Interview

永山絢斗「どのシーンも不思議な力に満ちている」――『海辺の生と死』奄美大島での体験を語る

永山絢斗「どのシーンも不思議な力に満ちている」――『海辺の生と死』奄美大島での体験を語る

 

文学史に残る私小説の傑作『死の棘』を世に放った島尾敏雄。そのヒロインであり、作家でもある島尾ミホが、二人の出会い、そして結ばれるまでを描いた『海辺の生と死』が実写化される。本作では、敏雄の目線から書いた短編小説「島の果て」などの小説群や往復書簡の内容も織り交ぜ、終戦間際に極限まで追い込まれた男女両方からの心情が繊細に描かれている。この敏雄がモデルとなった〈朔〉を演じる永山絢斗は、撮影時に奄美大島へと入り、今までにない不思議な体験をしたという。さらに撮影時の子どもたちとのエピソードや、「2年過ぎた今でも撮影のことは鮮明に覚えている」というほど刺激的だった時間について、たっぷりと話してもらった。

取材・文 / 吉田可奈 撮影 / 三橋優美子


映画『海辺の生と死』への出演が決まったときの心境を教えてください。

永山 この作品に出てくる、〈朔〉と〈(大平)トエ〉(満島ひかり)の二人のその後を描いた映画『死の棘』を観ていたので、正直な話、困惑しました(笑)。

あはは(笑)。『死の棘』では、妻が旦那の情事を知り、壊れていく様が描かれていますからね。

永山 そうなんです。でも、越川(道夫)監督に「その二人の出会いを描いている、一番キラキラした瞬間の話だから」と言われて納得したんです(笑)。改めて脚本を読んでみたら、すごく切なくて、悲しい愛の話だと思いました。それに、自分が観たことのないような戦争映画だったのですごく刺激的だったんです。実は、台本が今までにないほど文学的に描かれていて、理解するのが少し大変でした。

どんな風に描かれていたんですか?

永山 “ト書き”に風の柔らかさや、緑の色、鳥の鳴き声などが描かれていたんです。セリフも、「なぜこんな言葉の選び方をするのだろう?」というものばかりで。読めば読むほど混乱してしまうので、「これは映画の舞台である奄美大島に行かないとわからない」と腹を括り、細かく役作りをすることなく、ただ頭を丸めて島に自分を放り込みました(笑)。

実際に奄美大島に入って、感じるものは変わりましたか?

永山 変わりました。とにかく島の雰囲気を掴もうと、撮影が始まる少し前に島に入ったんです。もしほかの島であれば「ほら、お前がちゃんと準備しないからいけないんだ」と感じるんでしょうけど、奄美大島は、島に入った瞬間から、何か言葉にできないようなものを感じたんです。

その島に流れる空気が違ったんですね。

永山 そうですね。さらに、島の人に、島の悲しい過去や“ユタ”(霊媒師)などの宗教的なことも教えてもらって、この島が神秘的で深い島なんだということがよくわかったんです。
その中でも特に興味深かったのが、“ケンムン”という妖怪。
この妖怪に逆らうと祟りが起きるということも聞いたので、撮影する民家にもしっかりとお供えをして、お掃除をして、挨拶をしてから撮影に臨みました。実は、〈トエ〉が暮らしている家は、これまで何度か別の映画で撮影をしようとしたらしいんですが、どれもアクシデントがあり、続行することができなくなっていたいわくつきの物件らしいんです。
でも、この映画の撮影時は、その挨拶が効いたのか、何も起きることがなく、無事に撮影が終了したんです。
これまで、そういった類のことはまったく信じていなかったので、すごく不思議な体験でした。

島の神様に、島を尊重している気持ちがしっかりと伝わったのかもしれないですね。

永山 そうかもしれないです。