山口洋のSeize the Day/今を生きる  vol. 18

Column

瞳の中の少年、TOSHI-LOW そして BRAHMAN

瞳の中の少年、TOSHI-LOW そして BRAHMAN

多くの人々を励ましてきたその歌は、被災地で立ち尽くす一人のミュージシャンをも奮い立たせた。信念と行動力が共鳴した二人は、その生き方が歌の説得力となって人々を鼓舞し続ける。HEATWAVE山口洋が書き下ろす好評連載。


7月のはじめ。福島の猪苗代湖畔。その土地の冬の厳しさが信じられないくらい蒸し暑い日。久しぶりにあの男と会う。

男の名前はTOSHI-LOW。40の齢を過ぎて、相変わらずのやんちゃ盛り。

丁寧に描かれたイベントのプロットを、ことごとく即興の無茶振りで破壊していく。迷惑千万にして、どこか痛快。ヒドい言動も、そこはかとなく愛が通底していて、何故か憎めず。しょーがねぇなぁ。苦笑とともに、無茶振りを受けいれてみる。思いかえせば、この男のオファーを受けて、美しく事が運んだことなんて一度もなかった気がする。

MY LIFE IS MY MESSAGE for九州 POWER TO THE PEOPLE 2016.8.28@東京キネマ倶楽部 photo by Mariko Miura

数年前。とあるロック・フェスのトリで出演する彼らに、ゲストとして呼ばれる。正直なところ、ヒドく無茶な移動をすれば、出演できないこともなかった。その事情を伝えたなら、男はあっさりとこう云った。「じゃ、ものすごく無理して来て!」。文字通り、ありったけの無理をして駆けつけた僕を、超満員のオーディエンスに紹介しないのはまだいいとして、どのタイミングでステージに上がるのかも教えてくれないのだ。ようやく出番らしい瞬間がやってきたと僕が推測したとき、男は数万人のオーディエンスの中に居て、ライオン・キングみたいに奉られていた。そもそもステージにすら居ないのだ。オレはいったいどうすりゃいいのよ? 何のためにここまで来たのよ?でも、さらに面倒なことには、僕はこういう扱いが嫌いじゃなかった。

そもそも、どうして知りあったのかも覚えていないのだ。いつの間にか、当たり前のようにそこに居て、タメ口をきいていた。そして男のバンドは、僕が誰かと書いた曲を、自分たちのモノにして、おおよそ信じ難いくらいの情熱を込めて演奏していた。

そのバンドの名前はBRAHMAN。気高さにおいて、胸がすくくらい爽快な連中。

某テレビ局で、初めて彼らと一緒に演奏した。バンドの中にヒエラルキーが一切存在しないことはすぐに分かった。そのことがとても、嬉しかった。そんなバンドは実のところ、ほとんど存在しないからだ。平和だの愛だの、偉そうなことを云っている奴に限って、バンドには辟易とするくらいの上下関係が存在したりする。BRAHMANは極めて民主的で、愛と敬意と毒と刺激と思いやりが、絶妙なバランスで成り立っていた。誰ひとり欠けてもこの音は出ない。それがバンドと云うものだ。

KOHKIは多くの引き出しを持つ優れたギタリスト、MAKOTOはどんなにステージで暴れても、隠しきれない優しさがベースににじみ出る。RONZIはバンドにユーモアという豊かなグルーヴをもたらしている。もうひとつ云わせてもらうなら、このバンドのマネージメントや運営理念はほんとうに素晴らしい。フェアでいて、独自のものだ。仲間を信じる力に貫かれている。

BRAHMAN

くだんの湖畔のバックステージで、TOSHI-LOWが福島第一原発4号機の事故処理に従事していた二人の若者を紹介してくれた。その命をかけて、僕らの未来を創ってくれた若者たちだ。実際に会うと、説得力が違う。誰一人、何の責任を問われない中で、誰かがあの危険極まりないミッションを遂行しなければならなかった。それはどうして僕や、あの政治家たちや、あなたではないんだろう? 誰もが当事者のはずなのに。

何よりも。若者たちが男を見つめる目は敬意と憧憬に満ちていた。その眺めは大雑把に云っても美しかった。ヤブ蚊にあちこち刺されて痒かったけれど、リアルに美しかった。若者たちは命を賭けて働き、バンドは彼らを音楽と生き方で励ました。まわしがけした虫除けスプレーは福島・猪苗代湖での兄弟の杯みたいで、悪くなかった。

自分の足で動き、自分の目で確かめ、自分の鼻で嗅ぎわけ、自分の口に責任を持ち、仲間を信じて、アホを忘れず、気高さを貫く。そういう男たちの目の中には少年が棲んでいる。そういえば、あの男が僕に「ギター教えてよ」という時の目はいつだって少年そのものだ。

