Interview

家入レオ 提供曲でシンガーに徹した新作。5周年を機に新境地を開いた思いを訊く

家入レオ 提供曲でシンガーに徹した新作。5周年を機に新境地を開いた思いを訊く

初のベストアルバム『5th Anniversary Best』に初の日本武道館公演にと、アニバーサリーイヤーならではの作品やライブが注目された家入レオが、1年2ヵ月ぶりとなるシングル『ずっと、ふたりで』をリリースする。5周年を機に続いた“初もの”だが、この新曲もシンガーのみに徹するという、また違うスタンスでの“初めて”。中島美嘉、嵐、AKB48などの曲を手がける杉山勝彦に作詞作曲を委ねた楽曲は、優しく甘く柔らかい、新たなアプローチによるボーカルが聴きどころ。これまで常に自身の感情を冷静に、ときにシビアに切り取った歌詞や曲が評価されてきた人ではあるけれども(もちろんその実力は依然素晴らしいものではあるが)、実はシンガーとしての表現力も並々ならぬ実力の持ち主。ということがライブ以外の場面でも広くアピールされる1曲、となっている。また猫を主人公にすることで恋する気持ちを愛らしく描いてみせた『だってネコだから』(作詞作曲は家入レオ)、ウルフルズのカバー曲『ヒーロー』というカップリング2曲もとても新鮮だ。
そんな新たな家入レオをタイプ違いの3曲でサラリと感じさせてくれるところも、口惜しいほどにスマート。デビュー5年を迎えてますます守備範囲も懐も深く広くなった、13枚目のシングルと言えるだろう。

取材・文 / 前原雅子 撮影 / 荻原大志


今回は自分は歌うことだけに専念してみようと思って

作詞作曲のどちらにも関わらない楽曲は初めてですね。

そうなんです。最初はドラマの内容から「こういう感じかな」っていうのが1、2曲できたんです。でも武道館のライブをやって自分のなかで変化したことがあって。「自分で制作していた曲はひとまず横に置いて、全部他の人に預けてやってみたい」っていう気持ちをスタッフさんに正直にお話しして、こういう形の曲作りになりました。

ベストアルバムのインタビューのときも、武道館のライブで何か大きな手応えがありそうな気がすると言っていましたよね。

それが思っていた以上に大きくて。5thアニバーサリー、ずっと憧れていた武道館、みたいなお祝い事が重なったこともあったと思うんですけど、私、初めて「来てくれてありがとう」っていう気持ちだけで歌えたライブだったんです。で、そのとき、音楽って“自我”じゃないのかもしれないって思って……ちょっとショックだったんですね。今までずっと自分を表現することが音楽だと思ってやってきたから。でもそうじゃないのかもしれないって思ったとき、誰かに委ねてみようっていう感覚になって。自分が制作に関わると、どうしても自分が思う自分らしさっていうところで曲を作ってしまうから、今回は自分は歌うことだけに専念してみようと思って。

ちょっと面白かったです、「えっ、今?!」って(笑)

その「自我じゃない」という感覚を最初に感じたのは、いつなんですか。

武道館のステージに立って1曲目の『僕たちの未来』をアカペラで歌ってるときです。お客さんが「レオー!」「家入ー!」って名前を呼んでくれるなか出て行って「今日は来てくれてありがとう」っていう気持ちで歌いはじめたときに、みんなの気持ちがわーって押し寄せてきて。「あ…、今日は私がどうこうとかじゃないのかもしれないなぁ」って思ったんです。

オープニング直後に思いもしなかったことを感じて、それが緊張に繋がったりはしませんでした?

むしろすごく落ち着いたかもしれない。自分の夢や欲のために何かをすると、いつも思いもよらぬアクシデントがあったりするんですけど。みんなに喜んでもらうために頑張ってるときって、いろんな物事がすんなり進んだりして。だからオープニングでそう思ったことで、なんかストンと落ち着いて。みんなのために歌ってるから、今日の武道館は成功しないはずがないって思ったのかもしれない。

前にもそういうことはありました? 見えない力に味方してもらってるなって感じるようなことが。

感覚的にはわかってたけど、頭ではわかってなかったです。だから「なんで、うまくいかないんだろ」って思ったり、「なんで、こんなにすんなりいくんだろう」と思ったり。そういうことへの答えが出たのが、あの武道館で。なんか私の場合、自我はまっすぐ歌えなくなる一つの要因なのかもしれない。

しかしすごいタイミングで答えがやってきましたね。

ホントに。ちょっと面白かったです、「えっ、今?!」って(笑)。だからライブ当日より2、3日前のほうがピリピリ緊張してたかもしれない。どう過ごしていいのかわからなくてソワソワしたりして。

“自我”の問題は、歌詞のタイプが変わってきたことにも関係しているんでしょうね。

ですね。例えば『Bless You』とかは逆に自我やエゴみたいな気持ちが強くないと歌えないから。でもやっぱり私の強みはそこだと思ってもいるんです。ただ武道館では、そういう曲は数曲に絞ってセットリストを考えました。その代わり、その数曲をちゃんとエゴあるものと感じてもらうために、他は逆の曲を多く披露することにして。

ということはセットリスト組むときから、頭のどかでは答えに気がついていたんでしょうね。

それはあったと思います。ベストアルバムをリリースしたあたりから、なんか気づきはじめて、きっちりと自分のなかで答えがまとまったのが武道館に立った瞬間って感じだったんだと思います。

今回の作詞作曲を依頼した杉山さんと面識はあったのですか。

なかったです。でも学生のときに中島美嘉さんの『一番綺麗な私を』っていう曲を聴いて本当にいい曲だな、いつかこの曲を作った人と一緒に音楽できたらいいなって思ったんです。だけど杉山さんは作詞作曲を全部自分でやる方で、共作はしてないみたいだって聞いて。それだとちょっとご縁がないのかもしれないと思ってたんですけど、「自我を横に置いて……となったなら、絶対にこの人だ!」と思って。そしたら面白いことに杉山さんも、私に曲を書いてみたいと思ってくださってたみたいで。同じように「家入さんは自分でやられるから……と思ってたので、嬉しかったです」って言ってくださって。繋がっていくんだなって思いました。

杉山さんが作り上げた世界観をちゃんと歌で形にできるように自分を磨いておかなきゃなって

じゃ、まず会ってお話しをしてから曲作りに?

いえ、今回は自我を最大限横に置くっていうのがテーマだったので、思うように作ってくださいってお願いして。できあがってきたものに対しても、言葉尻をほんの少し修正してもらっただけです。

曲を聴いた第一印象はどうでした?

聴いた瞬間より声を当てたときに、「あ、この曲だ!」って思いました。私の声に合うなって。杉山さんの曲って日本で育った人なら誰もが「あ……」って思う、懐かしくなるメロディーだなってずっと思っていて。私の歌声もどちらかというとそっちのタイプなので、いい化学反応が生まれるかなぁって。

実際に歌ってみて、どうでした?

私とは全然違うアプローチで、感覚じゃなくて緻密に曲を作っているんだなって思いました。語弊を恐れずに言うなら、私はここまで曲作りに対して突き詰められないとも思ったし。でも本当に素晴らしい曲なので、杉山さんが作り上げた世界観をちゃんと歌で形にできるように自分を磨いておかなきゃなって、すごく思いましたね。