LIVE SHUTTLE  vol. 155

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back number 構成の妙でベストセラー・アルバム『アンコール』の名曲たちがいっそう輝いた夜

back number 構成の妙でベストセラー・アルバム『アンコール』の名曲たちがいっそう輝いた夜

All Our Yesterdays tour 2017
6月3日(土) さいたまスーパーアリーナ

前方に下がったLEDディスプレイに立体映像が映り、その奥に演奏する彼らが居るという、最新技術を駆使した新鮮なオープニング。曲はメジャー・デビュ−を飾った「はなびら」だ。当時、CDの帯には“切なすぎる歌詞。美しすぎるメロディ、涙なくしては聴けないバンド”というコピーがあった。そして、泣ける歌だけにとどまらないことを証明したのが、次に演奏された出世作、「高嶺の花子さん」だろう。普遍的テーマを巧みにソングライティングし、新鮮さをもって伝えた清水依与吏のスキルが、見事に輝いた作品だ。

この夜、さいたまスーパーアリーナで演奏されたのは、昨年末にリリースされたベスト・セレクション・アルバム『アンコール』からの作品達だ。つまり名曲がズラ〜リ、である。となるとイントロが鳴った瞬間に大歓声、また次も…、みたいな進行になりがちだが、そこは周到に、曲と曲の繋ぎ方などに工夫がみられた。

清水はいつも、台本に書かれたような言葉は使わずMCをこなす。バンドにとって最大規模の会場でのワンマンとなったこの日だが、どうだ俺たち凄いだろう、ではなく、誰も来てくれなかったらどうしようと思ったけど「助かります」みたいなことを、満員の場内に向け、ユーモアと本音を混ぜつつ言っていた。ベストのタイミングのツアーとなると、とかく“これまでのまとめ”的になるところ、さらに前へ、前へ前への気持ちもちゃんとファンに伝えた。

コーラスの感じもあって、メンバー3人全員の歌、という雰囲気の「花束」から、夏を前にして聴く「クリスマスソング」へ。歌は時空をワープして、暦を変える。ダイヤモンドダストのような細かな光が天井から降りそそぐような演出が実に綺麗だった。「黒い猫の歌」ではスクリ−ンに歌詞が出てきて、客席の参加を誘う。「アップルパイ」は、ともかくステージで演奏している彼らが楽しそうであり、その“楽しそう”が客席にも伝染するタイプの曲なんだろう。

小島和也のベースの四弦が、アリーナの巨大な空間を震わすところからスタートしたのが「MOTTO」。ハードなリフでドライブしてく曲では、ライブを重ねてきた彼らの実力が、遺憾なく発揮される。「SISTER」では、栗原寿のドラム・ソロが導入となっていく。もちろん清水のギターが曲のアウトロなどでギタリストとしての個性を伝える場面もあり、こうして担当楽器を通じてそれぞれのパーソナリティが顕われていくというのも、大切な場面、なのだと思う。

もちろん、それぞれの話が楽しくないわけじゃない。個人的には小島の長めのトークも好きである。今回は、知人が出演するぎゅうぎゅうが予想されるライブ・ハウスへ行く前に、時間があるからゲーセン寄ったら、そういう時に限ってクレーンゲームで“大物”をゲットし、ぎゅうぎゅうのライブ・ハウスで置き場に困った話だった。

さらに村田昭(キーボード)、矢澤壮太(ギター・コーラス)、藤田顕(ギター)のサポ−ト陣が、適材適所、メンバー三人とともに作品の世界観を盤石に築き上げていったことも忘れてはならないだろう。

「幸せ」を演奏する前だったと思うが、スクリーンに詩が映し出された。その文字を追ってからこの歌を聴くと、すこし角度を別に聞こえてくるようにも思えた。でも、この歌を聴いて涙の堤防が決壊していくのは同じだけど。歌詞中の“背中押す”という動作に、他の誰のどの歌より切ない意味合いを持たせているのが、この歌だろう。「光の街」と「stay with me」を続けて演奏した場面も凄く良かった。特に「光の街」では、この歌に出てくる流れが穏やかな川のような時が、ここさいたまスーパーアリーナを満たしていった。ちなみにこの2曲の曲順は、『アンコール』も同じであり、本人達も、この繋げ方に思い入れがあったのだろうか…。

本編の最後の清水のMCの時、こんなことがあった。もっと理想的なライブを頭に描いてたけど、それが果せなかったことに彼は言葉を詰まらせ、背中を向け、しばし間があり、でも最後は客席と正対しつつ、もっとカッコいいバンドになって「戻ってくる」と宣言した。

しかしこの日の演奏に、みんなを大いに興奮させ、感涙させもしたわけで、だから彼の発言は、あくまで理想の二文字にこだわってのことだろう。ライブというのは生物で、だから面白く、易々と理想へ辿り着けたなら、その先やることが無くなってしまう。

でもアンコールではけろっとしていた。「世田谷ラブストーリー」に続いて「日曜日」。後者が前者の後日談だったらいいのになぁ、住んでる場所はもちろん世田谷のままで…、などと思いつつ、まだ踊れる人は「踊って帰って」と最後の最後に「海岸通り」を。「青い春」もそうだけど、この曲は客席が、地響きあげるかのように盛り上がる。今回のツアーは『アンコール』収録曲を演奏したライブだったけど、この作品は未収録だ(あと16曲目の「君の恋人になったら」も)。最後の最後にそういう曲を選んだことに、何かのメッセ−ジ性を感じないこともなかったが、大満足で会場をあとにした。

取材・文 / 小貫信昭 撮影 / 佐藤祐介

All Our Yesterdays tour 2017
6月3日(土) さいたまスーパーアリーナ

セットリスト
1.はなびら
2.高嶺の花子さん
3.003
4.そのドレスちょっと待った
5.花束
6.クリスマスソング
7.fish
8.黒い猫の歌
9.アップルパイ
10.MOTTO
11.SISTER
12.幸せ
13.助演女優症
14.恋
15.ハッピーエンド
16.君の恋人になったら
17.光の街
18.stay with me
19.繋いだ手から
20.青い春
21.スーパースターになったら
ENCORE
1.世田谷ラブストーリー
2.日曜日
3.海岸通り

その他のbuck numberの作品はこちらへ

back number

清水依与吏(Vo・G)、小島和也(B・Cho)、栗原寿(Dr)の3人組。
2004年、群馬にて清水依与吏を中心に結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、2007年現在のメンバーとなる。2009年2月 1stミニアルバム『逃した魚』リリース。2010年6月 1stアルバム『あとのまつり』リリース。2011年4月 メジャーデビューシングル『はなびら』リリース。同年10月 2ndアルバム『スーパースター』リリースし、12月に前古書く4カ所をまわる初のツアー“スーパーツアー2011”開催。2012年11月 3rdアルバム『blues』リリース。
2013年9月 初の日本武道館公演「live at 日本武道館-stay with us-」開催。
2014年3月 4thアルバム『ラブストーリー』リリース。2015年12月 5thアルバム『シャンデリア』リリース。2016年1月から6カ月をかけて全国のホール&アリーナ全国32か所39公演をまわるツアー「back number tour 2016 “ミラーボールとシャンデリア”」を開催。同年12月、初のベスト・アルバム『アンコール』をリリース。

オフィシャルサイトhttp://backnumber.info/

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