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美しき筋肉に刻まれる熱い青春!舞台『男水!』ゲネプロ完全レポート

美しき筋肉に刻まれる熱い青春!舞台『男水!』ゲネプロ完全レポート

日本テレビ初のドラマ&舞台連動企画として始まった『男水!』。1月から3月にかけて放送されたドラマ版は、深夜枠ながら初回3.7%の高視聴率でスタート。そして、いよいよ5月11日(木)よりシアター1010にて舞台版『男水!』がお目見えとなる。水もプールもない舞台でどうやって競泳の世界を表現するのか。注目のゲネプロの模様を完全レポートする。

約2時間の舞台に「凝縮」された少年たちの熱い青春

『男水!』は白泉社・花とゆめ『花LaLa online』で連載中の木内たつやによる同名人気コミックが原作。競泳に高校生活のすべてを捧げた男子高校生たちによる熱血青春ドラマだ。舞台のキャストには松田凌、宮崎秋人、安西慎太郎、赤澤燈、佐藤永典、小澤廉、黒羽麻璃央、池岡亮介、神永圭佑、廣瀬智紀らがドラマ版に引き続き、名を連ねている。

主人公・榊秀平(松田凌)とその幼なじみ・篠塚大樹(宮崎秋人)率いる弱小・東ヶ丘高校水泳部。そして、秀平と大樹のかつての親友である藤川礼央(安西慎太郎)が籍を置く強豪・龍峰高校水泳部。対照的な2つの高校と、秀平、大樹、礼央の失われた絆を軸に物語は進んでいく。

まずは今回の舞台化にあたり、多くのファンが注目したのが、先行放映されたドラマ版との違いだろう。単純計算で、ドラマ版は1話23分×計8回。2時間強の舞台版は、それよりもずっと尺は短い。その中でこの個性豊かな10人のメインキャストの物語をどう立ち上がらせるのか。期待と不安が募った。

結論から言えば、その点において今回の舞台版は大成功と言っていいだろう。むしろ演劇の魅力と可能性を改めて発見する仕上がりだった。

物語は冒頭からトップギアで進んでいく。かつての龍峰エースであり、インターハイ優勝者・川崎亮也(廣瀬智紀)が東ヶ丘高校水泳部のコーチに着任したところからスタートし、スピーディーに場面が展開。部内の混乱、反発、崩壊。そして、横糸として紡がれる秀平、大樹、礼央の因縁。物語に必要なピースを鮮やかに埋めながら、少しずつ舞台版『男水!』の全体像が浮き上がってくる。

ドラマでは描かれなかった各キャラクターの物語が浮き彫りに

何より秀逸なのは、各キャラクターの描き方だ。ドラマ版では、秀平を軸にすべてのエピソードが構築されていたが、この舞台版では秀平の成長を描きつつ、周囲の仲間、そしてライバルたちの心の陰影にもスポットを当てている。

秀平らをかいがいしく(口うるさく?)世話するオネエマネージャーの小金井晴美(赤澤燈)。なぜ晴美がプレイヤーではなくマネージャーの道を選んだのか。そして、一見するとギャグ要素のように見えるオネエキャラクターに潜む心の傷。そうした晴美のバックボーンを克明に描くことで、メガホン片手に仲間たちを応援する懸命さが一層胸を打つ。

滝結太(佐藤永典)&原田ダニエル(神永圭佑)の1年生コンビも同様だ。川崎から「論外組」とまるで相手にされないふたり。特に経験者であり、強豪・龍峰への夢に破れた滝にとって、その扱いは屈辱以外の何物でもなかった。劣等感に苛まされる中、滝のとった選択は、一度でも何か本気になれる場に身を置いた人なら共感し得るものだと思う。そしてそれが滝の人物像をより肉厚なものとし、東ヶ丘の団結力を強固にしていた。

