スピッツが僕たちに見せてくれた世界  vol. 2

Review

自由で奔放で無邪気、だからすばらしい初期スピッツの傑作

自由で奔放で無邪気、だからすばらしい初期スピッツの傑作

スピッツが結成30周年を迎え、シングルコレクションアルバム『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』を届けてくれた。
世代を超えて愛され続けている音楽を作ることを成し得たアーティストが到達できる30周年。聴く人の喜怒哀楽、それぞれの想いにもそっと寄り添い、潤いを与え続けているスピッツが僕たちに見せてくれた世界をオリジナルアルバム単位で1枚ずつ振り返っていきたい。
『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』に収録されているシングルの味わいもグッと増し、もっとスピッツを知りたくなってくれることを願って。

#2 2nd Album「名前をつけてやる」(1991年11月25日発売)

お詫びと訂正です。前回の1stアルバムのレビューで、僕がスピッツの音を初めて聴いたのは、その1stアルバム『スピッツ』である、と読めるように書いていますが、正確にはそうではなく、初めてちゃんと聴いたのはこの2nd『名前をつけてやる』でした。1stと2ndの間に株式会社ロッキング・オンに入社し、ロッキング・オン・ジャパン編集部に配属になって間もない頃に、上司に「スピッツの2nd出るから取材ある。インタビューは俺がやるけど現場の仕切りはおまえがやれ」と仰せつかり、『名前をつけてやる』のアドバンス・テープを聴いて驚愕し、渋谷の桜丘から渋谷センター街のそばにあったレコードショップWAVEまで、特に急ぐ必要はないのに大急ぎで1stアルバムを買いに行ったことを、『名前をつけてやる』を聴き直していて思い出しました。ついでに、その時店頭にインディー盤の『ヒバリのこころ』もあったのに、財布の中身が乏しくて「今度にしよう」と買わなかったところ、その後とんでもないプレミアがついてとてもじゃないが買えなくなったことも思い出しました。あの時買っておけばよかった、そのあと何度思ったことか。

さて。この『名前をつけてやる』だが、このアルバムがいちばん好きだというファンは、実はけっこういるのではないか。過去にスカなアルバムなど作ったことがないスピッツだが、このアルバムは特に濃い、今聴いても。
本作が出た1991年頃は、洋楽のギター・バンドがどんどん元気になっていた頃だった。マッドチェスター、シューゲイザーといったUK勢も、アメリカン・オルタナティヴやグランジも含めて、次々といろんなバンドがデビューし、日本盤がリリースされたり、川崎クラブチッタや渋谷クラブクアトロで来日公演が行われたりしていた。
このアルバムで聴くことができるギター・サウンドには、スピッツにしてはめずらしい(と言っていいと思う)無邪気さでもって、そうした同時代の洋楽とリンクしている感触がある。「ミーコとギター」の裏にキックやスネアがやたら裏に入るドラム・プレイは当時のUKギター・ロックの王道だし、「日曜日」や「待ち合わせ」で聴けるディストーション・ギターも、シューゲイザーもしくはグランジな響きを持っているし、曲全体にそういうアレンジメントがなされている。
「ウサギのバイク」や「鈴虫を飼う」のようなアコースティックな響きの曲もあるが、インディー盤や1stで聴かれる朴訥としたフォーク感ではなく、イギリスのネオ・アコースティック的な響きをたずさえたギターの鳴りをしていたりもする。

という方向性のサウンド・プロダクトが、「ウサギ」や「蜂」や「鈴虫」や「夏蜘蛛」などが頻出する、どっぷり草野マサムネな言葉&メロディと、この上なく気持ちいいマッチングを見せている。そう、「かっこいい」とか「おもしろい」というよりも「気持ちいい」の方がしっくりくる。耳に入ってきた時の音楽的快楽性が特に高い、というか。そういう意味で、スピッツ有数の作品だとも言える。
にしても、どの曲もアレンジがとてもいい。わりと素朴だった1stからわずか半年で、なんでこんなに進化したんだろう。アディショナル・ミュージシャンは何人も参加しているけど、アレンジ自体は「魔女旅に出る」除き、スピッツ自身のクレジットになっているし。

3rd Single「魔女旅に出る」(1991年10月25日発売)

それから。「すぐにショーユのシミも落ちたよ ほら びっくり大笑い」と、何が「びっくり」で何が「大笑い」なんだかわからないことを歌ったと思ったら、前後の脈絡と関係なく突然「でっかいお尻が大好きだ ゆっくり歩こうよ」なんてラインをぶちこんでくる「あわ」と、「名前をつける」という行為に性的なものを見出している(のではないかと僕は思う)タイトル・チューンを聴くたびに、つくづく、マサムネって天才だなあと思う。

文 / 兵庫慎司

今回紹介した作品

2nd Album
名前をつけてやる
発売日:1991年11月25日
品番:UPCH-1182
【収録曲】
01.ウサギのバイク
02.日曜日
03.名前をつけてやる
04.鈴虫を飼う
05.ミーコとギター
06.プール
07.胸に咲いた黄色い花
08.待ちあわせ
09.あわ
10.恋のうた
11.魔女旅に出る

