黒選!メディアコンテンツ研究家・黒川文雄がテーマで選ぶ 3+1  vol. 12

Column

『鉄拳』今明かされる!名作格闘ゲームの意外な過去

『鉄拳』今明かされる!名作格闘ゲームの意外な過去

いつも黒選!を読んで頂きありがとうございます。

これまで90年代の格闘ゲームについては、『バーチャファイター』、『ストリートファイター』をテーマに紹介して参りました。まだ読まれてない方はこちらをご覧ください。

格闘ゲームの歴史はこう変わった。バーチャファイター、そして

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格闘ゲームの決定版『ストリートファイター』シリーズの進化

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今回は同じ90年代の対戦格闘ゲーム・ブーム中に現れた異色の格闘ゲーム『鉄拳』をご紹介したいと思います。
『鉄拳』は、その変遷とともに魅力が増していったシリーズです。そして『鉄拳』には、一風変わった誕生の経緯があると言われていますが・・・果たしてその真相とは??

ではどうぞ!


『鉄拳』がアーケードにやって来た。

1994年12月、アーケード向けゲーム・タイトルとして稼働したナムコ(当時)の『鉄拳』。

1991年、カプコンの『ストリートファイターⅡ』から始まった対戦格闘ゲームのブームは最高潮に達し、1993年にはセガから世界初3Dポリゴン格闘ゲーム『バーチャファイター』が登場するに至りました。
『バーチャファイター』の完成度は高く、技のバリエーション、そのモーション、3ボタンというシンプルな操作性でありながら、本格的かつリアルな格闘センスを実現して、いきなり誰も到達出来ないようなシステムの完成領域と、3次元コンピュータグラフィックス(以下:3DCG)格闘ゲームの可能性を示しました。

そんな中、3DCG技術では先行していたナムコからは、『ギャラクシアン3』や『スターブレード』、『リッジレーサー』が大ヒットしていましたが、なかなか対戦格闘ブームの波に乗る事が出来ずにいました。
そこへ『バーチャファイター』から遅れる事1年で、ナムコからも3DCG格闘ゲームがリリースされます。

リリース前から、「ついにナムコから格闘ゲームが出る!」というアナウンスが雑誌の紙面に踊り、格闘ゲームファンからは『バーチャファイター』に次ぐ存在としてアツい期待をされていました。
稼働した当日は、人だかりが出来ていて、しばらく並ばないとプレイできない状況でした。
実際にプレイをしてみると、非常に独特な操作であることに気付きました。

ボタンは4つしか無いのですが、対応しているのが右手、左手、右足、左足という変わった仕様だったのです。技の出し方もよく分からず、「ストリートファイターⅡのように波動拳は出せるのか?」「どうやって必殺技を出すのだろう?」という疑問にも似た困惑がザワザワとゲームファンのあいだに広がっていくのを感じていました。
リングアウトも無く、壁際でハメる事も出来ず、打撃系で一度ダメージを受けると浮き上がってコンボを決められるなど、それまでの常識が通用しなかった事もその要因だったのでしょう。

さらに、当時はゲーム用基盤のサイズが大型化していた頃で、『バーチャファイター』のような専用筐体(アストロシティ)ではなく、これまでの筐体に無理やり入れた物が多かったため、4ボタンの位置が横に1列のお店もあれば、中途半端に4つ目を追加したお店があるなど、明らかに操作基準がバラバラになるという厄介な状態でした。

そこへ追い打ちをかけたのは、あまりにも個性的なキャラクター達でした。
日本刀片手に般若の仮面をかぶった吉光やタイガーマスクもどきのキング、セクシーだろうと思われるニーナでさえ、表情が硬く美女とは言えない存在でした。
中でもプレイヤーに衝撃を与えたのが「クマ」という中ボスの存在でした。これは?・・もはや、「何と戦っているのか?」さえ、分からなくなる程の衝撃を受けたゲームでした。

モーションも鞭のようにクネクネと動く挙動、ドット絵に慣れたプレイヤーも、3Dポリゴンに慣れたプレイヤーからも、「違和感がある」と言われてしまう始末でした。
登場前までの期待感は薄れ、数か月後には地味な存在でゲームセンターの端へと追いやられる事になりました。

・・・が!…しかし!!!・・・その状況が一変する事態が起きます。

年が明けた1995年3月31日にプレイステーション向けタイトルとして移植された『鉄拳』が発売されます。

当時の家庭用ゲーム機ソフトに求められるユーザーの欲求は「完全移植」の4文字。
この移植度の高さが、ハードの性能を誇示し、プレイヤーの購買意欲を搔き立てていた時代でした。
元々、プレイステーション互換であるシステム11を採用したアーケード版『鉄拳』だったことも功を奏し、移植度の高さが評判となり口コミで売れ出したのです。

当初は理解されなかった4ボタンも、プレイステーション版のコントローラー操作に慣れて浸透し、アーケードでの稼働率が遅れて高くなるという逆転現象が起きました。

また、プレイステーション版ではローディング中に『ギャラガ』が遊べるおまけ要素があり、「ギャラガが遊べる」という理由だけで、中古ソフトが売れるという現象も起きました。
この『ギャラガ』はただのおまけだけではなく隠し要素を出すための重要な存在でもあるため、それを知ったプレイヤー達が懐かしい『ギャラガ』にハマるという事も起きました。

家庭用ゲーム機への展開をきっかけにユーザーの評価を大きく覆したのが初代『鉄拳』だったのです。

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