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多彩な宝具の発動と、歌とダンスで魅せる壮大なファンタジーに胸熱。『Fate/Grand Order THE STAGE』開幕

多彩な宝具の発動と、歌とダンスで魅せる壮大なファンタジーに胸熱。『Fate/Grand Order THE STAGE』開幕

累計900万ダウンロードを突破するスマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order』(FGO)。人類の未来を脅かす7つの特異点を巡り、総勢150騎を超えるサーヴァント(英雄が死後に英霊化し、聖杯の莫大な魔力の助けをうけて魔術師“マスター”によって現世に召喚されたもの)が登場、7つの聖杯を求めて繰り広げられる壮大かつ熾烈な戦いを描いている。
そんな人気ゲーム初の舞台化作品『Fate/Grand Order THE STAGE -神聖円卓領域キャメロット-』(以下、『FGO THE STAGE』)は、原作ファンの期待を裏切らない丁寧なストーリー描写と歌やダンスを交えた華やかなミュージカル的演出、役者陣の熱演に彩られた見応えのある舞台となった。ここでは、開幕初日の7月14日に行われたゲネプロの様子をレポートしよう。

取材・文 / 阿部美香


7つの特異点を巡って複数のエピソードが展開し、2016年末に完結した『FGO』第一部から『FGO THE STAGE』のために選ばれたのは、奈須きのこがシナリオを担当したことでも話題を呼んだ「第六特異点 神聖円卓領域 キャメロット」のエピソードだ。

©TYPE-MOON/FGO STAGE PROJECT

舞台の幕開けは、西暦2015年の人理継続保障機関・カルデア。魔術がまだ成立していた最後の時代、人類史を存続させる尊命のもと、魔術と科学が混在する世界を観測していたカルデアでは、歴史上の様々なポイントに突如として“観測できない領域”=特異点が出現していることが判明。その人類絶滅の原因となる特異点の調査と解明、破壊を目的とした“聖杯探索”任務=グランドオーダーを発令する。マスター候補たちを管理するカルデアの医師、ロマニ・アーキマン(井出卓也)は、マスター候補のひとり、藤丸立香(佐伯亮)と彼と行動を共にするデミ・サーヴァント(サーヴァントと憑依融合した者)であるマシュ・キリエライト(ナナヲアカリ)に、1273年に確認された第六特異点に向かうように告げ、カルデアに常駐しているサーヴァントのひとり、レオナルド・ダ・ヴィンチ(RiRiKA)も、はしゃぎながらふたりに同行する。

3人がレイシフト(擬似霊子転移)によって送り込まれた先は、13世紀のエルサレム。だがそこは、本来あるべき姿ではなく、荒れ果てた地となっていた。いきなり砂漠で賊に襲われた3人は、「人と交わることはできない、放浪の身だ」と語り、彼らを助けて去って行く銀の腕を持つ謎のサーヴァント※1(じつはベディヴィエール!)(佐奈宏紀)と出会いながら、ある豪奢な神殿に辿り着く。そこに待っていたのは、3人がカルデアからの命をうけた者であることを承知し、古代エジプトより現れた、聖杯を持つファラオ、オジマンディアス(本田礼生)だった。オジマンディアスは、「お前たちが来るのが遅すぎた」と怒り、「このままではこの地は滅ぶ」と断言。本来の歴史と姿を変えてしまった、この地の異変と破壊の真実を知るために、「聖都キャメロット」を統治する“純白の獅子王”のもとに行けと、3人を突き放すのだった――。

※1
サーヴァント…神話、伝説上の英雄を使い魔としたもの。マスターを聖杯戦争の勝者とするための闘争の代行者。それぞれ、宝具と呼ばれる強力な武器を持つ。

©TYPE-MOON/FGO STAGE PROJECT

聖都の城壁前まで辿り着いた彼らが見たものは、各地から安全な聖都を目指して集まってきた難民から選ばれた者だけを収容し、他の人々をすべて粛正する姿。
実行者は、獅子王ことアルトリア・ペンドラゴン(高橋ユウ)その人と、獅子王の命を受ける円卓の騎士のひとり、ガウェイン(山口大地)。惨殺されんとする人々を救おうと、ガヴェインたちと戦う3人。そこに再び、べディヴィエールが姿を現す。かつての仲間の登場と反逆に驚くガウェインに、ベディヴィエールは彼の宝具(ノウブル・ファンタズム)である剣を摂れ、白銀の腕(スイッチオン・アーガトラム)をまみえて粛正を阻止する。

