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この面々での東京公演は奇跡!?必見!笑い泣き感動する人情舞台「FILL-IN〜娘のバンドに親が出る〜」

この面々での東京公演は奇跡!?必見!笑い泣き感動する人情舞台「FILL-IN〜娘のバンドに親が出る〜」

吉本新喜劇のスーパー座長・内場勝則が主演する舞台『FILL-IN ~娘のバンドに親が出る~』が7月13日(木)より開幕した。あの内場勝則の雄姿を東京で目撃できるというのは、関西出身の首都圏勢にはちょっと胸の沸くようなニュースだ。しかも、タッグを組むのは、あの“大王”後藤ひろひと。『人間風車』『ダブリンの鐘つきカビ人間』など数々のビッグタイトルを手がけたヒットメーカーでありながら、今なお関西を拠点に活動する“大王”が実に7年ぶりに新作を発表する。そんな心憎いトピックスが目白押しの本作。注目のゲネプロの模様を紹介したい。

取材・文・撮影 / 横川良明


父は娘の死に涙することができるのか? 後藤ひろひとらしい笑って泣ける父娘ドラマ

関西圏内で過ごした経験のある人なら、内場勝則の顔を一度も見たことがないという人は少ないだろう。週末のお昼にテレビをつければ、流れてくるおなじみの光景。個性豊かなキャラクターによる珍騒動。吉本新喜劇は、関西人の共通体験と言っても過言ではない。その中心でアタフタとする人の好い主人公といえばこの人、内場勝則だ。しかも、ピタッと髪を七三分けにし、ハンドバックを前に突き出すようにして構える“アホボン”役もぴたりとハマるから、さすがの一言。曲者揃いの座長の中でも、内場勝則は最も堅実かつ安定感のある笑いで、市井に愛されてきた。

内場勝則

そんな内場勝則が演劇公演で堂々初主演を飾る。役柄は、娘と死別したばかりの孤独な父親・真下幸吉。音楽の夢を追いかけようとする娘を勘当した幸吉は、以来、一度も顔を合わさぬまま、永遠の別れを迎えた。しかし、娘の葬儀を終えてもなお幸吉は泣くことができない。どうしても娘が死んだ実感を持てなかったのだ。空白の時間を埋めるように、幸吉は家を出た娘がその後どんな暮らしをしていたのか、足取りを追いはじめる。

そうして辿り着いたのが、娘の所属していたガールズバンド『スキッドマークス』だ。メンバーは、リーダーでボーカル&ギターを務める葉月(相楽樹)。ベースのくりこ(松村沙友理)、キーボードのレイ(千菅春香)。生前の娘の様子を知りたがる幸吉に、葉月は猛反発。「本当に娘のことが知りたいなら、お前が代わりにドラムを叩け」と突きつける。かくして、楽器など一度もふれたことのない堅物サラリーマン・幸吉の一大挑戦が始まった――

右:相楽樹

松村沙友理

左から松村沙友理、千菅春香

作・演出の後藤ひろひと自ら「関西在住で一番上手な俳優」と信頼を寄せる内場勝則。新喜劇でもその演技巧者ぶりは十分に確認できるが、こうした良質なストレートプレイのセンターに立つと、その巧みさが一層引き立つ。

後藤ひろひと

基本的に内場勝則は前述の“アホボン”を除けば、あまり主張をしないタイプの役者だ。我が我がと前のめりに座組みを引っ張るというよりも、強烈な個性を持った周囲の面々を上手くさばきつつ、チーム力で客席に笑いをもたらす。そんな内場の“引きの美学”が本作でも絶妙に活きていた。

仕事人間の幸吉は、前半は常に戸惑っている。なぜ自分は娘の死に涙することができないのか。本作は、娘を理解できなかった父が、突然の事故死を経て、娘の人生を受け止める物語だ。

