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UUUMがYouTuberと歩むゲーム実況の真実①

UUUMがYouTuberと歩むゲーム実況の真実①

若い世代を対象に行われる憧れの職業意識調査で、ランキングの順位を前後させながらつねにその名を上位で目にするYouTuberの存在。

2016年12月に長崎県壱岐市で行われた同市のPR活動に、大食いの動画で人気のYouTuber木下ゆうかが起用。若年層に支持されるクリエイターといっしょに地域活性を目指す動きが多くなっている。

また、日本を代表するYouTuberの HIKAKINがライフワークを紹介する動画を公開し、実態が大きく注目された。

今回、日々話題をけん引するYouTuberの多くをマネジメントしているUUUM株式会社を取材した。同社はいったいどんな組織で、YouTuberと何をしようとしているのか。

当サイトのゲームコンテンツからのアプローチとして、ゲーム実況をテーマに同社ビジネス開発ユニットの取締役を務める高田順司氏に組織の考えかた、クリエイターたちとの関係性を伺ってきた。

また、ゲーム実況に焦点を合わせ、UUUM所属のクリエイターであるYouTuberを対象に10の意識調査を実施した。そこから見えてきた、UUUMの今後の可能性を3日連続でお届けする。

取材・文 / 深津庵


―――――――UUUM株式会社

2013年に業界初のYouTuberマネジメント企業として設立。従業員数は165名。HIKAKIN、はじめしゃちょー、佐々木あさひなど、トップクラスのYouTuberが所属している。

クリエイターのサポート事業やクリエイターの感性を活かしたプロモーションプランを提供するインフルエンサーマーケティング事業に加え、オリジナルのカジュアルゲームやオリジナルコンテンツの提供・運営を行うメディア事業などを展開。

海外マルチチャンネルネットワーク10社と業務提携し、グローバルへビジネスを拡大すると同時に、業界のパイオニアとして、健全な形でこの新たな市場を成長させている。今までにない楽しみを“コドモゴコロ”ある柔軟な発想でカタチにし、より多くの人々に“新しい体験”を提供、“セカイにコドモゴコロを”という企業理念の実現を目指している。

▲わずか1時間のインタビューだが、高田氏は多くの質問に答えてくれた

―――――――高田順司

UUUM株式会社取締役/ビジネス開発ユニット担当

1979年生まれ。音楽雑誌「CDジャーナル」の編集者を経て2007年、株式会社ミクシィ入社。「mixiラジオ」、「mixi公認アカウント」、「mixiページ」などのコンテンツサービス企画に従事した後、2013年にKDDI株式会社入社。音楽配信サービス「LISMO」、「うたパス」などの企画、編成を担当しながら、 2014年にはKDDI∞Labo第6期メンターを務める。

2015年、同社入社。


クリエイターと対等な立場で向き合いサポート

まずは、よく聞かれることかと思いますが、UUUMという社名の由来を教えてください。

高田順司氏(以下、高田) UUUMの由来は代表取締役である鎌田和樹が社名に悩み、困っているときに出た「うーむ」というため息を採用したものなんです。弊社は海外での仕事も多く、海外の方からも社名について聞かれるのですが、この話題はいいアイスブレイクになっていますね。

何かしら頭文字を取ったのかと想像したのですが、御社を象徴する柔軟なスタイルを感じられてとてもいいですね。

高田 それくらい面白がって仕事に向き合えたらいいじゃない、というメンタリティが出ていると思いますね。

子どもたちを中心に多くの注目を集めているYouTuber。HIKAKINさんやはじめしゃちょーさんを筆頭に、ジャンルを問わずさまざまなチャレンジを発信するクリエイターたちがいる中で、ゲーム実況を主体に活躍するクリエイターも日々増えています。御社における、彼らゲーム実況者の存在はどういったものなのでしょうか?

