Interview

藤木直人インタビュー。寺岡呼人ら書き下ろしシングルを語る

藤木直人インタビュー。寺岡呼人ら書き下ろしシングルを語る

俳優、ミュージシャンとして活躍する藤木直人が10枚目のアルバム『1989』をリリースしたのは、15歳の少年が主人公の舞台『海辺のカフカ』(2015年)のニューヨーク公演中だった。タイトルとなっている“1989”とは藤木がギターに出会って衝撃を受けた17歳の年である。
音楽を、芸能界を志すきっかけになった年代を掲げた作品から2年。この夏、主演を務める音楽劇『魔都夜曲』の上演中である7月19日に原点回帰を思わせるニューシングル「Speed★Star」をリリースし、9月から全国ツアーも開催する。演技と歌唱。セリフと歌。舞台とライブハウス。
役者として22年、ミュージシャンとして18年目を迎えた藤木直人の2つの顔に迫る連続インタビューの第2回目はニューシングルと全国ツアーについて。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 増田慶

インタビュー第1回目、音楽劇『魔都夜曲』についての記事はこちら

藤木直人インタビュー第1弾。主演舞台『魔都夜曲』に見る俳優としてのこだわり

藤木直人インタビュー第1弾。主演舞台『魔都夜曲』に見る俳優としてのこだわり

2017.07.06


原点に戻るじゃないけど、ライブハウスでもう一回やりたい

藤木さんの中で歌うことと演じることはどのようなバランスで考えていますか。

僕の場合は、別個のものとして考えてます。基本的には役者としての仕事のほうが多く、音楽の場合は、まず、ツアーをどのタイミングでやろうかなっていうところから逆算して、楽曲制作を考えるので。パーマネントに音楽活動は動いてるわけではないっていう感じですかね。

では、今回のニューシングル「Speed★Star」も、まず、ツアーをやろうという発想が先ですか?

そうですね。再来年、2019年でデビュー20年なので、そこに向けて何かやっていきたいなっていうところがあって。一昨年ツアーをやって、次のツアーはどうしようと考えたときに、原点に戻るじゃないですけど、ライブハウスでもう一回やりたいっていうのもあったし、タイミング的にもいいかなと思ったので。

原点に戻ろうと思ったのはなぜですか?

原点に戻るというほど大げさなことではないんです。ライブハウスでやってみたいっていうだけの単純なことで(笑)。

でも、新曲「Speed★Star」はデビュー時のプロデューサーである寺岡呼人さんを迎えていて。ライブハウスツアーもデビュー当時以来、16年ぶりということもあって、初心に帰るっていうコンセプトがあったのかなと思ったんですが。

うーん……深層心理の中ではあるのかもしれないですけど、そこまで深く意識はしてなくて。僕のライブって、単純に音楽を演奏して見せるだけじゃなく、来てくれる人に楽しんでもらいたいなと思って、いろんなことをやってるんですよ。
ホーンを入れたり、ダンサーを入れたり、自分が踊っちゃったりとか。いままでいろんなことをやってきましたけど(笑)、そういうのってやり始めてしまうと、盛り上げる要素としてはなかなかはずせなくなってくるじゃないですか。でも一度、思いきって、バンドだけでシンプルにやりたいって思ったんですよね。
その気持ちが大きかったから、きっとホールではないんだろうなとも思って。
それで、ツアーの前に何かリリースしたいなっていうなかで、ドラマの撮影もあるし、舞台のこともあるし、アルバムは大変だろうから、シングルでいこう!っていう(笑)。

あははは。

ライブハウスでやるということもあるので、ギターをフィーチャーしたような曲がいいなと思ったんです。
それで、まずはずっと一緒にやってきたシライシ紗トリさんに相談して、話していくなかで、せっかくだから、いろいろな方に楽曲相談してみようとなって。
そこで、誰に曲を書いてもらいたいかを考えたとき、やっぱり呼人さんは僕の最初の世界観を作ってくれた人だし、初期のツアーは自分の曲が少なかったので呼人さんの曲をやらせてもらったりもしていたので、やっぱり呼人さんだっていうのがあって。

呼人さんにはどんな曲をオーダーしたんですか? 初心を思い起こさせるような歌詞になってますよね。「幼い頃描いた 夢は幾つ叶えられたんだろう」っていう。

僕から呼人さんの楽曲の中でこういう感じの曲をお願いしたいっていうお話をさせていただいたうえで、お互い歳をとった中で表現できることがあったらいいなっていうのを呼人さんなりに探ってくれたみたいですね。
だから、出来上がった曲を聴いたときに、疾走感のある、まさに僕が思い描いていたとおりの曲だったし、歌詞の中の、今の年齢だからこそ思う「人生は孤独を生きてくレースだ」っていうフレーズはすごくいいなって感じて。今回、呼人さんに会ったときにLINE交換してやりとりするようになって。
曲を聴いた感想だったり、ここでこういうのを入れたいっていう話だったりをしていって。
いままではどちらかというと、一方的に世界を作ってもらっていた感じだったので、今回は初めて細かくコミュニケーションをとりながら作り上げていったっていうところが大きくて。それはすごく嬉しかったですね。

