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実践的ゲーム肉体論~愛を再現するコスプレイヤー アクション系②

実践的ゲーム肉体論~愛を再現するコスプレイヤー アクション系②

ゲームへの愛を、衣装を纏い、身体で表現するコスプレイヤーたち。彼らの知られざる舞台裏、衣装を着ているときには見ることのできない素顔に迫る記事も今回で最終回です。ゲーム世界の再現を空気感レベルでこだわる方に登場していただきましょう。

取材・文 / ウラン

写真:『モンスターハンター4G』キリン発掘装備 しおさん(@sioxi ‏)


妥協のない世界考察でゲームの世界に入り込む

前回は一枚の写真で世界を作り上げる楽しみかたをご紹介しましたが、コスプレに説得力を持たせる世界設定の考察に力を入れるコスプレイヤーも少なくありません。

素材選び、色選びひとつにもこだわり、世界を再現する作業は、そのまま大好きな世界を自ら造り出す喜びなのです。

「キャラクターたちがまるでそこにいて動いているような場面を作り上げたいので、素材選びにはこだわります。魔王と戦う勇者がすごく薄い装備を着ていたら、すぐにモンスターにやられてしまう。貴族出身だとするならば、ある程度良い生地を使っているのではないか。その時代、一般的にどんな布を使っているだろう。このように、本当に画面の中から出てきたとしたら……と考えます。こだわるほど時間もお金もかかりますが、キャラクターを考え、深く知ることができる、私にとって大事な時間です」

熱い思いを語ってくださったのは七草春のさん(@HARUNO_N)。イラストや小説などの二次創作をする方々を見て、自分にも何か表現できることはないかと考えたのがコスプレのきっかけとのこと。春のさんは、キャラクターを知りたいという一心で世界設定考察を重ね、全身で「私はこのキャラクターについて、こう考える」という世界観を持ち、表現をしているのですね。

▲『ファンタシースターオンライン2』のクーナ

鮮やかなイエローのエナメル風生地で難しいボディスーツを製作。パッキリした青い髪とのコントラストが作品そのままのイメージに表現されています。髪色ともなじみ、キャラクターの特徴であるクールな目元を引き立てるメイクにも注目です。メイクや細かい模様、素材の合わせかたなど、細部の作り込みにも手を抜かない春のさんの厳しい目が、衣装から凄みとなって醸し出されています。

「愛しているキャラクターですから、たとえ演じるのが自分であったとしても、そこはキャラクターに恥をかかせてはいけないと思って丁寧に作り込みます。もちろん鋼の甲冑を本当の鋼で作るのは大変なので、ウレタンに鋼っぽく塗装などをしていますけれど、いつかそういう技術を手に入れられたなら、キャラクターと同じ素材で作って体験してみたいですね」

イベントで披露することや持ち運び・保管のことを考えると、あまりにも重かったり、場合によっては危険を伴う可能性のある素材については、使用に関して慎重にならざるを得ません。前回登場したリカールさんや春のさんを含め、多数のコスプレイヤーは限りなく本物に近いものを生み出したい欲求と、現実に衣装が存在し、それを着て動くことの難しさを感じているのかもしれません。

▲面白いバランスの脚パーツですが、実際の人間が着用してキャラクターのように走るとなると、あらゆる面で難しそう

「仮想空間で生きるキャラクターたちの衣装・装備は、着脱や歩行ができるか、人間が着けられる重量かどうかなどを考えて作られているわけではないので、実際は着用後の動きに難があるものがほとんどだったりします。そのためにも、しっかりと縫いつけたり貼りつけたりして、壊れないようにする努力が必要です。そういう苦労をして作り上げた時の達成感はすごいんですよ。自分を褒めてあげたいというのももちろんですが、その作品を好きな第三者に喜んでもらえたりすると本望ですし、とても嬉しいですね」

デザインや素材を忠実再現すると腕も上がらなくなるような衣装、確かにあります。そこをどう現実に落とし込むか。コスプレを見る側からすれば、たくさんの試行錯誤が詰まっている部分ですのでたいへん面白いところです。アレンジのさじ加減や採用する技法に各々の個性が出ますし、思いもしなかったような技術や斬新な考えかたに膝を打つことも多いのです。

並々ならぬ作品へのリスペクトを以て衣装づくりをしている春のさんですが、コスプレという趣味以外の生活は特に大事にされているとのこと。

「私にとってはあくまでも趣味の一環なので、リアルを大事にして余裕をもたなければ楽しめません。私はコスプレ歴が長いですが、リアルの生活が忙しければそちらに集中しなければなりませんし、他にやりたいことがあってしばらくコスプレをお休みしていた時期もあります」

この記事のために取材をさせていただいた方のほとんどが、生活と趣味にかける時間のやりくりに苦労なさっていましたが、やはり生活の基盤あってこそのコスプレ。こだわればこだわるほど終わりなく手をかけられてしまう趣味ですから、きちんと線を引いてしっかり生活をすることが、趣味を長く安定して続ける秘訣かもしれません。

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