Interview

Chara 誰か大切な人と共有してほしい音楽が詰まったニューアルバム。その制作過程で見えたこととは?

Chara 誰か大切な人と共有してほしい音楽が詰まったニューアルバム。その制作過程で見えたこととは?

大袈裟かもしれないけれど、すべての人が「共に感じる心」を大切にしたら、すべての物事はもっといいほうに向かうのではないだろうか。たとえ満場一致のハッピーエンドにはならなくても、少なくとも、諍いや誤解の大半は避けられるのではないかと。理想論は重々承知のうえで、そんなことをふわっと思う。
Charaの17thオリジナルアルバムは、その名も『Sympathy』。日本語にすれば「共感」「共鳴」「相通じる心」。デビュー以来一貫して広く深くさまざまな形の愛を歌ってきたCharaらしいタイトルであり、心を通わせるミュージシャンとの共演からなるCharaならではのジャンルレスな作品である。25周年を機に発表した初のオールタイム・ベストアルバム『Naked & Sweet』で、「自分の個性をフレッシュに」受けとめ直したことによって、よりChara度が深まったようにも思えるこの新作。今の世の中でもっとも大事にしなければならない、けれどもある意味もっとも軽んじられているとも言えるもの──“シンパシー”が、たっぷりと詰め込まれたアルバムだ。

取材・文 / 前原雅子


心って通じ合えると綺麗だな、美しいな、素敵だなと思って

今回は作り始める前に作品のイメージなど、ありました?

最初は「Intimacy」って言葉が気になってて。日本語では「親密な関係」ってことになるみたいなんだけど、親密……気になるなって。

すごくCharaらしい言葉だと思うのですが、なぜ今、「親密」に心惹かれたんですか。

なんだろ……人の心って通じ合えるよね、みたいなことをすごい気にしてたんだと思う。心って通じ合えると綺麗だな、美しいな、素敵だなと思って、「Intimacy」を意識してたんだけど。そしたらバトンリレーのようにどんどん「Intimacy」に繋がるような言葉が集まってきて。でも前作のオリジナルアルバム『Secret Garden』も関係してるかな。それが「秘密」で、今回が「親密」って(笑)。前作は見た目は「若いね!」って言われても、まぁまぁ崖っぷちっていう。老化していく自分の体を「……だよね」って認めてる、子宮がテーマのフェミニンな、いいアルバムだったと思うのね。だから今回はもうちょっと違うことをやってみるのもいいかなって。ま、基本、同じようなことはやらないんだけどね。

自分に自分が話しかけてるの、「忘れないでー! あなたの個性!」みたいな

『Secret Garden』のあとにベストアルバム『Naked & Sweet』を出したことは関係してないですか。

それもあると思う。周りが出したいって言ってくれて、それも3枚組にしたいって。3枚組とか誰が曲選ぶの?って思ってたら悪い予感的中(笑)。結局、私が選ぶことになって。それで昔~の曲とかも改めて聴いたら「今と違う歌い方してる」「これ、私?」みたいな、Charaの成長や変化を確かめられて面白かったんですよ。普段あんまりそういうことやらないから、先ばっかり行っちゃうから。

かなり新鮮だった。

フレッシュ! 今と歌い方が全然違ってて、「これいいじゃん」と思ったり。『やさしい気持ち』でさえ今聴くと、「この歌い方の、この息継ぎの感じとかクセがあって好き~」って発見があるわけですよ。自分に自分が話しかけてるの、「忘れないでー! あなたの個性!」みたいな。そんなフレッシュなやつを確認できてからの制作だったからかな、詞が、なんか優しい。その言い方が正しいのかわかんないですけど、そういう雰囲気が出たような気がしますね。

「優しい」って、ちょっとわかる気がします。

わかる? もともと白黒はっきりさせたいタイプなんだけど、グレーも別にいいんちゃう?みたいなのが歳を重ねて出てきて。ここ1年くらい、「グレー、ちょっと認める」って受け入れることで少し優しくなれる気がするな。成長か?(笑)

それは人として?

