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スピッツ、45通りの「響き・毒・宝物」。30周年記念シングル・コレクション・アルバムの極上レシピ。

スピッツ、45通りの「響き・毒・宝物」。30周年記念シングル・コレクション・アルバムの極上レシピ。

スピッツが結成30周年を迎えた。一度のメンバーチェンジも活動休止もなく、ほぼ毎年ツアー行い、歌い続けてきた。そして数えきれない人の心を潤し、一人ひとりのなにものにも代えられない思い出に重なるように、その歌は心の深い場所に存在している。それは先日観たスピッツ結成30周年記念ツアー『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50”』の初日、7月1日の静岡エコパアリーナ公演で強く感じた。30周年記念シングルコレクションアルバム『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection-30th AnniversaryBOX-』が7月5日に発売されるという事で、名曲のオンパレードだったが、幅広い年齢層のファンは彼らのそれぞれの受け止め方、楽しみ方で堪能していた。時には全員で腕を突き上げ盛り上がったり、時には波間にたゆたう小舟のように、ゆったりとしたリズムに合わせ体を揺らしたり、また座って目をつむり、ゆっくりリズムを取り、まるで何かの思い出と共に愛おしそうに聴いているかような、そんな思い思いの楽しみ方で、でも共通しているのは“歌に包まれている”という空気感が出ていた事だ。そうして4人が奏でる、誰もが口ずさめる名曲の数々を体と心で感じ、宝物として再び心の中にしまっていた。

そんな誰もが共感できる、誰の心にも重なる普遍性がスピッツの音楽の強みだが、歌の感じ方は十人十色、例え100%共感できなくても、でも「どこか、なんとなく共感できる」部分が多いのが、スピッツの音楽がデビュー以来多くの人から愛され、さらに新しいファンが増え続けている理由だ。そんな彼らの数ある作品の中から、1991年のデビューシングル「ヒバリのこころ」から2016年4月に発売されたシングル「みなと」までの、全シングル曲と「愛のことば-2014mix-」「雪風」といったドラマ主題歌になっている配信限定シングル曲と、新曲3曲を加えた全45曲が収録されているのが、シングルコレクションアルバム『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection-30th AnniversaryBOX-』だ。

甘酸っぱいメロディを歌い、どんな曲にも切なさを纏わせる草野マサムネの声、胸を躍らせ、時には優しく歌に寄り添う三輪テツヤのギター、雄弁かつ豪快、繊細さも持ち合わせるサウンドで、スピッツの音を支える﨑山龍男のドラムと田村明浩のベースのリズム隊。その強固でしなやかなバンドアンサンブルから放たれる曲達は、優しく柔らかなリリカルさが支持されているが、実は歌詞にもサウンドにも宿っている“毒”、パンキッシュな部分がスピッツの音楽に奥深さと、繰り返し聴いても決して飽きないエバーグリーンな響きを与え、時を超えて輝き続ける音楽になっている。今回のシングルコレクションの大きなトピックスである新曲3曲にも、もちろんその“響き”を感じる。

『2017めざましテレビ テーマソング』に起用されている「ヘビーメロウ」は、シンプルな構成で、繰り返し聴きたくなる中毒性があるが、穏やかで爽やかな朝を連想させてくれる。この曲について草野は「少しでもポジティブな気持ちになってもらえるような弾んだリズムの曲を作ってみました。ただ歌詞はスピッツの持ち味でもある、ちょっと卑屈でネガティブな要素もあるかも。とにかく楽しい1日になりますように!」と語っているように、スピッツならではの捻りを加えた上での、爽やかな朝の光を演出している。

生田斗真と広瀬すずという、今最も注目を集める俳優が共演する映画『先生!』の主題歌に起用されている「歌ウサギ」は、誰もが共感できるラブソングだ。スピッツが映画の主題歌を手がけるのは2008年の『桜の園-さくらのその-』以来9年ぶりで、「歌ウサギ」についてメンバーは「恋愛は大体がキレイ事ではありません。でもそんな中で悩んでもがくのが醍醐味だとオジさんたちは思うのです。恥ずかしい思い出と向き合いながら作った曲ですが、この可愛い恋愛映画に寄り添うことが出来れば幸いです」とコメントし、映画の世界観により深みを与える、優しさに満ちた作品になっている。

「1987→」は、草野が「“ビートパンクバンド・スピッツの新曲”という想定」で作ったと言っている、強力なリズムが、疾走感のあるビートを生み出し、それが草野のヴォーカルと相まって、これぞスピッツという重厚感とポップさ、瑞々しさを感じさせてくれるグルーヴを作り出している。イントロはインディーズ時代の楽曲「泥だらけ」をオマージュしたもので、ギターをまさに“かき鳴らし”、その躍動感のある演奏と、30年という時の流れを愛おしむと同時に、未来への決意を歌った歌詞は、4人が永遠のロック少年である事を感じさせてくれ、ファン感涙の一曲だ。この曲について田村は「収録される新曲の中でも最後に録った曲はスピッツにとって一番新しい曲です。新曲なんだけどアマチュア時代にやっていたアレンジやフレーズをそのまま使ってたりして、かなりレコーディングでは盛り上がりました。結成当時の自分に負けたくなかったのでギターソロバックのダウンピッキングにはかなりこだわりました」と語っていて、結成30年経ったからこそできる演奏であり、こういう音楽をこれからも楽しみながらやり続けるという、まさに決意表明のメッセージソングなのだ。

