LIVE SHUTTLE  vol. 154

Report

MISIAの“Candle Night”。柔らかな灯りの中、彼女が歌声に込め、願い続けること

MISIAの“Candle Night”。柔らかな灯りの中、彼女が歌声に込め、願い続けること

Misia Candle Night 2017 –鹿児島 仙巌園–
2017年5月27日 仙巌園

MISIAはこれまで数多くの世界遺産で“Misia Candle Night”を開催してきた。柔らかなキャンドルの灯りの中で、MISIAの歌声を聴きながら、家族や恋人の幸せや世界の平和を祈る。“Misia Candle Night”はこれまで、富士山を望む河口湖、沖縄・中城(なかぐすく)城址、高野山檀上伽藍などで行なわれてきた。

そして今回の舞台は鹿児島の仙巌園。ここはもともと島津家の別邸として建てられた後、幕末期に反射炉などの工業施設が造られて、明治期の日本の産業革命の発端の一つとなった。人々は文明と引き換えに何を失い、これから何を守っていけばいいかを問いかける“Misia Candle Night”のコンセプトにぴったりの場所ということで、会場に選ばれたのだった。

仙巌園は、錦江湾をはさんで対岸に桜島が見える絶好のロケーションにある。その中庭に設置されたステージの上空は快晴に恵まれて、快適な環境の中でのライブのスタートとなった。

バンドはドラム、ベース、キーボード、ギターの4リズムに、サックス、3人のコーラスの8人。バンドに少し遅れて登場したMISIAを待っていたように、1曲目のデビュー曲「つつみ込むように・・・」のイントロが鳴った瞬間、会場から喜びの声が上がった。20周年に向けてカウントダウンに入ったMISIAのファンとしては、こたえられないほど嬉しいオープニングだ。

実は今回の“Misia Candle Night”は当初は3月に予定されていた。だがMISIAの体調不良により延期になり、この日を迎えたのだった。それだけにMISIAにとってもオーディエンスにとっても、待ちかねたライブとなった。なので「つつみ込むように・・・」でのオープニングは、いろいろな思いを一気に晴らすものだったに違いない。オーディエンスたちは立ち上がって、手にしたキャンドルをいったん地面や椅子に置いてハンドクラップでMISIAの歌に応じる。MISIAはそんなオーディエンスの気持ちに応えて、歌の終わりで“超ロングトーン”を披露する。あまりに声が長続きするので、途中でオーディエンスがザワザワし始め、MISIAが歌い切ると大歓声が上がったのだった。

MISIAは今年2月に“THE TOUR OF MISIA LOVE BEBOP”を終了。このツアーにはコンピュータを駆使したダンサブルなパートがあり、壮大なスケールのエンターテイメントになっていた。一方、“Misia Candle Night”は生演奏が主体になっていて、歌の微妙なニュアンスやミュージシャンとの掛け合いが楽しめるのが醍醐味だ。

オープニングから明るくハッピーなポップで楽しませた後、4曲目の「真夜中のHIDE-AND-SEEK」で生演奏がその真価を発揮する。重実徹のピアノや、鈴木あきおのサックスが大人の雰囲気を醸しだす。MISIAはそうした演奏に敏感に反応して、歌でアドリブを繰り出す。さらには、オーディエンスたちがステージ上の掛け合いに歓声を上げる。彼女のライブならではの、アーティストとファンの交す密度の濃い音楽的コミュニケーションがさすがだった。

「ようこそいらっしゃいました。今回は、私の体調不良により延期してしまい、ご迷惑とご心配をおかけしてしまい、本当にごめんなさい」。MISIAの最初の挨拶は、お詫びのコメントから始まった。このストレートさが、何ともMISIAらしい。“Misia Candle Night”では、コンセプトに合ったカバー曲を歌うのが恒例となっている。昨年の奈良・春日大社では、地元出身の堂本剛の「街」を歌ったりした。MISIAは休養期間中に、ファンからカバー曲のリクエストを募ったという。その第1位は、映画『SING』の吹き替え版でMISIAが歌った曲だった。早速、上位人気曲のカバーを披露する。レナード・コーエンの「Hallelujah」と、スティーヴィー・ワンダーの「Don’t You Worry ’Bout A Thing」では、世界的名曲をMISIAの声で聴くという幸運を味わったのだった。

さらには「歌詞も“Candle Night”にピッタリの歌です」と言って、やはりリクエストの多かった玉置浩二の「メロディー」をカバーする。そろそろ暮れてきた空には、星が輝き始めている。

ここからの中盤は、バラードが続く。「忘れない日々」、「オルフェンズの涙」、「逢いたくていま」では、オーディエンスがキャンドルを高く掲げて歌に合わせて左右に動かすと、信じられないような美しい光景が広がる。その景色がステージ上から眺めているMISIAに大きなインスピレーションを与えたようで、彼女の歌がどんどん深化していく。

