Interview

青柳翔『たたら侍』〈伍介〉の繰り返す挫折に心を注ぐ。寡黙で硬派な魅力を発揮

青柳翔『たたら侍』〈伍介〉の繰り返す挫折に心を注ぐ。寡黙で硬派な魅力を発揮

戦国時代を舞台に、1300年前より奥出雲の村に継承される独自の製鉄技術“たたら吹き”と、その伝統を守る運命を背負った主人公の成長を描いた物語『たたら侍』。錦織良成監督と劇団EXILEの青柳翔が『渾身 KON-SHIN』(12)以来、再びタッグを組んだ本作は、モントリオール世界映画祭のワールドコンペティション部門において最優秀芸術賞を受賞。映像美あふれる本作に主演し、寡黙で硬派な魅力を発揮した青柳翔に話を聞いた。

取材・文 / 熊谷真由子
撮影 / 三橋優美子


時代劇、すごくお似合いでした!

ありがとうございます。

脚本を読んだときはどんな印象でしたか?

やっぱりラストシーンにいたるまでの〈伍介〉の気持ちの流れが難しいと思った反面、すごくやりがいのある役柄だと思いました。ラストに向けてどういう風に演じたらいいのか、自分の中でもいろいろと考えましたし、相談もしました。とにかく人が斬られて血しぶきが飛び散るというような描写が一切ないんですよね。

錦織監督との前作『渾身 KON-SHIN』のプロモーション中に本作のアイデアをお聞きになったそうですね。そのときから時代劇をやろうという話だったそうで。

そうです。隠岐諸島に伝わる古典相撲と家族の絆をテーマにした『渾身~』のプロモーション中に、錦織監督とまた一緒に仕事をしたいという話をしていて。そのときに監督が「時代劇なんてどう?」とおっしゃっていて、たたらのお話も少しされていました。でもそれが、まさかこんなにたくさんの方々が協力してくださるような作品になるとは、正直想像していなくて、すごく光栄に思っています。HIROさんやATSUSHIさん、AKIRAさん、(小林)直己さん、石井杏奈ちゃん、早乙女太一くんといった同じ事務所の方はもちろん、津川雅彦さんや奈良岡朋子さんといった共演者、スタッフのみなさんのおかげだと感謝しています。

映像では時代劇は初めてでしたね。

そうですね。でも武士ではなく、あくまでも侍になりたい町人の役でしたし、所作も言葉遣いも厳密にこだわるというわけではなかったです。それより、〈伍介〉が村を出ていくときや、村を出た後に挫折したとき、村に帰ってくるときの気持ちの流れが重要だと思って、現場で演じさせてもらっていました。

勾玉の首飾りをつけていたり、衣装も今までの時代劇にはない新しさがあると思いました。

今回の衣装は、EXILEをはじめ、アーティストの衣装も手掛けるLDH apparel が担当しています。だから今までにはなかった時代劇の服を着てチャレンジすることができました。たとえば、〈伍介〉の着物はデニムのような生地を加工して作っているんですが、“絣(カスリ)”と呼ばれる生地が、実際に出雲地方にあるんです。そういった布から作った衣装に、着古したようにダメージ加工が施されています。着心地は柔らかくて動きやすかったです。だんだん肌になじんでくるので愛着も湧きましたし、自分が着ていたものは、とにかくすべて気に入っていました。

〈伍介〉を演じていて、何を大切にされていましたか?

スーパーヒーローではなく、何度も挫折して、それでも一歩立ち上がるような役なので、そこにすごく重きを置いて演じていました。まず、村を出るということ自体が、今でいう上京するということとは少し違っていると思うんです。一子相伝の息子が閉鎖的な村から出ることは、相当、想いが強くないといけない。そこで失敗してしまうのが〈伍介〉という人間なんですよね。

演じていて共感する部分は?

挫折しても立ち上がろうとするのは〈伍介〉の魅力ですし、共感できる部分でしたね。

錦織監督とは『渾身~』に続いてのタッグで、再び一緒に仕事するのは嬉しいことだと思いますが、今回は時代劇ということで、演出に変化などありましたか?

2回目なので安心できる部分が多かったと思います。スタッフさんも錦織組の方が多かったですし、『渾身~』でご一緒させていただいたキャストの方もいたので、そういう点ではすごく助けられました。

AKIRAさんや小林直己さんは同じ事務所で、撮影中は夜、一緒にご飯を食べに行ったりしたそうですね。

はい。でもアツく演技論を交わすということはあまりしていないです(笑)。「明日のあのシーンはこうしたいね」とか「ここは気合い入れようね」という話はしましたけど、あとはごく普通の他愛もない会話です。ご飯の話だったり、次の日が撮休だと予定を聞き合ったりとか。撮影中と言っても、夜はリフレッシュすることが大事なので、監督やプロデューサー、他のキャストの方たちともご飯に行ったりしていました。

錚々たるキャストの方が出ていますが、何か参考になったことなどはありますか?

津川さん、でんでんさん、甲本(雅裕)さん、宮崎(美子)さん、豊原(功補)さん、笹野(高史)さん……、本当に佇まいだけで圧倒的な存在感を放っている方々なので、もうどうやっても自分はこんなすごい方たちには追いつけないんじゃないかと思いました。奈良岡さんと食事をご一緒させていただいたときに、奈良岡さんほどの大ベテランの方でも現場で緊張はするものなのかとお伺いしたんです。そしたら奈良岡さんが「緊張なんかするのはおこがましい」とおっしゃったのがとても印象に残っていて。緊張するということは自分を良く見せたいとか、自分ができること以上のことをやろうとするから緊張するんだとおっしゃっていたので、確かにその通りだなと。

なるほど。そうかもしれませんね。

とは言っても、やっぱり今も緊張しちゃうんですけどね(笑)。