スピッツが僕たちに見せてくれた世界  vol. 6

Column

「スピッツであること」が世に認められた、記念すべき1枚

「スピッツであること」が世に認められた、記念すべき1枚

スピッツが結成30周年を迎え、シングルコレクションアルバム『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』を届けてくれた。
世代を超えて愛され続けている音楽を作ることを成し得たアーティストが到達できる30周年。聴く人の喜怒哀楽、それぞれの想いにもそっと寄り添い、潤いを与え続けているスピッツが僕たちに見せてくれた世界をオリジナルアルバム単位で1枚ずつ振り返っていきたい。
『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』に収録されているシングルの味わいもグッと増し、もっとスピッツを知りたくなってくれることを願って。

#6 5th Album「空の飛び方」(1994年9月21日発売)

スピッツが大ブレイクしたのは、95年のシングル「ロビンソン」とアルバム『ハチミツ』ということになっているし、実際そのとおりではあるが、ただしその1枚前の本作、『空の飛び方』の段階で、「すごくいいのに支持されるのは一部だけ」という状態は、完全に脱出した。つまり、とんでもなく売れたのは「ロビンソン」と『ハチミツ』だが、人気バンドの仲間入りを果たしたのはこの『空の飛び方』だ、と言っていいと思う。当時、そういう実感があったので、間違いなく。

本作の前に、先行シングルとして「空も飛べるはず」と「青い車」がリリースされたが、「空も飛べるはず」を初めて聴いた時、「あれっ!」「きた!」「スイッチ入った!」と思ったのを憶えている。派手さもカマシもない、フォーキーで素朴で淡々とした、スピッツらしすぎるほどスピッツらしい、ただし大変に美しくて一切のムダがない、言わば完璧な名曲だったのだ。

8th Single「空も飛べるはず」(1994年4月25日発売)

続く「青い車」も、アルペジオ多用のギター・アレンジといい、8ビートのリズムといい、中域を漂うベースといい、サビ後に大サビがくるメロディの展開といい、もうまさにスピッツどまんなかなすばらしい曲だった。
2曲とも「スピッツであること」がそのまま「世に広く拓かれること」とイコールになった瞬間だった、という言い方もできる。
そのシングル2連打で上昇気流に乗ったスピッツは、それらが収録されたアルバム『空の飛び方』で、初めてアルバム・セールス的にもしっかりと成果を残すことになる。

9th Single「青い車」(1994年7月20日発売)

なお、その2曲のシングルは土方隆行プロデュースだが、それ以外は前作に続き笹路正徳。『Crispy!』ではまだお互い探り探りで手を組んでいたのが、このアルバムでがっちりと歯車が噛み合った、そんな印象があった……のだが、この度じっくり聴き直してみると、「恋は夕暮れ」や「ラズベリー」あたりのホーン&鍵盤&ストリングス・アレンジは、『Crispy!』のそれと地続きだったりして、してみると、「『Crispy!』では手探りだったが『空の飛び方』ではうまくいった」というのは、僕が勝手に描いたストーリーであって、実際は「『Crispy!』ではまだ数字がついてこなかったが『空の飛び方』では結果が出た」くらいの感じなのかもしれない。

にしても、今聴いてもちょっとびっくりするほど、耳になじんだ曲ばかりだ。いや、それ以前のスピッツの曲たちも充分耳になじんでいるけど、それらが自分が熱心に何度も聴くことで耳になじんだものであったのに対し、この『空の飛び方』の曲たちは、ラジオやテレビや服屋や飲み屋でかかってたとか、インスト・バージョンがスーパーマーケットのBGMになっていたとか、そんなふうに「自発的に聴かなくても耳に入ってくる曲」として耳になじんだ感じ、というか。
『ハチミツ』以降、ディスコグラフィーをさかのぼられて、そういうアルバムになったのではないかと推測する。

個人的にどれか選べ、と言われると頭を抱えるくらい好きな曲だらけのアルバムだが、強いて挙げるなら「おかしいよと言われてもいい ただ君のヌードを ちゃんと見るまで僕は死ねない」という、どうかしてるラインが入っている「ラズベリー」かなあ、と思います。
それか、寺本りえ子(当時、ええと、トランジスタ・グラマーという名前でソロで活動していた時期か、そのあと有近真澄とTV JESUSを組んでいた時期かのどっちかだと思う)とのハモリが美しいワルツ、「ヘチマの花」か。

なお「青い車」は、以前からスピッツを大好きで親交もあったマンガ家、よしもとよしともが、この2年後に刊行した短編集のタイトルになった。

文 / 兵庫慎司

楽曲/DISCOGRAPHY

5th Album
空の飛び方

発売日:1994年09月21日
品番:UPCH-1186

【収録曲】
01.たまご
02.スパイダー
03.空も飛べるはず(Album Version)
04.迷子の兵隊
05.恋は夕暮れ
06.不死身のビーナス
07.ラズベリー
08.ヘチマの花
09.ベビーフェイス(Album Version)
10.青い車(Album Version)
11.サンシャイン

