黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 4

Interview

FF生みの親、坂口氏(下)ゲーム開発、再び。見つからないものを、見つけるために。

FF生みの親、坂口氏(下)ゲーム開発、再び。見つからないものを、見つけるために。

その後、スマートフォン向けコンテンツの『パーティーウェーブ』を経て『テラバトル』に至るのですが、やはり起死回生みたいなお気持ちだったんですか?

(ハワイにて90年代後半 中央が橋本氏、右・現在はシリコンスタジオに勤務する梶谷氏)

坂口 『パーティーウェーブ』は最初は遊び感覚で話が始まったんですよ。ちょうどその頃、『FFVII』のCGチームの要で、今でも大親友の橋本カズ(和幸)がハワイにいたんですよ。ヘンク・ロジャースと荒川實さん(注22)と新規オンライン事業を立ち上げていたんですけど、それがちょっと暗礁に乗り上げちゃったらしくて。それで、彼の下で働いていた元スクウェアの大野君と西村がハワイで半年ほど時間が空いているという話がきたんです。「坂口さん、スマホでサーフィンゲームを作りたいとか言ってたじゃん。ちょうどいいから彼らとちょっとやんない?」みたいな。で、橋本カズは大親友だし大野も西村も知っているから「いいね、いいね、やろうか!」となって作ったのが『パーティーウェーブ』だったんです。

注22)ヘンク・ロジャース氏は「ザ・ブラックオニキス」などの開発者、荒川氏は任天堂の米国法人であるニンテンドー・オブ・アメリカの元代表取締役社長。

そういう事情があったんですね。

坂口 で、作ったんだけど、当然まったく売れず。僕がアキバで行商したほうが売れるんじゃないってくらいダウンロードされなかったですね。今にして思えば当たり前の話で、そんな遊び感覚で作ったものが売れるような市場ではないですからね。特にスマホはタイトル数が多いからホントにちょっとでも売れないと、とことん知られずに消えていくっていう世界ですからね。
そんなことも知らなかったんですが、ただそうなると人間不思議なもので悔しくなるんですよ。大野君たちも含めて「ちょっと悔しいよね」、「ちゃんと作んない?」っていう話になったわけです。スマホはスマホで成功させたいよねと。それにはスマホゲームっていうものをちゃんと知る必要があるじゃないですか。当時の僕は、KPI(注23)の数字を追っていくというスマホビジネスの基本も知らなければ、いわゆるガチャという課金方法すらよく知らなかったですからね。

注23)重要業績評価指標のこと。スマホビジネスではこの数値の変化をもとに運営が対策を練る。

そうか、そこから始められたんですね。

坂口 そういう状態だったので『パズル&ドラゴン』(以下『パズドラ』)とかをファミ通編集長の林(克彦)さんとかにすすめられてひと通り遊んだわけです。それで、「よくできてるじゃん、『パズドラ』」となって。課金にゲームシステムを紐づける方法が尋常じゃないわけですよ。ホント説明できないくらい細かいところに紐づいているんです。
単純に見えて全然単純じゃないんですよ。これはすげえなと思って。すっかり面白くなっちゃって自分なりに作ったのが『テラバトル』だったんです。ただ、自分としてはコンシュマー色を持ち込みたい とも思ったので、複雑に絡めとられて課金に向かっていくシステムの紐を若干外していった感じですね。外して別のゲームシステムに向かわせることでなにか違った面白さになるようにしたかった。その分、売り上げはそんなにいっていないです(笑)

現在、ダウンロード数が260万ですか。300万までいくといいですね。

坂口 そうですね。でも、世の中で言うダウンロード数っていわゆるアカウント数で、その場合は実は『テラバトル』は800万くらいまでいっているんです。僕らは例えばひとりが3回ダウンロードしたとしてもそれは1ダウンロードとしていますから。でも、この数え方をしているところはほとんどないみたいですね。

実直なんですね。坂口さんって、そんなに実直な人でしたっけ? なんだか夜の印象が強くて(笑)

坂口 それはアナタが間違っているんですよ! 人間飲めばハメ外れるけど普段は実直なんです。

坂口さんってホントは寂しがり屋で、すごくいい人なんだろうなと思っている側面はあるんですよ? ただ、僕は夜の姿を見ているから、この人はすごい悪い人なのかなとも思っちゃうんですよ。でも、今のお話を聞くとね、すごく作り手としてユーザーに対して真摯に向かいあっている人なんだなと。

坂口 そうだよ、そうだって。今更言うなよって感じですよ。それに、今はもう酒はやめましたからね。ちょっと足をおかしくしちゃって。痛風っぽいというか、捻挫っぽいというか。少し怖くなったんで、もう2カ月以上飲んでいないです。このまま止めていこうかなと思っているんで、夜に会っても大丈夫ですよ。その代わり、早く終わりますけどね。夜の10時には終わる。

いいことじゃないですか。

坂口 昨日も10時半に終わりましたね。でも、酒が入らなくても暴れるかもね(笑)。

そうそう、そういう印象もありますね。

坂口 でも、昨日も直良と熱く語りました。直良君も独立したばっかりなんで、そこら辺の話を僕に聞きたかったみたいです。

スタッフ思いというか、人とのお付き合いを大事にしていますよね。

坂口 当時は27歳の僕がトップを張ってあとは少し年下のスタッフでした。会社の年齢構成がわずか数歳差なんで、27歳なのに相対的には会社の中で50歳くらいの人の立ち位置になるわけですよ。だから、1歳、2歳しか違わないのにかなり後輩に感じちゃうんです。だから、最近は、当時のスタッフの今の年齢を聞いて「えっ、あいつもう50なの?」みたい感じで愕然としますよね。もっと離れていたような気がして。

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