LIVE SHUTTLE  vol. 174

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こんなMISIAは、聴いたことがない。自由奔放なセッションを、彼女自身が楽しんだ“SUMMER SOUL JAZZ 2017”ツアー

こんなMISIAは、聴いたことがない。自由奔放なセッションを、彼女自身が楽しんだ“SUMMER SOUL JAZZ 2017”ツアー

MISIA SUMMER SOUL JAZZ 2017
2017年7月9日 Zepp DiverCity

MISIAは、昨年、横浜赤レンガ倉庫で行なわれたブルーノート・ジャズフェスティバルで、ニューヨークのジャズ・トランぺッター黒田卓也と出会った。黒田はあらゆる音楽を呑みこんで発展する最新のジャズ・シーンで、最も注目を浴びているアーティストの一人だ。彼との出会いはMISIAに大きなインスピレーションを与え、黒田との本格的なコラボレーションが開始されたのだった。

MISIAはセルフカバー曲や新曲が収録されている最新ミニアルバム『SOUL JAZZ SESSION』(7月26日リリース)で、黒田のバンドとレコーディングを行ない、ジャズやR&B、ニューソウルなど多彩な音楽性を取り入れた新境地を切り拓いた。

MISIAがオールスタンディングの会場でライヴを行なうのは、非常に珍しい。黒田がニューヨークから率いてきたバンドは、テナーサックスのCraig Hill、トロンボーンのCorey King、キーボードの大林武司、ベースのRashaan Carter、ドラムスのAdam Jacksonの5名。彼らがさまざまな音楽を自由に取り込んで創出する“SOUL JAZZ”は、身体を揺らしながら聴く方が楽しい。音楽そのものが大好きな人の多いMISIAファンに、もっと自由に、もっとダイナミックに音楽を楽しんでもらいたいとの願いをこめて、MISIAはオールスタンディングのライヴを決めたのだった。名古屋、東京、大阪を周るツアー全7本の4本目、7月9日、Zepp DiverCityでのライヴに足を運んだ。

まずは黒田を含めた6人のバンド・メンバーが、ステージに登場。いきなりAdamの爆発的なドラムが鳴り響く。重量感あふれるキックドラムと、シャープなスネアドラムの対比が鮮やかだ。正確さと豪快さが同居するリズムが、この日のライヴのクオリティの高さを早くも予感させる。

キーボードとベースが入り、トランペット、サックス、トロンボーンの3管のアンサンブルがテーマのメロディを奏でる。ここに至って、今日のライヴがいつものMISIAのサウンドとまったく異なることに気付いた。

まず、メンバーにギターがいない。MISIAのライヴではギターが活躍することが多いので、このことだけでかなり音の印象が違う。そして3本の管楽器がメロディとハーモニーを同時に鳴らすと、スモーキーなコンボジャズのサウンドが立ち現れる。それが醸し出す、大人でセクシーな雰囲気が新鮮だ。

1曲目はこのバンドの自己紹介とも言える「Afro Blues」を披露。早速、サックス・ソロが始まり、黒田がCraigの名前をコールする。続くトロンボーン・ソロで、Coreyを紹介。自らのトランペット・ソロまで一気に進む。各々のソロが終わる度に拍手が起こるのもジャズのマナーで、これまた新鮮だった。

今回のライヴの音の雰囲気が会場にしみ渡ると、いよいよMISIAがステージに現われて1曲目の「BELIEVE」が始まった。ずっしりと重いビートのドラム、ベース、キーボードのみの隙間の多いバッキングに、体ごとぶつかるように歌う。こんなMISIAは、聴いたことがない。そのスリルに、オーディエンスは若干、緊張しているようだ。すると黒田が、大きなアクションでハンドクラップを会場にうながす。その絶妙なタイミングのパフォーマンスが、会場をほぐしていく。

3曲目の「真夜中のHIDE-AND-SEEK」のイントロで、大林のピアノがリズミカルなリフを弾き始めたところで、オーディエンスから自然にハンドクラップが起こった。この瞬間、会場を支配していた緊張感のほとんどが消えた。オーディエンスが踊り始め、スリルがそのままエンターテイメントへと昇華されていく。その証のように、「真夜中のHIDE-AND-SEEK」が終わると、大きな大きな拍手が巻き起こったのだった。

やはりこの“MISIA SUMMER SOUL JAZZ 2017”ツアーは衝撃的だ。ある意味、MISIAの音楽スタイルは、J-POPのスタンダードのひとつと言っていい。が、この日のライヴで提示された音楽は、J-POPの枠を大きくはみ出していた。曲によっては、オリジナルのコードを逸脱し、リズムもトリッキーに変化する。ただし、MISIAの歌のメロディは限りなくオリジナルに沿っているから、先ほど書いたように、MISIAがバンドのサウンドに体当たりしているように聴こえてくる。このいわば“MISIAの曲”を題材にした自由奔放なセッションを、彼女自身が楽しんでいる点に驚かされた。

たとえばライヴで少しアレンジを変えて演奏することは、他のシンガーもやってはいるが、ここまで大胆に“改造”することは今のJ-POPシーンではほとんどない。しかも即興性に富んだ内容のものは、聴いたことがない。

同時に、ファンにとっては、少しのアレンジの変化は受け入れることができても、大幅なチェンジは受け入れがたいもののはずなのに、オーディエンスが緊張しながらもどんどん演奏に反応していく景色は、ある意味、奇跡だった。

おそらくこのライヴは、J-POP史上に残る冒険であり、実験であり、新しいエンターテイメントが誕生する予兆のようなものなのかもしれない。実際、MISIAはMCで、オーディエンスにこう語りかけた。