それはデビュー当時とは一番違う点かもしれないですね。

僕は本当に、今でもそうですけど、素人ですからね。デビュー当時、僕の作った曲をアレンジしてくださるんだけど、自分なんかがと思ってしまって何も言えない(笑)。今回も「言っていいのかなー」って考えたりもしたんですけど、自然にやりとりができるようになったのは変化ではありますね。

歌詞に「幼い頃の夢」ってありますが、かつての自分を考えたりすることはありますか。デビュー前自分がどんなことを考えてたとか。

そんなに考えないというか、人間なんてそう大きく変わるものじゃないなって思ってますね。
デビュー前の自分と今の自分は違う自分になってるかっていうと、まったくそういうことはなくて。
当然、経験することで学習することもあるし、変わっていくこともあるけど、変わらない自分もいる。
すごく華やかな世界に飛び込めば、自分を変えてくれるんじゃないかっていう、他力本願みたいなところからこの業界に入ったので、入ってから自分で変わらなきゃいけないんだって思い知らされたし(笑)。
もっともっといろんなことにアンテナを張って、いろんなことをしておけばよかったなって思うこともあるけど、今の自分がその頃の自分に戻れたとしても、きっと同じように無駄な時間の使い方しかしないだろうなと思うので(笑)。
まあでも、そんなに将来の夢を持ってるような人間じゃなかったですけど、ギターを高2で手にしたときにギタリストになりたいって、少年野球やってる子がプロ野球選手になりたいって思うように、そういう夢を抱いて。
いまだにギターを弾ける場所があるっていうのはありがたいと思います。

最初に音を出したときの興奮みたいなものは今も変わらないですか、楽しさというか。

うーん……あの頃の熱量のままかって言ったらそんなことはないですよね。

経験を積むことでできることはどんどん増えますよね。

いや、もう、どんどんは増えないですよ。
むしろ「あれ、こんなに指動かなくなったんだ?」って(笑)。
筋力も衰えるし、記憶力も衰えるし、外見だって劣化していくのと同じで、ギターも衰えていくんだって思ってますもん。
ただ、単純にギターを弾いてると、ギターの音を聴いてると楽しいっていうか、嬉しいっていうか。そういう気持ちはいまだにありますけどね。何も知らないなかで初めて出会うものっていうのは、やっぱり大きいじゃないですか? 僕の場合は初めて出会ったバンドがBOØWYで、布袋(寅泰)さんに憧れてギターを始めて。ちょうど夏休みになるときだったから、1日8時間ずっとギターばっかり弾いてて(笑)。
そういうのって今はなかなかできないことだから。
あ、でも、釣りに行ったら1日8時間以上余裕で釣ってますね(笑)。
なかなか大人になって夢中になれることってないですから。
だから、そういうときにやっとかなきゃいけないこと、出会っておかなきゃいけないことっていうのはあったんだなって思います。

一方で、2曲目の「Eぜ」は初のタッグとなる、OKAMOTO’Sのオカモトショウさんにお願いしてます。

ディレクターから「若い才能と一緒にやるのはどうですか?」っていうアイデアをいただいて。OKAMOTO’Sさんの曲を聴いたり、MVを観てみたら、すごくカッコいいっていうか、数あるほかのバンドとは違う、異質なバンドだなと感じて。
面白そうだとお願いしたら快諾してくださって。OKAMOTO’Sさんってメンバーが集まって一発録りをすることが多いということで、僕もレコーディングにギターで参加したんです。考えてみたら、当然呼人さんもジュンスカ(JUN SKY WALKER(S))なんですけど、バンド自体と接したのは初めてだなと思って。しかも、バンドの一発録りのレコーディングっていうのも初めてで。
それはすごく楽しい経験でしたね。

20年近くやっててもまだ初めてのことがあるんですね。

まあ、僕の音楽活動っていうのはほかのミュージシャンの方とは違って、役者をやりながらなのでね(笑)。
OKAMOTO’Sさんはホントに見てて微笑ましいというか、仲がいいっていうか。
もしかしたら、いろんなことがあるのかもしれないですけど、中学時代からの同級生なわけで、それって夢じゃないですか? 僕も高校のときにコピーバンドを組んで。
それはすごく楽しかったし、続けていけたらと思っていたけど、文化祭が終わったら、みんな受験だってバラバラになってしまったし(笑)。
でも、OKAMOTO’Sさんはそこからずっと繋がってるわけじゃないですか。それはすごいことだなと。