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リリース情報

スピッツ

CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-

2017年7月5日発売
(3CD)UPCH-7329/31
¥3,900+税

1991年のデビューシングルから昨年2016年4月に発売されたシングル曲「みなと」までの全シングル曲、そして「愛のことば-2014mix-」「雪風」といったドラマ主題歌としても話題となった配信限定シングル曲、さらには、新たにレコーディングをした新曲3曲を加えた全45曲収録のCD3枚組アルバム。

【収録曲】
【DISC 1】CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection
01.ヒバリのこころ
02. 夏の魔物
03.魔女旅に出る
04.惑星のかけら
05.日なたの窓に憧れて
06.裸のままで
07.君が思い出になる前に
08.空も飛べるはず
09.青い車
10.スパイダー
11.ロビンソン
12.涙がキラリ☆
13.チェリー
14.渚
15.スカーレット

【DISC 2】CYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection
01.夢じゃない
02.運命の人
03.冷たい頬
04.楓
05.流れ星
06.ホタル
07.メモリーズ
08.遥か
09.夢追い虫
10.さわって・変わって
11.ハネモノ
12.水色の街
13.スターゲイザー
14.正夢
15.春の歌

【DISC 3】CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection
01.魔法のコトバ
02.ルキンフォー
03.群青
04.若葉
05.君は太陽
06.つぐみ
07.シロクマ
08.タイム・トラベル
09.さらさら
10.愛のことば-2014mix-
11.雪風
12.みなと
13.ヘビーメロウ
14.歌ウサギ
15.1987→ 

2006年に発売された2枚の『CYCLE HIT』も2017年最新のマスタリングをして再発売!

CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection

(CD)UPCH-2129 ¥2,500+税

CYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection

(CD)UPCH-2130 ¥2,500+税

CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection

(CD)UPCH-2131 ¥2,500+税

『CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection』、そして『CYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection』も、今回の新たなアイテムに合わせ、2017年の最新スピッツサウンドを表現する為に、世界最高峰の「Marcussen Mastering」にてリマスタリングを遂行。7月5日に再発売。

アナログ盤も“重量盤”で7月5日同時発売!

ファーストアルバム『スピッツ』から昨年7月に発売された最新アルバム『醒めない』までのオリジナルアルバム15作品に、ミニアルバム『オーロラになれなかった人のために』を加えた全16作品をアナログ盤で発売。

ライブ情報

『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50”』

8月05日(土):長野県・長野・ビッグハット
8月06日(日):長野県・長野ビッグハット
8月11日(金・祝):香川県・さぬき市野外音楽広場テアトロン
8月12日(土):香川県・さぬき市野外音楽広場テアトロン
8月16日(水):東京都・日本武道館
8月17日(木):東京都・日本武道館
8月19日(土):東京都・日本武道館
8月23日(水):神奈川県・横浜アリーナ
8月24日(木):神奈川県・横浜アリーナ
9月02日(土):福岡県・マリンメッセ福岡
9月03日(日):福岡県・マリンメッセ福岡
9月16日(土):北海道・北海道総合体育センター北海きたえーる
9月17日(日):北海道・北海道総合体育センター北海きたえーる
9月30日(土):宮城県・宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ・21)
10月1日(日):宮城県・宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ・21)

SPITZ

草野マサムネ :1967年12月21日 福岡県 O型 ヴォーカル&ギター
三輪テツヤ :1967年5月17日 静岡県 B型 ギター
田村明浩 :1967年5月31日 静岡県 A型 ベースギター
﨑山龍男 :1967年10月25日 栃木県 B型 ドラムス
草野マサムネ(Vo/Gt)、三輪テツヤ(Gt)、 田村明浩(B)、﨑山龍男(Dr)の4人 組ロックバンド。
1987年結成。1991年3月シングル「ヒバリのこころ」、アルバム「スピッツ」でメジャーデビュー後、1995年リリースの11thシングル「ロビンソン」、6thアルバム『ハチミツ』のヒットを機に、多くのファンを獲得。
以後、楽曲制作はもちろん、日本国内をくまなく廻る全国ツアーや自らオーガナイズするイベント開催など、マイペースな活動を継続している。 そして今夏、15thアルバム『醒めない』を発売、全国ツアーも大成功。
2017年結成30周年を迎え、7月5日は「CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-」を発売、『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50”』も敢行中と精力的に活動を展開している。
オフィシャルサイトhttp://spitz.r-s.co.jp/

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