Interview

長塚圭史×藤原竜也が、前川知大 作『プレイヤー』に挑む

長塚圭史×藤原竜也が、前川知大 作『プレイヤー』に挑む

本当にいろんなことを実験できる本

『プレイヤー』は劇中劇構造になっています。キャストが舞台『プレイヤー』で役者を演じつつ、劇中劇「PLAYER」で、さらに役者が自身の役以外に死者も演じるという、複雑な構成になっていますよね。本を受け取ってどう感じられましたか?

長塚 僕はまず、前川さんらしい視点で、普通の人だったら共感できないようなところから入りつつ、きちんと普遍性を持つ教訓に辿り着けるんだろうなって思ってました。それこそネット世界とかに繋げることもできるだろうし、失った人と会話したいっていう想いも含めて、今の時代に重なるところがたくさんある。ただ、読んだ瞬間は……やり方が難しいなって思いましたね、「これ、いったいどうやればいいんだ!」って(笑)。けど、さっきも話しましたけど、難しいっていうことは面白いわけで。竜也はどう?

藤原 いや、わりと楽しみながらやってますよ。僕は面白い本だなと思いながら、やってみなきゃわからないなっていうくらいの感じでしたけど。やっぱり、実際に稽古してみないとわからないですから。

役者が誰かになりきって、その人の人生を生きることと、劇中で役者たちが死者の再生装置となって死者の言葉を話すことは似てるのではないかと感じました。と、同時に、役者ではない僕自身も何かしらの役柄を演じて生きてるのではないか、誰かの言葉を借りて話してるだけではないかと考えさせられる部分もありまして。

長塚 よくよく考えたら、今、竜也が、ここで何かを演じていても藤原竜也には違いないわけで。何をどう演じても竜也は竜也のまま。そこに人格は必ず残っているから。ただ、いろんな想像力は膨らみますよね。何層にもなってるから、難しいと言えば難しいんですけど。

藤原 変な感覚にはなりますよね。

長塚 でも、視覚化すると意外とシンプルに見えてくると思いますよ。

藤原 稽古をしてて思うのは、本当にいろんなことを実験できる本ですよね。昨日も圭史さんのアイデアで「違う空間にしてやってみようか」とか即興的にチャレンジしましたけど。

長塚 役者がストレスを感じながら、探りながらやってるっていう様もなかなか面白いですよね(笑)。

藤原 非常に演劇的というか、書かれていること以外にもたくさん試せる要素やチャンスが埋まっている本だから、演出家としてはいろんな可能性を試してみたくなりますよね。

長塚 表現の仕方も様々あるし、やってみたら面白いかなと思ったことはやってみようと。前川さんの本を読んで、僕もアイデアを持って稽古場には入ったんですけど、立ち稽古をした瞬間に方針を変えないとダメだなって思ったので、いつもより決め込まないところからスタートさせたんです。全部決められているんだったら、頭から淡々と順にやっていけばいいんだけど、可能性があるんだったら、ギリギリのところまで決めるのはあとにしたいと思って。ギリギリになればなるほど、早めの決定を求められるけど、「嫌だ、嫌だ」って言いながら、とにかく決定を拒絶するというか(笑)。いいものができるギリギリのところまで決めないでおきたいなと。

少し話は戻りますが、役者さんの中には、役が降りるっていう言い方をされる方もいらっしゃいますよね。劇中劇の役者さんたちが死者と繋がるように、役が降りてきて繋がるという感覚はわかりますか?

藤原 さっき、圭史さんが言ったように、僕が何を演じても僕は僕なわけですからね。演技の集中の度合いを高めすぎて「今ちょっと入り込みすぎてるな、これはいいことじゃない」って客観的に見ている自分もいるので、そういう意味では憑依はしてない。だから、僕は僕のままなんだけど、芝居への入り込み方、集中力が研ぎ澄まされるっていうところでは役が降りてくるっていうことに繋がるのかもしれないですけど。

長塚 役に入るときに、普通に自分として生きているときと目的が変わるわけですよね? その目的を変えるための材料をどんどん詰め込んでいって、目的に向かえるようにするっていうことが、演じるってことなのかな。その目的の変更の仕方、舵の切り方が、自分と役が近ければ少しの変更でいいかもしれないけど、全然違うなら、大きく舵を切らないといけない。そこに時代が影響することもあるし、しないこともあるだろうけど……でも、あくまで自分という人間を通しての作業ですから、一概に一体化しているとは言えないですよね。まあでも、憑依するって言っても、みんな憑依してないでしょ? だって舞台なんて、憑依してやれるものじゃないんですよ。お客さん見なきゃいけないし、段取りも気にしなくちゃいけないし、いろんなものを把握してないとできないですから(笑)。

藤原 でも、面白い話ですね。役が降りてくるって。

どんな舞台になるのか楽しみにしてます。最後にメッセージを。

藤原 このメンバーで新作をやるわけですし、危険な香りがする、夏にふさわしいものにもなると思いますので、期待してもらっていいですよね?

