Report

米倉涼子の「シカゴ」が帰ってくる!公開稽古で明かした「最後かもしれない」という想い

米倉涼子の「シカゴ」が帰ってくる!公開稽古で明かした「最後かもしれない」という想い

アメリカの再演舞台作品としては、歴代1位のロングランを誇る大ヒットミュージカル『シカゴ』。2012年に本作でブロードウェイデビューを果たした米倉涼子が、この夏、日本に帰ってくる! 再び主演のロキシー・ハートを演じ、さらに、アムラ=フェイ・ライト、ブレント・バレットという名優と、本国でも大喝采を浴びたカンパニーを引き連れ、8月に待望のジャパン・ツアーを行う。上演に先立ち、公開稽古と米倉涼子の単独公開インタビューが行われた。

取材・文・撮影 / 竹下力


こんなにすごい『シカゴ』の歴史

ミュージカル『シカゴ:ミュージカル・ヴォードヴィル』は、1975年にブロードウェイの46番通り劇場で初演された。ブロードウェイに数多くの名作を届けた、ジョン・カンダー(作曲)・フレッド・エッブ(作詞・脚本)という黄金コンビと、当時は新進気鋭の振付師ボブ・フォッシーの振付・脚本で、クールでキュートなジャズナンバーと斬新なダンスで大ヒットになった。
その後、1977年までに936公演が上演された後、1979年にはウエスト・エンドに進出。600公演上演され惜しまれつつも幕を閉じた。
しかし、ファンの熱い要望により、1996年、ブロードウェイのリチャード・ロジャース劇場で『CHICAGO THE MUSICAL』としてリバイバル上演され、瞬く間に大好評を博す。1997年には、ブロードウェイで最も権威のある賞、トニー賞最優秀リバイバル・ミュージカル賞を含め6部門を受賞。その後も公演は続き、ブロードウェイの再演では7,300回以上を上演。アメリカの再演公演のロングラン最長記録を誇り、『オペラ座の怪人』『キャッツ』と並ぶ名作となった。海外での上演も多数あり、日本を含む世界34ヶ国、473都市、12ヶ国語で公演され、2016年11月、ロングラン公演20周年を迎えた。
今作では、初演を下敷きにしながら、1996年版を手掛け、トニー賞を受賞した演出のウォルター・ボビー、同じくトニー賞を受賞した振付のアン・ラインキングがスタッフに名を連ねる。キャストには、主演のロキシー・ハートに米倉涼子、2001年からヴェルマ・ケリーを務め、その後も幾度となくヴェルマを演じている名女優アムラ=フェイ・ライト、彼らの弁護人になるビリー・フリンを『ウエスト・サイド・ストーリー』や『キス・ミー・ケイト』など名だたる作品に出演しているブレント・バレットが演じる。
米倉涼子は5年ぶりのロキシー・ハート役で、7月にはアメリカのブロードウェイのアンバサダー劇場に立つ予定。8月には20周年記念ツアーと銘打ち来日公演を行い、今後もますます『シカゴ』から目が離せなくなりそうだ。

Photo by Junji Ishiguro

セクシーでキュートな踊りと歌で魅せる!

米倉涼子が、2008年と2010年の日本語版「シカゴ」で盟友と言える大澄賢也、森実友紀、神谷直樹、伯鞘麗名と共に登場。彼らと米倉のささやかな会話や仕草のやり取りが、これからブロードウェイに立つ米倉涼子を勇気づけてくれるようだ。
まずは、アップテンポなジャズナンバー「Roxie」から公開稽古がスタート。ピアノの伴奏のみで歌い踊る。この曲は、ロキシー・ハートが、愛人フレッド・ケイスリーを銃殺し投獄されたものの、敏腕弁護士ビリー・フリンの計らいにより、記者会見によって悲劇のヒロインを演じ、一躍スターになった喜びを歌うナンバーだ。米倉涼子は15年ほどのバレエ経験を活かしたすっとした引き締まった体躯をセクシーにしならせ、英語で見事に歌い上げる。そこには誰もが待ち望んでいる『シカゴ』があった。

「I’m going to have me a swell act, too! Yeah, I’ll get a boy to work with — someone who can lift me up and show me off — Oh, hell, I’ll get two boys. It’ll frame me better! Think “Big.” Think “Big,” Roxie — I’m gonna get me a whole bunch of boys.」(和訳:素敵なショーをやるわ! そう、男の子を雇うの――私をリフトして派手に見せてくれる子――男の子、二人にしよう。そのほうが引き立つわ! でっかく考えるのよ、ロキシー、どーんとでっかく――男の子たち、いっぱい雇おう)という有名なオープニングの早口で長い英語のセリフもまったくぶれない。そして「Ooo, I’m a star.」(あたしスターよ)と歓喜の喜びを表情豊かに歌い、アンサンブルダンサー役に扮した大澄賢也、森実友紀、神谷直樹、伯鞘麗名と息のあったダンスを踊る。

続いて披露されたのが「Me and My Baby」。可愛らしいジャズナンバーで、ロキシーは反目するヴェルマとのやり取りの中で、妊娠をしているとマスコミに吹聴してしまう。しかし、後には引けなくなって、想像上のお腹の赤ちゃんとデュエットを歌う。
「TELL OLD MAN WORRY TO GO CLIMB A TREE.’CAUSE I’VE GOT MY BABY, MY SWEET LITTLE BABY LOOK AT MY BABY AND ME」(亭主はいなくても。赤ちゃんがいる。見てよ、ベイビーと私)という印象的なリフレインで思わずシンガロングしたくなるようなナンバー。米倉涼子は、フィンガースナップを使いながら、時に小悪魔のような可愛らしい表情をして、アンサンブルの男性2人とコミカルに歌い踊る。男性2人にリフトアップされ、あくまで嘘をつき通そうとする彼女の決意表明にも取れるシーンが見所だ。

最後に披露されたのが本編最後の曲「Nowadays」。そしてダンスナンバー「Hot Honey Rag」。ロキシーは裁判で無罪を勝ち取ったものの、妊娠という嘘もばれ、次第にマスコミが離れていく。すべてを失ったロキシーだったが、とうとうヴェルマと和解を果たし、2人でショーをすることになり、そこで歌う大円団のナンバー。この曲は『シカゴ』一番の代表曲「All That Jazz」に並ぶ名曲で、人生の儚さを嘆くことなく今を生きる喜びを歌う、女性たちへの賛歌となっている。
「YOU CAN LIKE THE LIFE YOU’RE LIVING. YOU CAN LIVE THE LIFE YOU LIKE」(この人生を好きでもいいし。好きな人生を生きてもいいじゃない)というラインはあまりにも有名だ。そしてロキシーとヴェルマが最後にクールに美しくポーズを決める。「Hot Honey Rag」はダンサンブルなジャズナンバーで、ロキシーとヴェルマが激しく体を動かす。踊り終わった後、激しい息遣いで、ひざまづいて座り込んだ米倉涼子の額の汗と笑顔に、このミュージカルの大変さと演じられることの喜びを感じた公開稽古が終了した。

編集部のおすすめ