Interview

原嶋元久x佐伯大地が“ALL OUT!!(=全力を出し切る)”の気持ちで臨む青春のステージ

原嶋元久x佐伯大地が“ALL OUT!!(=全力を出し切る)”の気持ちで臨む青春のステージ

雨瀬シオリによる原作「ALL OUT!!」は、月刊『モーニング・ツー』で連載中のラグビー漫画。体格は小さいが負けん気だけは人一倍強い〈祇園健次〉が初心者ながらもラグビー部に入部し、部内に化学反応を起こしながら、チームメイトと高校ラグビーの聖地・花園を目指し奮闘する青春ドラマだ。
この大人気漫画が「ALL OUT!! THE STAGE」として舞台になり、5月25日よりZeppブルーシアター六本木にて上演される。脚本・演出は元劇団「惑星ピスタチオ」の看板演出・脚本家の西田シャトナー。舞台「弱虫ペダル」シリーズを手がけた鬼才が、今度は舞台でラグビーをどう表現するのか、期待が高まる。
今回は本番目前の稽古場を訪れ、〈祇園健次〉を演じる原嶋元久と、神高ラグビー部のキャプテン・〈赤山濯也(せきざんたくや)〉を演じる佐伯大地に過酷な稽古の様子や、先輩・後輩愛まで存分に語ってもらった。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 冨田望


激しい稽古は部活動そのもの

初日が間もなく開けますが、これまでの稽古はいかがでしたか?

原嶋元久 ここまでは全力の一言です。演出の西田シャトナーさんにまとめていただきつつ、稽古場にはまさに作品タイトルの“ALL OUT!!”(「全力を出し切る」という意味)そのままに、みんなからの熱がたぎっていましたね。

〈祇園健次〉役 原嶋元久

佐伯大地 作品中にも出てくるスクラムの基本姿勢のトレーニングで“亀”というものがあるんですけど、本当に“亀”のようにじりじり進んで、ここにきてやっと台本の最後まで追いつくという極限状態で稽古をしてきました。若者たちが、追い詰められた環境の中でやっているので、熱量はすごい。間に合うかな? と思っていたけど、全体像がようやく見えてきたので安心しました。

稽古場に高校の部活動でよく見かけるポットがありましたね。

原嶋 麦茶、最高においしいんですよ! 激しい稽古の間に麦茶を飲むと復活する。

佐伯 おいしいよな(笑)。部活動をやっていた頃を思い出します。

原嶋 麦茶のまわりにいっぱいコップが増えて、麦茶待ちする列が……。

本当に部活動さながらの青春ですね(笑)。原作の「ALL OUT!!」を読んだ印象はいかがでしたか。

原嶋 自分の役どころの〈祇園健次〉を中心に読んでいきましたが、次第にライバルの慶常高校の〈御幸篤〉(舞台では石渡真修が演じる)に惹かれるところもありました。もちろん、神高の人たちにも愛があって、結局「ALL OUT!!」にでてくるすべてのキャラに愛着を抱くようになりましたね。

佐伯 「ALL OUT!!」の何が好きかというとみんな弱いからなんです。才能があるやつも、必殺技をもっているやつも、金の卵もいない。神高って弱いじゃん。

原嶋 弱いですね。

〈赤山濯也〉役 佐伯大地

佐伯 僕の演じる〈赤山濯也〉も、かっこよく描かれてはいますが、心は高校生なんですよね。コーチへの対応や、後輩への愛情表現がまだまだ青くて……。チームのメンバーもケンカしたり、部活をサボったり…… そのあたりが部活時代に近くてリアルですね。

その中で、「ALL OUT!!」の舞台に出演する決め手になったものはなんでしょう。

原嶋 僕は〈祇園健次〉のキャラクターに運命的なものを感じました。身長の低いことがコンプレックスの役柄で、僕も身長が高いほうではないので、「僕じゃなかったらできない」と強く思いましたし、作中で〈祇園〉が「ラグビーは誰でも主役になれる」と言われて感動するシーンと気持ちがリンクして、ぜひこの舞台の仲間になりたいと。

佐伯 僕はキャプテンという立場から遠い性格の人間なので、役者としてキャプテン役に挑戦してみたかったんです。

©雨瀬シオリ / 講談社

稽古ではどのように役柄に挑んでいきましたか。

原嶋 原作と同じで、〈祇園〉はラグビー初心者で、僕自身も素人です。だから、一生懸命やるしかないし、それが正解なんだろうと。〈祇園〉は、前半は自分のことしか考えていないけれど、徐々に試合で頑張っている先輩たちや仲間をみて、自分もチームの一員になりたいと心が移り変わっていきます。その成長は一生懸命に練習することでしか表現できないですよね。

©雨瀬シオリ / 講談社

佐伯 例えば、稽古場って演出家の方がリーダーでいわば、キャプテンじゃないですか。だから、これまでの作品の稽古場ではみんなの前で自分の意見を言うことをあまりしていなかったんです。でも、シャトナーさんはアイデアを求める方だったし、役柄がキャプテンなので、みんなにどう思われようがそんなの関係ない、と稽古場では積極的に意見を出すことを心がけましたね。もちろん反発もあるからすごく大変。ほんとに大変だった(笑)!

原嶋 稽古はまだ2日ありますよ(笑)。

佐伯 一もめ、二もめ、三もめくらいまでしましたから…… もう大丈夫だろう!

インナーマッスルをひたすら使う「パワーマイム」に大苦戦

実際に西田シャトナーさんから演出を受けていかがでしたか。

原嶋 リアルな世界をエンタメとして舞台で表現できる稀有な方です。たとえば10センチしかないところを1メートルに見せるマジックのかけ方が、お客さんの想像を超えている。でも、想像を超えたところにお客さんを追いつかせる技術も持ち合わせている。シャトナーさんの演出は肉体を使うので、体を動かしていくと、自然と気持ちが高ぶっていくんです。今、シャトナーさんの作品に出演できたのは、僕の俳優人生にとてもプラスになると感じています。

佐伯 僕はシャトナーさんに指導を受けているというよりは一緒に遊んでいるような感じです。そうだ、シャトナーさんは、逆“名探偵コナン”みたいな感じだよね。

原嶋 そう言われても、ピンとこないです(笑)。

佐伯 髭が生えた大柄なおじさんだけど、心は子どもですね。演出は「バキューンと飛んで、ズバーンといって、ここでバーン!!」みたいな(笑)。

まさに子どものようですね(笑)。

佐伯 でも、普遍的なエンターテインメントに変換する経験値も感じさせてくれる。根本にあるのはお客さんに楽しく伝えたいという純粋無垢な気持ちですね。だから、板上で周りを見ていない役者の演技には厳しい。「みんなでやっているから、ひとりでやらないでくれ」と叱られます。

シャトナー作品には欠かせないセリフと音とパントマイムを掛け合わせた「パワーマイム」がありますね。

佐伯 原嶋くんと伊万里有さん(石清水澄明役)が一番うまいと思う。

原嶋 そこは太字で書いてもらっていいですか(笑)。

佐伯 僕はマイムができないことを自分の体の大きさで言い訳にするんですけど、伊万里さんは言い訳をしない懐の深い方。原嶋くんは努力とフィジカルで獲得しているよね。

原嶋 見た目にはすごく見えないけれど、インナーマッスルをひたすら使いますね。大変としか言いようがないです(笑)。