【80年代名鑑】明菜からYMOまで 80'sからの授かりもの  vol. 28

Column

REBECCA 初期の見せ方と転機を迎えたオリジナリティ

REBECCA 初期の見せ方と転機を迎えたオリジナリティ

REBECCAのバイオグラフィを眺めていたら、注目したい点があった。それは、我々が知る形でメジャー・デビューする以前、木暮武彦とNOKKOが一時アメリカに渡って現地でのデビューを画策した、という話である。実際にどういうコンタクトが取られたのかとか、そこまでよく知らないのだが、これから話すことに、その辺りはさほど重要じゃないので先へ進む。

つまり二人は、その時点で“本場”の音楽状況を、ある程度は直に知っていた、ということである。そしてこの“本場”の感覚というのが、そのまま持ち帰れば葵の御紋のように皆がひれ伏すものだったら良かったけれど、そうではないのが難儀なところだったのでは、と、想像したわけである。

ここで改めて、ファーストの『VOICE PRINT』と、さらに1984年11月のセカンド『Nothing To Lose』のことを見てみよう。特にセカンドのアルバムのタイトルは、この時点の体制としては“背水の陣”であることを物語っていた。久しぶりに聴いてみると、いわゆるニューウェイヴ・ポップの典型的なサウンドとも言えるが、「結節蘭 破節蘭」とか、改めて聴いても変化に富んだ楽しいアンサンブルになっている。表題曲「Nothing To Lose」のリズム・アレンジは、アダム&ジ・アンツ〜バウ・ワウ・ワウ的であり、なんか無性に懐かしくなった。アダム、『夜のヒット・スタジオ』にも出てたなぁ…。

しかしニューウェイヴという言葉につきものの“ソッポ向いてる感”というか、一般的に日本人が好むメロディアスな方向性とは違う雰囲気は、前作よりその傾向が強いのがセカンド(どちらもミニ・アルバムだけど)だと言えた。唯一、「ヴァージニティー」はメロの良さを出しているが、これはシングルなので、A&R会議などの末、世間の受け入れられ易さをより意識した結果かもしれない。

ここで『Nothing To Lose』のジャケットのNOKKOを見て欲しいのだが、その表情にはコケティッシュな魅力が既に出ているものの、モノトーンの落ち着いた、大人っぽい印象である。次の『WILD & HONEY』を横に並べたら、よりハッキリするのだけど、なぜこの時代のREBECCAは、こういう雰囲気のバンドだったのだろう。

当時の関係者は様々に証言するだろうけど、ここではこんな“物語”として捉えてみたい。まずロックをやろうとした人に共通することでもあるが、“仮想敵”として[歌謡曲=芸能]というものを置き、そのバランスのなか居場所を得ようとするため、そうした華やかなことを排したら、モノトーンになった…。

また、冒頭で紹介した通り、彼らが“本場”を知っているがゆえ、この“見せ方”を選んだ可能性も高い。今でこそ英米のポップ〜ロック・スターは“カワイイ文化”に影響されたりもしているが、この当時で言うと、明らかに日本より英米の女性アーティストのほうが佇まいは大人っぽかった。この時代のNOKKOも、そういう意味では(心情としては)“本場”寄りだっただろうし、そうした想いがこのジャケには出てたと解釈出来ないこともないわけだ。

でも、やがて転機が訪れる。ご存知の通り、それまでのリーダーだった木暮武彦が脱退し、土橋安騎夫が新たなリーダーとして、バンドの音楽性やコンセプトを引っ張っていくのだ。そして聞こえてきた。あの歌が。いや聞くだけじゃなく、MVを観ながら聞いたのが最初だ。1985年4月。「ラブ イズ Cash」で、REBECCAは新たな歩みへと踏み出す。

正直に告白するなら、当時の僕は、「マ、マドンナじゃーん!」と思った。マドンナの「マテリアル・ガール」という曲が前年の11月にリリースされ、大ヒットしていたのだ。MTVという“洋楽翻訳装置”(正確に書くと翻訳じゃなく、映像が音楽の理解を手助けする装置)が大々的に機能し、この頃の音楽セールスは、洋楽と邦楽が対等の戦い…、いやマイケルなんかもいたし、むしろ洋楽のほうが売れていた。いつしかNOKKOは、“和製マドンナ”と言われるようにもなった。

ちなみに僕の当時の心の叫びである「マ、マドンナじゃーん!」は、明らかに批判的なニュアンスを含んだ一言である。そして“和製マドンナ”のほうは、好意的な言葉だ。実は今回、自戒も含め、再び考えてみたのである。そして、遅ればせながら気がついた。世の中には、真似っ子してる作品など、掃いて捨てるほどあるわけだ。なのになぜ、あの時のREBECCAは、ポピュラリティを獲得することが出来たんだろうか? そこにはまさに、オリジナリティと呼ぶべきものがあったからではないか? 次回はそのあたりを書くことにする。

文 / 小貫信昭

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