映画『銀魂』  vol. 2

Interview

「福田組」を裏の裏まで知る2人。佐藤二朗とムロツヨシが明かす「銀魂」に見る福田雄一という才能

「福田組」を裏の裏まで知る2人。佐藤二朗とムロツヨシが明かす「銀魂」に見る福田雄一という才能

いよいよ公開された今夏の話題作「銀魂」。その魅力をキャストや作り手たちの言葉から浮き彫りにする特集。今回は福田組の常連・佐藤二朗とムロツヨシが満を持して登場。長い付き合いならではの目線から、福田雄一という鬼才の凄みを語ってもらうほか、俳優を見る目の確かさにも触れてもらった。

取材・文 / 平田真人 撮影 / キセキミチコ/KISEKI inck


福田さんの笑い声には特殊な周波数があるのかもしれない

「銀魂」をご覧になった後、二朗さんは初めて福田監督に「面白かった!」というメールを送ったそうですが……。

佐藤二朗 そう、ふだんはそんなことしないんですけどね。もちろん、今までの作品もめちゃくちゃ面白いんですけど、「銀魂」は思わずメールしちゃったんですよ。なんというか、感慨深いものがあったんです。

ムロツヨシ わかります。撮影部も照明部もずっと福田組でやってきたスタッフさんだったから。全国何百館で公開される大作をつくれるなんてなぁ……という話を、打ち上げでも僕は話したんですよ。筋違いかもしれないけど、僕らがスタッフさんに「福田雄一についてきてくれて、ありがとうございました!」と、感謝を捧げたくなりました。

その福田監督と二朗さん、ムロさんの3人だけで食事されたとも聞きました。長いお付き合いでも、二度目だったとか。

ムロ そうそう、2回目でした。ウチでね。

佐藤 8年ぶりって言ったっけ? 前は浅草の近くのふぐ屋だったよね。

ムロ 「したまちコメディ映画祭」の舞台挨拶の帰りでしたよね。

佐藤 もう8年も前だなんて思えないんだけどな。ときが経つのって早い。

そんな福田組の古参たるお2人ですが、実は「銀魂」では絡むシーンがないんですよね。その分、お互いのお芝居を客観的にご覧になれたのではないかと思いまして。

ムロ 僕は悔しいですけど、二朗さんの出てくるシーンで笑っちゃいました。また、いつもみたいにワケのわからないこと言ってるな〜って(笑)。

佐藤 ムロがそういうふうに言ってくれたからと言って、俺も褒めたら気味の悪い2人になっちゃいますけど……福田にもムロにも言ったかな? ふだん、映画を観てあまり声を出して笑うことがないんですけど、小栗くんとムロが叩き合うシーンで、いつのまにか声を出して笑っていたんですよね(笑)。

ムロ あのシーンは特に意図するわけでもなく、ああいうノリになったんですよ。

菅田将暉さんが話していたんですが、二朗さんとのシーンは、いきなり本番を撮ることになったからすごく緊張した、と。

ムロ 福田組では、いつも二朗さんの相手役が一番緊張することになるんですよ。

佐藤 だって、段取りがないからね(笑)。

ムロ でも、菅田くんはすごいですよ。さっきも別の取材で聞いたんですけど、二朗さんとの長回し10分間をこなしたっていう。それは完全にフリータイムだったんですか?

佐藤 それがね、実は福田から言ってほしいワードや触れてほしい要素をいくつか言われて、そのワードや要素をどこかに盛り込んでほしいと。最低限の約束事はあったんだよね。

ムロ なるほどぉ! でも、それでも二朗さんのアドリブに耐えきる菅田将暉はたいしたものだなと思いましたね。

佐藤 あのシーンは将暉の演じる新八が橋本環奈──神楽を助けにきて、銀ちゃんの真似をして肩を出すんですよ。そうすると着物がはだけるので、本来なら見えてはいけないはずのボタンがまる見えになってしまうわけです。それを福田がいじろうと言ってきて。ただ、衣装部さんからすると見えちゃいけないものだから、ふつうの感覚で「はずしますね」とボタンを取ろうとしたんですよ。その瞬間、福田が鬼のような形相で「ボタン取るなぁああ!」って怒鳴ったんですよ。僕も長いこと福田組でやってるけど、あんな大きな声出したの初めて聞きましたよ(笑)。

ムロ そこまでしてもやりたいことだったんですね(笑)。

佐藤 でも、その場の福田の判断で将暉と僕とでできたシーンだったから、楽しかったですけどね。

ムロ そういう、マジメにふざけるということに対する福田さんのシビアさは、ハンパじゃないですよね。こっちとしては、初めて観る人を笑わせるための準備が必要なわけですけど、その準備しているのがバレたとき恥ずかしいから、何気なくやりたいなという気持ちがあるんですけど、そういうときの福田雄一の顔は本当に厳しいですからね!

佐藤 ワハワハハ! ふだんはゆるキャラみたいな顔をしているのに(笑)。

©空知英秋/集英社 ©2017映画「銀魂」製作委員会

でも、バジェットがいくら大きくなろうともスタンスを崩さないのがいいですよね。

ムロ それは確かに思いますね。

佐藤 最初に福田と組んだのが舞台だったんですよ。
ジョビジョバのマギーと舞台を立ち上げるというので出たんですけど、僕もムロもわりと笑いを求められる俳優じゃないですか。なので、自分なりに笑いに対する考えとかがあって。
そうしたら、放送作家だった福田は、笑いに対して命がけ…というと大げさだけど、すごく真摯で、なおかつ幅が広いんです。これは歯が立たないなと思って、笑いに関しては全部福田に従おうと決めたんですよね。何でしょうね、実直というと語弊があるかもしれないですけど、マジメにふざけることに関しては、昔からずっと変わっていないです。

ムロ 真剣ですよね。二朗さんが言ったように、福田さんの笑いの温度って、本当にずっと変わらないなと僕も思います。あと、自分の書いてきた脚本も、現場でもっと面白くなると思ったら潔く変えられるのもスゴいなと。

佐藤 うん、そこも福田らしさだよね。

ムロ ジャッジが早いんですよ。たとえば、このセリフ、ムロが言ったら面白いかと思ったら、そうでもなかったから変えようっていう具合に。逆に僕らが台本をふくらませて、さらに面白くなりそうなことをすると、歓迎してくれますし。ただ、それがつまらなかったときの怒り方はハンパないですけどね。「はぁ、何やってんの?」って(笑)。あと、中途半端な役作りも嫌いですしね。

佐藤 力量のある監督は誰しもそうだと思うんですけど、俳優の持つ可能性だったりお芝居というものを信じてくれているし、俳優に対して愛が深いですよね。「いいものを、面白いものを見せて」というスタンスだから、こっちからするとプレッシャーでもあるんだけど(笑)、がんばろうという気にはなりますよね。

©空知英秋/集英社 ©2017映画「銀魂」製作委員会

みなさんおっしゃるのは、福田監督が現場で笑っているとうれしくなる、と……。

ムロ あの笑い声は特殊な周波数なんじゃないかと思っていて。福田さんが笑うと、一気に現場の雰囲気がガラッとよくなるんですよ。

佐藤 しかも、本人は特に現場の空気をよくしようとか思ってないんだよね。ただ自分が面白いから笑う。そこがいいんですよ。

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