山口洋のSeize the Day/今を生きる  vol. 15

Column

古市コータロー(ザ・コレクターズ)とHOMETOWN

古市コータロー(ザ・コレクターズ)とHOMETOWN

R&Rの魔法に導かれ、10代でミュージシャンという生き方を選んだ二人が、それぞれ別の道を歩き、30年の時を経て出会う。
不思議な符合は必然なのか。福島県相馬市支援プロジェクト“MY LIFE IS MY MESSAGE”で二人が生み出したヴァイブスは、懐かしく、失われることのない“何か”を、鮮やかに中空に描いて見せた。
HEATWAVE 山口洋が書き下ろす好評連載!


古市コータロー(敬称略)ほど、自分が暮らしている街を愛しているミュージシャンを見たことがない。

その街で、ともに時間を過ごしたのはたったの一度きりだし、スタジオで一緒に演奏しただけで、飲みに行ったわけでもないけれど、そのホーム感は半端なかった。僕は今暮らす街に10年住んでいるけれど、あのオーラをまとうにはあと30年はかかりそうだ。「それじゃ、お先に」と、夕暮れの街に消えていくコータローくんの後ろ姿は、まるで昭和映画のワンシーンみたいだった。ほんとだよ。

今や絶滅しつつある、地方ならではの豊かなコミュニティー。稀に、あらゆる職種が小さな町で事足りていて、人々が互いにファンクションしあっているのを見ることがあるけれど、それはごく小さな町に限ったこと。彼の場合、それが大都会で、おまけに生業がロック・ミュージシャンってところに、驚きと羨望の気持ちを覚える。つまり=想像だけれど=彼がロック・ミュージシャンとして、医者や八百屋のように、街の中でファンクションして=必要とされて=いることに。

その街を訪れるのは実に20年振りだった。かつてのその街は猥雑かつ、欲望が渦巻いているように感じて、馴染めなかった。たぶん、僕の感受性にも問題があって、斜めからモノを見ていたんだろう。けれど、再訪してみると、その猥雑さをふくめて、きわめて人間的な愛おしさに満ちていた。都会は決してドリームキラーじゃない。夢を殺しているのは自分自身なのだと、その街が僕に語りかけた。行き交う人々は多様性に満ちていて、どんな個性も受け入れるだけの懐があるように見えた。まるで昔のNYのダウンタウンみたいに。

懐に居ると、カンガルーの袋に抱かれているような不思議な安心感を覚えた。街の名前に「袋」という字も含まれていて、僕は完全に僕で居ることができた。結局、コータローくん不在のまま、友人と僕は終電まで昭和な居酒屋の袋に抱かれていた。まるでブレードランナーのように。今日をそれぞれに生きる人たち。生活という心地よさがそこにはあって、愛おしかった。

僕の故郷に、日本中に、かつてそんな風景があったはずだ。子供の頃、ステテコ姿で一日じゅう道ばたで将棋をさしているおっさんが居た。無精髭が生えたオカマが商店街を歩いていた。じいさん達は風流で、いなせなハットと仕立てたスーツにステッキが良く似あっていた。大人になるのは悪くないと僕は思った。

高度成長と核家族化がこの国を何だか世知辛くした。老人の居場所はなくなり、子供と老人は切り離され、智慧は分断された。大型郊外店の進出にともなって、町の風景は一変する。原風景。僕らはまだいい。けれど、これからの世代にとって、原風景が大型郊外店ってのは寂しすぎる。人の暮らしの匂いがしないなんて。

僕らはほぼ同級生。離れた場所で、似たような音楽に衝撃を受けて育った。バンドのキャリアも似たようなもの。そして、出会うまでにかなりの年月を必要とした。近いところに居たはずなのに、やたらと遠廻りして、会ってみれば、やっぱり近かった気がする。

photo by Mariko Miura

彼の演奏から受けとる不思議な感覚。これまでの道程を聞いたことはないけれど、なんとなく音楽にそれを感じて、いろんなことが腑に落ちてゆく。それはHOMETOWNにまつわる感覚なのかな、と想像してみる。胸の深いところにある、一度失った者が分かるあの感じ。でも、

たいせつなものはこころの中にあるから、何も失ってはいない。

HOMETOWN。それは街だけではなく、音楽、ロックンロール、バンドを続けること、あるいは僕らのマシンガン、エレクトリック・ギターと言い換えてもいい。僕らは音楽にしがみついて生きてきた。振り落とされないようにね。同じ時代に、違う場所で、闇の中で。

素晴らしきかな、バンドマンのギター。バンドの中で和音を出しているのは彼だけ。たった6本の弦で観客を30年間熱狂させ続けてきた男にしか出せない音なんだよ。云ってること、分かるかな? それって、超絶な技巧なんだよ。武道館に、たった2本のギターと1台の小さなマーシャルだけで立った男。潔かった。

バンドは小さな社会。そしてHOMETOWNでもある。個性と協調性のバランスを取るのはひどく難しい。些細なことでバンドは簡単に破滅する。運もいるけど、覚悟もいる。何より、夢がなきゃやってらんない。情熱って、継続する志のことだよ。続けることが何よりも難しい。あの武道館のステージは僕をひどく励ました。HOMETOWN。僕にもあるからね。もうちょっと頑張ってみるよ。どこまで行けるか分からないけど。分からないからこそ、行ってみるよ。

