Interview

小芝風花が全力で臨んだドラマ『ふたりのキャンバス』。ドラマがもたらす“次世代へつないでいくこと”の大切さを語る。

小芝風花が全力で臨んだドラマ『ふたりのキャンバス』。ドラマがもたらす“次世代へつないでいくこと”の大切さを語る。

昨年放映されたNHK連続テレビ小説『あさが来た』で、主人公の娘役を演じ、生意気な言動でしか母への愛を表現できない不器用な姿が「ツンデレ!」「可愛すぎる!」と大きな話題を呼んだ、小芝風花。
先日、好評のうち放映終了した土曜ドラマ24『マッサージ探偵ジョー』(テレビ東京)では、マッサージ店「ほぐす堂」の新人従業員・亜久里葉子(アグリ)役で新境地となるコメディエンヌっぷりを披露。来月放映のスペシャルドラマ『ふたりのキャンバス』では、原爆という今なお消えない戦争の傷跡に戸惑いながらも真摯に向き合おうとするヒロイン・里保に挑んでいる。
今年5月、広島で行われた撮影に際して、実際に被爆体験証言者から話を聞くなど、フィクションを超えた重い現実と向き合うことになった彼女。その体験は今回のドラマに、そして彼女自身に、どのようなものをもたらしたのか?
ふとした拍子に飛び出す関西弁もチャーミングな彼女に話を聞いた。

取材・文 / 井口啓子 撮影 / 荻原大志


私に出来る事はこの作品に全力で取り組むことだと改めて思えた

『マッサージ探偵ジョー』は深夜枠ならではの遊び心あふれるテンポのいいコメディで、出演者も豪華ながら皆さん真剣にふざけてらっしゃる感じが最高でした。

ありがとうございます。相当ハイテンションな芝居が要求されるドラマだったので不安もあったんですけど、めちゃくちゃ楽しかったです。私自身、これまで明るくてもどこか真面目な役が多かったので、あんなにはっちゃけた役は初めてで。共演の皆さんもすごい方達ばかりで、ただでさえスピード感あふれる芝居の中にアドリブをどんどん入れてこられるので、ついていくのが大変でしたがこれまでにない体験がたくさんできて、すごく勉強になりました。

8月に放映されるスペシャルドラマ『ふたりのキャンバス』は、うってかわって「原爆」という重い題材を扱った作品ですが、プレッシャーはありましたか?

やっぱりテーマや内容を聞くと、大丈夫かな…?という気持ちは正直ありましたね。ただ、熊野監督からは「原爆ときくと重くとらえるかもしれないけど重くとらえないで欲しい。今回のドラマは風花ちゃんと同じ世代の子たちが原爆について今どう思うかーーという部分をメインに作っていきたいから、必要以上に固くならないで欲しい」と言われました。今回私が演じた里保という役も、これといって突出したところがない、漠然と将来どうなるんだろうって不安を抱えていたり、友人関係に悩んだりしている普通の女の子だったので、あまり考えすぎず、特にキャラを作るということもなく、自分がその場で感じたことをそのまま役に生かしながら演じようと思いました。

このドラマは、広島の基町高校の美術部で10年前から実際に行われている高校生と被爆体験証言者による「原爆の絵」の取り組みをモデルにしたもので、今回の撮影も基町高校をメインに行われたそうですね。

そうなんです。私自身、今回の作品で初めて基町高校の美術部の方達がそういう原爆の絵の取り組みをされていると知って。撮影に入る前に、広島の平和記念資料館に行って、実際に被爆者の方から直接お話を伺ったんですよ。それが本当に衝撃的で、お話して下さる方も思い出したくないことを必死で思い出しながら話してくださる。ものすごく苦しい過程がそこにあるんですね。

あと、自分が実際に話を聞いてみてわかったんですけど、聞く方にもものすごくエネルギーが必要で。それを自分と近い世代の高校生たちがちゃんと向き合ってやってるということにも衝撃を受けて…。

今回、撮影も基町高校でさせてもらって、エキストラの方々も実際に基町高校に通っている方たち300人ぐらいが参加してくださって。ドラマに出てくる美術部の部屋や被爆者とお話する部屋もリアルなものを使わせていただいたんですが、その絵がまたすごいんですよ。

技術的なことだけでなく、「原爆の絵」って、やっぱり関係性の上にあるもので。話してくださる方もどう話したら伝わるだろうって苦心しながら話すし、聞く方もその思いをなんとかわかりたいと思って聞く。そうやって一年間かけて関係性を作りながら進めていくからこそ伝えられるものってあるんだなって感じました。

その重みやリアリティは、やはり台本をただ読むだけでは得られなかったもの?

