マンガを掘りつくせ!Manga Diggin’  vol. 13

Review

栄光の“生徒会長”は誰の手に⁉ 美少年たちが繰り広げる学園政権闘争コメディ! 古屋兎丸『帝一の國』

栄光の“生徒会長”は誰の手に⁉ 美少年たちが繰り広げる学園政権闘争コメディ! 古屋兎丸『帝一の國』

Reader Storeの‟美の巨人”こと、ミケランジェロ古谷です。今回ご紹介する作品は、古屋兎丸(ふるや うさまる)の学園政権闘争コメディ『帝一の國』。とあるエリート高校で繰り広げられる、泥沼の“生徒会長選挙”を、華麗かつ耽美な作画とハイテンションな演出で描いた異色作です。 2017年4月に菅田将暉主演で実写化、さらに8月には2.5次元の舞台化と、物語さながらの勢いで話題を集めています。


『帝一の國 1 』

古屋兎丸
集英社

めざすは権力の頂(いただき)!少年たちが生徒会長選挙に死力を尽くす

物語の舞台となる「私立海帝高等学校」は、海軍兵訓練学校を母体とした超難関のエリート校で、これまでに政財官界に数多くのOBを輩出。その大きな特色は、学内の頂点に立つ生徒会長に“桁違いの特典”を与えていること。生徒会長になるだけで、日本一の国立大・東都大学の入学が約束されるのです。さらに、歴代の生徒会長経験者が集う人脈の園“海帝高校会長会”への入会を許され、内閣総理大臣や事務次官になることも夢ではない……。そう、海帝高校の生徒会長選挙とは、いわば“世の権力の頂”に立つための前哨戦なのです。“坂の上の雲”を目指す学生は、高校入学早々から周囲の取り込みに奔走し、自身の派閥を形成。有力な次期生徒会長候補の先輩にはすり寄り、同学年の候補者に対しては相手を蹴落とす機会を狙います。そんな生徒を教師は注意するどころか、「謀略に長けた者が将来トップを取れるのだ!」と大いに奨励。“クラスから生徒会長が出ようものなら自分自身に箔がつく”くらいに考えているのです。なんとまぁ、“きな臭い”高校なんでしょう(笑)。でもそんな“きな臭さ”を打ち消して有り余る生徒たちの‟美貌”の輝き。 時に、美しさは最高のデオドラントになるのです。

エリート校だけど奇人ばかり!? 海帝高校の生徒たち

本作には、数多くの個性的なキャラクターが登場。生徒会選挙は彼ら自身だけの話ではなく、その親世代を巻き込んで重層的に展開します。ここでは、物語のカギを握る主要人物をご紹介しましょう。

【CHARACTER/キャラクター】

♯001赤場帝一(あかば ていいち/連載開始時 1年生)

本作の主人公。生まれながらに海帝高校生徒会長になる宿命を背負わされ、「帝一」と名付けられた。自意識過剰で自己中心的な思考の持ち主。時に暴走して周囲を困惑させるが、本人はいたって真面目なつもり。海帝中学部で生徒会長を務め、主席で卒業したエリート。“自分の国をつくる”という壮大な野心を胸に抱き、父で通産官僚の赤場譲介が果たせなかった生徒会長の座を目指している。猛烈な負けず嫌いだが、幼少期は権力闘争とは無縁な性格で、ピアノ演奏を愛する大人しい少年だった。そんな帝一の極端な変化を、母や妹、幼馴染の白鳥美美子は心配している。涼しげな美少年だが、私服のファッションはかなり独特……。そのネクタイ、ぶっちゃけ太くない(笑)?

♯002 榊原光明(さかきばら こうめい/連載開始時 1年生)

海帝中学部では生徒会副会長を務め、高校入学後も帝一から絶大な信用を受ける唯一無二の参謀役。実家である榊原製作所の工場を利用して、帝一が窮地に追い込まれた際に助け船となる機械を“発明”するなど、そのサポートは常人の域をはるかに超えている。丸文字の筆跡が特徴で、猫が大好き。髪の毛の艶出しには余念がなく、指でクリクリいじるのが癖。語尾に「にゃん」までつけてしまう、とにかくラブリーな男の子♡ 姉が3人いる弟キャラ。

♯003 東郷菊馬(とうごう きくま/連載開始時 1年生)

自他ともに認める帝一の宿命のライバル。「聞き耳の名手」「情報の鬼」の異名を持つ。緻密なデータ収集を武器に、勝利のためには姑息な手段もいとわない。父の卯三郎は通産省トップの事務次官で、帝一の父・赤場譲介と海帝高校の生徒会長を巡り、熾烈な争いを繰り広げた過去がある(1票差の僅差で卯三郎が勝利)。一方、菊馬は中学部の生徒会長選挙で帝一に敗れており、高校での巻き返しに燃えている。

♯004 大鷹弾(おおたか だん/連載開始時 1年生)

文武両道かつ高身長のさわやかな好青年。有名人や資産家の子息ばかりの海帝高校にあって、中学時代から母子家庭の家計を支えてきた苦労人。高校入学を諦めていたものの、ふとしたきっかけで政界の大物からの支援を得て、海帝高校に入学。帝一や菊馬同様、生徒会長への足掛かりとなる「1年クラスルーム長」に選ばれたが、権力への執着心は皆無。生徒全員が楽しく高校生活を送れることだけを願っている。天性のカリスマ性で学内の支持を集めるスーパースターで、運まで味方につけてしまう‟持ってる男”。ニーチェやパスカル、ハイデッガーといった哲学書を好む読書家の一面があったり、視力が4.0だったり……。 いったい、どこまで‟持って”れば気が済むの⁉

♯005 氷室ローランド(ひむろ ろーらんど/連載開始時 2年生)

