マンガを掘りつくせ!Manga Diggin’  vol. 14

Review

『キャプテン翼』伝説のサッカー漫画が見続けた「見果てぬ夢」

『キャプテン翼』伝説のサッカー漫画が見続けた「見果てぬ夢」

世界中の少年たちを熱狂させた“伝説的”サッカー漫画

伝説のサッカー漫画がある。というか数多のサッカーを取り扱った漫画はあるが、今でも「サッカー漫画と言えば?」9割はこのタイトルが帰ってくるだろう。その名は、

「キャプテン翼」

1981年に週刊少年ジャンプで連載が始まったこのレジェンド作、中田英寿や元レアル・マドリード監督のジネディーヌ・ジダン、元イタリア代表のアレッサンドロ・デルピエロなどもファンであることを公言している本作をあらためて読み解いてみた。
物語は「ボールは友達」が心情の大空翼を主人公とし、その成長と活躍を描いている。久々に読み返すとやはり昔の漫画だなぁと思う部分は多い。何と言っても36年前の作品である。同時期に連載していた作品としては「キャッツアイ」「タッチ」などがある。

南葛市に引っ越してきた翼くんは前の学校ではサッカーが好きすぎてちょっと友達から敬遠されている少年だ。確かに80年代前半の日本でサッカーはメジャースポーツでは決して無かったと思う。やはり第一に野球があり、原作の高橋陽一先生も「新人の自分は他の作家の手を出さない題材としてサッカーを選んだ」と言っているくらいだ。

しかしこの作品はあっという間に少年少女たちの心をつかみ、日本にサッカーを浸透させていった。

1996年にJリーグが開催され、日本にもサッカーブームが巻き起こるが、それまで日本でサッカーと言えば「キャプテン翼」だったと言っても過言ではないくらいのものだったのではないか、と筆者は思う。

作品にあふれる「友情・努力・勝利」の力強いメッセージ

キャプテン翼の特筆すべき部分の一つとして、恋愛様相が少ない部分がある。
確かに後に翼と結婚することになる早苗や、“北海の荒鷲”松山光の恋人である藤沢美子なども登場するが、基本的に恋愛がストーリーの中心となることは少ない。

あくまでも作品の真ん中にはサッカーがある。だからこそ恐ろしく見やすい。

そして同じく作品の魅力として、主人公翼以外のキャラクターたちがある。

翼の永遠のライバル、“猛虎”日向小次郎。ゴールデンコンビを組む岬太郎、守護神若林源三、“フィールドの貴公子”三杉淳、空手キーパー若島津健、立花兄弟、次藤洋など翼の前に現れるキャラクターはどれも魅力的だ。

だからこそ激闘を超えた選手たちが呉越同舟して一同に揃うジュニアユース編が格別に興奮する。翼と日向が同じチームで闘うというのは小学生編~中学生編から読んでいくとまさにドリームチームなのだ。週刊少年ジャンプのモットーである「友情・努力・勝利」をコレほどまでに体現している作品は稀有なのではないか。

そこに立ちはだかる世界各国の選手も際立っている。ドイツの若き皇帝カールハインツ・シュナイダー、フランス代表エル・シド・ピエールやルイ・ナポレオン(衝撃的なネーミングだと思う)、イタリア代表のパーフェクトキーパージノ・ヘルナンデスなど強敵かつ魅力的だ。

“キャプツバ”人気を決定づけた「必殺技」!

そこに少年漫画だからこそとも言える「必殺技」の要素が持ち込まれていく。

修哲対南葛の激闘の中で翼がみせたオーバーヘッドキック、この1ページのインパクトこそがキャプテン翼を印象づけた最初の一つなのではないかと思う。それくらいオーバーヘッドキックというのは衝撃的であり、30代以上の男子なら誰でも一回はチャレンジしたことのある技なのではないだろうか。

その後も日向のタイガーショット、立花兄弟の超絶技スカイラブ・ハリケーン、若島津健の三角飛びなどの技が登場し、その度に読者は驚き、興奮する。

勿論人知を超えた超絶技の登場に伴い、通常のサッカーではありえない事も多々起こるのだが、それもご愛嬌だ。ちなみに筆者のフェイバリット技は先述の松山光の地を這う弾丸シュートである「イーグルショット」だ。

サッカーという当時未開拓のスポーツを描ききったこと、魅力的なキャラクターたちによる激闘、それを彩る必殺技など、さまざまな面白さが詰まっている作品だが、やはり中心には“大空翼”という太陽のような存在が作品の主人公として輝き続けている事があるのではないだろうか。

翼にも挫折はある、だが彼はどんな苦境でも立ち上がり、笑顔をチームに振りまく。
厳しいことも言う、怪我を押しても闘う、それは全て「サッカーが好きだから」生まれる行動なのだ。
そして好きなものだからこそ、勝ちたい、勝たなければ次の試合には進めない。次の試合ではまた凄い選手と戦える、それを喜びとする。
貪欲にサッカーを求め続ける翼に、登場人物たちも読者も惹かれていく。彼の超絶プレイに憧れたからこそ、世界のトッププレイヤーも「翼のようになりたい」と思ったのだろう。

翼は劇中で「日本をワールドカップで優勝させる」と公言している。
当時日本はワールドカップ予選も突破できないサッカー後進国だった。だからこそ夢物語だったのだが、翼に憧れた少年たちが選手になり、成長し、プロリーグも生まれた今の日本は決勝リーグに出場するまでに至った。

翼が夢見た「ワールドカップ優勝」だって、ひょっとしたら手が届くかもしれない。誰よりも未来を見ていた翼の背中に、現実が追いつこうとしている。

舞台化も決定した今だからこそ、日本サッカーの原動力となったキャプテン翼を読み返してみるのはどうだろうか?ワールドカップ予選を闘う日本代表の向こうに、翼の笑顔を感じられるかもしれない。

キャプテン翼  1巻

高橋陽一
集英社

※本文はエンターテインメントサイト「SPICE」からの転載です

©高橋陽一/集英社

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