ドラマ版で画面を賑わせた原田のコミックリリーフぶりは、舞台版でも健在だ。誰の目にもとまらないような舞台の隅の方でも逐一細かいネタを入れて笑いを誘う。それでいて単なる三枚目では終わらない。スポーツ万能を自称しながらカナヅチの原田がなぜ苦手な水泳を続けているのか。その答えに、きっと多くの人が原田を愛さずにはいられなくなるだろう。

ライバル校・龍峰メンバーも負けてはいない。本作の魅力は、ライバルはいれど、物語を盛り上げるためだけの悪役はいないということだ。龍峰には龍峰の青春があり、絆がある。中でもこの舞台版で大きくフィーチャーされたのが、優等生の主将・仁科誉(黒羽麻璃央)と、実力ナンバーワンの神宮一虎(池岡亮介)だ。3年生である誉は、OBの川崎とは接点がある。選抜組が幅を利かせる龍峰高校水泳部で普通科出身ながら主将にまで上りつめた努力家の誉。彼が川崎に寄せる感情には、敬意の中に小さな敵対心や現主将としての自負も見え隠れする。こうした微妙な人間関係まで丁寧にすくいとっているところに、舞台版の妙を見た。

一虎もずっとキャラクターに人間味が増した。今や強豪・龍峰の中でも比肩する者はいない実力の持ち主だが、その地位に至るまでには、人知れぬ挫折があり疎外があった。一虎がひとり泳ぐ場面は、競泳とは孤独なスポーツだということを思い知らされる。それと同時に、誉との3年生コンビに、確かな信頼を感じた。

そして、中核を担う秀平、大樹、礼央の友情。川崎と東ヶ丘高校水泳部の対立と結束。秀平と平光希(小澤廉)の戦いも一層ドラマティックに体現されているので、ぜひ楽しみにしていただきたい。特にドラマでは最後まで描かれることのなかった都大会は、すべての試合が白熱のクライマックス。そこには勝者もいれば、敗者もいる。涙の苦さを痛感した者もいるだろう。だが、どんな負けにも意味がある。その先がある。そんなことを、本気の高校生たちが教えてくれた。

その中で、大樹と礼央に挟まれてきた秀平が最後にとった行動は、実に秀平らしいもの。自分のせいで3人の関係が壊れたことに負い目を感じていた秀平がようやく本当の気持ちを見せる名場面だ。座長・松田凌の全身全霊をこめた叫びに、きっと誰もが仲間の素晴らしさ、青春の煌めきを思い出すことだろう。

肉体は嘘をつかない。美しき筋肉に刻まれた役者魂

ここで改めて舞台で競泳を表現することに全身全霊を傾けたキャスト・スタッフ陣に拍手を送りたい。舞台上では若い役者たちの肉体が惜しげもなく晒される。惚れ惚れするような腹筋。力強く盛り上がった胸筋。芸術美のようなしなやかなくびれ。浮き上がる血管。黄色い歓声をあげることを、ある種ためらうような尊さがそこにはある。

それは、その肉体こそが彼らがこの作品にかけた本気の証だからだろう。数ヶ月にわたった水泳訓練。ドラマでは、実際に水中で泳ぎながらの撮影が行われた。厳しく鍛え上げられた彼らの肉体には、たとえもうそこに水はなくても、水中の感覚が染みついている。だから、ほんのひとかき宙をかくだけで、そこに水しぶきが見える。プールが見えるのだ。肉体は、決して嘘をつかない。積み重ねてきた日々が、わずか2時間の物語を「本物」にする。躍動する引き締まった肉体が、それを証明していた。