スピッツは結成以来きっと、音楽で世の中を変えたい、時代を動かしたいという、そんな大それた熱量を込めた音楽というよりは、スピッツの音楽を聴いた人の気持ちが、一瞬でも少しでも軽くなって、心が優しい空気で包まれる、そんな音楽を作り続けてきたのではないだろうか。シングルコレクションアルバム『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection-30th AnniversaryBOX-』を聴いて、改めてそう感じ、感動した。

文 / 田中久勝

リリース情報

スピッツ

CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-

2017年7月5日発売
(3CD)UPCH-7329/31
¥3,900+税

1991年のデビューシングルから昨年2016年4月に発売されたシングル曲「みなと」までの全シングル曲、そして「愛のことば-2014mix-」「雪風」といったドラマ主題歌としても話題となった配信限定シングル曲、さらには、新たにレコーディングをした新曲3曲を加えた全45曲収録のCD3枚組アルバム。

【収録曲】
【DISC 1】CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection
01.ヒバリのこころ
02. 夏の魔物
03.魔女旅に出る
04.惑星のかけら
05.日なたの窓に憧れて
06.裸のままで
07.君が思い出になる前に
08.空も飛べるはず
09.青い車
10.スパイダー
11.ロビンソン
12.涙がキラリ☆
13.チェリー
14.渚
15.スカーレット

【DISC 2】CYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection
01.夢じゃない
02.運命の人
03.冷たい頬
04.楓
05.流れ星
06.ホタル
07.メモリーズ
08.遥か
09.夢追い虫
10.さわって・変わって
11.ハネモノ
12.水色の街
13.スターゲイザー
14.正夢
15.春の歌

【DISC 3】CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection
01.魔法のコトバ
02.ルキンフォー
03.群青
04.若葉
05.君は太陽
06.つぐみ
07.シロクマ
08.タイム・トラベル
09.さらさら
10.愛のことば-2014mix-
11.雪風
12.みなと
13.ヘビーメロウ
14.歌ウサギ
15.1987→ 
2006年に発売された2枚の『CYCLE HIT』も2017年最新のマスタリングをして再発売!

CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection

(CD)UPCH-2129 ¥2,500+税

CYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection

(CD)UPCH-2130 ¥2,500+税

CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection

(CD)UPCH-2131 ¥2,500+税

『CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection』、そして『CYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection』も、今回の新たなアイテムに合わせ、2017年の最新スピッツサウンドを表現する為に、世界最高峰の「Marcussen Mastering」にてリマスタリングを遂行。7月5日に再発売。

アナログ盤も“重量盤”で7月5日同時発売!

ファーストアルバム『スピッツ』から昨年7月に発売された最新アルバム『醒めない』までのオリジナルアルバム15作品に、ミニアルバム『オーロラになれなかった人のために』を加えた全16作品をアナログ盤で発売。

ライヴ情報

『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50”』

7月01日(土):静岡県・静岡エコパアリーナ
7月04日(火):大阪府・大阪城ホール
7月05日(水):大阪府・大阪城ホール
7月12日(水):愛知県・日本ガイシホール
7月13日(木):愛知県・日本ガイシホール
7月22日(土):広島県・広島グリーンアリーナ
7月23日(日):広島県・広島グリーンアリーナ

8月05日(土):長野県・長野・ビッグハット
8月06日(日):長野県・長野ビッグハット
8月11日(金・祝):香川県・さぬき市野外音楽広場テアトロン
8月12日(土):香川県・さぬき市野外音楽広場テアトロン
8月16日(水):東京都・日本武道館
8月17日(木):東京都・日本武道館
8月19日(土):東京都・日本武道館
8月23日(水):神奈川県・横浜アリーナ
8月24日(木):神奈川県・横浜アリーナ
9月02日(土):福岡県・マリンメッセ福岡
9月03日(日):福岡県・マリンメッセ福岡
9月16日(土):北海道・北海道総合体育センター北海きたえーる
9月17日(日):北海道・北海道総合体育センター北海きたえーる
9月30日(土):宮城県・宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ・21)
10月1日(日):宮城県・宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ・21)

SPITZ

草野マサムネ :1967年12月21日 福岡県 O型 ヴォーカル&ギター
三輪テツヤ :1967年5月17日 静岡県 B型 ギター
田村明浩 :1967年5月31日 静岡県 A型 ベースギター
﨑山龍男 :1967年10月25日 栃木県 B型 ドラムス
草野マサムネ(Vo/Gt)、三輪テツヤ(Gt)、 田村明浩(B)、﨑山龍男(Dr)の4人 組ロックバンド。
1987年結成。1991年3月シングル「ヒバリのこころ」、アルバム「スピッツ」でメジャーデビュー後、1995年リリースの11thシングル「ロビンソン」、6thアルバム『ハチミツ』のヒットを機に、多くのファンを獲得。
以後、楽曲制作はもちろん、日本国内をくまなく廻る全国ツアーや自らオーガナイズするイベント開催など、マイペースな活動を継続している。 そして今夏、15thアルバム『醒めない』を発売、全国ツアーも大成功。
2017年結成30周年を迎え、7月5日は「CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-」を発売、『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50”』も敢行中と精力的に活動を展開している。
オフィシャルサイトhttp://spitz.r-s.co.jp/