そう。私も普通に人間なんで、自分も年老いてきてるけど、自分の親も年老いてくるから、いろいろ考えることもあって。なんか自然に自分の生のなかで、そういうポイントってあると思うんです。それもあってグレーも悪くないって思うようになったのかも。でも、仕事でははっきり言うけどね。そこはいつも戦いだから。

そういう人としての変化が歌詞にも影響したんでしょうね。

だと思う。言葉は一度出したら引っ込められないから。子どもを持ってから特に気をつけてることなんだけど、言葉ってすごい責任があるものなんで。でも今回は迷いもなしに、言葉のリレーみたいなのも含めて作詞がすごい楽しかった。例えば『Sweet Sunshine』の歌詞でも「秘密よりも 親密さが知りたい」って書いてるけど。

完全すぎないとこがチャーミングで好きだったんですよね

それにしても、くるりの岸田繁さんとの『Tiny Dancer』、水曜日のカンパネラのケンモチヒデフミさんとの『Herbie』をはじめ、また今回もコラボレーションが素晴らしいですね。

ずっと前から『Tiny Dancer』っていうタイトルで作りたいと思って、詞だけ書いてあって。あるときイベントの打ち上げで飲んでたとき、岸田くんが詞先で作ることもあるって誰かと話してるのを小耳にしまして。で、しばらくしてこの曲のメロディーを作ろうと思ったときに、なんかこれ、私のなかの岸田くんっぽい雰囲気? 岸田くんのなかのユーミンっぽい雰囲気?って思って。だったら本人に頼もう、詞を優先することもあるって言ってたし、いいのができそう……っていうか岸田くんとCharaって聴いてみたいと思った(笑)。

それで歌詞を渡して。

そう、そしたら、いい詞だからやりたいって言ってくれて。でもこのボーカルね、ウチで録ったデモの仮ボーカルなんです。スタジオでも録ってみたんだけど、このテイクを越えられなくて。これ、歌おうと思ってない、張り切って歌ってないボソボソしてるとこがよくて。岸田くんのアコギもウチの地下のスタジオで録ったやつだし。これも録り直したけど、こっちがよかったんで。どっちもなんか完全すぎないとこがチャーミングで好きだったんですよね。

歌詞から曲を作るって、珍しいですよね。

全然やんないです。1行くらいの歌詞なら、そのまま使ったこともあるけど。ほぼ全部みたいなのは今までないですね。

今回は打ち込みが強くてもいいなって思ってたんでオファーしました

ケンモチヒデフミさんとは、何をきっかけに?

ディレクターさんが「ケンモチくん、どうかな?」って。私、もともと打ち込み好きだし、今回は打ち込みが強くてもいいなって思ってたんでオファーしました。だけど面白いよね、いつもと全然違うメロディーで。そこにわりとCharaの歌詞をぶち込んでしまったんで、水カンとはまた違うものにもなってるし。

この曲は、どんなふうに作っていったんですか。

ケンモチくんが作ったメロディーをなぞって、私が適当に英語みたいな日本語みたいなので歌って。アレンジを完成させてから、詞を完成させた感じ。とにかく最大限、引き出しあうほうが面白いから、まずケンモチくんに歌詞をお願いして。そしたらあまりに恋愛観が私には可愛すぎて、出演する女優から監督に「いいですか、変えても」みたいなことを朗らかにやった(笑)。

ケンモチさんのCharaのイメージがそうだったんでしょうね。

最初にお題を出したの。水カンの曲って一休さんとか、歴史的な人物だったりするでしょ。だから今回は人魚姫をテーマにして。ケンモチくん、可愛い女の子と海に行きたいって言ってたから、行けますようにという願いも込めて人魚姫にしたら可愛らしすぎて。「この海辺のシーン。ちょっと無理がありますの、50前の女性が歌うの」って(笑)。でも書く前にすごい調べるんだって。例えば人魚姫だったら、いろんな国の人魚について調べたり。伝えたいことがあるから書く私とは詞の書き方が全然違ってて。それも面白かった。

