がるまでの基本的なパターンは?

エンドウ 元々はスタジオでセッションして作り上げていくやり方だったんですけど、だんだん似たような曲が出来上がるようになってきたんで、元のデモをDTMで作るやり方にシフトしてきました。今回のアルバムでのいちばん典型的なパターンとしては、例えば僕がすべてのパートの入ったものを作って、詞があったらそれも入れて、なければメロディだけのものをみんなに渡します。その後に詞を仕上げるんですけど、その前に詞のテーマ、こういう詞を書こうとしているということを、たとえまだ書けていなくてもメンバーと共有して、メンバー全員が同じ景色を見られる状態にした後でアレンジに取りかかる、という進め方ですね。それは、カミが作る曲に対しても同じようなアプローチの仕方でやっています。

カミヤマ スタジオ作業だと一発で音を鳴らすから、誰が何をやってるか把握できていない部分もあったんですけど、パソコンを使うと誰が何をやっているか全部わかるし、かつ違うアイデアを試すということも簡単で、だから曲も派生みたいな形でどんどん生まれていって、その結果として今回は70曲という数になったんですけど、パソコンを使う制作方法に変わってからずいぶん作業が進めやすくなりました。

いちばん最初の段階で、メンバー全員が同じ景色を見られるようにするのはどうしてですか。

エンドウ (2ndミニアルバムの)『PELICAN FANCLUB』を出したときには、僕にしかわからない曲だったんですよ。歌詞についても僕以外は誰も説明できなくて、僕だけが答えを知っているという状態だったんですが、そうじゃなくて、ひとつの曲に対してみんなが話せるという状態に僕がすごく憧れてたんですね。それに、それくらい僕はメンバーに理解されたかったんです。例えば“空”という言葉を使っても、それぞれにいろんな空をイメージするわけですよね。雲ひとつない空だったり、あるいは曇ってたり。そこを統一して、そこから展開していくということを僕はやりたくて、それでまず景色を共有するということをやるようにしたんです。そうすると、その共有したイメージに関してメンバーがレスポンスをくれて、それで僕はさらに書き進められることになって、その結果としてバンドとしての形がよりクリアに曲として表現できたなと感じています。

歌詞の具体的な内容に関して、メンバーが意見を言うことはあるんですか。

エンドウ よくありますよ。例えば今回のアルバムの「夜の高速」という曲は、僕は運転しないので最初は助手席の目線で詞を書いてたんですけど、「助手席の目線だと頼りない」というダメ出しをもらって(笑)、それで運転席の目線を想像して書き直しました。

クルマダ (3rdミニアルバムの)『OK BALLADE』まではエンドウの歌詞に意見を言うということはあまりなかったんですが、あのアルバムでは歌詞について「こうしたほうが、もっと伝わるんじゃないか」ということをみんなで話し合って作ったんです。その流れのなかで、今回はそれぞれが思う情景をもっともっと伝え合っていきました。

クルマダタスフミ(Gt)

みんなで意見を出し合う前の、大元の歌詞についても聞かせてください。『OK BALLADE』の「記憶について」という曲で♪大事なことはみんな叫んだ♪と歌ったわけですが、大事なことをみんな叫んだ次にどういうことを歌おうとしたんですか。

エンドウ 今回、歌詞の書き方を変えたんですね。いままでは自分の言いたいことを書いていたんですが、今回は「君と僕」をテーマにして、聴き手が主人公になれるような書き方をしたんです。聴き手がいかに感情移入できるかということを今回はすごく意識して、歌詞のなかに出てくる“君”という存在が聴き手にとっての誰かになればいいなと思って書きました。

一つひとつの言葉の転がし方もより自在になった印象があります。

エンドウ それは、意識していました。DTMに取り入れるという作業をすることによって、自分が何をしているか客観的に見られるじゃないですか。そうすると、“じゃあ、こうしたらいいんじゃないか”という作戦みたないものを頭の中で組み立てることができるようになってきて、その結果が「ダダガー・ダンダント」とか「Esper」だと思います。

例えば「Esper」では、「土曜日はどうしたい」という歌詞を、♪ド/ド/ド/土曜日は/ド/ド/ド/どうしたい♪と歌っています。

エンドウ “ド”を言いたかったんですよ(笑)。土曜日という言葉に対して、聴かせたいのは“ド”なんです。例えば、真っ白な紙に黒い点を打ったら、みんな黒い点に目が行くじゃないですか。でも、白のほうが面積は広いわけで、そういう意識と現実のズレを衝くようなことをやりたくて、だからあの部分を聴いたときに♪ド/ド/ド♪の印象が聴き手に残ってれば、僕としてはやったなという感じなんです。

シミズさんが加入するときの、エンドウさんの曲の印象として「歌メロが独特」と話してくれましたが、その頃の楽曲と今回の楽曲は違ってきてるんでしょうか。

シミズ 変わったところもあるし、変わっていないところもあると思います。昔から言葉遊びには自在な感じがあったんですけど、いまはいろんな角度から詩の言葉を選んでる気がしますね。