帝一の1学年先輩で、次期海帝高校生徒会長の筆頭候補。アメリカ人の父を持つハーフ。中学時代は相棒の駒光彦(こま みつひこ)と共に喧嘩に明け暮れる不良で、ついたあだ名は“金髪の狂犬”。しかし、喧嘩での限界を感じ、一念発起して海帝高校へ入学。現生徒会長の靴を舐めて忠誠心をアピールするなど、のし上がるためなら手段を選ばない。父親は世界的な大手自動車メーカー「ハリケーンモーターズ」の日本支局長。自身に取り入ろうと近づく帝一と“飼い主と忠犬”のような関係を築いていたが、ここでも親同士の因縁が明るみになり……。

♯006 森園億人(もりぞの おくと/連載開始時 2年生)

次期生徒会長候補の1人で、氷室のライバル。“知略”を武器に、状況を冷静沈着に見定めて的確な判断を下す。表面的にはクールを装っているが、大の負けず嫌い。プロを目指して、将棋に打ち込んでいた過去を持つ。自身を将棋の「歩」、華やかな他の候補者を“大きな駒”に例えつつも、逆転の一手を虎視眈々と伺う“勝負師”。図書室で本を借りようとするたび、図書カードに「大鷹弾」の名前を見つけ、彼の存在にいち早く興味を抱く。

♯007 白鳥美美子(しらとり みみこ/連載開始時 1年生)

帝一の幼馴染。おハイソな女子高に通う、典型的なお嬢さま。見た目に反して勝ち気な性格で、100mを12秒台で走る俊足を持ち、木登りが得意。幼少期、帝一の奏でるピアノの音色に魅せられ、か弱くいじめられがちだった彼を守るのが美美子の役目だった。以来、帝一を想い続けてきたが、“政争”にのめり込んでいく最近の帝一には不満を抱いている。帝一とはまったくタイプの違う明朗快活な大鷹と出会ったことで、心が揺れるように……。東郷菊馬からも好意を寄せられており、美しさが故に男たちの闘争劇に巻き込まれてしまう本作のヒロイン。

不格好でも“一生懸命な姿”はカッコいい!

たかが生徒会選挙、されど生徒会選挙……。海帝高校の男たちは己のプライドを賭けて、常に熱い闘いを繰り広げます。一生懸命が行き過ぎて、ときに滑稽だったり、ときに不格好だったり、捧腹絶倒のシーンが満載。でも、本人たちは、いつだって真剣そのものなのです。ボクは本作を読んで、改めて思いました。何事も中途半端が一番良くない、と。‟とことんやる”ことは、とても潔く、そしてカッコいい! 熱き若者たちが繰り広げる、とびっきりの青春群像劇をぜひお楽しみください。

【MIKE’s POINT】
ミケランジェロ古谷はココに注目!

“動くフェティシズム”の異名を持つ、私、ミケランジェロ古谷の独断と偏愛に満ちた物語のチェックポイントをご紹介♪

【Point ♯001】古屋兎丸の描く「唇」

登場人物たちのギラギラした眼力に圧倒される本作。もちろん、古屋兎丸先生の描く「瞳」も素晴らしいのですが、ミケは唇の造形に心を奪われてしまいました。若いキャラクターは男女区別なく、唇にしっかりとトーンが貼られ、少年たちもまるで紅をさしているよう。唇に色がついているおかげで、肌の白さや瑞々しさが際立つのです。みなさんは歌手の美輪明宏が“丸山明宏”と呼ばれていた時代をご存知でしょうか? 本作の唇を眺めながら、僕は丸山明宏のゾッとするような美しさを思い出しました。こんなに耽美な唇を描けるなんて……、「ふるや」という名字の人はきっと美的センスに優れているんでしょうね(遠い目)。

さて、ここでミケのベスト唇をご紹介。どこの巻にあるかは探してみてください!!

【Point ♯002】 第1ボタンから見えるこだわりのファッション

帝一、光明、菊馬、森園、美美子……。本作の主要キャラのほとんどが、シャツの第1ボタンを留めていることが気になった方も多いのではないでしょうか。みなさんは第一ボタンを留める派ですか? それとも外す派ですか? 何気ないことですが、“神は細部に宿る”と言いますよね。例えば、内に野心を秘める帝一は第一ボタンを留めています(完全に滲み出ていますが…)。どんなに汗をかいても、帝一はボタンを外しません。逆に、素直に感情を表すタイプの大鷹は、いつも第一ボタンを外しています。これはきっと古屋先生のこだわりで、彼らの性格を踏まえた演出なのでしょう。さらには、帝一の父・譲介がいつも袖にカフスを付けたフォーマルなシャツを着ていたり、ボウカラーシャツを美美子が好んで着ていたり……。シャツを起点にした、古屋先生こだわりのファッションにご注目ください。

【Point ♯003】 やっぱり気になる帝一の心の叫び!!

起伏の激しい帝一の感情。ある時は目を見開いた“ドヤ顔”で、またある時は般若のような怒りの表情で、あるいは悲しみの淵に突き落とされたような顔つきで……。喜怒哀楽を駆使して、心の声をこれでもかというくらいに叫びます。1話に1度、必ず登場する帝一の絶叫シーンをお見逃しなく!

©古屋兎丸 / 集英社

コンシェルジュ・プロフィール
ミケランジェロ古谷

Reader Storeのプロモーション担当にして、自称‟美の巨人”。美しさに水分を含ませることに長け、ウェッティーかつ半生な文章で‟温もり”をお届けするソウル・メッセンジャー。カラオケの十八番は、国安わたるの「ルネッサンス情熱」(『ミスター味っ子』主題歌)。エンドレス深呼吸!ミケのこの手は、いつも何か探し燃えてるぅ~♪

vol.12
vol.13
vol.14