リリース情報

スピッツ

CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-

2017年7月5日発売
(3CD)UPCH-7329/31
¥3,900+税

1991年のデビューシングルから昨年2016年4月に発売されたシングル曲「みなと」までの全シングル曲、そして「愛のことば-2014mix-」「雪風」といったドラマ主題歌としても話題となった配信限定シングル曲、さらには、新たにレコーディングをした新曲3曲を加えた全45曲収録のCD3枚組アルバム。

【収録曲】
【DISC 1】CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection
01.ヒバリのこころ
02. 夏の魔物
03.魔女旅に出る
04.惑星のかけら
05.日なたの窓に憧れて
06.裸のままで
07.君が思い出になる前に
08.空も飛べるはず
09.青い車
10.スパイダー
11.ロビンソン
12.涙がキラリ☆
13.チェリー
14.渚
15.スカーレット

【DISC 2】CYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection
01.夢じゃない
02.運命の人
03.冷たい頬
04.楓
05.流れ星
06.ホタル
07.メモリーズ
08.遥か
09.夢追い虫
10.さわって・変わって
11.ハネモノ
12.水色の街
13.スターゲイザー
14.正夢
15.春の歌

【DISC 3】CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection
01.魔法のコトバ
02.ルキンフォー
03.群青
04.若葉
05.君は太陽
06.つぐみ
07.シロクマ
08.タイム・トラベル
09.さらさら
10.愛のことば-2014mix-
11.雪風
12.みなと
13.ヘビーメロウ
14.歌ウサギ
15.1987→ 

2006年に発売された2枚の『CYCLE HIT』も2017年最新のマスタリングをして再発売!

CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection

(CD)UPCH-2129 ¥2,500+税

CYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection

(CD)UPCH-2130 ¥2,500+税

CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection

(CD)UPCH-2131 ¥2,500+税

『CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection』、そして『CYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection』も、今回の新たなアイテムに合わせ、2017年の最新スピッツサウンドを表現する為に、世界最高峰の「Marcussen Mastering」にてリマスタリングを遂行。7月5日に再発売。

アナログ盤も“重量盤”で7月5日同時発売!

ファーストアルバム『スピッツ』から昨年7月に発売された最新アルバム『醒めない』までのオリジナルアルバム15作品に、ミニアルバム『オーロラになれなかった人のために』を加えた全16作品をアナログ盤で発売。

ライブ情報

『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50”』

7月01日(土):静岡県・静岡エコパアリーナ
7月04日(火):大阪府・大阪城ホール
7月05日(水):大阪府・大阪城ホール
7月12日(水):愛知県・日本ガイシホール
7月13日(木):愛知県・日本ガイシホール
7月22日(土):広島県・広島グリーンアリーナ
7月23日(日):広島県・広島グリーンアリーナ

8月05日(土):長野県・長野・ビッグハット
8月06日(日):長野県・長野ビッグハット
8月11日(金・祝):香川県・さぬき市野外音楽広場テアトロン
8月12日(土):香川県・さぬき市野外音楽広場テアトロン
8月16日(水):東京都・日本武道館
8月17日(木):東京都・日本武道館
8月19日(土):東京都・日本武道館
8月23日(水):神奈川県・横浜アリーナ
8月24日(木):神奈川県・横浜アリーナ
9月02日(土):福岡県・マリンメッセ福岡
9月03日(日):福岡県・マリンメッセ福岡
9月16日(土):北海道・北海道総合体育センター北海きたえーる
9月17日(日):北海道・北海道総合体育センター北海きたえーる
9月30日(土):宮城県・宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ・21)
10月1日(日):宮城県・宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ・21)

SPITZ

草野マサムネ :1967年12月21日 福岡県 O型 ヴォーカル&ギター
三輪テツヤ :1967年5月17日 静岡県 B型 ギター
田村明浩 :1967年5月31日 静岡県 A型 ベースギター
﨑山龍男 :1967年10月25日 栃木県 B型 ドラムス
草野マサムネ(Vo/Gt)、三輪テツヤ(Gt)、 田村明浩(B)、﨑山龍男(Dr)の4人 組ロックバンド。
1987年結成。1991年3月シングル「ヒバリのこころ」、アルバム「スピッツ」でメジャーデビュー後、1995年リリースの11thシングル「ロビンソン」、6thアルバム『ハチミツ』のヒットを機に、多くのファンを獲得。
以後、楽曲制作はもちろん、日本国内をくまなく廻る全国ツアーや自らオーガナイズするイベント開催など、マイペースな活動を継続している。 そして今夏、15thアルバム『醒めない』を発売、全国ツアーも大成功。
2017年結成30周年を迎え、7月5日は「CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-」を発売、『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50”』も敢行中と精力的に活動を展開している。
オフィシャルサイトhttp://spitz.r-s.co.jp/

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