Interview

角松敏生が『SEA IS A LADY 2017』で見せたギタリストとしての格の違い

角松敏生が『SEA IS A LADY 2017』で見せたギタリストとしての格の違い

今年デビュー36年目となるシンガーソングライターの角松敏生が、30年前の1987年に発表したアルバム『SEA IS A LADY』は、インストアルバムだった。メロウでドライブ感のあるこのアルバムは、チャート4位のヒットを記録。おしゃれな大人のインストとして当時のギターキッズにも浸透した作品で、このアルバムをキッカケに角松敏生を知った人も多い。今作『SEA IS A LADY 2017』はオリジナルとほぼ同一アレンジのまま再録。さらに2曲の過去作品のリメイクと新曲を収録して再構成。その作品の意義とギタープレイについてインタビューを敢行した。そして、本日から始まる全国ツアー、TOSHIKI KADOMATSU TOUR 2017 “SUMMER MEDICINE FOR YOU vol.3”〜SEA IS A LADY〜についても語っている。

取材・文 / 井桁学 撮影 / 荻原大志


今のギタープレイ力で聴かせたいという想いから

前回の35周年記念特集でのインタビューでは、インストアルバムの『SEA IS A LADY』での自身のギタープレイに納得がいかないとおっしゃっていました。

もともとこの作品はライブでも結構演奏しているんですが、今のギタープレイの力量で聴かせたいって思いの現れですね。昨今の活動の流れとしては、アルバムを出すときにツアーを決めてツアーメンバーもフィックスして、そのツアーメンバーでレコーディングをするというのがモットーなんです。レコーディングしたメンバーでそのままライブをやるという贅沢さを常に追求していたんです。今回のツアーメンバーが固まってみて、インストアルバムの案が浮かんで。歌なしのインスト作品だったら、コーラスを使わなくて済むようなインストライクな歌モノをミックスしたライブができる、というアイディアが35周年の横浜アリーナの後に生まれてきたんです。だから『SEA BREEZE 2016』とつながっているとよく言われるんですけど、たまたまだったんです。

2ndアルバムのマスター音源を使って『SEA BREEZE 2016』のような再録する案も前回は語っていましたが?

そのアイディアももちろんあったんです。レコード会社が3枚目のアルバムまでアーカイヴしているので、2枚目のアルバムの『WEEKEND FLY TO THE SUN 2017』もできるし。他には『REBIRTH 1 〜re-make best〜』(2012年)の続編の『REBIRTH 2』とか。あとはオリジナルアルバムですよね。オリジナルを聴きたいという声も非常に高いのですけど、実を言うと歌モノのオリジナルを作るまでのエネルギーが完全に自分の中で充塡されていないというのがあって。あと1年ぐらいは、今戻りつつあるファンの人達、40代50代の時間にちょっと余裕ができて戻ってきてくれたファンも多くなっているので、もう少し角松敏生とファンの間を高めて、次のオリジナルを作りたいなと思っているんです。

角松さんのインストとの出会いは?

インストというと歌が入っているイメージがあるんですよ。僕自身が憧れて聴いてきたミュージシャンというのがギタリストなんだけど、みんな歌うんですよ。例えば、外道の加納秀人さん、四人囃子の森園勝敏さん、クリエイションの竹田和夫さん、はっぴいえんどの鈴木茂さん。みんなギタリストだけど歌を歌う。もともと歌モノ+インストが好きだったんですよ。オールギターインスト的なものでいったら、ラリー・カールトンとかリー・リトナーとかが台頭してきた時代なので、当然そこの洗礼は受けていますけど、むしろそっちよりも森園さんの四人囃子で「レディ・ヴァイオレッタ」っていう曲がすごく好きだったり、その後、森園さんがプリズムに行っての「Cycling」という曲もすごく好きでしたね。海外のギタリストよりも国内のギタリストの動向に影響されていたような気がしますね。

『SEA IS A LADY 2017』のレコーディング現場

1987年の『SEA IS A LADY』はテーマが「夏」や「海」に限定したインストでした。

歌でデビューして、試行錯誤して商業的には成功していったので、ギターが好きだから思い出にギターだけの作品を作っておこうというノリだったんですよ。同時にメーカーに対してのマーケティングプレゼンテーションのアイディアがあって、歌唄いがギターしか弾かないという意外性、夏季の商品、曲に女性の名前がついている、そして海っていう、コンセプトをもった商品作りをご提案する思いが自分の中であって。当時、売れちゃったんです。売れちゃったからツアーもやるっていう話になって、ツアーに出たときはすごく緊張しましたし、楽しめなかった記憶がありますね。だから僕自身としてはその次のインストアルバム『Legacy of You』(1990年)を出して、もっとしっかりとギターを弾くっていうね(笑)。だから逆に言うと『Legacy of You』は別にやり直す気はないんです。

『SEA IS A LADY』は人気が高いアルバムです。

ここ最近『SEA IS A LADY』から入りましたとか、青春でしたみたいな声をやたら聴くので。これはギタープレイとしては後ろめたいから落とし前つけとかなきゃいけないかなみたいなのはありましたね。

インストの曲作りはギターでメロディを作っていくのですか?

当時はコード進行を先に作っていたんです。いいコード進行ができたら、その上にメロディを考えていましたね。歌モノと違ってインストの方は声域がないので、すごく自由で楽しいですよね。

『SEA IS A LADY 2017』のレコーディングはどのようにされたのですか?

「52ND STREET」と「LOVIN’ YOU」だけ現在の機材でプログラミングをしていますけど、レコーディングはこのプライベートスタジオに呼んで、みんなバラバラに録っていきましたね。ドラム先に録って、次にベースとキーボード録って、っていう。あと過去のテイクを使用しているのは、「Ryoko!!」です。『ON THE CITY SHORE』(1983年)に入っているので、ベーシックトラックはレコード会社のマスターをアーカイヴしたものを使いました。

1987年ごろはパソコンを使って自動演奏させるMIDIシーケンサーというソフトが出始めた時代でもあります。

このころマッキントッシュのPlusを導入したてのころですね。本格的にやっていたのは86年の終わりくらいからかな。それまではヤマハQX1という単体のシーケンサーを使っていたんですけど、エディットとかが面倒くさくて。友達がPerformerっていうDTMソフトを紹介してくれて、それで一気にハマって。このアルバムは当時のPerformer 1.5ですし、「52ND STREET」はそれを使った最初の作品ですね。まだ時々カウンターが突然消えたりとかする時代(笑)。そこからずっとクリエイティブソフトはPerformerで、今使っているのもDigital Performer 9です。そのあとPro Toolsに流し込むようにしています。

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