「今日のライヴは、間もなくリリースする『SOUL JAZZ SESSION』に先がけて、このミニアルバムに入っている曲に、新たにアレンジした曲を加えてお送りしています。ジャズという言葉だけではくくれない、私の好きな音楽が全部入ってます。なので、隣の人と少しぶつかったりしても、踊らないと損なので、身体を揺らして楽しんでください」。

そんなMISIAの言葉どおり、黒田のバンドはフレキシビリティに富んでいる。ニュアンスの異なるリズムが絡み合うポリリズムや、ラテン、フュージョン、アフリカンなど、多様なグルーヴを変幻自在に繰り出す。それを受けてMISIAも、ボーカルスタイルを次々に変貌させて、先鋭的なセッションに参加する。特に先行配信されている新曲の「来るぞスリリング」と「運命loop」でMISIAは、バック・ミュージシャンのプレイに即座に反応する“音楽的反射神経”の良さを発揮して、会場から大きな拍手を浴びていた。

中盤はジャズ色の濃い「The Best of Time」や、へヴィーなストンプ(注:ファンクの元となったリズムのひとつ)の「めくばせのブルース」で沸かせる。

人気バラードの「It’s just love」でMISIAは、極上のハイトーン・ボイスを聴かせる。対してバンドは、バラードなのにヴィヴィッドに跳ねるドラムと、ストイックなベースで、これまでにない“バラード表現”を堪能させてくれた。

終盤の「つつみ込むように…」はオリジナルより少し速いテンポで歌い進み、ラストでMISIAは超ロングトーン・ボーカルを披露。どこまでも伸びる豊かな声にエキサイトするオーディエンスの気持ちを代弁するかように、Adamがド派手なドラムでエンディングを飾った。

ラストは、黒田のバンドが得意なアフリカン・リズムの「MAWARE MAWARE」。踊りながら歌うMISIAは満面の笑顔で、この曲が持つ本来の魅力を極限まで追求して楽しむ。応えてオーディエンスも、歌ったり、踊ったり、タオルを回したり、クラップしたりして大いに盛り上がったのだった。

アンコールは甲斐バンドのカバー「最後の夜汽車」。オリジナルの持つカントリー・ブルース風のアーシーな味わいを、見事にジャジーに生まれ変わらせた黒田のアレンジが光る。そのアレンジに即して、哀愁を漂わせて歌うMISIAが素晴らしかった。 

斬新なエモーションが、次々に提示されたライヴだった。J-POPとSOUL JAZZが出会った意義は、ここにあるのかもしれない。オーディエンスは“新しいMISIA”に、熱い拍手と歓声を贈って、この歴史的なライヴは幕を閉じた。間もなくデビュー20周年を迎えるMISIAの、さらなる活躍を予感させるツアーとなった。

文 / 平山雄一 撮影 / 田中雅也、Santin Aki

MISIA SUMMER SOUL JAZZ 2017
2017年7月9日 Zepp DiverCity(TOKYO)

セットリスト

00.Afro Blues (黒田卓也 Band inst)
01.BELIEVE
02.真夜中のHIDE-AND-SEEK
03.陽のあたる場所
04.来るぞスリリング(新曲)
05.運命loop(新曲)
06.The Best Of Time
07.めくばせのブルース
08.オルフェンズの涙
09.It’s just love
10.つつみ込むように・・・
11. Don’t You Worry ‘bout A Thing
12.MAWARE MAWARE
<ENCORE>
EN1.最後の夜汽車
<ENCORE2>
EN2.キスして抱きしめて

※7/7(金)より新曲2曲の先行配信をスタート!
iTunesでは、まとめ配信予約も絶賛受付中!
https://aoj.lnk.to/MSJSi

※全曲試聴トレーラー

MISIA

長崎県出身。その小さな体から発する5オクターブの音域を誇る圧倒的な歌唱力を持ち、「Queen of Soul」と呼ばれる日本を代表する女性歌手。MISIAの名前の由来にもなった、”ASIAの方々にも音楽を届けたい”との想いの通り、日本国内にとどまらず、その歌声はASIAを越え世界でも賞賛の声を浴びる。
1998年のデビュー曲「つつみ込むように・・・」は日本の音楽シーンに強い影響を与え、ジャパニーズR&Bの先駆者と言われる。その後発表された1stアルバム「Mother Father Brother Sister」は新人ながら、300万枚の異例のセールスを記録。
以降、「Everything」「逢いたくていま」等、R&Bというジャンルにとらわれず、バラードの女王の名も確立させた。その実力は日本国内のみならず、アジア強いては世界からも認められる。デビュー15周年を経て、年々音楽に対する追求心はとどめを知らず、世界を舞台に様々な作品を発表。さらに彼女は2004年に、女性ソロアーティストとして初の5大ドームツアーを成功させた。その4年後には日本をはじめ、台湾・上海・シンガポール・韓国・香港の5都市を含むアジアアリーナツアーを敢行。2009年から2010年にかけて行われたロングツアーを含め累計250万人以上の観客を動員し、日本の音楽シーンに衝撃を与えたといっても過言ではない。
2013年から2014年にかけて行った15周年記念ツアーでは、台湾・香港・アジアを含むMISIA史上初の全77公演を実施。ますます磨きのかかったパフォーマンスを披露し、多くの人々に感動を与えた。デビュー20周年を目前に、今後も更なる精力的な活動が期待される。

オフィシャルサイトhttp://www.misia.jp/

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