OKAMOTO’Sも過去と現在というテーマで書いてますね。

それはきっと、僕のことを思って、年齢のことを考えてくださったんだと思います。初めて聴いたときにびっくりしましたけど、「ビフォ〜」って(笑)。

すごい新鮮ですよね(笑)。

「なんだこりゃ!」って驚きました。だけど、すごくシンプルでカッコいい曲に仕上げてくれたなって思います。それと、ショウさんのキャラクターっていうのが、アーティスト気質っていうか。

ロックスター然としてますよね。

僕、エアロスミスの『パンプ』がすごい好きなんですけど、メイキング映像でスティーブン・タイラーが圧倒的なんですよ。どこか、それと重なる部分があって。これがアーティストなんだって思いましたね(笑)。

さらにもう一曲、シライシさんによるロックンロール「EXCLUSICE」が収録されていて。1stアルバムまでをプロデュースした呼人さん、2ndアルバムから携わっているシライシさん、そして、20代のバンドマンと作った一枚が似合うライブハウスツアーがスタートするわけですが、ツアータイトル〈~原点回帰 k.k.w.d. tour~〉の意味をお伺いしてもいいですか? いくら考えてもわからないんです。

いや、全然たいしたことないですよ。ツアーのMCでその話をして、みんなが苦笑するっていう画まで見えてます(笑)。

じゃあ、ライブハウスに足を運ばないとわからないんですね。

そうですね。ツアータイトルを考えてるときに、今回はやっぱり、“原点回帰”って言葉が出てきて。漢字4文字でカッコいいなとは思ったんですけど、ちょっと物足りない感じがして、無理矢理くっつけたのが、“k.k.w.d.”なんですよ。

じゃあそこはMCを楽しみにしてます! 最後に16年ぶりのライブハウスツアーに向けた意気込みを聞かせてください。

お客さんとの距離感がすごく近かったような気がする、みたいな(笑)。本当に一番最初に回ったツアーでは、ステージ前のすぐそこにお客さんがいるっていうハコもあったので、そういう距離感にまず戸惑っちゃうかもしれないですね。まだ、どうなるか想像がつかないんですけど、僕的にはいろいろドラマや舞台で忙しくしていたストレスを発散する場所だとも思っているので(笑)、ご褒美のつもりで楽しめるといいなと。もちろんみなさんに見せなきゃいけないクオリティを考えると責任はあるんですけど、それ以上にまずは自分が楽しみたいなと思ってます。

みんなも日々の鬱憤やストレスを晴らしにくるんじゃないですか(笑)。

デビュー当時から応援してくださっている方々は、デビューのときから比べると僕もみんなも年月が経っているのでお互い無理しないようにしましょう(笑)。もちろん昔から応援してくださっているファンの方々だけではなく、最近の作品でファンになってくださった方々にもたくさん来て欲しいですね。みんなで楽しめたら嬉しいです。

Naohito Fujiki Live Tour ver11.1~原点回帰 k.k.w.d. tour~

9月7日(木)Live House浜松窓枠
9月9日(土)ZEPP Nagoya
9月10日(日)club-G
9月16日(土)高松MONSTER
9月18日(月・祝)なんばHatch
9月19日(火)なんばHatch
9月23日(土・祝)DRUM Be-1
9月24日(日)CRAZYMAMA KINGDOM
9月30日(土)豊洲PIT
10月1日(日)豊洲PIT
10月7日(土)仙台RIPPLE
10月9日(月・祝)ペニーレーン24
10月14日(土)NEXS NIIGATA
10月21日(土)横浜ベイホール
10月22日(日)横浜ベイホール


藤木直人(ふじき・なおひと)

1972年生まれ。早稲田大学理工学部情報工学科卒。
在学中に映画『花より男子』の〈花沢類〉役に抜擢され、1995年に俳優デビュー。その後も、連続テレビ小説『あすか』(NHK)や『ナースのお仕事』(CX)シリーズ、『Love Revolution』(CX)、『ホタルノヒカリ』(NTV)をはじめ、映画『g@me』、『20世紀少年(第2,3章)』などに出演、注目を集める。2008年には『冬の絵空』で初舞台。俳優活動と並行して音楽活動も本格的に開始し、1999年7月に「世界の果て~the end of the world~」でCDデビュー。2006年、2007年には2年連続で日本武道館での単独ライブも行っている。今作リリース後、9月より全国ライブハウスツアーを開催。
近年の出演作には『母になる』(17/NTV)、『嘘の戦争』(17/CX)、『THE LAST COP/ラストコップ』(16/NTV)、『私結婚できないんじゃなくて、しないんです』(16/TBS)などがあるほか、『おしゃれイズム』(NTV)にてレギュラーパーソナリティも務める。
7月7日〜上演の音楽劇『魔都夜曲』へも出演。
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