Interview

予定調和な社会を変える!パノラマパナマタウン・岩渕想太の信念、『Hello Chaos!!!!』が提示する個性

予定調和な社会を変える!パノラマパナマタウン・岩渕想太の信念、『Hello Chaos!!!!』が提示する個性

神戸の大学生バンドとしてあちこちで噂になっていた“パノラマパナマタウン”のメンバー4人が、ついに卒業して上京。その大転換期に作られたのが『Hello Chaos!!!!』だ。
これまでのミニアルバム『SHINKAICHI』、『PROPOSE』と圧倒的に違うのは、リズムのバリエーションが増えたこと。力づくで押しまくっていた前2作に対して、『Hello Chaos!!!!』は“押すツボ”が劇的に変化した。
打ち込みではなく、マニュアルのバンドサウンドでラップする「PPT」、独特の解釈でスカ&ダブに挑戦した「エンターテイネント」、スウィングするシャッフルが切ない「パン屋の帰り」、ポリリズムでスピード感を演出した「odyssey」が並ぶ中で、特に印象に残るのが「リバティーリバティー」だ。4つ打ちにキャッチ―なメロディとラップを詰め込んだアイデアが功を奏して、パノラマパナマタウンならではのポップの提示に初めて成功している。
ちょっと甘い表情の中に、絶対に自分を貫く不敵さを潜ませるこのバンドのフロントマン岩渕想太に新作と近況について聞いてみた。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 関信行


僕の言いたいことや、バンドのやりたいことって「なんでこんなのが正常なんだよ!」ってところから始まっている

パノラマパナマタウンは、どんなふうに始まったんですか?

大学(神戸大学)1年生の秋に、軽音楽部で同級生と結成したんですけど、ドラム(田村夢希)以外は、軽音をやるのも初めてという。

高校時代にバンド経験はまったくなかった?

はい。で、次に僕とドラムと、ベース(田野明彦)の3人でandymoriのコピーバンドを組んで、その流れの中で「オリジナルやりたいんだけど」という話になったんです。でも「誰が曲作る?」ってなって、「誰もいないから、お前が作れ」と僕が言われて(笑)。ギターを持ってから1年くらいだったんで、曲なんて作ったことがなかったし、曲が全然出来なくて。とりあえず3人で、ひたすらコードを探ってかっこいい音を出す、爆音を出してみるということをやってました。だから、「どういうバンドになりたい」とか「どういうことをしたい」というところからスタートしたのではなくて、音を出していくにつれて、だんだんと「こういうことがしたいんじゃないか?」っていうことがわかるようになってきたというか。そのあたりで「ギターを入れよう」となって、浪越(康平)に入ってもらって、そこから曲が出来るようになっていきました。

浪越くんは曲を作ったことがあったのかな?

いや、コードのことも何も知らなくて。ただかっこいい音を出す人数が増えただけです(笑)。

あはは、大胆だね!

けど、4人になって気が引き締まったからなのか、オリジナル曲をなんとか作らなきゃというプレッシャーがあったのか、「世界最後になる歌は」とか「ロールプレイング」って曲がポンポンと出来始めたんです。

出来始めたら、早かった?

そうですね。それが2014年の1月くらいで。そのとき作った「ロールプレイング」という曲でMASH A&Rのオーディション(2015年)に応募したら、優勝しました。

曲を作り始めたばかりで、優勝とはすごいね。

最初の頃は、本格的にバンドをやるという踏ん切りもついてなかったし、メンバーの中での足並みも揃ってなかったんですよ。大学を卒業したら就職も考えられたし、メンバーの親もバンドを続けることに対して否定的だったし。ただ優勝したことで、このメンバー4人でバンドをやっていこうという話し合いをして、親を説得して、今年大学を卒業して上京してきて、今、4人で共同生活をしています。

岩渕くんは、プレイヤーである期間よりもリスナーでいた時間のほうが長い。岩渕くんの書く歌詞を見ると、今の音楽の在り方に疑問を持っているように感じるんだけど、それはリスナー的な気分のほうがまだ大きいということなのかな?

リスナー的な気分は正直、残ってないと思います。僕は歌詞を聴くタイプのリスナーではなかったんです。しかも、「この音楽があったから今の自分がある」というような、音楽で人生を変えられたこともなくて。めちゃくちゃ音楽は好きだし、いろいろ聴くんですけど、音楽に突き動かされた経験がない。それくらい歌詞を重視してこなかったんです。

そういう中で歌詞を書くのは大変?

