Interview

藤木直人インタビュー第1弾。主演舞台『魔都夜曲』に見る俳優としてのこだわり

藤木直人インタビュー第1弾。主演舞台『魔都夜曲』に見る俳優としてのこだわり

1995年に映画『花より男子』の〈花沢類〉役で俳優としてデビューし、4年後となる1999年にシングル「世界の果て〜the end of the world〜」をもって、ミュージシャンとしての活動を始めた藤木直人。
役者としては、ドラマや映画など映像作品を中心に活動している彼だが、近年は舞台にも積極的に出演し、7月7日から主演を務める音楽劇『魔都夜曲』が開幕する。さらに、ミュージシャンとして、通算16枚目となるニューシングル「Speed★Star」を7月19日にリリースし、2年ぶりとなる全国ライブハウスツアーの開催も決定した。
役者としては22年目、ミュージシャンとしては18年目を迎えた藤木直人の2つの顔に迫るべく、舞台稽古が始まったばかりの6月初旬に連続取材を敢行。2回にわたるインタビューの第1回目は、彼の俳優としての顔。新作舞台について訊く。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 増田慶

インタビュー第2回目、ニューシングル「Speed★Star」と全国ツアーについての記事はこちら
藤木直人インタビュー。寺岡呼人ら書き下ろしシングルを語る

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2017.07.19


〈清隆〉は自由で明るくほがらかな人という印象。僕とは正反対(笑)

この4年間、毎年、舞台をやられてますね。

それは、まったくの偶然なんですよ。2014年に初めて蜷川(幸雄)さんとやった舞台『海辺のカフカ』は次の年にワールドツアーがあって、凱旋公演もあるという2年がかりの大がかりな計画だったんです。そのときはそのことで精一杯だったんですけど、『海辺のカフカ』が終わる前に、蜷川さんから次の作品のお話をいただいて。ようやく2年かけたものが「もうすぐ終わる!」って思っていたら、その半年後にはもう稽古に入らなきゃいけないっていう(笑)。

(笑)2016年の5月から6月にかけて、彩の国シェイクスピア・シリーズ第32弾『尺には尺を』が上演されました。

蜷川さんですし、ましてやシェイクスピアでもあったので、やっぱり難しいというイメージもありましたけど、その3年間は僕にとっては必然的だったというか、『海辺のカフカ』をやることによってすべてが繋がったんだなと思っています。今回は、うちの事務所が20周年ということで、最初は音楽と演劇、何か2つやりたいっていう話があったらしいんですけど、結局は合わさって音楽劇になって。もともとうちの事務所は舞台で活躍されている人が多い中で「なんで俺?」って驚きましたけど(笑)。たまたま4年続けて舞台に立つことができるのは嬉しいですね。

でも、音楽劇ですし、そうなると、俳優とミュージシャンを両立させてきた藤木さんが適任だなと思います。これまで映像を中心に活躍されてきたなかで、ここ4年間毎年やってきた舞台についてどう感じていますか。

演じることに対する接し方、密度の違いみたいなものは感じますよね。1冊の台本に対して1ヵ月以上稽古して、本番でも何回も同じ芝居をする。映像はその日撮ってしまったら基本的には二度とそのシーンはやらないから瞬発力が求められるけど、舞台はそうじゃなく、いろんな表現を探っていくということなので、勉強になりますよね。あとは、映像以上にいろんなやり方があって、いろんな規模の作品があって、いろんな劇団があるっていうことも感じてます。演出家によっても、座組によっても進め方が違う。ドラマも現場ごとに違いがないわけじゃないけれども、それ以上に差があるなって思います。

演出家による違いという点では今、どんな違いを感じますか?

蜷川さんは基本的には芝居をつけない人だったんです。みんなが作ってきたものを見るっていう感じで、大まかなことしか言わなかったですね。今回、ご一緒する河原(雅彦)さんは、すごく細かく丁寧に芝居をつけてくださる方で。セリフ、ひと言ひと言のニュアンスについて言われる。だから、今はすごく難しいな、やることがいっぱいありすぎて追いつかないなって、まだそんな感じですね(笑)。

最初に本を受け取ってどう感じましたか。

最初もらったときはまだ前半だけだったのですが、魅力的な登場人物がたくさん出てきて、前半はまさにこれからどうなるんだろう、みたいな。気になる展開で終わりますよね(笑)。僕が演じるキャラクターにはモデルとなる人物がいるんですけど、そこをうまく抽出しながら、エンターテインメントに昇華しつつあるんじゃないかっていう期待感がありました。

実在のモデルがいる役柄はどうやって作っていくんでしょう? 藤木さんが演じる〈清隆〉は、公家の血を引き、日本政府の要人を父に持つ遊学中の御曹司役で、近衛文磨首相の長男、近衛文隆さんがモデルになってます。

今回は、あくまでもその人をモチーフにしたフィクションなので、その人物を演じるっていう感じではないかなと思っていて。本の中に書かれているキャラクターをまずはくみ取って、河原さんに演出してもらいながら作り上げていってるところなので、そこまで意識はしていないです。

現時点ではどんな男だと捉えていますか?

自由で明るくほがらかな人という感じですね。僕とは正反対(笑)。

正反対ですか(笑)。爽やかな印象を世の中のみなさんは持っていると思いますが。ト書きにもある“屈託のない笑顔”も自然にできるんじゃないか、と。

屈託ないわけないじゃないですか(笑)。やっぱり理系だし、理屈っぽいところがあると思いますよ。

かけ離れてる部分が大きいですか? 自分の中にはないものを持ってる人?

どちらかと言えば、そうだと思います。それに、自由奔放なキャラクターというのもいままで演じてきたことがあまりなかったので、すごく楽しみだし、不安もありますね。

物語の舞台になる上海にも行かれたと聞いてます。

何か感じられたらいいなという意味もありましたし、向こうのメディアの取材を受けるためという目的もあって行ってきました。

上海に行ったのは初めて?

初めてです。本当に近代化が進んでいて。でも、一歩町中に入っていくと、雑多というか、今の日本では見られないくらい、うらぶれたところもあったり(笑)。あとは、歩いてる人たちの……パンチの効いた格好が(笑)。

(笑)平気でパジャマで歩いてる人を見かけますよね。

そうそう! もちろんオシャレな若者とかも当然いましたけどね。ちょっと前までは、中国って言うと自転車でチャリンチャリンみたいな感じでしたけど、上海は、バイク。しかも、電気バイクなんですよ、エンジンじゃなくて。だから音が全然しない。けど、ヘルメットはかぶってないし、2人乗り3人乗りも普通で。みんな自由に走り回ってすごいなって思いますけど、逆に日本がちょっと特殊なのかなとも思って。そこは自分が日本的な人間だから余計に思います(笑)。

(笑)1930年代の上海にあるジャズクラブが主な舞台となっていますが、2017年の近代化された上海に何か通じるものはありました?

歴史ってやっぱり繋がってるんだと感じましたね。モチーフとはいえ近衛文隆=〈清隆〉は、たかだか80年前に実際に上海で恋に落ちる……その現地の空気を肌で感じられたっていうだけでも大きかったなと思います。

では、稽古の現場はどんな雰囲気ですか。

キャストはうちの事務所のメンバーが多く、客演は、マイコさんとか数人の方だけなんです。最初は、先輩ばかりで緊張するかなと思ったんですが、知ってる人だらけっていうのは居心地がいいもので(笑)。あらたにコミュニケーションというか、環境を作る心配もないですし。先輩方がやさしく気を遣ってくださっているのかもしれないですけど(笑)、居心地のいい稽古場だなと思ってます。