Interview

Cornelius、11年ぶりの新境地を見せた話題のニュー・アルバム『Mellow Waves』を語る

Cornelius、11年ぶりの新境地を見せた話題のニュー・アルバム『Mellow Waves』を語る

夢と現実の間を浮遊するメロウな質感

インストゥルメンタルの「Surfing on Mind Wave pt 2」からは、それまでの世界が波にさらわれるように場面が変わります。

この次が「夢の中で」という曲なんで、マインド・トリップみたいな世界からそこに繋がるような流れにしたかった。パート1にあたる曲は『攻殻機動隊 ARISE』のサントラに収録されていて、すごく気に入っていた曲だし、歌ものの中にこういう曲が入ることで、普通じゃないというか、自分らしさが出るかなと。「夢の中で」が夢と現実の間を浮遊しているような曲だから。

「Helix / Spiral」は、音の遊び方がCorneliusらしい。

これはある企業の新商品のインスタレーションのための音楽を改造してできた曲。『Constellations Of Music』にもそういう作品が収録されているんだけど、僕のMVも手がけている辻川(幸一郎)くんや、中村勇吾さんから依頼されてつくる場合が多いから、比較的自由にできるんですよ。中村さんは、彼が映像監修で僕が音楽を担当したNHK Eテレの『デザインあ』からの付き合いになるのかな。そんな地味な、あまり人に知られていない仕事もこの10年はけっこうやっていたんですよ。そこから発想を膨らませたり、改造したり。

次の「Mellow Yellow Feel 」で、アルバムのキーワードでもある「メロウ」という言葉が出てきます。「メロウ」という表現は近年ではR&B系統の音楽でよく使われるので、少し意外に思えたのですが?

でもね、僕の中では「メロウ」は、1960年代のドノヴァンの「Mellow Yellow」なんだよね。初めて「メロウ」って言葉を知ったのもあの曲だし、同じ名前のジュースもあった。ドノヴァンもトレモロをよく使ってるし、ソフトなサイケデリック感もあって僕は好きなんだけど、過小評価というか。

確かに。

ボブ・ディランより、僕は断然好きなんだけどなぁ。ボブ・ディランの良さがいまだに分からないというか、僕もいつか分かる時が来るのかもしれないけど(笑)。ともかく、トレモロからドノヴァン、「Mellow Yellow」と来たので、ジャズ・ファンクとかR&Bのメロウ・グルーヴも大好きなんだけど、ちょっとニュアンスが違う。

ギターだけのアンサンブルが斬新で、なおかつレス・ポールを彷彿させますね。

そうそう。スティーヴ・ライヒとレス・ポールかな。

「The Spell of a Vanishing Loveliness」で作詞とヴォーカルを担当しているミキ・ベレーニは?

ミキちゃんは僕のはとこで、イギリスのLushというバンドにいて、この10年くらい仲良くなって、去年はLushのリミックスを僕がやったので、そのお返しに歌と歌詞をお願いしてみた。

上手すぎない素朴な彼女のヴォーカルと、メランコリックなメロディーの相性がすごく良いですね。

そうだね。僕も歌は上手くないから、ミキちゃんと声と合いそうな気がしたし、歌詞の内容は彼女のお母さんのことを歌っているんだけど、僕とミキちゃんを繋いでくれたのもお母さんなんだよね。Lushのことは知っていたけど、前は親戚だって知らなくて、父親が亡くなった時に父方の親戚のミキちゃんのお母さんと再会して、そこから仲良くなって。ハナレグミの永積崇くんはミキちゃんのいとこにあたるんだよね。

「The Rain Song」は、映像が喚起できるような 歌と音ですね。  

歌の入れ方は、salyu × salyuのようにコーラスが多層的に重なって、パーツが組み合わさっていく感じに近い。今、思えば、坂本くんとの出会いもあったし、歌のアプローチに関しては、salyu × salyuで学んだことは大きかった。まぁ、プロデュースは前からとかちょこちょこやってたけど、自分が全曲をつくって、MVやジャケット、ライヴも含めてちゃんとプロデュースできたなと思えたのはあれが初めてだったかもしれない。