©TYPE-MOON/FGO STAGE PROJECT

いっぽう聖都の城内では、獅子王を取り巻く円卓の騎士たち――ランスロット(小野健斗)、トリスタン(菊田大輔)、モードレッド(甲斐千尋)、アグラヴェイン(JAY)らがガウェインの失態を非難するが、ガウェインはベディヴィエールとの邂逅だけでなく、藤丸たちとの戦いで彼が気づいたサーヴァントの存在も仲間たちに隠してしまうのだった。そして獅子王は、事情を知るオジマンディアスとの決戦に備えろと円卓の騎士たちに命じる。

©TYPE-MOON/FGO STAGE PROJECT

休憩を挟みつつ、二幕3時間におよぶ圧倒的なボリュームで語られる本作は、劇中で徐々に明らかにされていくベディヴィエールとアーサー王との過去にまつわる悲哀に満ちたエピソードと、グランドオーダーを遂行するために奔走するカルデアの人物とのエピソードが巧みに絡み合う、壮大なストーリーが最大の見どころだ。

その壮大さを加速するのが、可動式のスクリーンを用いたスペクタクルな映像演出。カルデア内部や冒険する地、建造物、街の風景がCGで再現されるだけでなく、数多く登場するバトルシーンでは、キャスト陣が繰り広げるスピーディーな生身のぶつかり合いとともに、ガウェインの「エクスカリバー・ガラティーン」、ヴェディヴィエールの「デッドエンド・アガートラム」など、『Fate』シリーズには欠かせない多彩な宝具の発動が、迫力ある映像となって表現される。『FGO』ファンなら、「流星一条(ステラ)」の詠唱にも涙せずにいられないはずだ。

©TYPE-MOON/FGO STAGE PROJECT

さらに、キャラクターたちの個性や心情を豊かに表現しているのが、随所にミュージカルシーンとして登場する歌とダンス。ヴェディヴィエールの優しい歌声に切なさを募らせ、ダ・ヴィンチの美しい歌声に酔いしれ、オジマンディアスのキレのいいダンスとアクションに目を見張ることだろう。ヴェディヴィエールの楽曲はクラシカルなミュージカル調、オジマンディアスの神殿や山岳地帯の村ではエスニックな曲調、獅子王と円卓の騎士たちの楽曲は重厚感あふれる曲調が用意されるなど、場面場面で様々な楽曲が流れ、物語への没入感を深めてくれる。また劇中楽曲では、奏者(ayasa)によるヴァイオリンの生演奏も。美しい調べが、舞台に情熱的な彩りを添えた。

©TYPE-MOON/FGO STAGE PROJECT

もちろん、キャスト陣の熱演も見逃せない。ジェントルなノーブルさと切なさを陰として纏うヴェディヴィエール、ピュアでキュートなマシュ、ときにコミカルな芝居で笑いを誘うロマニやダ・ヴィンチなど、主人公側の面々の活き活きとした演技だけでなく、アーサー王への忠義とともに己の内に膨れ上がる嫉妬や譲れない信条をヴェディヴィエールたちにぶつけていく円卓の騎士たちの演技は、単なる敵役とは思い切れない様々な感情を揺さぶってくれた。

本作では、『FGO』で主人公が男女を選択できるシステムに合わせて、藤丸立香役も男女のWキャスト。ゲネプロでは佐伯亮が初々しい男・立香を好演していたが、女・立香(岡田恋奈)の回では、それぞれのシーンのテイストがどう変化するかも楽しみに思えた。『FGO』を未体験の人でも、ファンタジックでミステリアスな物語にどんどん引き込まれていくが、『FGO』をプレイ済みならさらにゾクゾクする演出がたっぷり。『FGO THE STAGE』は、舞台版ならではの感動を観る者に与えてくれる。

©TYPE-MOON/FGO STAGE PROJECT

そして、舞台初日を迎えたキャスト陣からは、意気込みにあふれたコメントが到着した。