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世界に類を見ないラグビーの舞台化!肉体で次元の壁を超える「ALL OUT!! THE STAGE」開演

世界に類を見ないラグビーの舞台化!肉体で次元の壁を超える「ALL OUT!! THE STAGE」開演

舞台「ALL OUT!! THE STAGE」が、5月25日よりZeppブルーシアター六本木にて開幕した。
原作は雨瀬シオリによる青春ラグビー漫画「ALL OUT!!」。「弱虫ペダル」シリーズを手がけた鬼才・西田シャトナーが脚本・演出を務め、舞台でラグビーをどう表現するのか期待が高まるなか、「次元の壁を超える」舞台がいま始まる!


シンプルな舞台が故に激しくぶつかりあう肉体と肉体

主人公・祇園健次(原嶋元久)は人一倍負けん気が強いが、背が小さく、どの部活にも入れずにいることがコンプレックス。県立神奈川高校(通称・ジンコー)の入学式当日、ラグビー経験者で高身長だがオドオドしたキャラクターの石清水澄明(伊万里有)と出会い、「ラグビーはどんな人間だって主役になれる」と言われたことで祇園は入部を決意。しかし、チームは弱小でコーチもいない。そんな神高ラグビー部はいかにして強くなっていくのか……。

二人が入部する神高ラグビー部は、「部で一番強い男」と称されるキャプテン・赤山濯也(佐伯大地)が率い、面倒見のいい副部長・八王子睦(松風雅也)。ジュニアスクールからの経験者で1年生でレギュラーを勝ち取った大原野越吾(大原海輝)。2年生でチーム1番の俊足だが、ヤンキーで練習をサボりがちな江文優(宮下雄也)。そんな江文を温かく見守るチームの優しい兄貴的存在の松尾年之助(山口大地)。3年生で祇園から特に慕われている先輩、賀茂雷太(樋口裕太)。2年生で江文とよくつるんでいる伊勢夏樹(藤戸佑飛)。そして、祇園がコーチをお願いすることになる元全日本代表の籠信吾(萩野崇)が顔を揃える。

ライバル校の慶常高校には、中学時代、ラグビーの練習中に石清水からタックルを受けて負傷し、負い目を感じている石清水を何かと気遣う御幸篤(石渡真修)。さらに、赤山に異常な執着心があり、神奈川高校との対戦を楽しみにしているハイテンション男に平唯一(土井一海)。紳士的なキャプテンに巨漢の久川久美男(水沼天孝)。
反則すれすれのラフプレーも辞さないラグビー名門校東海大相模高校のキャプテンに和田敏郎(滝川広大)。中学時代に石清水のいた吾妻中学校に負けて以来、憎悪を抱いている花館充男(小西成弥)。試合では心理戦で大原野に挑発を繰り返す堀川謙弥(上田堪大)が出演。

選手を演じる役者陣は、さまざまな役柄を切り替えながら演じる「スイッチプレイ」という演出方法で、神奈川県高校のレギュラー以外の部員になったり、敵高校の選手になったり。少ない人員の肉体と想像力を最大限使い、練習や試合シーンが表現されていた。

本作のハイライトは男子高校生の複雑な心象風景だ。祇園と石清水の2人の友情、そして石清水と御幸篤のかつてのチームメイトとの心のぶつかり合い、サボり癖の江文を優しく諌める松尾や、各校のキャプテンたちの心の交感といった10代特有のリアルな悩みや意地の張り合いは、共感せずにいられない。

祇園健次は「チビ」と言われると激昂し、誰彼構わず突っかかり、先輩に対して敬語を使えない。どこか純真な少年を、原嶋元久が表情豊かに演じていた。しかし、彼はコーチの進言で、チームの一員になろうとする。その心変わりも、キリッとした表情の変化と無垢な声質で見せていた。

石清水澄明役の伊万里有は、ラグビーを諦めきれない想いを「どんな人間だって主役になれる」というセリフを力強く言うことで、熱い決意を自分に言い聞かせるように自信なさげな姿勢から滲ませていた。

キャプテンの赤山濯也は、額から大粒の汗を垂らしながらタックルやスクラムの先陣を切るが、コーチ・籠信吾の登場で、自分の力不足を目の当たりにする。佐伯大地はキャプテンとしての意地と誇り、心の揺れまでをナンバー・8の背中で語るように演じていた。

若いエネルギッシュな役者陣が多い中で、定年後、神高のコーチとして現れた籠信吾はひたすら神奈川県高校のメンバーを鼓舞し勇気づける。荻野崇はいわば彼らのメンター役を魂で引き受け、会場に響く低音で澄み渡った声とともに貫禄をみせつけた。

そして、やはり西田シャトナーの演出が見逃せないだろう。肉体で見せるスローモーションや、マイムと言葉を巧みに使った「パワーマイム」など革新的な演出方法はここでも十分に活かされている。マイム俳優・演出家・振付家として名高い、いいむろなおきによるマイム指導は、舞台上に本物のラグビー選手たちがあたかも存在しているように見せた。

たとえ体が小さくても、心がくじけそうになっても、「誰もが主役になれる」チャンスがそこにはある。高校ラグビーの誰もが目指す花園という栄光のゴールを、がむしゃらに志す彼らに思わず目頭が熱くなることは確実だ。