極致は「Everything」だった。おそらくMISIAはこの歌を何百回も歌っただろう。僕もこの歌をライブで何十回も聴いた。その中でもピカイチの「Everything」だった。バンドの演奏の素晴らしさもさることながら、MISIAのリラックスした歌声が伸び伸びとしていて、“ベテランなのにフレッシュ”という驚くべきボーカリゼーションが聴けたのだった。

それは、聴いていて心が温かくなるのを感じたほどだった。だが実際には、僕はこの歌あたりで吹いてくる風がやや冷たく感じていた。終演後MISIAに聞くと、「Everything」を歌っているときに「ポカポカ温かい風が吹いてきたように感じました」と語ってくれた。彼女が感じた温かさが、歌を通じてオーディエンスに伝わることがあるのだろうか。そんな奇跡のようなことが起こった「Everything」だった。

ライブはいよいよ終盤に入っていく。歌うMISIAも、演奏するミュージシャンたちも、会場を埋めたオーディエンスたちも、いよいよ音楽に集中していく。その集中を助けているのは、やはりキャンドルの柔らかな光だろう。揺れ動く光が全員の心をリラックスさせ、恋人のことや世界のことに思いが飛んでいく。

「あなたにスマイル:)」ではMISIAのリードするコール&レスポンスで、みんなが「鹿児島」や「熊本」や「九州」や「日本」、そして「世界」、「宇宙」へと声を合わせる。そんな思いを受けとめるように、鎮魂と復興の歌「明日へ」をMISIAは朗々と歌った。クライマックスは、もうすぐだ。

最後のナンバーは、“Misia Candle Night”のテーマソング「Candle Of Life」。この歌にたどり着くまでに、空ではいくつもの流れ星が彩る。ミュージシャンもたっぷり感情を込めた演奏やソロで1日の終わりを彩る。人の願いも、自然の出来事も、すべてはMISIAの歌に委ねられる。

キャンドルを消すときが来た。MISIAは、キャンドルを吹き消すときに願いが叶うこと、できたら自分以外の誰かのための願い事を入れて欲しいと提案して、みんなが一斉に灯りに息を吹きかけた。感動的な1日の終わりだった。

歌の力はもちろん、世界に目を配り、音楽のエネルギーをできる限り弱い者へと注ぐMISIA。音楽に乗せてこそ、伝わるメッセージがある。それを信じるこの素晴らしいアーティストは、間もなくデビュー20周年を迎える。

文 / 平山雄一

Misia Candle Night 2017 –鹿児島 仙巌園–
2017年5月27日 仙巌園

セットリスト

01.つつみ込むように…
02.MELODY
03.SUPER RAINBOW
04.真夜中のHIDE-AND-SEEK
05.Hallelujah
06.Don’t You Worry ‘Bout a Thing
07.メロディー
08.忘れない日々
09.オルフェンズの涙
10.逢いたくていま
11.Everything
12.幸せをフォーエバー
13.あなたにスマイル:)
14.明日へ
15.Candle Of Life

ライブ情報

MISIA SUMMER SOUL JAZZ 2017

7月1日(土) Zepp Nagoya
7月2日(日) Zepp Nagoya
7月8日(土) Zepp DIVERCITY
7月9日(日) Zepp DIVERCITY
7月15日(土) Zepp Namba(OSAKA)
7月16日(日) Zepp Namba(OSAKA)

MISIA

長崎県出身。その小さな体から発する5オクターブの音域を誇る圧倒的な歌唱力を持ち、「Queen of Soul」と呼ばれる日本を代表する女性歌手。MISIAの名前の由来にもなった、”ASIAの方々にも音楽を届けたい”との想いの通り、日本国内にとどまらず、その歌声はASIAを越え世界でも賞賛の声を浴びる。
1998年のデビュー曲「つつみ込むように・・・」は日本の音楽シーンに強い影響を与え、ジャパニーズR&Bの先駆者と言われる。その後発表された1stアルバム「Mother Father Brother Sister」は新人ながら、300万枚の異例のセールスを記録。
以降、「Everything」「逢いたくていま」等、R&Bというジャンルにとらわれず、バラードの女王の名も確立させた。その実力は日本国内のみならず、アジア強いては世界からも認められる。デビュー15周年を経て、年々音楽に対する追求心はとどめを知らず、世界を舞台に様々な作品を発表。さらに彼女は2004年に、女性ソロアーティストとして初の5大ドームツアーを成功させた。その4年後には日本をはじめ、台湾・上海・シンガポール・韓国・香港の5都市を含むアジアアリーナツアーを敢行。2009年から2010年にかけて行われたロングツアーを含め累計250万人以上の観客を動員し、日本の音楽シーンに衝撃を与えたといっても過言ではない。
2013年から2014年にかけて行った15周年記念ツアーでは、台湾・香港・アジアを含むMISIA史上初の全77公演を実施。ますます磨きのかかったパフォーマンスを披露し、多くの人々に感動を与えた。デビュー20周年を目前に、今後も更なる精力的な活動が期待される。

オフィシャルサイトhttp://www.misia.jp/

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