もうひとつだけ。

とある大きなフェスの帰り道。男はバスの中で、僕と誰かが書いた曲をどうして歌うのか、こんこんと説明してくれた。プライベートな話だから、内容はここには記さない。ただ、その歌は被災地で立ち尽くしていたあの男を奮い立たせた。そして、バスの中で語られた言葉は僕をもう一度奮い立たせるには充分すぎた。悪くなかった。それで充分だ。

未来を創る唯一の方法は「今を生きる」ことだ。これからも彼らはそれを体現してくれるだろう。瞳の中の少年たちと共に。そして僕は永遠に無茶振りを受けいれるだろう。悪くないよ。ありがとう、アーメン。


TOSHI-LOW

TOSHI-LOW:BRAHMANのフロントマン、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDのボーカル&ギター。1974年生まれ、茨城県出身。1995年にBRAHMANを結成。現メンバーは、TOSHI-LOW(vocal)、KOHKI(guitar)、MAKOTO(bass)、RONZI(drums)。1996年にミニアルバム『grope our way』でCDデビュー。1998年発表のアルバム『A MAN OF THE WORLD』が60万枚以上のセールスを記録し、90年代のパンクムーヴメントを牽引するバンドとして人気を集める。2011年の東日本大震災以降、復興支援を目的とした活動にも従事。2015年には結成20周年を迎え、ドキュメンタリー映画『ブラフマン』の公開、ベストアルバム『尽未来際』を発表。2017年は4月にシングル「不倶戴天 -フグタイテン-」、10月4日にシングル「今夜 / ナミノウタゲ」をリリース。2018年2月9日に初の単独武道館公演〈八面玲瓏〉を開催する。2015年8月に出演した音楽番組『The Covers』(NHK-BS)にてソウル・フラワー・ユニオンの中川敬と山口洋と「満月の夕」を披露して話題に。また、山口と〈ARABAKI ROCK FEST.16〉ほか共演多数。
オフィシャルサイト

SINGLE「今夜 / ナミノウタゲ」

2017年10月4日発売
初回限定盤(CD+DVD)TFCC-89633 ¥2,000(税別)
通常盤(CD)TFCC-89634 ¥1,000(税別)
アナログ(7inch)TFKC-38029 ¥1,000(税別)
TOYS FACTORY
〈CD〉
01. 今夜 ※映画「あゝ、荒野」 主題歌
02. ナミノウタゲ

SINGLE「不倶戴天-fugutaiten-」

2017年4月12日発売
初回限定盤(CD+DVD)TFCC-89614 ¥1,800(税込)
通常盤(CD)TFCC-89615 ¥1,200(税込)
TOYS FACTORY
〈CD〉
01. 不倶戴天
02. ラストダンス featuring ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)
03. 怒涛の彼方

著書プロフィール:山口洋(HEATWAVE)

1963年、福岡県生まれ。1979年に結成したHEATWAVEのフロントマン。1990年、アルバム『柱』でメジャー・デビュー。1995年発表のアルバム『1995』には、阪神・淡路大震災後に作られた「満月の夕」が収録され、多くのミュージシャン、幅広い世代に歌い継がれている。アイルランドの重鎮、ドーナル・ラニー、元モット・ザ・フープルのモーガン・フィッシャーら海外のミュージシャンとの親交も厚い。2003年より渡辺圭一(bass)、細海魚(keyboard)
、池畑潤二(drums)と新生HEATWAVEの活動を開始。2017年5月には14作目にあたるアルバム『CARPE DIEM』をリリース。東日本大震災後に立ち上げた福島県相馬市を応援するプロジェクト“MY LIFE IS MY MESSAGE 2017”は古市コータロー、仲井戸“CHABO”麗市、矢井田瞳らとともに南青山MANDALAで5日間のライブを開催。熊本地震を受けてスタートした「MY LIFE IS MY MESSAGE RADIO」(FMKエフエム熊本 毎月第4日曜日20時~)でDJも担当。全曲リクエストによるソロ・アコースティック・ツアー2017「YOUR SONG」も終盤戦。
オフィシャルサイト

■ライブ情報

山口洋(HEATWAVE)solo acoustic tour 2017『YOUR SONG』
7月30日(日)千葉 Live House ANGA
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RISING SUN ROCK FESTIVAL in EZO
8月12日(土)石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ〈北海道小樽市銭函5丁目〉
*MLIMMとして仲井戸“CHABO”麗市、宮沢和史とともに出演
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イベント「ミリキタニの猫《特別編》」
8月15日(火)横浜シネマリン
*山口洋は上映後のトークで参加
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TOKYO 1351 LIVE & TALK vol.2
8月19日(土)風知空知
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50/50(山口洋と古市コータローのスペシャル・ユニット)
9月26日(火)吉祥寺STAR PINE’S CAFE
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