打ち込みのサウンドっていうことだと、この『Herbie』と。

『Funk』と。『Intimacy』もちょっと打ち込み。結局そんなに多くはならなかったですね。

「それいいじゃん。使えるよ」って言うから。そのまま調子に乗せて、「ふ~ん、次はどぉ?」つって

『Funk』の作詞は息子さんのHIMIくんですよね。

プレイヤーでも参加してもらいたかったんだけど、遊びに行って意外と家にいない、みたいな。この歌詞も、たまたま書こうと思ったときに帰ってきたから、「チャンス?」と思って。私がメロディーに乗せて適当に「Just call me funk」って歌ってたのを聴いて、「それいいじゃん。使えるよ」って言うから。そのまま調子に乗せて、「ふ~ん、次はどぉ?」つって。15分くらいでピュッてできちゃった。彼は発言が小っちゃい頃から大人みたいだったんで。いろんなことをよく話してた、その延長で書いてもらった感じかな。

BASIさんとの『Intimacy』もかっこいいし、野村陽一郎さんとの『Love pop』のキラキラ系Charaも好きでした。

BASIとは一緒に作ってみたいと思ってて。攻撃的なラップは苦手なんだけど、彼のはすごくロマンティックだから。とってもいい感じにできたと思う。陽一郎には、ずっと「やりましょうよ!」ってアプローチされてて、ついにその機会が来た感じ。にしてもめちゃめちゃChara愛してるんだね~っていう陽一郎のChara愛がすごくて。それにおだてられて歌いました。

また『KILIG』も面白いですね。

フィリピン語でロマンティックなことを考えて胸のなかに蝶々がいっぱい舞う、みたいな気持ちを「キリグ」って言うらしくて。これはあったかい愛を感じるような、親子の連弾曲をイメージして作った曲なので。すごいピッタリな言葉だなって思ったんですよね。

ちょっとバレエ音楽みたいだなぁと。

あぁ~やり方によってはそうかも。私のなかでは遠くにプリンスがいるんだけどね。途中で入ってる子どもの声は姪っ子のマハちゃん。誕生日にケーキを焼いてもらって、「ガールガールガ~~ル、もっとクリームが私は欲しいのぉ~」みたいに自作で歌ってるのがすごい可愛い。その声の周りにお父さん、お母さんが微笑ましくいる感じもわかるしね。曲頭の、親子がコショコショしてる声はサウンドプロデューサーのKan Sano親子なんで、二つのファミリーが出てくる曲ですね。あとね、私、『Darling Tree』がけっこう好き。早くライブでやりたいし、詞も好きだし。なんていうのかな、ちょっとした失恋をまろやかに歌ってるというか。泣き笑いかっていう曲。

そこにいい意味で人生のキャリアを感じました。

ポジティブ感よね。このときほんとに、ちょっといいなって思う人がいたんだけど、ダメだった……んだよね(笑)。その感じがすごく出てて、いいなぁ~と思う。

なんとなくふわっとした存在でいるけど、もうちょっと詞を認めてほしい(笑)

大きな木のような人、どこかにいませんかね。

そうなの~。シルヴァスタインの『おおきな木』っていう絵本が好きで。大人絵本のような、哲学絵本のような本なんだけど。その絵本みたいな詞でちょっとグルービーな曲を書きたいなってずっと思ってたんですよ。『Darling Tree』ていうタイトルも好きだし。もうどっかにダーリントゥリーっていう木を植えたい。寄りかかれて、たまに実を落としてくれて、日陰を作ってくれて。でもこの歌詞、すごく可愛いと思ってるんだけど、あんまりそう言われない。Charaさ、意外と詞がいいんだけどね、みんな気づいてるかな。

もちろん気づいてますよ(笑)。

そお? なんとなくふわっとした存在でいるけど、もうちょっと詞を認めてほしい(笑)。読むとね、Charaらしさもあるし。あとね、話すように歌いたいって、ここ数年すごく思ってるの。そういうとこも、この曲に出てると思ってるんだよね。それとフルート、いいでしょ~。フルートが入ってくるあたりからのグルーブがすごくよくて。あまり日本で聴かない感じなの。

