【80年代名鑑】明菜からYMOまで 80'sからの授かりもの  vol. 27

Column

REBECCA 異なるふたつの魅力あるバンドを生んだ初期

REBECCA 異なるふたつの魅力あるバンドを生んだ初期

REBECCA(レベッカ)、という文字を目にすると、心のどこかが疼く人達にとって、楽しみな日々が続いている。これまでも復活の横浜アリーナ(2015年)があったが、今年はツアーが実現する。しかもボーカルのNOKKOによれば、新曲を従えてのものになる、とのこと…。もうこれは復活ではなくて、彼らの「活動再開宣言」と受取って良さうだ。

そんな『REBECCA LIVE TOUR 2017』は、7月28日の大阪「フェスティバルホール」を皮切りに、9月1日の東京「日本武道館」まで続く…、ということで、この偉大なるバンドの足跡を、この機会に予習・復習してみることにしよう。ところで…。

彼らのバイオグラフィを読むと、必ず記載されてることがある。要約するとこんなこと…。

1984年の4月にデビューした際のリーダーはギターの木暮武彦であり、当時はロック色が強く、しかし彼とドラムの小沼達也は1年も経たずに脱退し、その後はキーボードの土橋安騎夫がリーダーとなり、NOKKOの魅力を前面に押し出したポップな作風により、1985年の4枚目のアルバム『REBECCA IV  〜Maybe Tomorrow〜』は、バンドのアルバムとしては当時日本では異例だった、ミリオン・セラーを記録する。

注目すべきは、ロックとポップという言葉だ。ロックには己の信念を貫いてくイメージがあり、ポップだとより大衆を意識した柔軟性を感じさせる。前者を軸に眺めれば、その後、「売れ線に走った」みたいな印象になり、逆の見方をするなら、閉じこもっていた殻を「打ち破った」みたいな評価も可能だ。でも実際どうだったのか。メンバー本人達は様々に忸怩たる想いなどもあったろうが、ここはひとつ、残された作品をまっさらな気持ちで聴いてみよう。

ファースト・アルバム『VOICE PRINT』を改めて聞くと、なかなかの名曲揃いである。ちなみにこのタイトルは“声紋”という意味だが、想像するに、ボーカルNOKKOの印象的な歌声が、あなたの胸に張り付く、刷り込まれる…、くらいの意味にも受け取れそうだ。

デビュー曲の「ウェラム・ボートクラブ」(84年4月21日)など、まさにそうだ。実際、全音域、どこをとっても痩せた印象のない、見事なボーカルを聴かせてくれている。そして声質も、日本的細やかさというより、当時の流行り言葉でいえば「プラスチックな」とでも言えばいいのだろうか。つまりいったん無機質を装い、しかしそこに新たな情感をまとう意志が旺盛なような、そんな響き方をしていた。サウンドが洋楽的でも、歌う言葉が日本語でも、それをシラケさせず伝える力を有していたわけである。

そしてこの曲、サウンド的には80年代中期のポップ・ロックの典型という気がする。ヒュヒュヒュン パパッ ツトトーンと、シンセの音がリズミカルに闊歩してるのはこの時代の特色だ。男性メンバーのコーラスが絡むあたりは、紅一点のボーカリストを擁することでは共通してた、イギリスのプリテンダーズを彷彿させたりもする。ちなみに紅一点のボーカリストといえば、この時代、ドイツのネーナというバンドが全米ナンバー・ワン・ヒットを飛ばしたりもしてた。バンドではないが、シンディ・ローパーが新たなガ−ルズ・ロックを打ち立てたのもこの頃なのである。

『VOICE PRINT』はフル・アルバムではなく6曲入り。しかし美メロにヒネったアレンジの「瞳を閉じて」とか、ビート・パンク的突進力の「ハチドリの証言」など、バラエティに富んでいた。残念ながら、デビューしていきなり成功を収める、というわけにはいかなかったが、改めて聴いてみると、“この頃のREBECCAはロックで、その後、ポップに変身し…”という言葉では片付けられない幅広いものが響いているのだった。もちろん、デビューしてまず世間に覚えてもらうには、「俺たちゃコレなんだ」ってものを、まずは不器用なほど押し出すほうが得策だったりする場合もあるが…。

すぐに木暮武彦と小沼達也は脱退したわけであり、その原因は「音楽性の不一致」だとされる。他のメンバーとの不一致というより、事務所やメーカーの思惑との不一致だったことが、その後の発言などからも伝わってくるわけだが…。でもこの「音楽性の不一致」という言葉、しばしば方便として使われ、理由は他にあったりもする。でもこの場合、まさにそうだったのだろう。そして不一致なだけなら、新たに始めればいいわけであり、また、その時、ちゃんとやりたいことを打ち出せたなら、こちらもナルホドと思うわけだ。実際、木暮たちはご存知の通り、いかしたロックンロール・バンド、 RED WARRIORS(レッド・ウォーリアーズ)を結成し、大成功を収める。“初期のレベッカ”は、このバンド、そしてその後のREBECCAという、主旨の異なるふたつの魅力あるバンドを生んだことでも、日本の音楽シーンに名を残すのである。

文 / 小貫信昭

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