シミズヒロフミ(Dr)

クルマダ 歌詞の部分で、僕がすごく広がったなと思うのは情景の描き方で、確実に昔よりも曲を聴いていて景色が浮かびやすくなったと思うし、その表現の幅もすごく広がったと思います。それと、例えば「ダダガー・ダンダント」のアタマは♪どっちを選ぶの/君に聞いてるの♪というフレーズですけど、そう言われると聴き手はまず考える頭になるし、そうなると曲に入り込みやすくなりますよね。そういうふうに、引っかかりを作る技を新しくどんどん覚えてるなあと思います。

エンドウ 『OK BALLADE』のときは聴き手に近づきたいと思って書いていたんですね。だから、誰もが共通して持っているようなものを歌おうと思って詞を書いていたんですが、今回は自分が持っている妄想で聴き手にアプローチしたいと思ったんです。とすると、自分の頭の中にある妄想を他人にどう説明するのか?ということを考えることになるんですけど、そこで「Esper」の♪ド/ド/ド♪みたいに、聴いていてちょっと違和感を覚えるような表現を入れると、聴き手の耳に曲がひっかかるじゃないですか。そこから、僕の妄想の世界に入ってきてくれたらいいなと思って、そういう書き方をずっと心がけていました。

聴き手へのアプローチとして、相手に近づいていくことから自分の世界に引き込む方向にシフトしてきたのは、どうしてでしょう?

エンドウ それは、自分の妄想の世界に自信を持ったからだろうし、なぜ自信を持てたかと言えばメンバーみんなでその景色を共有できたからだと思います。みんなが同じ景色を見ながら演奏できるということが一番の自信になるんですよね。

PELICAN FANCLUBという映画を見るような、しかも主役は僕らだけじゃなくて、来てくれるみんなが主役であるようなライブにしたいと思っています

そういうニュー・アルバムを持ってツアーに出かけるわけですが、どんなツアーにしたいですか。

クルマダ 多くの人に届けたいなと思って作った曲たちなので、お客さんと盛り上がれる部分が多いんですよ。しかも、もう全曲とも試聴できるようになっていますから、ぜひライブの前にたくさん聴いていただいて、それで楽しい空間を一緒に作っていきたいなと思っています。

カミヤマ かなり作りこんで音数の多い曲もあるんですけど、ライブではまた違った方法で表現するので、そういう新しい表現をまたできるのがすごく楽しみですね。

シミズ ステージとお客さんのフロアの境界線みたいなものがなくなればいいなと思っていて、お客さんと一緒に盛り上がれたらいいですよね。ライブという場で楽曲を共有して、お客さん自身の曲にもなってくれたらなと思ってます。今からすごく楽しみです。

エンドウ バンド全体で表現したい、という士気を高めて作ったアルバムなので、いままで以上に自分たちが表現したいものを120%表現したいし、お客さんには妄想の世界にどっぷり浸かってほしいと心から思います。PELICAN FANCLUBという映画を見るような、しかも主役は僕らだけじゃなくて、来てくれるみんなが主役であるようなライブにしたいと思っています。

楽しみです。ありがとうございました。

その他のPELICAN FANCLUBの作品はこちらへ

ライブ情報

6月9日(金)愛知・名古屋APPOLO BASE(ワンマン)
6月18日(日)大阪・阿倍野ロックタウン(ワンマン)
6月25日(日)東京・代官山UNIT(ワンマン)
6月30日(金)福岡・福岡graf(対バン有り)
7月2日(日)広島・広島BACK BEAT(対バン有り)
7月3日(月)香川・高松DIME(対バン有り)
7月11日(火)新潟・新潟CLUB RIVERST(対バン有り)
7月12日(水)石川・金沢vanvanV4(対バン有り)
7月13日(木)宮城・仙台enn3rd(対バン有り)
7月14日(金)千葉・千葉LOOK(対バン有り)

PELICAN FANCLUB

エンドウアンリ(Gt&Vo)、カミヤマリョウタツ(Ba)、クルマダタスフミ(Gt)、シミズヒロフミ(Dr)。2012年結成。甘酸っぱいメロディと多幸感、そしてどこかシニカルな歌詞が魅力の、新世代ドリームウェーブ・バンド。これまでに、1枚のシングルと3枚のミニアルバムをリリースしている。2015年11月に渋谷WWWでのワンマン・ライブを満員のなか成功させ、翌2016年6月には“CULT’ URE OF PELICAN FANCLUB”と題した企画ライブを、東京・名古屋・大阪でThe Mirrazをゲストに迎えて開催。同年9月にはDAIZAWA RECORDSの15周年イベント“代沢まつり”でウソツキ、pollyと全国5カ所をまわった。さらに、2017年2月にはAge Factory、パノラマパナマタウンと“GREAT TRIANGLE TOUR 2017”を敢行。5月10日、1st フルアルバム『Home Electronics』をリリースし、6月には東名阪ワンマンを含む7カ所をまわるツアーを行う。

オフィシャルサイトhttp://pelicanfanclub.com

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