演劇は、幕が上がればカーテンコールまでノンストップだ。途中にCMが入ることもなければ、勝手に一時停止ボタンを押すこともできない。その分、役者たちが放つ熱は、観客の肌に、心に残り、クライマックスへとその目盛りを徐々に押し上げていく。本作では、時系列をあえてバラバラにしながら、いくつもの場面を多層的に織り重ねて、1本のストーリーに構築している。観客はまるで走馬灯を見ているように彼らの青春を追体験し、いつしか自分の目盛りがリミッターを超えていることに気づく。その瞬間、客席はプールサイドとなり、自らも孤独なスイマーたちを応援するチームメイトの一員となる。だから、こんなにも胸が震え、こんなにも胸が熱くなるのだろう。時空を、熱量を、まばゆい一点の光に「凝縮」したような2時間。それが、舞台版『男水!』の輝きの理由だ。

演劇だから味わえる全身全霊のお芝居を感じてほしい

囲み取材でも、10人のチームワークが随所に見て取れた。「自分がもし女の子だったら、どのキャラクターが好きか」という問いに、安西は「誉ですね」と即決。「(誉は)一途だと思うなあ」とベタ褒めする安西に、演じる黒羽も「そりゃそうよ」と思わず得意顔。廣瀬は晴美、赤澤は川崎を挙げ相思相愛の仲に。赤澤は川崎のツンデレぶりに対して「デレたときにすごくキュンとするんだろうなあ」と熱い視線を送った。一方、松田が「僕、滝ですかね」と告白すると、各所から「それは言いすぎだろ」と総ツッコミ。松田は滝か礼央で迷ったらしく「どちらも絶対に出世すると思います。向上心が高いのと、あとは堅実。これは人生において大切なことだと思います」と理由を説明。滝役の佐藤が「半分ケナされてる気がする…」と腑に落ちない表情を浮かべると、「やっぱ滝やめよ」とあっさり前言撤回し、佐藤を慌てさせていた。

最後に意気込みを尋ねられた松田は「舞台『男水!』という作品の幕が開くことに対し緊張もあり高揚もあり。全キャスト・スタッフがいろんな思いを抱えて今日のゲネプロと明日の初日を迎えると思う」と座長らしい引き締まった表情に。そして「ドラマでは感じられなかった自分たちの生のお芝居」を見どころに挙げ、「自分たちが泳ぎなら全身全霊で絞り出したお芝居を感じていただけると思います。ぜひ見ていただけたら、この世界に入っていただけると思うので、千秋楽までみなさまどうかよろしくお願いします。楽しみにしてください!」と呼びかけた。

舞台『男水!』は2017年5月11日(木)から21日(日)までシアター1010にて上演。大阪公演は2017年5月24日(水)~28日(日)まで森ノ宮ピロティホールにて上演される。また、大千秋楽である28(日)はライブビューイングも決定。2.5次元の代表選手が集まった夢のオールスタープロジェクトのゴールを一緒に応援してほしい。

取材・文・撮影 / 横川良明

舞台『男水!』

【東京公演】2017年5月11日(木)~5月21日(日)THEATRE 1010
【大阪公演】2017年5月24日(水)~5月28日(日)森ノ宮ピロティホール

【原作】木内たつや『男水!』(白泉社『花とゆめ』)
【脚本・演出】吉谷光太郎
【出演】
松田凌 宮崎秋人 安西慎太郎
赤澤燈 佐藤永典 小澤廉 黒羽麻璃央 池岡亮介 神永圭佑
齊藤教兵 奈須田雄大 津嘉山寿穂 櫻井圭佑 上村海成
廣瀬智紀
【制作プロダクション】ポリゴンマジック
【企画制作】日本テレビ

舞台「男水!」オフィシャルサイト

主題歌・劇中歌

「Silent Libre Mirage」
UNISON SQUARE GARDEN

レーベル:TOY’S FACTORY


「Growing up! Go on!」
男水! オールスターズ(CV:松田凌、宮崎秋人、安西慎太郎、赤澤燈、佐藤永典、小澤廉、黒羽麻璃央、池岡亮介、神永圭佑/廣瀬智紀)

レーベル:VAP

©男水!製作委員会

原作コミック『男水!』

最新刊 『男水!』7巻

著書:木内たつや
出版社:白泉社