Interview

須賀健太が鬱屈した青春映画『獣道』に共鳴。「もっと仕事がしたい」とモヤモヤした青春時代を振り返る

須賀健太が鬱屈した青春映画『獣道』に共鳴。「もっと仕事がしたい」とモヤモヤした青春時代を振り返る

「青春」という言葉を聞いたとき、陽の光を射返し、眩く乱反射する水面のような景色を浮かべる人もいれば、空をどんよりと覆い尽くす分厚い灰色の雲をイメージする人もいる。もしあなたが後者なら、きっとこの映画に共鳴せずにはいられないはずだ。
7月15日公開の映画『獣道』は、地方都市で暮らす少年少女の閉塞と鬱屈を描いた、ちょっとシニカルな青春ムービー。怪しい宗教にすがる母のもとで生まれ、中学生になるまで新興宗教の施設で世間から隔離されるように育った〈愛衣〉と、そんな〈愛衣〉に恋をした不良少年の〈亮太〉。地元を牛耳るヤクザや、若者を餌食にする性産業など、社会の暗部にからめ取られながら、ふたりは青春の獣道をひた走る。
この〈亮太〉を演じる須賀健太が実に色っぽくていいのだ。日本中に愛されたあの無垢な笑顔を消し去り、生気のない眼差しで、漂うように生きる佇まいに胸を撃ち抜かれる。年齢22歳にして芸歴は18年。「子役」という肩書きを拭い去った須賀健太が、今、スクリーンで躍動する――。

取材・文 / 横川良明 撮影 / 相馬ミナ


〈亮太〉の鋭さや孤独感を、目で伝えられたら

オファーを受けたとき、須賀さん自ら出演を熱望されたと聞いています。本作のどんな点に興味を持ったのでしょうか?

まず脚本が純粋に面白かったというのがあります。物語全体がシュールな感じをまとっていて、悲壮的なだけじゃなく、笑いもまじえながら、でも地方都市のリアリティというものはしっかり感じ取れるところが良かった。登場人物たちの持つ、若者特有の孤独感や不安は僕にも理解できるところがあったし、それを表現できたらきっと面白い作品になる予感がしました。脚本の段階からこんなに素敵な作品に出させていただけるんなら、断る理由はないなと思いました。

演じる〈亮太〉という役にはどんな印象を抱きましたか?

まず僕でいいのかなって。僕の中に〈亮太〉のような不良感をイメージされる方って、この映画を撮影した段階ではあまりいなかったと思うんですよね。どちらかというと、自分で言うのも何ですが、好青年というか“陽”のイメージ。だから監督がこの役を僕に与えてくださったのが意外でした。ただ、役者としては自分のイメージと違う役に挑戦できるのは、すごく魅力的なこと。だから今回、この役をやらせていただけて本当に幸せでした。

©third window films

難しい役ですよね。〈亮太〉は確かに内側に鬱々としたものを抱えているけれど、決して他の出演者のように何か爆発するところまでいくわけじゃない。

そうですね。ただ、キャストのみなさんがパンチ力の塊みたいな人ばっかりだったので(笑)、ある種自然と受け身になれたというか。個性的に見えないのが亮太の個性で、どこか一歩引いて全体を見ていたところはあるかもしれないです。大切にしたのは、自分の中でどう感情の引き算をしていくか。お客さんといちばん近い立ち位置をとりたいなと思いながら演じていました。

実際にアウトプットの部分で意識した点はありますか?

目ですね。〈亮太〉の持つ鋭さや孤独感が目で伝えられたらいいなって。目のお芝居に関しては自分の中で気をつけていました。

©third window films

あのキスシーンは、僕の中にもずっと揺らぎがあった

内田英治監督の作品づくりで印象的だったことは?

驚いたのが、映画のラストシーン! あの場面は、台本では実はもっと序盤に来る予定のシーンなんです。それを監督が撮影したものを見て、いちばんラストに持ってきた。初めて試写で見たときは「こうなったんだ!」ってビックリしました(笑)。でもまったく不自然じゃないし、むしろすごく心地の良いところに着地した感さえあった。あのラストのおかげで、これは若い人たちの青春映画なんだということが改めて印象づけられたような気がします。

©third window films

〈亮太〉の最後のナレーションも含めて、すごく解放感のあるラストだったと思います。そこで気になるのは、やはり〈愛衣〉との恋模様です。個人的には、中盤のキスシーンは鮮烈でした。すごく生々しくって色っぽくて。

ありがとうございます。あのシーンがいちばん大変だったかなぁ。キスをしながら、殴るというすごく特殊なシーンで。(伊藤)沙莉も僕も迷いながらやっていたというか。決して感情的になりすぎてはいけないラインがあって。〈愛衣〉のことをほしいと思う反面、〈愛衣〉の前では〈亮太〉らしくありたいと思う気持ちもある。その複雑な感情をどこまで出せばいいのかは、かなり難しかったです。
また、沙莉も監督と何度も話し合っていましたね。基本的には、〈亮太〉は誰といるときも受け身。だから、このシーンも沙莉がどう出るかで僕の芝居も変わる。監督と話している沙莉を見ながら、どうしようと考えていた記憶があります。

二度目のキスのときに一旦〈亮太〉は〈愛衣〉を受け入れようとするんですよね。で、そのまま流されるのかと思ったら、やっぱり拒んでしまうという……。

〈愛衣〉のことはすごく好きだし、ずっと気にかけながら生きてきたと思うんですけど。たぶんこのシチュエーションでこのまま受け入れてしまうのは違うなという迷いもあって。そんな〈亮太〉の揺らぎみたいなところを立たせたかった。監督からもそう明確に指示をいただいて。結果的に、ああいうふうになって良かったかなと思います。

すごく良かったです。本能的なところで言えば流されてしまえばいいんですけど、それでも拒否してしまうところに10代の青さと潔癖さを感じました。

演じながら僕も何が正解かということを常に考えていました。その揺らぎが出たらいいなって。

©third window films

結果的に、あのキスシーンがふたりの人生の分岐点となりました。

そうですね。そういう意味でも、すごく大切なシーンになったと思います。

どんどん身を墜としていく〈愛衣〉を〈亮太〉はどんな気持ちで見ていたと思いますか?

怖かった部分もあると思います。〈亮太〉は結局、〈愛衣〉と付き合うという道は選ばなかったわけで。たぶんそれは、その選択肢を選ぶことが怖かったから。どこかのタイミングで付き合おうと思えば付き合えたと思うんですね。でも、人間関係はそんなに簡単じゃない。ふたりの関係はそんな難しさをすごくよく表している気がするなって。わざとちょっとややこしい位置にいようとしたあのふたりの気持ちは少なからず理解できます。