黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 4

Interview

FF生みの親、坂口氏(中)「ファイナル」ファンタジーではなかった!?「FF」と「スクウェア」の物語

FF生みの親、坂口氏(中)「ファイナル」ファンタジーではなかった!?「FF」と「スクウェア」の物語

鳥嶋和彦との出会いが人生とゲームを変えた

先ほどの『ドラクエ』の話に戻るんですけど、当時のジャンプ編集者の鳥嶋和彦さんとの出会いというのも、いろいろな意味で大きかったと思います。やはり、かなり影響されましたか?

中央 坂口氏
右 白泉社 代表取締役 鳥嶋和彦氏
左 ゲームクリエイター 松野泰己氏

坂口 鳥嶋さんは師匠です。鳥嶋さんと出会ってなかったらちょっと僕は違っていたでしょうね。

どんな感じに違っていたと思いますか?

坂口 『IV』からキャラクターとかシナリオ、特にキャラクターを重要視するようになりましたが、これは鳥嶋さんの教え のおかげです。ジャンプ編集部はマンガをどうやって面白くしていくかっていう確固たる方法論を持っているプロなわけですよ。そんな彼らからすると当時のゲームっていうのはやっぱり稚拙に映ったんでしょうね。かなりキツイ言葉をたくさんもらいました。 僕らからすると「物語が存在しなくても楽しめるのがゲームなんだ」と言いたくなるところもあったわけです。そういうゲームはいっぱいありますからね。だから、鳥嶋さんの言っていることは極端だなという気もしました。ただ、僕が作りたかったものはさっきから話しているように、ストーリーや世界観がシステムと美しく共存するもので、キャラクターは切っても切れないものですからね。それで、一度ちゃんと咀嚼 させてもらおうと。実際、『FF IV』、『V』、『VI』『VII』の変化は鳥嶋さんのおかげだと思っています。

すごい影響というか、坂口さんにとってはいい出会いだったわけですね。

坂口 はい。それと、「ジャンプの袋とじ」の存在も大きかったです。当時のジャンプの袋とじってテレビCMなんかよりもはるかにマーケティング効果があったんです。だから、僕はどうしてもあそこで『FF』を扱ってほしくて。それは『ドラクエ』と肩を並べるという意味でも、ジャンプ編集部に認めてもらうっていう意味でもね。単にアドバイスを受けるだけじゃなく、そういう部分もあって鳥嶋さんに逢いにいっていたところもありました。 でも『FF IV』を編集部に見せにいったら「みんな集まれー。すごいぞ今度の“ドラクエ”は!」とか言われて。「おいおい、オマエら・・・」って思いましたね。(笑)

アハハハハハ。

坂口 だから『FF』ですって言ったら「“エフエフ”って何?」「“ドラクエ”じゃないの? じゃあいいや」って編集部散り散りみたいな。そんなでしたよ。某大手ゲーム雑誌さんも『FFI』のロムカセットを持って編集部に行ったら、副編集長の方が「申し訳ない。ドラクエの対抗馬になるものは扱うわけにはいかないんですよ」と門前払いですよ。見てもくれなかったですからね。

そんなこと言われたんですか? うわ~。

坂口 いや、なかなか厳しかったです。結局、ジャンプでも最初に載ったのは『VI』ですからね。『IV』と『V』は散々見てもらったし、キャラクター性が強くなっていたじゃないですか。自分としても満足できるものだったし、鳥嶋さんもそこはホメてくれたわけですよ。「頑張ったじゃん」と。でも、「じゃあ載せください」って言ったら、「それとこれとは別」みたいな。

「クロノトリガー」の実現は「FFⅥ」の成功によるもの

シビアですねえ。

坂口 そりゃそうでしょう。一応、向こうは『ドラクエ』チームだもん。だから『VI』でやっとですよ。まあ、『V』で認めてもらった感じですよね。『VI』はさらに頑張ったから、これはまあ扱おうと。『クロノトリガー』が実現したのもこの流れの中ですね。鳥山明さんとご一緒できるのは、とにかくうれしかったですね。『ドクタースランプ』から大ファンで、一緒に仕事をするなんて夢のようでした。

坂口さんから提案されたんですね。一緒にやりたいと。

坂口 ええ。そうしたらシナリオは堀井さんにという話になり。じゃあ3人が集まったらすごいねっていう展開に。

ジャンプの誌面にあれが出たときはトリハダがたちましたよ。いきなり巻頭のグラビアで「夢のチーム発進!」みたいな感じで。ところで、最初に鳥嶋さんのところにどうやって営業に行ったんですか。「会いたいんですけど」みたいな感じで?

(写真:坂口氏と植松氏の対談記事 この頃から坂口氏のメディア露出が増えた)

坂口 いやいや。当時、スクウェアの広告を扱っている広告代理店から、「集英社の鳥嶋さんが会いたがってる 」って。で、行ってみたら、広~い会議室に鳥嶋さんがひとりポツンと座っていて。「君が坂口君か。今からボクはね、君が作っているゲームがなぜダメなのか言っていくね」って、そこから延々2時間くらい『FFIII』の悪口。

うわ~、そんなだったんですか!?

坂口 「こうでああで、キャラクターが立ってない」、「バランスもここが悪い」、「なんかどうも独りよがりの匂いがしてくるんだよね。や~な匂いがしてくるんだ」とか。「はあ……」とか言って聞いていましたけど「なんなのこの人・・・」って正直、内心では思っていました。

でも、それだけやり込んでいたわけですよね、あの人は。

坂口 とも思いました。その時点で『FF』は「これは出てくる」と思ってくれてはいたんでしょうね。そうじゃなきゃ言わないですから、鳥嶋さんは……。

ですよね。それにしてもすごい人ですね。

坂口 ゲーム大好きだから。好きなものには厳しくあたる人です。もっと良くなるはずだって。でも何度もダメだしくらうと、なかなかしんどかったです。

僕も記憶がありますけど、みんなジャンプ編集部には苦労させられましたよね。

坂口 いや~厳しかったですね。なんか独特の空気があって、緊張しました。

でも、『クロノトリガー』もそうですけど、その後はジャンプとすごく緊密な関係になりましたよね。

坂口 『FFVI』のときだったかな、『Vジャンプ』を出したじゃないですか。あれが大きかったですよね。鳥嶋さんとしても従来のゲーム雑誌とは違う形のゲーム誌を出すというところで勝負に出た部分があったでしょうから。そのときの僕らと目的が合ったという感じです。で、『FFVII』のときはスクウェアが勝負のタイミングでしたから。鳥嶋さんたちが本当に助けてくれました。

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