 

高田 弊社に所属しているクリエイターは約4500人ほどいまして、そのトップにHIKAKINたちがいます。クリエイターのポートフォリオとしてはマルチに取り組むものがいれば、ビューティーやゲーム、釣りやキッズ系など多様なジャンルが存在しています。そんな中で、ゲーム実況というジャンルは以前から人気があります。それに加え、日本はモバイルゲームの市場がとても大きく、たくさんの方がそうしたコンテンツに触れている。また、それに付随するマーケティングの魅力からもゲーム実況者の存在は大きなものといえます。

ゲーム実況というジャンルは海外でも大きな影響力を持っていますよね。

高田 そうですね、我々の事業体のMCN(マルチチャンネルネットワーク)で言えば、ガジェット通信さんもゲーム実況者をまとめていますし、海外には所属するクリエイターやコンテンツがゲームジャンルに特化したMachinimaというMCNがあるのも、そこにたくさんの可能性が秘められているからですよね。

▲多様化する動画ジャンルの中でもゲーム実況は大きな市場を握っており、世界規模の展開も注目したいと発言

YouTuberという存在が大きくなるのに合わせて、UUUMの名前を目にする機会も増え、そうした活動に興味を持つ人からの関心も高まっている。しかし、一方でその実態が見えてこない部分もあり、とくにYouTuberになりたい子を持つ親は気にかけていると感じます。

高田 芸能プロダクションのような、事務所とタレントの関係というものは弊社にはないですね。つねに対等な関係性であり、クリエイターがやりたいことを尊重しています。たとえば、彼ら自身が19時のゴールデンタイムの番組に出たいとか、月9のドラマを目指す俳優でもなく、極端に言えばテレビのオファーがあっても、テレビでは日常の動画のように話せないから出ないというクリエイターもいます。

メンタリティが根本的に違うと?

高田 そうですね、所属しているクリエイター各自が抱く配信することへの想い、目的が違うんです。我々はそうした信念を持っているクリエイターに合ったサポート体勢に注力しています。たとえば、再生数を伸ばしたいと悩んでいるとか、YouTube以外のチャレンジがしたいなど、クリエイターの考えを受け入れ、魅力を引き出すにはどうするべきかを考えます。

世間でよく“YouTube界の芸能プロダクション”といった枕詞を耳にしますが、そうではないことにたくさん取り組んでいるというわけですね。

高田 はい、我々は基本的に新しい文化や価値を作ることを目的としたコンテンツカンパニーだと考えています。その源泉にいるのが各クリエイターであり、YouTubeや動画にこだわるものではなく、ファンからの要望に応えるマーチャンダイジングもひとつのコンテンツですし、自分の実況が面白くなるようなゲームを作りたいという想いがあれば、それを形にしていく。我々のアセットを使ってビジネスの幅を広げていく会社なんです。

好きなことで生きていくという信念を尊重

多様なコンテンツを生み出す御社クリエイターの中で、ゲーム実況者の割合はどのくらいなのでしょうか?

 

高田 全体の3割くらいがゲームジャンルのクリエイターです。日本におけるモバイルゲームの市場は特殊で、『モンスターストライク』や『パズルアンドドラゴンズ』といったものを筆頭に、コンソールと比較しても大きな存在だと感じています。また、海外に目を向けるとe-sports規模の市場もあり、言語の問題はあっても動画には世界に通用するポテンシャルがあり、必然的にプレイヤーとそれを扱う実況者の数は増えていく。しかしその一方で、日本と海外ではゲーム実況に対する考えかたが全然違っているのも現状です。

権利やネタバレといった面で?

 

高田 たとえば日本の場合、プロモーションはやるけどゲーム全体に触れる実況はダメということもある。フェアユースに関する考えかたの違いから、海外と同じようにというのはどうしても難しい。しかし、先ほども話題に出たモバイルゲームのような、日本だからこそ観られている独自のゲーム実況も存在しているんですよね。

先日、所属する26名のゲーム実況者にアンケートを取らせて頂きました。その回答を比較すると取り組んでいる目的や、それがビジネスなのか趣味なのか明確に定まっていない回答も見られました。そうしたゲーム実況者を、もう1段階上のステージに上げ、ビジネス転換させるといったアプローチは可能なのでしょうか?

 

高田 この市場はまだできたばかりなんですよね。そうした中で始めて、半年でチャンネル登録者数が30人前後から100万人に達成するゲーム実況者もいる。そんな成長スピードなので、Googleさんの広告キャンペーンにもあった“好きなことで生きていく”というフレーズにある通り、皆さんが好きなようにやってきた結果、素人とプロの境界線がどんどん曖昧になってきているんですよね。もちろん、仕事をするうえでのプロ意識は必要で、クライアントからの案件を受け、そうした経験を積み重ねていくことで研磨されることはあっても、根底にあるのは、「好きにやって何がいけないの?」という想いのほうが強いんじゃないかと感じています。