娘の同世代の葉月に猛然とまくし立てられても、幸吉は決して声を荒げたりしない。そこには、娘を勘当するようなステレオタイプの頑固な親父像はなく、どう娘と距離をとっていいのかわからず悩む等身大の21世紀的父親像があった。そのちょっと小さな背中に、年配の男性は自分自身を、若い女性は自らの父親を重ねずにはいられない。娘の人生を理解するために、慣れないドラムを一生懸命練習する姿もいじらしい。どこにでもいる平凡な父親の戸惑いを、内場はリアリティたっぷりに表現していく。

一方で、いかにも新喜劇の座長らしい一面もしっかりと見せつけてくれた。その相手となるのが、こちらも吉本新喜劇が誇る“小さな巨人”池乃めだかだ。一度でも新喜劇を観たことのある人なら「待ってました!」と掛け声をかけたくなる定番ネタも盛り込んで、手堅く笑いをさらっていく。上京以来、“新喜劇ロス”を味わっている関西出身者なら、ふたりのやりとりを生で観られるだけで十分元はとれるだろう。

左:池乃めだか

もちろん後藤ひろひとの筆も冴えている。稀代のストーリーテラーにして、大衆に愛される喜劇作家でもある後藤ひろひと。“大王”ファンなら思わずニヤリとする「群馬水産高校」などおなじみの小ネタもチラホラ。悲劇的なプロットながら軽妙な笑いを随所に散りばめ、作品全体を多幸感で包みこむ。ちなみに“大王”は作家としても素晴らしいが、俳優としてもまた魅力的だ。“大王”が出てくるだけで、何だか面白いことをしてくれそうだという期待感が沸く。そのおどけた表情やちょっと大袈裟な仕草、何とも言えない間の取り方。出番はそれほど多くないが、確実に笑いをとる手さばきは“大王”の面目躍如といったところ。

役者陣が生演奏に挑戦! 56歳・内場勝則の渾身のドラムプレイに劇場が沸き立つ!

そして、本作の目玉となるのが、内場らによる生演奏だ。内場自身、この日のために半年前から準備をかけて取り組んできたドラムプレイ。スティックも握ったことがなかったというスタートながら、週4に及ぶ特訓で地道に腕を磨いてきた。新喜劇の座長として舞台に立つ傍ら、楽器練習の時間をとることは決して簡単ではなかったはずだ。しかも内場は今年で56歳。若いときのように、易々と新しいことを覚えるのも難しい。それでも、ステージの上で鮮やかに内場はスティックを振るう。その一心不乱の表情に、観客は勇気をもらえるはず。

舞台を華やかに彩る女性陣もそれぞれチャーミング。朝の連続テレビ小説『とと姉ちゃん』で一躍ネクストブレイクの筆頭株に躍り出た相楽樹が、短気で不器用なロッカーを好演。もともと軽音楽部に所属していたこともある相楽。だが、演奏しながら歌唱もこなすとなれば話は別だ。相当のレッスンが必要だっただろう。物語の終盤、軽快な8ビートに乗せて初々しい歌声を披露する姿が、素直になれない葉月のキャラクターと相まって、鮮烈に心に残る。松村は持ち前の愛され声を活かしてのびのびと振る舞い、千菅もコミカルな演技で笑いどころをつくった。

左から千菅春香、松村沙友理、相楽樹

『スキッドマークス』の楽曲を手がけたのは、シンガーソングライターの中村中だ。代表曲『友達の詩』を筆頭にアコースティックなイメージの強い中村だが、こうしたロックチューンもお手のもの。思わず身を揺らしたくなる軽快なアップナンバーで、作品の印象を決定づけた。

娘の死に顔を見ても、泣くことのできなかった幸吉。はたして父は涙することができるのか。不器用な父が辿る温かい結末に、きっと観客自身の瞳から光るものが溢れているはずだ。