長塚 そうだね。竜也の新たな一面も見られると思いますし。意外な群像劇になってると思うので、おおいに楽しみにしてもらいたいと思います。

舞台『プレイヤー』

<東京公演>2017年8月4日(金)〜8月27日(日)Bunkamura シアターコクーン
<大阪公演>2017年8月31日(木)〜9月5日(火)森ノ宮ピロティホール
<静岡公演>2017年9月9日(土)・9月10日(日)静岡市民文化会館・中ホール

舞台はある地方都市の公共劇場内のリハーサル室。国民的なスターから地元の大学生まで、様々なキャリアを持つ俳優、スタッフたちが集まり、演劇のリハーサルが行われている。演目は新作「PLAYER」。死者の言葉が、生きている人間を通して“再生”されるという、死が生を侵食してくる幽霊の物語だった……。

【作】前川知大
【演出】長塚圭史
【出演】
藤原竜也 仲村トオル 成海璃子 シルビア・グラブ 峯村リエ 高橋 努 安井順平 村川絵梨 長井 短 大鶴佐助 本折最強さとし 櫻井章喜 木場勝己 真飛 聖
【主催/企画・製作】Bunkamura
オフィシャルサイト

長塚圭史(ながつか・けいし)

1975年5月9日生まれ、東京都出身。
1996 年に演劇プロデュースユニット“阿佐ヶ谷スパイダース”を旗揚げ、作・演出・出演を担う。2011 年に“葛河思潮社”を始動。近年の舞台作品には『ツインズ』(15/作・演出)、『十一ぴきのネコ』(15/演出)、『蛙昇天』(15/演出)、『夢の劇-ドリーム・プレイ-』(16/脚本・出演)、『浮標』(16/演出・出演)、『はたらくおとこ』(16/作・演出・出演)などがあるほか、2017年1月に『かがみのかなたはたなかのなかに』(作・演出)、4月に新ユニット“新ロイヤル大衆舎”による『王将』(演出)、10月26日から『作者を探す六人の登場人物』(上演台本・演出)を手がける。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
また俳優として、テレビドラマ『あさが来た』(15/NHK)、『Dr.倫太郎』(15/ NTV)、『グーグーだって猫である』シリーズ(WOWOW)、映画『バケモノの子』(15)、『花筺/HANAGATAMI』(12月公開)、TOKYO FM『yes!~明日への便り~』などに出演。
オフィシャルサイト

藤原竜也(ふじわら・たつや)

1982年5月15日生まれ、埼玉県出身。
1997年、蜷川幸雄演出舞台『身毒丸』主役オーディションにてグランプリを獲得、ロンドン公演にて俳優デビュー。以降、蜷川作品のほかに数多くの舞台、映像作品に出演。2003年に出演した『ハムレット』で紀伊国屋演劇賞個人賞、朝日舞台芸術賞寺山修司賞、読売演劇大賞優秀男優賞を受賞。2000年には映画『バトル・ロワイヤル』にてブルーリボン賞新人賞、日本アカデミー賞主演男優賞・新人俳優賞を受賞。
近年の出演作品には、舞台『ハムレット』(15/蜷川幸雄 演出)、『とりあえず、お父さん』(15/綾田俊樹 演出)、『鱈々』(16/栗山民也 演出)、テレビドラマ『ST 赤と白の捜査ファイル』(14/NTV)、『そして、誰もいなくなった』(16/NTV)、『精霊の守り人』シリーズ(16・17/NHK)、『リバース』(17/TBS)、映画『僕だけがいない街』(16)などがあるほか、公開中の主演映画『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』、12月上演舞台『アテネのタイモン』、2018年2〜3月上演舞台『ムサシ』へも出演。
オフィシャルサイト

関連書籍:長塚圭史『食えない奴ら』

食えない奴ら
長塚圭史(著)
CCCメディアハウス

関連書籍:前川知大『太陽』

太陽 (角川ebook)
前川知大(著者)
角川ebook

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