そうだと思います。私も戦争のことについては学校で習ったり、本を読んで知ってるつもりでいたんですけど、実際にお話を聞いて、私はなんて想像力がなかったんだろうって考えさせられました。

原爆や震災にも言える事だと思うんですけど、終わったけど終わってない。被爆者は生きてる限り、肉体的にも精神的にも苦しみ続けて、それが孫の代まで続いていて、そして差別や偏見もあって…。そういうところまで考えて、あなたはあなたのできる方法で次世代に伝えていってねって言われて、そのときは正直、何も言えませんでしたね。

里保のセリフで「いや、そんな被爆者の方と話とかできんよ、変なこと言ったらどうしようって思うし」って言葉があるんですけど、本当にその通りで。私がお話を聞いた時に、何か質問しなきゃと思ったんですけど、もう聞くことだけでいっぱいいっぱいで…。

でも、私に出来る事はこの作品に全力で取り組むことだと改めて思えたし、とにかくこの気持ちを絶対に忘れないようにしよう! と思って撮影にのぞみました。

今回ドラマの中で、小芝さんが聞き取りをする相手が『あさが来た』でおじいちゃん役だった近藤正臣さんで…。

そうなんですー。でも『あさが来た』ではご一緒するシーンはなかったので、今回がはじめましてで。本読みのときに「前はおじいちゃんと孫の設定でしたけど今回も同じような感じやし、仲良くしようね」と言ってくださって。撮影中はごはんに連れて行っていただいたり、いろんなお話を聞かせていただいたり、本当に孫のようによくしてもらいました。
私、『あさが来た』で近藤さんが風吹ジュンさんに膝枕されながら亡くなるシーンがすごく好きで、それを言ったら、膝枕は台本には書かれてなくて、現場で決まったものらしくて。
「現場で偶然できたものが結果としていいものになったりもするから、事前に準備していくのも大事だけど、現場に入ってからもちゃんと周りを見た方がいいよ」とか、本当いろんなことを教えていただきました。

女優さんのお仕事って、演技の教科書があるわけじゃないですし、そういうふうに現場で先輩から学ぶことは何よりの財産ですよね。

今回の熊野監督は「あさが来た」でもお世話になったので、もしかして粋な計らいがあったのかもしれませんが(笑)。一度お仕事した方がもう一度…って声をかけてくださったのも嬉しかったし。本当に大きな財産になりましたね。

里保の同級生を演じられた中村ゆりかさんとの共演はいかがでした? インスタグラムではお二人でスケートに行った写真をアップされてましたよね。

そうなんです。ゆりかちゃんもスケートを習っていたらしくて、今度一緒にスケート行こう!って約束してて、一昨日やっと行ったんですよ。マイシューズ持って滑ってきました(笑)。
ゆりかちゃんとも今回初めて共演したんですが、これまでやってらした役のイメージから大人っぽい印象を持ってたんです。でも、実際のゆりかちゃんはすごく天然さんでめちゃくちゃ可愛いんですよ。今回ゆりかちゃんは里保の憧れている女の子という役柄で、ドキドキしながら近づいていって、だんだん仲良くなって…という過程がこれも現実と重なる部分が大きくて、自然体で演じられたと思います。

『ふたりのキャンバス』は、まず広島で先行放映されるんですよね。

そうなんです。地元の方に見ていただくのは、楽しみでもあり、怖くもありますね。 地元の方って方言にも敏感だと思うんです。私も大阪出身なので関西弁には厳しいし、そこが変だとストーリーどころじゃなくなるし、できるだけそこで引っ掛からないように広島弁はがんばって勉強しました。
広島で生まれ育った方の原爆に対する思いは、他県の方とは全然比較にならないものだとは思うんですけど、私自身、この作品に関わって初めて知らなかったことを知り、いろいろと考えることができました。その結果がこのドラマで、「原爆の絵」と同じように次の世代へと残していくものだと思うので、ひとりでも多くの方に見ていただきたいですね。