映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』柄本 佑&冨永昌敬監督が「ニューヨーク・アジアン映画祭」に登壇。「もう開き直ってやるぞぉ」

映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』柄本 佑&冨永昌敬監督が「ニューヨーク・アジアン映画祭」に登壇。「もう開き直ってやるぞぉ」

3月に公開された映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』が、アメリカ最大のアジア映画祭「第17回ニューヨーク・アジアン映画祭」で上映され、上映後に行われたオープニングナイトに柄本 佑と冨永昌敬監督が登壇。そのQ&Aレポートが到着した。また本作のBlu-rayとDVDが11月9日(金)に発売することが決定した。

本作は、「写真時代」、「ニューセルフ」など、伝説的なカルチャー・エロ雑誌を世に送り出した編集長・末井 昭の自伝的エッセイ『素敵なダイナマイトスキャンダル』(ちくま文庫)を、俳優・柄本を主演に迎え、冨永監督が映画化した作品。7歳の時に母親が隣家の若い息子とダイナマイト心中するという壮絶な体験をした末井青年が、工員、キャバレーの看板描きと職を転々としながら、70〜80年代のサブカルチャーを牽引する伝説の雑誌編集長となっていくまでを描いた青春グラフィティとなっている。

――映画内では、(末井本人の)信じられないようなストーリーが描かれていますが、どの程度、末井さんの原作に従って描き、どの程度創作上の特権をもとに(冨永さん自身の解釈として)自由に付け加えて描いたのですか?

冨永 末井 昭さんが1984年に『素敵なダイナマイトスキャンダル』という本を書きました。それから約30年後に、彼は『自殺』という本を出しています。その2冊が今作の基になっていて、どちらも末井さんのお母さんが、あのような死に方をしたことに関する自分の人生観を書いています。末井さんのちょっと特別な人生ではありますけれど、どの時代の若者がこの作品を読んでも、これからその若者が生きていくためのヒントが満ちあふれていると思いました。

母親がダイナマイトで自殺したということは、彼のその後の人生に大きく影響しています。彼は人生において、自分には色々なものが足りないと思っています。それでも、自分のアイデアを積み重ねることによって、自分や友人たち、雑誌の読者を楽しませることをずっと続けている人です。だから、彼はエロ雑誌を作れなくなったとしても、じゃあパチンコ雑誌でも作ろうと考えられる柔軟な人なんです。そういうところは、多くのクリエイターにとってすごく参考になると思いましたし、だからこの映画を若い人たちに観てもらいたいと思っています。

――どのような下準備をしましたか? 末井さんにはお会いしましたか?

柄本 末井さんには、撮影前に一度お会いしました。その時はご飯を食べたり、ちょっとお酒を飲んだりしました。僕が初めて原作となる単行本を手にした際に、末井さんの顔が僕の顔に似ているなぁと実感したことと、監督にその後会った時に、監督から「祐くんがやる以上、もう祐くんのままで良いから」と言われて、もうその二つを頼りに、現場に入って、もう開き直ってやるぞぉと思っていました。

でも末井さんは撮影現場に10日間くらいいらして、スーパーバイザーとしてアドバイスをいっぱいしてくださいました。最初の方は緊張していたのですが、緊張していても仕方ないので、とにかく末井さんを見てやろうと観察したところ、末井さんが人と喋ったりするところよりかは、一人でなんかぼっと佇んでいるところが、非常に参考になったと思っています。

――末井さんを観察したことで、彼がいかにチャーミングであるかを理解して演じていましたか? それとも末井さんらしさを柄本さん自身の判断で役に盛り込んで演じていましたか?

柄本 観察からもあると思います。ほかにも、初めて末井さんと会った時に、末井さんと僕が同じ色のブランドの種類の違うスニーカーを履いていらしたんです。(一緒に飲んでいた店を出る時に)末井さんが僕の靴を間違えて履いて帰っちゃたんです。僕は、『あれ、これ末井さんが履いていた靴だ、やった!』と思って、これから末井さんの役をやるために、間違えたままにしておいたんです。それからずっと撮影が終わるまで末井さんの靴を履きっぱなしにしていたんですけれど、どうも人は足元から似てくるところがあるらしくて、足の形がなんとなく似てきて、(僕の)体から(末井さんの雰囲気が)醸し出されたのかもしれません。もう一つは、冨永監督がそういった部分を引き出してくれたというのが、一番大きいかもしれません。自分は、この徹底された世界観の中に、徹底された衣装と髪型でセットに入って、セリフを言うという非常にシンプルなことをしていた気がします。

――題材的にR-指定寄りの(エロスの多い)作品を探求することもできたが、(ドラマ性を主体にした)PG寄りの作品にしたのはいかなる決断があったんですか?