誰にもあるはずのHOMETOWN。その感覚を教えてくれたのが彼。僕もそれをたいせつにする。こころから、ありがとう。あ、さいきんコータローくんと50/50ってユニットやってるから、観にきてね! きっと未来の昭和の風景、見えると思うよ。

photo by Mariko Miura

古市コータロー:1964年、東京都生まれ。結成30周年を迎えたザ・コレクターズのギタリスト。“KOTARO AND THE BIZARRE MEN(コータロー&ザ・ビザールメン)”や、浅田信一とのユニット“ANALOG MONKEYS”などでも活動。ソロ活動も展開している。愛用しているギターはリッケンバッカー、ギブソンES-335、テスコTG-64。2009年より、加藤ひさし(ザ・コレクターズ)とともに出演するポッドキャスト『池袋交差点24時』を配信、月刊40万ダウンロードを記録している。現在、新作『Roll Up The Collectors』を携えて、11月3日まで全国32ヵ所を回るツアー〈THE COLLECTORS 30th Anniversary TOUR〜Roll Up The Collectors〉の真最中。3月の初の日本武道館公演の模様を収めた『THE COLLECTORS live at BDOKAN“MARCH OF THE MODS”30th anniversary 1 mar 2017』が6月7日に発売されたばかり。


ザ・コレクターズ

加藤ひさし(vocal)、古市コータロー(guitar)、山森“JEFF”正之(bass)、古沢“cozi” 岳之(drums)。1986年に加藤と古市が中心となって結成。1987年11月にアルバム『僕はコレクター』でメジャー・デビュー。1991年1月にリズム隊のメンバー・チェンジを行ない、小里誠(bass)と阿部耕作(drums)が加入。2014年3月末、ベースの小里が脱退、山森“JEFF”正之が加入。2016年4月、結成30周年に日比谷野外大音楽堂公演を開催。6月にドラムの阿部が脱退、9月に30周年記念CD BOX SETとベストアルバムを発表、12月に22枚目のオリジナル・アルバム『Roll Up The Collectors』をリリース。2017年3月には初の日本武道館公演を実現。
オフィシャルサイト 


アルバム『Roll Up The Collectors』

2016年12月7日発売
初回盤(CD+DVD)COZP-1266-7 ¥4,630(税別)
通常盤(CD)COCP-39781 ¥2,593(税別)


Blu-ray&DVD『THE COLLECTORS live at BUDOKAN “MARCH OF THE MODS”30th anniversary 1 Mar 2017』

2017年6月7日発売
Blu-ray+CD(Blu-ray1枚+CD2枚)COZA-1351〜3 ¥8,000(税別)
DVD+CD(DVD1枚+CD2枚)COZA-1354〜6 ¥5,000(税別)
※Blu-rayのみ、加藤ひさし&古市コータローによるオーディオコメンタリー、ワッペン(2種類)、ラミネートパス、当日のドキュメンタリー映像などを収録した豪華仕様

ザ・コレクターズの楽曲

著者プロフィール:山口洋(HEATWAVE)

1963年、福岡県生まれ。1979年に結成したHEATWAVEのフロントマン。1990年、アルバム『柱』でメジャー・デビュー。1995年発表のアルバム『1995』には、阪神・淡路大震災後に作られた「満月の夕」が収録され、多くのミュージシャン、幅広い世代に歌い継がれている。アイルランドの重鎮、ドーナル・ラニー、元モット・ザ・フープルのモーガン・フィッシャーら海外のミュージシャンとの親交も厚い。2003年より渡辺圭一(bass)、細海魚(keyboard)
、池畑潤二(drums)と新生HEATWAVEの活動を開始。5月には14作目にあたるアルバム『CARPE DIEM』をリリース。東日本大震災後に立ち上げた福島県相馬市を応援するプロジェクト“MY LIFE IS MY MESSAGE 2017”は古市コータロー、仲井戸“CHABO”麗市、矢井田瞳らとともに南青山MANDALAで5日間のライブを開催。熊本地震を受けてスタートした「MY LIFE IS MY MESSAGE RADIO」(FMKエフエム熊本 毎月第4日曜日20時~)は、6月25日、“HOMETOWN”というテーマでオンエア予定。7月12日からは全曲リクエストによるソロ・アコースティック・ツアー2017『YOUR SONG』をスタート。
オフィシャルサイト

ALBUM『CARPE DIEM』

2017年5月17日発売

山口洋(HEATWAVE)solo acoustic tour 2017『YOUR SONG』
7月12日(水)大阪 南堀江 knave
7月14日(金)小倉 GALLERY SOAP
7月15日(土)広島 音楽喫茶 ヲルガン座
7月17日(月・祝)福岡 ROOMS
7月20日(木)名古屋 TOKUZO
7月21日(金)京都 coffee house 拾得
7月23日(日)長野 ネオンホール
7月26日(水)東京 STAR PINE’S CAFE
7月28日(金)仙台 Jazz Me Blues noLa
7月30日(日)千葉 Live House ANGA
詳細はこちら


緊急ナイト
6月27日(火)新宿レッドクロス
詳細はこちら

Mix Up & Blend
7月1日(土)Club Junk Box Sendai
詳細はこちら

「満月の夕を福島で。」
7月9日(日)猪苗代野外音楽堂
詳細はこちら

RISING SUN ROCK FESTIVAL in EZO
8月12日(土)石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ〈北海道小樽市銭函5丁目〉
*MLIMMとして仲井戸“CHABO”麗市、宮沢和史とともに出演
詳細はこちら

50/50(山口洋と古市コータローのスペシャル・ユニット)初LIVE
9月26日(火)吉祥寺STAR PINE’S CAFE
*SPC店頭販売/SPC HP予約 6月17日(土)16:00〜
予約フォーム

HEATWAVEの楽曲はこちらから
vol.14
vol.15
vol.16