フルートっていうと、もう少しエレガントな使われ方が多いですけど、これは攻めてきますね。

そうそう。ファンクっていうか、ソウルだね。カゴ持って森に迷い込んだ私、っていうミュージカル調の踊ったりするイメージもある。

そしてラストの『小さなお家』もいい曲で。

今回、1曲目から12曲目がA面だったら、B面が13曲目です。だいたい最後に、そのアルバムを作った感じから「これを入れたい、伝えたい」とか思ったりするわけ。今回も最後のレコーディングがピアノを使う『KILIG』だったから、弾き語りの曲を作ってやったんですけど。結果、私っぽいな、今回っぽいなって思う曲になって。シークレットなトラックでもよかったんで、前の曲との間をめっちゃ開けてるんですよ。飛ばしてもらってもいい、みたいな感じで。

なんかいろんな役割を果たせる曲が入ってるかなと思うんで

でも、とってもいい流れのアルバムだと思いました。

そう思う。私、アルバムアーティストだからね。いつもそうなんだけど、いろんな曲が入ってるし。突拍子もなく実験的なのは『Funk』と『Intimacy』くらいで、あとはまぁまぁちょっと聴いたことのあるような曲だと思うけど。でもほら、優しさを感じるのって日によっても違うだろうし、泣きたいときもあるだろうから。なんかいろんな役割を果たせる曲が入ってるかなと思うんで。

『Sympathy』っていうタイトルは、どこから?

最後の最後に決めた。そもそも「Intimacy」が気になってたんだけど、英語で「Intimacy」って言われても「……?」でしょ。私も辞書で調べて、「あ、そうか」って思ったくらいだし。日本人だとよくわからない言葉じゃん。でもなんか似たようなタイトルにしたくて、何かないかなって言ってたら、息子が「Sympathyは?」って言ってくれて。ほんと助けられてる(笑)。

そしてこのアルバムを携えたツアーが9月にあって。そのツアーの最終日直前に25周年が完結するという。

そう、9月21日のデビュー日の次は50歳に向けて、ですね。来年の1月13日で50歳、なにせ半世紀パーティーだから(笑)。でも何をするかはわかりませんけど、なんか楽しみたいし共有できるといいよね。『Sympathy』っていうタイトルどおり、やっぱり私の音楽を誰か大切な人と共有してもらうことが夢だし、役割だと思ってるから。心からそうなれたらいいなと思ってます。

その他のCharaの作品はこちらへ

ライブ情報

Chara Live Tour 2017 “Sympathy”

9月1日(金) 恵比寿 LIQUIDROOM
9月3日(日) 福岡 DRUM LOGOS
9月8日(金) 名古屋 ZEPP NAGOYA
9月17日(日) 大阪 ZEPP NAMBA
9月24日(日) 東京 昭和女子大学人見記念講堂

Chara

1991年シングル『Heaven』でデビュー。一貫して「愛」をテーマに曲を創り、歌い続ける日本で唯一無二のシンガーソングライター。
オリジナリティ溢れる楽曲と、ライフスタイルをも含めた”新しい女性象”を体現する独特な存在感により、女性を中心に絶大な人気を得る。1992年に日本レコード大賞ポップ・ロック部門のアルバム・ニューアーティスト賞を受賞。1996年に公開された岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』に、劇中バンドYEN TOWN BAND のボーカルとして出演し、女優としても大きな注目を浴びる。翌年リリースのアルバム「Junior Sweet」は大ヒットを記録した。Chara=「音楽そのもの」としてその才能を余す所なく創作し続け、昨年デビュー25周年を迎える。アニバーサリーイヤーの今年、7月19日にオリジナルニューアルバム『Sympathy』の発売、続く9月1日からは全国ツアーの開催を控え、益々精力的に活動中。

オフィシャルサイトhttp://charaweb.net