多様な活動から見えてきた自分がやるべき音楽

アルバムは叙情的なインストの「Crepuscule」で、シンプルに穏やかに締めくくられます。言葉はないけど「詩」を感じる曲ですね。

アコギのインストをふとやってみたくなったんだよね。ギターは唯一ちゃんと出来る楽器だし、『POINT』(2001年)の後、2002年に細野(晴臣)さんにSKETCH SHOWのライヴに誘ってもらって以降、色々なところでギターを弾く機会が増えて、ヴァリーエーションが増えたのもある。まぁ、それまでは誰からも誘われなかっただけなんだけど(笑)、最初に誘ってくれたのが細野さんというのは大きかったけどね。YMOやYOKO(ONO)さんの現場にいると、まだ若者あつかいしてもらえるんだよね(笑)。青葉市子ちゃんやアート・リンゼイとも一緒にやったし、歌と違ってギターは気楽にできるし、実際楽しい。

そういったこの10年の活動が、少しずつCorneliusに変化をもたらしていったわけですね。

そうだね。だから何かきっかけがあって、突然変化したわけではないんだよね。『攻殻』や、METAFIVE、『デザインあ』などをやったからこそ、こういうアルバムができたとも言えるし、自分がやるべきことがより明確になってきた。

前作『SENSUOUS』以降11年もアルバムが空いたのは、様々なプロジェクトに関わっていたこと以外に理由はありますか?

自分の中の一定のレヴェルは超えたいというのはあったし、結果、それくらい時間を要したとも言える。いちばん古い曲は7、8年前のものもあるけど、もし、数年前に出していても、こういう内容にはならなかったと思う。ただ、昔ほど10年前の音楽を聴いてもそれほど古く感じなくなっているでしょ? 80年代や90年代は10年前の音楽がすごく古びて聴こえたけど、今、2007年の音楽を聴いてもそれほど違和感はないのは、テクノロジーの劇的な進化がなかったせいもあるよね。若い頃は自分自身の余白も大きかったし、周りに影響されて全然違うアルバムをつくっていたけど、歳をとると代謝も悪くなるし(笑)、スミスが80年で、ドノヴァンが60年代で、ローズは70年代…最新の音楽を聴いていないわけじゃないけど、ひとつのジャンルにめり込んだりすることはなくて、自分のペースでやっていたら、こういうアルバムになった、と。

シングルとアルバムのジャケットも深い印象を残しますね。

中林(忠良)さんの作品を次のアルバムで使いたいというのだけは、10年前から思っていた。父親が亡くなった後に展覧会を見て、作品の世界観を頭に入れながら曲をつくったりしていたんですよ。腐食銅版というジャンルは、モノクロなんだけど濃淡の階層が深くて、溶液や時間による不確定要素もあったりしてすごくおもしろいんですよ。

『Mellow Waves』の揺らぎの世界と共通するものがあるんですね。

そうだね。現実と非現実の間を漂うようなところとか影響されているかもしれないし、こういう一見地味だけど深遠な世界がしっくりくるような歳というか境地になってきたってことなんだろうね。

その他のCorneliusの作品はこちらへ

Cornelius 『あなたがいるなら』”If You’re Here”

Cornelius -『いつか / どこか』” Sometime / Someplace”

ライブ情報

Cornelius
Mellow Waves Release Party

7月11日(火)12日(水)東京・恵比寿 リキッドルーム

Cornelius
Mellow Waves Tour 2017

10月9日(月祝)新潟・新潟 LOTS
10月11日(水)宮城・仙台 Rensa
10月13日(金)北海道・札幌 PENNY LANE 24
10月14日(土)北海道・札幌 PENNY LANE 24
10月19日(木)香川・高松 festhalle
10月21日(土)大阪・なんば Hatch
10月22日(日)愛知・名古屋 DIAMOND HALL
10月25日(水)東京・新木場 STUDIO COAST
10月26日(木)東京・新木場 STUDIO COAST
10月28(土)神奈川・横浜 Bay Hall
11月3日(金祝)広島・広島クラブクアトロ
11月4日(土)福岡・DRUM LOGOS

Cornelius

1969年東京都生まれ。1989年、フリッパーズギターのメンバーとしてデビュー。バンド解散後 1993年、小山田圭吾のソロユニットCorneliusとして活動開始。現在まで5枚のオリジナルアルバムをリリース。1998年からは世界20カ国以上でアルバムが発売され、アメリカ・ヨーロッパ各地などでツアーを重ねる。自身の活動以外にも、国内外多数のアーティストとのコラボレーションやREMIX、プロデュースなどで幅広く活動中。

オフィシャルサイトhttp://www.cornelius-sound.com/