原田泰造xコトブキツカサの<試写室噺(ばなし)>  vol. 11

Interview

『ハクソー・リッジ』が描く新しい英雄像に胸熱。メル・ギブソン監督とアンドリュー・ガーフィールドの凄みに原田泰造とコトブキツカサがシビレた!

『ハクソー・リッジ』が描く新しい英雄像に胸熱。メル・ギブソン監督とアンドリュー・ガーフィールドの凄みに原田泰造とコトブキツカサがシビレた!

銃を持たずに戦場に向かい、数多くの命を救い続けた兵士という衝撃の実話を描いた『ハクソー・リッジ』。苛烈な戦闘シーンを余すところなく描写し、奥深い人間ドラマにも円熟味を感じさせたメル・ギブソン監督は、この作品でアカデミー賞監督賞にノミネートされている。戦争映画であり、実話の映画化でもある『ハクソー・リッジ』を、原田泰造さんとコトブキツカサさんが様々な角度から語りあいます。


原田 これはもうシビレたよ! ストーリーも面白いし、俳優の演技も素晴らしかった。なかでも一番すごいなと思ったのは監督だよね。

コトブキ メル・ギブソン監督、大復活ですね!

原田 前半は抑えめなんだけど、戦争のシーンが始まったときに、あぁ、メル・ギブソン監督ってこういう作家性だったなって思い知らされるんだよね。戦争映画はいろいろ見てきたけど、こんなに怖いって思ったのは久しぶり。この戦場に自分が置かれたらどうしようって感じるくらいリアルだった。

コトブキ 監督としてのメル・ギブソンを貫いているのはバイオレンスと宗教観だと思うんです。アカデミー監督賞を取った『ブレイブ・ハート』も、信仰、暴力、戦争だったし、宗教観でいえば『パッション』とか壮絶だったわけじゃないですか。それを今回も存分に発揮していて、本当に見事だと思いましたね。彼のパーソナルな問題は置いといてですよ(笑)。

原田 メル・ギブソンは、何か問題を起こしていたんだっけ?

コトブキ DVや人種差別発言などが問題となって、業界から干されていたんですよね。だからこのタイミングでメルに監督を依頼するっていうのは結構なリスクだったと思うんですよ。でも、このテーマを描けるのは彼しかいないって決断した製作陣の心意気ですよね。

原田 プロデューサーが『ブレイブ・ハート』でもメル・ギブソンと組んだ人だから、そのあたりの信頼感は強かったのかもしれないね。

コトブキ ハリウッドって、そういう復活劇があるのがいいですよね。『アイアンマン』のロバート・ダウニーJrとか、『レスラー』のミッキー・ロークとか、一時はキャリアが終わりかけてたけど、仲間たちのは励ましと応援があって大復活を遂げるっていうパターンですよね。

原田 観客も、メル・ギブソンは問題のある行動をしてしまったけど、作品として良いものは良いって評価するところがあるんだろうね。

コトブキ メル・ギブソンは観客から支持されただけじゃなく、この作品でアカデミー賞の監督賞にノミネートされたじゃないですか。これもスゴイことですよね。今回のアカデミー賞でいうと、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』で主演男優賞を獲ったケイシー・アフレックも、過去にセクハラで訴えられたりしているんですよ。それも許されることではないですけど、俳優としてはちゃんと評価する。

原田 それを聞くと、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』の役と、ケイシー・アフレック自身の人生が重なって見える部分もあるよね。余談だけど、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』を映画館に観にいって、映画が終わったときに隣に座っていたおじさんに「泰造さんですよね?」って声をかけられたんだよ。「はい」って答えたら「……良い映画でしたね」って話になったんだよね(笑)。

コトブキ いいコミュニケーションですね(笑)

原田 おじさん同士で「ほんとに良かったですねぇ」と、語り合ったっていう、それだけの話なんだけどどね。(笑)

コトブキ そういう意味では『ハクソー・リッジ』も、観たあとに語り合いたくなるタイプの作品ですよ。

原田 主役のデスモンド・ドスを演じた俳優についても話したいな。

コトブキ アンドリュー・ガーフィールドですね。

原田 最初は優しすぎる印象で、なんでこの人をキャスティングしたのかわからなかったんだ。でも、後半に仲間たちを次々と助け出すシーンを観ていると、この人だから説得力があるんだなって思った。彼があの容姿で頑張れば頑張るほど、凄みが出てくるんだよね。

コトブキ アンドリュー・ガーフィールドは、この作品の前に『沈黙―サイレンス―』で宣教師の役をやってるわけじゃないですか。偶然かもしれないですけど、繋げて考えちゃいますよね。

原田 そうか。どちらも同じような役になるんだね。

コトブキ この作品に出てくる、訓練中でも頑なに銃に触らなくてイジメに遭うとか、規約違反で軍事裁判にかけられてしまうとか、なぜ神は苦しめるんだというテーマで『沈黙』と重なってきますよね。アンドリュー・ガーフィールドは、笑顔は優しいけど、奥に秘めた意思の強さを感じるような目をしていて、こういう役が本当に似合う。

原田 それに、ちょっとトボけた味わいもあるんだよね。仲間たちを助けるために、何度もひょこって戦場に戻ってくるところとか、どこか飄々としていてるんだけど、だからこそヒーローとして輝いてくる。

コトブキ だんだん逞しく見えてきますよね。

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