基本は本人が楽しいと思うことを尊重、相談を受ければサポートするということですね。

高田 たとえば、所属しているクリエイターに、『マインクラフト』を扱っているHaruという登録者数7万人ほどの者がいるのですが、本人は高校1年生で、YouTubeを中心に将来やっていこうとすでに決めているようです。

自分が高校1年生だったころ、そんな将来像なんて持てませんでしたね。ちなみに、Haruさんは今回のアンケートに丁寧に答えていただいています。とても熱心なことは、そうした面からも伺えますね。

高田 さきほどの話題から言えば、彼はとても明確な目的を持ったクリエイターというわけです。自分は実況者としてやっていくという想いにしっかり到達していますよね。以前、『マインクラフト』のイベントがロサンゼルスでありまして、英語も喋れなければパスポートも持っていなかった彼が自分でしっかり準備して単身渡航したのを見ていて、好きなことをやるパワーのすごさを実感しましたね。今後、各クリエイターがどんな道を歩むのか、その先に待っているものが何なのかはわかりませんが、ゲーム実況というコンテンツに関していえば、北米は日本よりも数年先を進んでいるので、それをベンチマークに次のステージを模索することも重要かもしれません。

▲高校1年生ながらしっかりと将来のプランを考え、独自の世界観を『マインクラフト』で表現しているHaruさん。最近は視聴者といっしょに作る『マイクラ』動画をテーマに新たなチャレンジを進めている

視聴者といっしょに楽しむゲーム実況作りが大切

アンケートの中には「プレイ時間中にクリアできない」、「ゲームは得意じゃないけど好きだから配信している」というピュアな声も多くありました。

高田 彼らはプロゲーマーではないのでそれでいいんです。それこそ、HIKAKINもゲームチャンネルを持っていますがプロゲーマーではありません。しかし、視聴者と同じ目線で楽しんでいる様子が面白く、そこが支持されているんですよね。

幼少期に経験した、友だちと自宅でゲームを楽しんでいた思い出、あのときの空間をゲーム実況で追体験できるのも魅力だと思っていて、「なにやってんだよ」とツッコミたくなる要素も含めてゲーム実況の楽しみかたなんだな、と。

高田 そうですよね、攻略情報を知りたいというわけではない。わかりやすいタイトルでいえば、『モンスターストライク』がそうですが、どっちに引っ張るかを悩んでいる様子からゲーム実況者の個性が出てくる。また、視聴者の皆さんも同時にあれこれ考えながら観ることで一体感が増して会話にもなりやすい。

明確なクリアのあるゲームの場合、最後までプレイすることを基本としているのか、それとも本人が限界だと感じればいつでも終了していいのでしょうか?

 

高田 とくに諭すことはありませんね。弊社の瀬戸弘司や“カズゲームズ”のカズも、『マインクラフト』の動画を数多く投稿していますが、やはりふたりとも最初は『マイクラ』初心者だったんですよ。しかし、継続していくことで彼らのプレイヤースキルが着々と磨かれていく。先ほどのお話にもあった通り、まずは本人が楽しみ、実況しながら視聴者の皆さんにアドバイスを求め対話を交えていく。寄せられた声を参考にして次回に反映していくことで、いっしょに成長していくのも実況の魅力。攻略を主体としていないのであればそれでいいんだと思います。

視聴者のことを考えた動画作りが大切ということですね。

高田 その通りですね、視聴者が何を求めているのか、何をすれば喜んでくれるのかという点に関しては、クリエイター全員が間違いなく多方面へのアンテナをつねに張り巡らせている。そこから、自分のプレイスタイルに合ったタイトルを探してすぐに着手しています。もちろん、彼らも表現者なのでやりたいことがありますから、楽しいと想える範疇のなかでしっかり期待に応えようと日々努力しています。

▲通称“カズクラ”と呼ばれる“カズゲームズ”のカズさんによる『マインクラフト』実況では、視聴者のコメントを活かしながらゲームを楽しんでいる。現実でもDIYスキルが高く、そうした様子を視聴できるカズチャンネルはとても面白い


今回は、UUUMの基本情報と市場の捉えかた、クリエイターとの関係性をお伝えした。具体的な数字はないものの、大きな市場の規模感も把握できたと思う。次回の記事では、このフィールドで発揮される、UUUMが備える底力と可能性を探っていく。

UUUM株式会社オフィシャルサイトhttp://www.uuum.jp/

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