今の時代に必要な作品がつくれた。大切な家族に想いを馳せる爽快エンターテインメント

囲み会見には、後藤ひろひと、内場勝則、相楽樹、松村沙友理、千菅春香、池乃めだかが登壇。意気込みを聞かれた後藤は「私は芸術家ではなく、エンターテイナー」と前置きした上で「今の人たちに見せたいものをつくっています。今、とっても必要な作品ができたと思う」と自信たっぷり。千菅も今までの歩みを振り返り「笑いしか思い出せないくらい楽しい稽古だった」と笑みを浮かべつつ、「本番ではそれをもっと大きな楽しい気持ちに変えて、みなさんにお見せできたら」と公演の成功を誓った。

左:柿丸美智恵

稽古場の様子について、後藤が「先週くらいから『終わったら寂しいね』と飲み屋で半泣きになる状態」とコメント。これには池乃も「こんな楽しい日々ももうあと少ししたらお別れなんだな」と寂しげな表情。内場も「毎日会うので、まるで学生みたいな雰囲気。忘れていた学生時代を思い出して、毎日が楽しかった。もう終わると思うと寂しい限りです」と別れを惜しみ、後藤から「まだ始まってないから!」と盛大なツッコミを受けていた。

後藤の稽古場では、冒頭に座組みでゲームをするらしく、相楽は「みんなの名前をまだ覚えられない時から、名前をボール代わりにしてバレーボールをしたりするんです」と解説。「それがすごく楽しくて、おかげでより早くみんなと仲良くなれました」と効果てきめんだった様子だ。

汐崎アイル

松村も「めだかさんが稽古で毎回違うことを言うんです」と裏話を披露。「それを毎回内場さんが上手くかわしてらっしゃって。その臨機応変さがすごいなと思いました」とふたりに尊敬の眼差しを送った。すると内場がすかさず「おっちゃんら、それ仕事やねん」と座長らしくツッコミ。松村も「それをタダで見られて豪華でした。ありがとうございました」と茶目っ気たっぷりに応酬し、取材陣の笑いを誘った。

舞台『FILL-IN ~娘のバンドに親が出る~』は2017年7月13日(木)から7月23日(日)まで新宿・紀伊國屋ホールにて上演。西野亮廣(キングコング)ら吉本メンバーから秋元真夏ら乃木坂46勢まで、多彩な日替わりゲストの活躍にも注目したい。
また、本作の公演DVDが10月25日(水)に発売となる。父と娘の温かくて切ないストーリーを、リビングで家族みんなで楽しむのもいいだろう。きっと観終わった後には、いつもより少しだけ素直に家族へ想いを示せるはずだ。

終盤の見どころとなる演奏シーン!

舞台「FILL-IN~娘のバンドに親が出る~」

えっ?吉本新喜劇のスーパー座長・内場勝則が、ガールズバンドにまさかの加入!?

日程:2017年7月13日(木)~7月23日(日)
劇場:紀伊國屋ホール

CAST:
内場勝則
相楽 樹 松村沙友理(乃木坂46) 千菅春香
汐崎アイル 柿丸美智恵 多田野曜平
菊池健一(ギンナナ) たくませいこ 後藤ひろひと
池乃めだか

【日替わりゲスト】
7月14日(金) 19:00〜 石田明(NON STYLE)
7月15日(土) 14:00〜 伊藤かりん(乃木坂46) 19:00〜酒井藍
7月16日(日) 14:00〜 シソンヌ 19:00〜 中村 中
7月17日(月・祝) 14:00〜 山内圭哉
7月18日(火) 19:00〜 西野亮廣(キングコング)
7月19日(水) 14:00〜 / 19:00〜 すっちー
7月20日(木) 19:00〜 品川祐(品川庄司)
7月21日(金) 19:00〜 秋元真夏(乃木坂46)
7月22日(土) 14:00〜 平田敦子 19:00〜 未知やすえ

作・演出:後藤ひろひと
バンド楽曲提供:中村 中
音楽監督:楠瀬拓哉
協力;株式会社ヤマハミュージックジャパン/YAMAHA/大阪スクールオブミュージック専門学校
制作:ネルケプランニング
主催:吉本興業株式会社
オフィシャルサイトhttp://fill-in.yoshimoto.co.jp/

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