だけど、自分が歌詞を書こうとすると、すんなりと出てくる。社会に対して、はまりきれない感覚が自分にはあって……なんでもかんでも型にはめすぎる社会にいまいち納得がいってない。というのも、どういう社会問題にしろ、「これは難民問題です」「これはホームレスの問題です」みたいに簡単な言葉だけ付けて安易に納得してしまおうとする感覚っていうものに対して、どうにも馴染めなくて。それは音楽も同じで、「これがダンスロックです」「これはシティポップスです」と括ろうとするじゃないですか? ホントはもっと複雑だし、いろんな世界があって深みもあるのに、簡単な言葉で理解しようとすることに納得がいかなくて。だから、自分たちも型にはまらない存在になろうという自負を持ってやってます。

その想いはソングライティングを始めてから生まれたもの?

いや、たぶんずっと思っていたことではありますね。だから、歌詞を書こうとするときはわりとすんなり書けるんです。「ほかと違う歌詞だ」と言われることもありますけど、「違う歌詞、書いてやろう」という意識は特にしてないし、思ったことをそのまま書いたものが多いです。

歌詞を追わないということは、主に洋楽を聴いていたの?

洋楽好きなんですけど、何を言ってるかまではあまり興味が沸かなくて。

でも、そこで何か伝わってくるものがあるというのが音楽の不思議だよね。

今回のアルバム『Hello Chaos!!!!』は、“伝える”ということをすごく明確にしたものなんです。過去の2枚は、伝えるということをそこまで考えてなく、自分の思うズレとか、はまりきっていない感覚をそのまま書いたというか。だからわりと散文的な歌詞だったんですけど、「もっと人に届けたい」「自分の思ってることをちゃんと聴いて欲しい」という感覚が強くなってきました。今の社会には “道”というものが安易に設定されてる……例えば大学に行ったらこういう企業に就職ができるとか、この塾に行ったらこの大学に入れるとか。そこには何個かの限られたライフコースしか見えない気がしていて。自分たちは就職を選ばずにバンドマンという道を選択して、本当になりたいものになった。だから、自分たちがバンドマンとして、「やりたいことをやればいいじゃないか」ということを証明したいし、悩んでる人の背中を押せる存在になれたらと思って「リバティーリバティー」という曲を作ったんです。そうしたらいろんな反応があったんですよ。「同じように悩んでたけど、歌詞に背中を押されました」とか「自分は親が納得しない企業に行こうとしてるけど、それでいいと思いました」とか。だから最近、自分の歌詞でも誰かを動かすことができるんだなと気がつきました(笑)。

自分にはそういう経験がなかったんだから、不思議な感覚なんだろうね。

そういう意見をもらって、歌詞って心を動かせるものなんだ、自分でもそういう存在になれるんだということを、上京してアルバムを出して、今さら痛感しているところです。

あはは、気づくのが遅い!

そもそもズレてるところから始まっていますから(笑)。僕の言いたいことや、バンドのやりたいことって「なんでこんなのが正常なんだよ!」ってところから始まっているので。

「リバティーリバティー」はどんなときに作ったんですか?

この曲は、自分が就職活動をしなきゃいけないって年になってから出来ました。周りを見てたら、「なんでこの大学に入ったのかもわからない」「なりたいものがない」って言っている人が多くて。そもそも「この大学で学びたい」と思ってる学生は少なくて、なんとなく流されている人のほうが多いと感じたんです。とりあえず上へ上へ、頭がいいほうへ、お金を稼げるほうへ、安定して結婚できるようにっていう方向に行くのにも納得がいかなくて。でも、僕のこの考え方は小さい頃からだったのかもしれないです。僕自身、大学に行くか行かないかすら考えたし、高校に行くときも、就職も視野に入れて考えて、実家が餅屋なのでそれを継いだらいいんじゃないかとか。

実家はどこ?

福岡の北九州です。

個性的なライブハウスがある町だ。

MARCUS(マーカス)っていう、向井秀徳さんが2年に一回来るライブハウスがあります。大好きなんです、向井さん。

で、北九州って少し治安が悪いよね?(笑)

相当、悪いと思います(笑)。ほかの場所はどこも治安が良く見えますよ。

(笑)その街で育ってきたというのも、岩渕くんの考え方に影響してるんだろうね。レールに乗っかって行く人があまりいそうな街じゃない。

あー、たしかに。

たぶん、世田谷区に育っていたら、歌詞が違っていたかもしれないよ(笑)。

そうなんですかね。けど、地元のヤツらって、“バカ”が付くくらいまっすぐなんですよ。小学校から「焼き肉屋になりたい」って言っていたヤツは、いまだに焼き肉屋でバイトを続けて、店長になろうと頑張っていたりする。そういうのって、いいなと思います。僕は大学で神戸に行ったんですけど、そういうことを思ってるヤツが全然いなくて。でも、流される人が悪いんじゃなくて、環境というものもあるんだろうなと思いますね。

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