Review

速報!桑田佳祐 アルバム完成試聴会より。『がらくた』という全15曲の音楽世界への小旅行

速報!桑田佳祐 アルバム完成試聴会より。『がらくた』という全15曲の音楽世界への小旅行

ソロ活動30周年を迎えた桑田佳祐が、オリジナルアルバムとしては6年半ぶりとなるアルバム『がらくた』を8月23日にリリースする。期待に満ちた本作はどんな作品に仕上がっているのだろうか──。完成とともに行われたマスコミ向け試聴会にて我々が体験した、全15曲から成る『がらくた』の全貌、その音楽世界へひと足早くご案内。

取材・文 / 小貫信昭


いやはや快調な滑り出し。さて次は……

この日は桑田佳祐の8月23日発売のニューアルバム『がらくた』の完成披露試聴会のため、ビクターエンタテインメントの大会議室を目指した。場所は渋谷。この街は、「大河の一滴」の舞台ともなっている。緩い坂を上がっていくと、やがて目的地へ到着する。

会場となる大会議室に案内され、いざ試聴会は始まった。冒頭、レーベル担当の方が、今回のアルバムの概略を説明してくれる。トータルの演奏時間は68分26秒だそう。でも、音楽という時間の“過ぎゆき方”は興味深い。場面場面により、スイスイだったりジックリだったりするからだ。68分26秒後、さてこのアルバムに、どんな印象を持つのだろう。

オープニングは「過ぎ去りし日々(ゴーイング・ダウン)」。律儀な繰り返し。そこから自由や情熱がはみ出す様は、典型的なロックンロールの手応えだ。ただ、どこか心地良い風も吹いてきそうなのが桑田ならではだろう。途中、ビートルズの初期の曲のように、手拍子しながら参加したくもなる場面も。いやはや快調な滑り出し。さて次は……。

NHK連続テレビ小説『ひよっこ』主題歌「若い広場」がきた。でも毎朝お茶の間に響く、「ぽんぽんぽ〜ん」とは始まらず、ギターのトレモロのイントロが付いてる。ちょと前、レトロな昭和風喫茶店が人気になったけど、その店内の座り心地のいい椅子にも似た感覚が、この歌にはあるような気がする。

「大河の一滴」は、細かい話なんですが……。台詞部分で男が「…行ったよね」と言い、女が「…あったよね」と言ってるのは、恋愛に対して男性のほうが未練がましく、女性はサバサバしているからなのかな、なんてことを思いつつ聴いていた。

ガトーショコラから竹筒入り水羊羹くらいの変わり様

雰囲気は一転する。ガトーショコラから竹筒入り水羊羹くらいの変わり様である。次は「簪 / かんざし」。桑田佳祐の歌い方もノリを重視したものから歌詞の一文字一文字を慈しむかのようなものへと変わる。繰り返し聴くと、さらに愛しさも培養されていくタイプの作品だ。

さらに雰囲気は一転だ。昨年、彼が出演していたJTB のTVCMソング「愛のプレリュード」。舞台となったハワイの、乾いた音の打楽器をイメージさせる、そんなアイデアも盛り込まれたアレンジだと感じた(ちなみに今、音源を聴かせていただいているのは、さすがに完成披露試聴会場だけに、素晴らしいオーディオ装置であり、演奏のディテイルまで、ハッキリと聴くことができる)。

「愛のささくれ〜Nobody loves me」は、「デュッ デュデュッ デュッデュ」という、一回聴いたらすぐ覚えちゃうカッコいいリフが特徴的だ。歌詞はいわゆるアダルティな世界。歌詞の「だもの」って語尾が効果的。

そして「君への手紙」へ。イントロのギターの折り目正しさもあり、思わずここで仕切り直して『がらくた』と向き合う気分に。“祈り”の成分を含んだメロディラインだ。アナログLPだったら、ここでA面終了、というところだろうか。

優秀なポップソングは、聴く者の気持ちをアゲてくれるもの

続けて「サイテーのワル」へ。桑田佳祐のボーカルにオートチューンが施され、声質が変えられている。なんか最近の世の中ってさぁ、プライバシーってどうなってんのよぉー、と、普段、みんなが呟くような庶民感情が、歌の題材となっている。

そして次は、思いっきり手足を伸ばし、深呼吸したくなる「百万本の赤い薔薇」だ。キンコンカンとセレブレーション系の音色に包まれた幸せな歌である。優秀なポップソングは、聴く者の気持ちをアゲてくれるものだが、まさにこれ、そんな作品だろう。

