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実践的ゲーム肉体論~愛を再現するコスプレイヤー RPG系②

実践的ゲーム肉体論~愛を再現するコスプレイヤー RPG系②

コスプレイヤーの皆さんにコスチューム制作の実際をお聞きする記事、RPG系の2回目です。テレビゲームの魅力や影響力を、実際のゲーム作品を紹介する形ではなく、コスプレ文化を通して確認できればと思っています。今回は武具系を制作する方のお話。ゲームが好きだから生まれるエネルギーをご覧ください。

取材・文 / ウラン

写真:『ファイナルファンタジーXIV』占星術師 葵きつねさん(@neginukiya


執念のコマ送り! 妥協せず細部を再現

 衣装制作は、ゲームに対する思いやこだわりを封じ込める作業ですので、苦労は当然隣り合わせです。しかし、その試行錯誤は最大の苦しみでありながら、楽しみの一つでもあります。最も力を入れる点は各々違うかと思いますが、以下が主な要素かと。

・原作絵を忠実に再現

・二次元キャラクターに自分の体型を寄せる努力(ダイエット、増量、筋トレなど)

・着用者である自分の体型を分析し、スタイルを強調したり、控えめに見せるよう衣装の形を工夫

・素材の選定(着やすく、イベントに参加して危険のない、または徹底的に本物にこだわった素材)

・予算と現在使える技術の組み合わせ 

このような要素の中から、重視する点を追求していきます。同じキャラクターのコスプレをしていても、その人の個性が出てくる。その人自体はそこまで明確に考えていなくても、こだわる点でその人のコスプレスタイルが変わってくるというのが、鑑賞の面からすると面白いところです。キャラクターのかっこいいと思うところや好きな部分が強調されて衣装に反映されるので、コスプレ表現は丸ごと「こういうところが好き!」という主張になっているとも言えます。

1回目の記事で述べたモリガンの衣装の場合ですと、黒いレザー風の生地にして、絶対にボディの生地と頭部・背中の羽根の生地は同じにしたいというのが一番のこだわりでした。レザーは非常に縫いにくい生地です。一度縫うと穴が開いてしまいますので失敗ができませんし、普通にミシンをかけようとしても、通常の服地のように生地が滑らないので、テフロン加工をしてあるミシンの抑え金を使ったり、シリコンスプレーを吹いたりなどしないと、うまく縫えません。

また、作る前に衣装の形をくまなく把握する必要がありますが、中には全身図が手に入らないようなキャラクターもいます。そういう場合、下半身や後姿だけ作らないわけにもいかないので、「おそらくこういうデザインであろう」と予想して作ったりもします。それもまた、個人の好みや考えの違いが出て面白い部分なのですが。

時には裁断を間違えて生地をダメにしてしまうこともあります。型紙がうまくできなくて思ったような形が出ない、樹脂で作った宝石が硬化しない、見積もり間違いで素材が足りない、時間が足りない! そんなトラブルを乗り越えてやっと完成した衣装は愛着が湧くし、大好きなキャラクターとちょっとだけ距離が近くなった気がするんですよね。

「『ファイナルファンタジーXIV』の禁書ナイト装備を作っている時、まだゲーム内では実装されていない装備だったので、プロモーション動画をコマ送りにして、各パーツごと、細部が写っているカットを探して構造を把握しました」と執念の制作秘話を教えてくださったのは、会社員で二児の育児の傍らコスプレ活動をしているという悠樹巫子さん(@yuukimiko)。大きな武器とフルアーマーが得意で、長身を活かしたダイナミックな表現をされている方という印象です。

それにしても、一瞬でカットが変わってしまうプロモーション動画から、よくあの細かい装備の構造を理解できましたね!

▲動画をコマ送りしてデザインを掴んだという『ファイナルファンタジーXIV』禁書ナイト装備。かなりパーツが多い衣装ですが、しっくりとおさまっています。さすが!

▲『ファイナルファンタジーXIV』のグリノー。細かい柄まで根気よく作りこんであり、それが重量感と迫力を強調させています

▲装備や髪型、顔の組み合わせを変えて楽しめるのは、RPGコスプレならではの楽しみかたかも。固有装備グラフィックのNPCでなければ、コーディネイトのバリエーションも広がります

「苦労はありましたが、イベント会場でゲームが好きな人や開発者の方々に声をかけていただいたりするのは嬉しいですよ。僕は鎧系の衣装を作ることが多いのですが、できるだけ忠実に制作することはもちろん、全体のバランス、実際に着てみて着くずれないことにこだわって制作しています」

イベントでの数時間、着崩れを気にしながら衣装を着ているのは大変なストレス。何度も着脱を繰り返して形を調整する。これは衣装づくりの経験の中で、それぞれ得意な方法を編み出している部分なのではないでしょうか。

コスプレと生活、両立の工夫

巫子さん、コスプレ抜きでもかなり忙しい生活を送っていることは想像に難くないのですが、一体いつゲームをして、いつ衣装を作っているのでしょう……? 

「独身時代に比べると、衣装制作するペースは大きく落ちていますね。ただ、その時代にある程度制作に慣れたので、どれだけ余分な時間をかけずに衣装を作れるか、現在はそこにも頭を使っています。

ここ数年は、1年で1着(多くて2着)作るペース。制作時間を確保するために、睡眠時間とゲームプレイの時間を大きく削っているのが現状です……。実際、衣装制作が始まるとほとんどプレイできなくなったりします」

RPG系①の記事に登場したあみさんと同じく、制作の時間配分には苦労されている様子。衣装制作に自分の余暇をフル投入できる独身時代よりも、時間の使いかたを工夫する必要が出てきたようです。

▲今までに制作した武器の数々。圧巻!

「鎧系の大型衣装の場合、まずは制作にどれくらいかかるか、手順の見積もりを出します。出てきた工数を元に、実際に利用するイベントの2週間前に完成できそうであれば、実際に作業を開始します。衣装制作に使える時間は基本的には夜のみです。平日は、子供が寝てからですので午後10時から午前2時くらい。休日は、午前・午後のどちらかは家庭の買い物やお出かけがあるので、工数的には平日と同じくらいで計算しています」

ご家族との生活は大事ですよね。すると、昼間まとまった時間をとれることはほとんどない中での制作。電動ドリルやミシンなど、音の出る機材を使用する時などにも、夜間はかなり気をつかうのではないでしょうか…… 

「それよりも、一番困るのは材料の買い出しのときです。どうしても1日家を空けてしまうので、妻に事前に話をして時間をもらったり、仕事の終わるタイミングをうまく利用するしかないですから」

学生であっても社会人であっても、それぞれに忙しい生活の中でやりくりするのは大変ですが、誰にとっても何より大事なのは日常生活。手間のかかる衣装をコツコツ作っているコスプレイヤーも、限られた時間をどう使うかということには、かなり工夫しているようです。

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