冨永 末井さんの職業はエロ雑誌を作ることでしたが、この映画はポルノではないので、そこをはっきりしておきたいと思います。僕はポルノもセックスも見るのは大好きですし、末井さん自身もポルノ雑誌を作っていましたけれど、彼はポルノには興味はなかったらしいです。やっぱり映画で描いたように、グラフィックデザイナーになりたいという気持ちがずっと彼にはあって、その結果ほとんど偶然だと思うんですけれど、ポルノ雑誌を作ることになったんです。ただ自分の雑誌を大きくすることが目的ではなくて、あくまで自分はクリエイターであり、読者を楽しませようという気持ちを貫いたというところが、我々(製作者)が尊敬しているところです。

――ポルノ雑誌のオリジナルの写真映像に似せて、ポルノ雑誌の撮影シーンを撮っていたんですか、それとも当時の撮影状況だけを再現して撮影していたんですか?

冨永 全部本物を使いました。再現するのに別のものを使ったら、一番嘘つきになるなと思ったんです。雑誌の面白さを映画で伝えるのは難しいことです。雑誌の面白さは雑誌の面白さなので、そこは僕らがやることではないし、末井 昭が作っていた雑誌はこういう雑誌でしたということは、なるべく映画の中では紹介しないようにしていました。僕らがやりたかったのは、雑誌を紹介することではなく、末井 昭という人物を通して、今の若い人たちにいろんなことを考えてほしいという思いで作ったので、雑誌は本物じゃないと駄目なんですよね。

――柄本演じる末井が話している相手が、体に絆創膏が付いていたり、メガネが曇っているたりするのは、なんらかの意図があったんですか?

冨永 よく気づいてくれました。メガネが曇っていたり、怪我をしている人たちは、ほとんどが彼(末井)の敵です。今から30〜40年前の日本は戦争に負けたことで、これから国を立て直そうということで、みんなよく働いたんです。アメリカに負けるな、みたいな感じで働いていました。そういう人たちは、メガネが曇っていても気にしていなかったんです。自分が怪我をしても気にしなかったんです。そういう人たちからすると、末井さんのような自分の人生に悩んでいる若者は、批判する対象なんですよ。もう怒りたくって、しょうがないんです。彼らからしたら、みんなこんなに一生懸命仕事しているのに、お前(末井)は何を悩んでいるんだというのが、ほとんどの大人だったんだと思います。そういう人たちから、彼(末井)は見つめられます。その時に、彼らのメガネが曇っているんです。一方で、彼(末井)の味方になるグループ、女の人たちにもメガネをかけている人は(劇中に)何人かいますが、彼女たちのメガネは曇っていないんです。彼(末井)にひどい目に遭わされる笛子の目も曇っていません。それは、彼を信じているからです。

【STORY】
バスも通らない岡山の田舎町に生まれ育った末井少年は、7歳にして母親の衝撃的な死に触れる。肺結核を患い、医者に見放された母親が、隣の若い男と抱き合いダイナマイトに着火&大爆発! 心中したのだ――。青年になり上京した、末井昭は小さなエロ雑誌の出版社へ。のち編集長として新感覚のカルチャー・エロを創刊。奮闘する日々の中で荒木経惟に出会い、さらに末井のもとには南伸坊、赤瀬川源平、嵐山光三郎ら錚々たる表現者たちが参集する。その後も発禁と創刊を繰り返しながら、数々の雑誌を世におくりだしていく……。数奇な運命を背負い、転がる石のように生きてきた青年が辿り着いた先は――?

リリース情報

『素敵なダイナマイトスキャンダル』Blu-ray&DVD
発売日:11月9日(金)

【Blu-ray】価格:5,200円+税
【DVD】価格:3,800円+税
発売元:バンダイナムコアーツ
販売元:バンダイナムコアーツ

キャスト: 柄本 佑、前田敦子、三浦透子、峯田和伸、松重 豊、村上 淳、尾野真千子、中島 歩、落合モトキ、木嶋のりこ、瑞乃サリー、政岡泰志、菊地成孔 、島本 慶、若葉竜也、嶋田久作
監督・脚本:冨永昌敬
原作:末井 昭『素敵なダイナマイトスキャンダル』(ちくま文庫刊)
音楽:菊地成孔、小田朋美
主題歌:尾野真千子と末井 昭「山の音」(TABOO/Sony Music Artists Inc.)

©2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

オフィシャルサイト
http://dynamitemovie.jp/