望郷感、とでも言えばいいのだろうか。イントロからそんな感情に満たされるのが「ほととぎす[杜鵑草]」だ。初めて聴いたときに、誰もが“名曲認定”しそうなほどの完成度。刹那を描いてるようでいて、一日一日を大切に生きることを教えてくれる歌だろう。

「愛のプレリュード」同様、JTBハワイのTVCMのために書き下ろされたのが「オアシスと果樹園」だ。浜辺の物語を思わせる前者とは違い、こちらは溶岩で覆われたハワイ島の大地を疾走するかのような逞しさを持つ。ライブで盛り上がりそう。先日のビルボ−ドライブ東京でのステージ(この夏、大人の夜遊び in 日本で一番垢抜けた場所!!)でも、まさに観客を熱くしてた。

ある意味で問題作でもあった「ヨシ子さん」だけど、何度も聴くと、「フンガッ フンガッ」って掛け声も、まったく違和感なくなった。昨年末の桑田のライヴ(桑田佳祐 年越しライブ 2016「ヨシ子さんへの手紙 ~悪戯な年の瀬~」)でも、素晴らしい破壊力を発揮していた。この曲、もし聴かせたら、世界中の人が面白いって言うだろう。ぜひ国際舞台などでも演奏して欲しいものである。いやマジで。

2013年リリースのあの名曲Yin Yangヤンも収録された。「若い広場」も歌謡曲テイストだが、あの歌は時代考証的に50〜60年代。こちらは70年代だろう(この歌が主題歌だったドラマ『最高の離婚』、観てたよなぁ)。

終わったあとの余韻が最高

さて、「オアシスと果樹園」からの3曲は、ライヴで言う本編終盤の盛り上がりコーナー的な配列にも思えたが、もしそんな捉え方をするならば、「あなたの夢を見ています」は、アンコールの1曲目って感じだろうか。再び背中を押してくれるテンポ感といい、様々ありましたがここで総括します、といった聴き方もできる歌詞の世界観といい、なんかそんな気が……。

そして『がらくた』のラストを飾るのは、クロージングナンバーにふさわしい、ストリングスの演奏による「春まだ遠く」である。桑田佳祐が書くメロディの中でも、ちょっとシャンソンの雰囲気を感じる一曲だ。いまさらながら、歌がうまい。そしてうまい歌は、聴き手が感情移入するためのスペースにまで、しゃしゃり出てはこないのである。終わったあとの余韻が最高。大切に持ち帰ろう。

最後に。『がらくた』とは、どんな作品集なのだろう。なぜこう名付けられたのだろうか。それはおそらく、“価値を見出すのは、自らの感性である”、ということを伝えるためだったのではなかろうか。ネットの評価ではそう思えないものの中にも、その人にとっての“宝物”は存在する。逆にそれは、世の中が“宝物”だと認定してるものばかりに目を向けてても見つからない。曲を作る立場の桑田佳祐も同じだったろう。そんなことを考えながら、再びこのアルバムタイトルを眺めてみると……。これ以上書くとクドくなるので、この辺で……。

桑田佳祐 LIVE TOUR 2017「がらくた」

10月17日(火)朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
10月18日(水)朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
10月28日(土)広島グリーンアリーナ
10月29日(日)広島グリーンアリーナ
11月11日(土)東京ドーム
11月12日(日)東京ドーム
11月18日(土)ナゴヤドーム
11月19日(日)ナゴヤドーム
11月25日(土)福岡 ヤフオク!ドーム
11月30日(土)宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
12月1日(日)宮城セキスイハイムスーパー
12月9日(土)アスティとくしま
12月10日(日)アスティとくしま
12月16日(土)京セラドーム大阪
12月17日(日)京セラドーム大阪
12月23日(土・祝)札幌ドーム
12月30日(土)横浜アリーナ
12月31日(日)横浜アリーナ

桑田佳祐(くわた・けいすけ)

1956年2月26日生まれ、神奈川県茅ヶ崎市出身。1978年にサザンオールスターズとしてシングル「勝手にシンドバッド」でデビュー。1987年リリースの「悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)」でソロ活動を開始。2017年10月にソロ活動30周年を迎える。最近の活動としては、7月10・11日にBillboard Live Tokyoにてプレミアムライヴを開催、音楽探訪記映画『茅ヶ崎物語 ~MY LITTLE HOMETOWN~』への出演ほか、8月6日にはソロとしては15年ぶりとなる〈ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017〉への出演の決定。そして8月23日にニューアルバム「がらくた」をリリース予定。また、サザンオールスターズとして「三ツ矢サイダー」の夏の新TVCMにも出演中。

sas応援団 サザンオールスターズ Official Fan Club Site
桑田佳祐 Official YouTube cannel
サザンオールスターズ Official YouTube cannel